コロナ禍でテレワークになったAさんは、仕事のできる環境が必要だと考え、東京都江東区の築5年のマンションを売却することに。リフォーム後に売り出すと反応は上々。しかし、なかなか購入申し込みに至らないことが不安だったといいます。
不動産区分 | マンション |
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所在地 | 東京都江東区 |
築年数 | 約5年 |
間取り・面積 | 2DK(約55m2) |
ローン残高 | 約2000万円 |
査定価格 | 2800万円 |
売り出し価格 | 2900万円 |
成約価格 | 2900万円 |
コロナ禍でテレワークに向かない自宅マンションの売却を検討
東京都江東区のマンションで暮らしていたAさんが、自宅の売却を考え始めたのは2021年3月ごろのこと。コロナ禍で夫婦ともにテレワークとなったことが大きな理由だったといいます。
「元々、通勤の便利さで選んだマンションで、家で仕事をすることは全く予想していませんでした。テレワークになって約1年が経過しましたが、会社がオフィスを縮小するなど、コロナ禍が収束してもこのままテレワークが続きそうな気配があり、通勤便利な立地にメリットを感じなくなったんです」
Aさんが新築で購入した築5年のマンションは、最寄駅から徒歩10分に立地。周囲は新しいマンションが多く、スーパーなどの商業施設もそろい暮らしやすい環境だったそうです。
「広さ約55m2、間取りは2DK。それまで夫婦2人で快適に暮らしていた家ですがテレワークには向かず、1人はリビングで仕事をしているので出入りがあると落ち着かないし、リモート会議のときは声や音を出さないようにお互いに気を使うし……。テレワークができる環境が必要だと夫婦の意見が一致。同時期に私が実家の近くにいたほうがいい事情ができたこともあり、思い切って転居することにしました」
Aさんはマンションを購入する際に30年返済の住宅ローンを組み、その時点で約2000万円のローンが残っていたといいます。
「エリアの相場が上がっていたので、残債以上の金額で売れるだろうと予想して、まずは引っ越し先の賃貸物件探しからスタート。私としては住んでいる家を人に見せるのは嫌だったので、引っ越しを済ませて空き家にしてから売却することにしました」
簡単なリフォーム後、査定より高い2900万円で売り出す
テレワークが快適にできる環境を求めて実家の近くに転居することにしたAさん。引っ越し先の賃貸マンションが決まると、不動産仲介会社3社に現地査定を依頼したそうです。
「ネットの口コミなどを参考に評判の良さそうな不動産仲介会社をチェックし、3社に物件を見てもらいました。査定価格はどの会社も大差はなくは2800万円前後。予想より高かったので、いい価格で売れそうだと安心しました。3社の中から、担当者が一番話しやすく信頼できそうだと感じた不動産仲介会社に仲介業務を依頼。会社の規模は関係なく、担当者の人柄と相性が決め手です」
2021年4月、Aさんは不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結びました。担当者からは、水まわりのクリーニングとリフォームをしてから売り出すことを提案されたといいます。
「築5年ですから目立つ汚れや傷みはありませんでしたが、自分は汚くないと思っても、他人の感じ方は違うので、コストをかけてもやったほうがいいとアドバイスされました。確かに、私の物件に興味をもちそうな若い世代は清潔感を重視するだろうと納得。引っ越し後に、キッチンの壁紙の張り替えと床クリーニング、トイレの便器交換、浴室のクリーニングなどを行い、約70万円かけてスッキリきれいにしました」
Aさんは売り出し価格を、査定価格より高い2900万円に設定しました。
「リフォーム代などコストをかけているし、値引き交渉される可能性も考慮。とはいえ、3000万円台になるとグッと高い印象になってしまうので、2000万円台で売り出すことにしました」
内見は10組以上、3カ月目に待望の購入希望者が現れる
売却活動がスタートし物件ポータルサイトに掲載されると、すぐに反応があったといいます。
「人気のエリアだったので早い段階から内見の申し込みが入り、順調な滑り出しでした。私は内見に立ち会いませんでしたが、購入検討者に伝えたいことはすべて不動産仲介会社の担当者に話しておきました。例えば、キッチンは広くはないけれど動線がよく使いやすいなど、ネガティブに捉えられないように使い勝手を説明してくれるよう頼みました」
内見は10件ほどあったものの、なかなか購入申し込みには至らなかったそうです。
「売り出しが4月になり、人の動きが活発な2月~3月の時期から遅れたせいだろうか、それとも売り出し価格が高かったのだろうかと、不安になってきました。リフォーム費用をかけているので値下げはしたくない。でも、このまま売れなければ住宅ローンと新居の家賃というダブルの住居費負担が続いてしまいます。期限を決めて値下げを検討しないといけないだろうと考えていました」
売り出しから2カ月が過ぎた7月、ついに購入希望者が現れました。
「ようやく売れそうだと、ホッとしました。購入希望者は小さいお子さんのいる3人家族です。予想していた通り値引き交渉があったのですが、まだ値下げをする気はないと断ると、値引きなしの2900万円で購入を決めてくれました。その後の段取りやローン審査はスムーズに進み、2021年7月中旬に売買契約を結び、物件を引き渡しました」
価格重視のスタンスを夫婦で共有し、値下げなしで売却が成立
売却活動全体を振り返って、Aさんは「満足しています」と答えてくれました。
「高く売りたいのか、早く売りたいのか、どちらが大事かスタンスを決めた上で売ったのが良かったと思います。内見はあるけれど申し込みに至らない状況が続いたときは、もう少しこのまま頑張ってみようと夫婦で話し合いました。不動産仲介会社の担当者からはメールやSNSでまめに報告があり、内見も安心して任せることができました。ただ、私が立ち会っていれば購入検討者のリアルな反応がわかり、もっと対策が立てられたかもしれませんね」
コロナ禍が売却のきっかけになったAさんですが、実際の売却活動でコロナ禍の影響を感じることはなかったそうです。今は3LDK・約70m2の賃貸マンションで暮らし、夫婦それぞれが個室の仕事スペースを持ち、2人の空間として広いリビングも確保。テレワークがとても快適になったと笑顔で話してくれました。
2021年4月 |
・マンションの売却価格査定 ・2900万円で売り出し |
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2021年7月 | ・購入検討者が現れる ・売買契約を結ぶ |
まとめ
- 築浅でもリフォームが有効なケースも。リフォームするかは周辺相場やニーズを考えてよく検討しよう
- 内見に立ち会わない場合は、不動産仲介会社に物件のセールスポイントをしっかり伝えておきたい
- 値引き交渉の可能性は大。どのタイミングでいくらまでなら応じるか、考えておくことが必要
取材・文/小宮山悦子 イラスト/斎藤ひろこ