杉並区にある借地権付きの実家を相続した夫と一緒に売却活動を行ったAさん。地主への承諾料の支払いなど借地権の売却の手続きをネットで調べながら対処し、スムーズに売却を終えました。
不動産区分 | 一戸建て |
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所在地 | 東京都杉並区 |
築年数 | 約59年 |
間取り・面積 | 4LDK(延床面積…約60m2、敷地面積…約50m2) |
ローン残高 | なし |
査定価格 | 1150万円 |
売り出し価格 | 1150万円 |
成約価格 | 1150万円 |
杉並区の借地権付き実家を夫が相続。売却を決める
2020年の5月、Aさん夫妻は、杉並区に住んでいた高齢の義母と同居するため、三鷹市に義母名義で3200万円の中古一戸建てを購入して引っ越しました。ところが3カ月もたたないうちに義母が亡くなってしまったのです。三鷹の家に移る前に義母が住んでいたのは、60m2・4LDKの一戸建てで築59年の古家でした。借地権付きで、長年、地代として月3000円を支払っていました。
「夫は義母が杉並区に住んでいたころから、泊まり込みで世話をしていました。三鷹の家を介護しやすく改装したのに亡くなってしまい、夫も私も気落ちしてしまいました」
夫は、義母から三鷹市の自宅と杉並区の借地権付きの実家を相続。いろいろ落ち着いた2020年の9月、空き家となった実家の管理が負担だと感じたAさん夫妻は、売却を決めました。
別物件で世話になった不動産会社に相談。専属専任媒介契約を結ぶ
2021年6月ごろに、三鷹市の一戸建てを買うときに知り合った不動産会社に相談し、専属専任媒介契約を締結。
不動産仲介会社は、Aさん夫妻が売却か買取か迷っていることを知ると、夫妻が思ってもみなかった提案をしてきました。
「まず、一般には買い手を募集せず、複数の不動産会社にどちらが高いのか提案をしてもらいましょうと」
そこで、買い取ってもらうか、リフォームして一般の人に売却するか3社の不動産会社の提案を聞いて見積もりを比較することになりました。
3社の不動産会社の見積みるを比較して1150万円で買い取ってもらう
査定額は、リフォームによる売却を提案した2社は、600万円と800万円、買取の会社が1150万円でした。
「参考までに自分たちでそのエリアの借地権付き新築一戸建ての価格を調べると3500万円くらいでした。実家は古家ですから、1150万円なら買取のほうが良いと判断して売却を決めました」
残置物の処分をしたあと、2021年10月に売買契約をして引き渡しました。
面倒だと思っていた借地権の売却。地主や隣家へのあいさつが大切
地主には売却の意志が固まるとすぐにあいさつに行き、夫が実家を相続すること、売却しようと思っていることを話し、承諾してもらっていました。困ったのは、母が親しくしていた近隣住民から、「私が買い取りたい」「賃貸してくれないか」と次々問い合わせがあったことです。
「地主には、譲渡承諾料を支払いました。調べると、譲渡承諾料の相場は借地権価格の1割程度でしたが、私たちは、2割をお支払いしました。近隣の方には気を使いましたね。丁寧な対応を心掛け、売却する方針を伝えてお断りをしました」
その結果、地主や近隣住民と良好な関係を築くことができ、境界確定の立ち会いも快く対応してもらえました。夫妻だけで行った残置物の整理は、大変で時間も手間もかかりましたが、後悔はしていないそうです。
「アルバムを見て、夫は涙ぐんでいました。売却活動を通じて、いい供養・親孝行ができたと夫も納得したようです。義母もよくやってくれたと思っているのではないでしょうか」当時のことを振り返るAさんの表情は、穏やかでした。
2019年12月 | ・義母との同居のため住み替えを意識し始める |
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2020年5月 | ・住み替え先が決定する ・住み替え先の売買契約を結ぶ ・住み替え先に引っ越す |
2020年8月 | ・義母が亡くなる |
2020年9月 | ・売却を意識し始める |
2021年6月 | ・訪問査定を受ける ・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ |
2021年7月 | ・購入検討者が現れる |
2021年10月 | ・売買契約を結ぶ ・物件の引き渡し |
まとめ
- 近隣住民から買取や賃貸希望の問い合わせがあった場合は丁寧な対応を心掛ける
- 地主への承諾料など借地権の売却について事前に慣例や相場を調べて対応する
- リフォームして売却か買取か迷ったら、不動産会社にそれぞれの査定をしてもらう
取材・文/内田優子 イラスト/杉崎アチャ