
神奈川県に住むYさんは、広島県三原市にある実家の一戸建てを相続しました。会社員として忙しく働く毎日で空き家の管理が難しくなり、売却することに。遠隔地であるうえ、災害危険地域であることなど、不安要素を抱えながらの売却活動でしたが、信頼のおける地元の不動産仲介会社と出合い、予想以上の短期間で売却することができました。
| 不動産区分 | 一戸建て |
|---|---|
| 所在地 | 広島県三原市 |
| 築年数 | 64年 |
| 間取り・面積 | 6LDK(延床面積…約100m2、土地面積…約290m2) |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 600万円 |
| 売り出し価格 | 600万円 |
| 成約価格 | 600万円 |
居住地から遠く離れた実家を相続。空き家の手入れが困難に
神奈川県に住むYさん(60代)は、15年前に母親を、4年前に父親を亡くし、両親が住んでいた一戸建てを相続しました。
実家は広島県三原市のベッドタウンに立つ築60年以上の一戸建てです。
現役会社員として働くYさんは広島県まで頻繁に行くことが難しく、空き家の状態でしばらく放置していました。
「ところが、人が住まずに3年もたつと、家はだんだん朽ちてきます。庭の草もぼうぼう。実家の近くに住む親戚が時折見てくれていたのですが、『草が生え過すぎている』『植木が道路にはみ出していて、歩く人の迷惑になっている』といった連絡が入るようになりました。シルバー人材センターに草取りをお願いしていたのですが、それでも追いつきません。空き家で放置しておくのは近所迷惑だと考えるようになりました」
Yさんは、アパートに建て替えて家賃収入を得られないかと思案し、2019年2月に、アパート経営をした場合の賃料査定をネットで取ってみました。
「実家のある地区はアパートが一軒もなく、持ち家ばかりが集まる住宅街。バス停から徒歩10分と、交通利便性はさほどよくありません。そのため、アパートを建てても安定した入居者が見込めず、収入につなげるのが難しいことがわかり、アパート経営は断念しました」
地元不動産会社1社から査定額の提示があり、専属専任媒介契約を結ぶ
アパートへの建て替えを諦め、売却へと方向転換したYさんは、今度は売却の一括査定を行ないました。
すると、地元の不動産会社1社から「査定額600万円なら売れるでしょう」と、電話で連絡がありました。
さらに、山の懐に位置するため、土砂災害危険区域に指定されていることをその不動産仲介会社から知らされました。「そのこともあって、600万円以上の値がつくことは難しいだろう、という見通しでした。弟もすぐ近くの土地280m2を相続し、父が亡くなってすぐに売り出したのですが、1年後にやっと500万円で売れたと聞いていたので、査定額には納得しました」
一括査定で返事があったのはその1社だけでした。
「一人で経営している地元の不動産仲介会社ですが、地元の情報に詳しく、危険地域に指定されているので高値をつけると買い手がいないことなどを丁寧に説明してくださいました」
信頼がおける会社だと感じたYさんは、2019年8月、専属専任媒介契約を結びました。
「不動産仲介会社から連絡があったときは、嬉しい反面、正直、複雑な気持ちもありました。生まれ育った家をいよいよ売るとなると、自分の“田舎“がなくなる気がして寂しかった。でも、維持できないのだから仕方ありませんね」
売り出しから3カ月後に購入希望者が現れる
Yさんにとって現地は遠隔地のため、売却活動は不動産仲介会社に任せっきりだったと言います。
不動産仲介会社からは月1回程度連絡がありましたが、売り出し開始から3カ月間は全く反響がありませんでした。
「果たして売れるだろうか」と不安を感じ、「半年ぐらい買い手がなかったら価格を下げようかな」と考え始めました。
枝や雑草が伸びて周囲に迷惑をかけてはいけないという気持ちが大きく、空き家を放置して周囲に迷惑をかけると損害賠償などが発生する「特定空き家制度」も気になっていたと言います。
売り出し開始から3カ月が過ぎたころ、不動産会社から「売れそうな雰囲気になってきました!」といううれしい電話がありました。購入希望者は地元で土地を探している30代の男性。結局、購入希望者はこのときの一人だけでした。そして、売り出し開始から4カ月後に600万円での売却が決定しました。
「契約時にお会いしましたが、いい人のようでした。育った家でもあり、近所の方々とも知り合いです。その地域に違和感のある人だと困るなと思っていましたが、お会いして安心しました」
遠隔地同士の契約だったため、お互いの仕事の都合などから、実際に契約を結んだのは2020年2月でした。
■特定空き家制度
近年空き家が増加し、空き家が原因の家屋倒壊や放火などが発生しています。危険性の高い空き家を減らし、所有者に適切な管理と活用を促すのが特定空き家制度です。
通常、宅地上に建物が立っている場合、特例によって「固定資産税」や「都市計画税」が大幅に減税されます。しかし空き家を放置していて、周辺に危険を及ぼす可能性のある「特定空き家」に指定されると、この税金の特例が適用されなくなり、固定資産税と都市計画税が増額される可能性があります。
また、所有者が改善のための適切な対応を怠っていると、自治体が強制的に空き家を取り壊して、その費用が所有者に請求されることもあります。
最近では老朽化した家屋を取り壊した場合に、一定期間、取り壊す前の水準まで税額を減免することで、空き家の取り壊しを支援する制度を導入したり、売却先や再利用方法について相談にのってくれるなど、空き家の所有者を支援する自治体も増えています。
信頼できる地元の会社との出会いで不安要素を克服
今回の売却活動を振り返り、反省点や後悔は、と尋ねたところ、「反省点は1点だけ。こんなに早く買い手が見つかるなら、600万円の査定より少し高めから売り出しを開始しても良かったなと思います」と答えてくれました。
「遠隔地の取引、危険地域指定と、複数の不安要素があったにもかかわらず、売り出し開始からわずか4カ月で買い手が見つかり、本当に良かったです。家の中の家具などは全て撤去して建物だけにして引き渡すという条件でしたが、不用品を処分する会社を不動産仲介会社が紹介してくれたので問題なく対処できました。私が広島県まで何度も足を運ぶことのないよう、不動産仲介会社が一生懸命やってくれたおかげです。その後、古家の解体を不動産仲介会社が行って、無事引き渡しました。」。
信頼できる会社と出合えたことに満足そうな笑顔を見せたYさんでした。
| 2019年2月 | ・アパートへの建て替えを検討 |
|---|---|
| 2019年8月 | ・一括査定 ・地元不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ ・600万円で売り出し |
| 2019年11月 | ・購入検討者が現れる |
| 2020年2月 | ・売買契約を結ぶ ・引き渡し |
まとめ
- 遠方からでも不動産売却は可能。信頼できる不動産仲介会社を見つけることが大事。
- 空き家状態は家の老朽化が進む。草取りや掃除などで周辺に迷惑をかけないように気をつけたい。
- 災害危険区域指定などの情報は不動産仲介会社などからしっかり確認しよう。
取材・文/浅野真由美 イラスト/めんたまんた


