不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

買い替え特約とは?メリット・デメリットと契約時の注意点をわかりやすく解説

買い替え特約とは、自宅の売却と新居購入を進める際、一定の条件を満たした場合に契約を解除できるようにする特約です。住み替えを検討している人にとっては、資金計画やスケジュール調整のリスクを軽減できる便利な仕組みですが、利用する場合は仕組みを正しく理解しておく必要があります。
この記事では、買い替え特約の仕組みや利用される場面、売主として知っておきたいメリット・デメリット、契約時のチェックポイントなどについて、らくだ不動産の執行役員・エージェントの八巻侑司さんにお話を伺いました。

買い替え特約とは?メリット・デメリットと契約時の注意点をわかりやすく解説

記事の目次

買い替え特約とは

買い替え特約は、住み替え時の売却と購入に関わる特約です。まずは仕組みや利用される理由について見ていきましょう。

買い替え特約の仕組み

住まいの買い替えでは、“今の家の売却”と“新しい家の購入”という2つの取引を並行して進めることになります。しかし、売却や購入が想定どおりに進まなければ、資金計画や引っ越しの予定に大きな影響が出る可能性があります。
そこで利用されるのが買い替え特約です。あらかじめ契約書に条件を定めておくことで、その条件に該当した場合は契約を解除できるようになります。
買い替え特約による解除は、一般的に白紙解除として扱われます。白紙解除とは、契約が最初からなかったものとして扱われる解除方法のことです。そのため、通常は受け取った手付金を返還し、違約金も発生しません。
ただし、どのような場合に解除できるのかは契約内容によって異なります。トラブルを防ぐためにも、解除条件や期限を事前に確認しておくことが大切です。

買い替え特約の仕組みのイメージ

買い替え特約が利用される理由

買い替え特約が利用される最大の理由は、住み替えに伴う資金面やスケジュール面のリスクを抑えるためです。
例えば、新居の購入資金を現在の自宅の売却代金でまかなう場合、自宅が予定どおり売れなければ資金計画が成り立たなくなる可能性があります。また、住宅ローンが残っている場合は、自宅の売却が完了しないと新たな住宅ローンを利用できないケースもあります。
住み替えでは、売却と購入の契約が相互に影響し合うことも少なくありません。買い替え特約は、こうした住み替え特有の事情に備えて利用されます。

家の買い替え完全ガイド!タイミング・費用・注意点をわかりやすく解説
住み替えとは?売り先行・買い先行の流れやメリット・デメリット、住み替えの注意点を解説

買い替え特約には「買主側」と「売主側」がある

買い替え特約には、大きく分けて買主側が希望するものと売主側が希望するものがあります。
一般的に買い替え特約といわれる場合、多いのは買主側が希望するケースです。
例えば、買主が自宅を売却して、その売却代金を新居の購入資金に充てる予定の場合、自宅の売却契約が白紙になってしまうと、新居の購入資金を用意できなくなる可能性があります。そのような事態に備えて、購入する物件の売買契約に買い替え特約を付け、自宅の売却が予定どおり進まなかった場合に購入契約を解除できるようにします。
一方、売主側が買い替え特約を希望するケースもあります。ただし、こちらはそれほど一般的ではありません。
らくだ不動産の八巻侑司さんは、売主側が要望する買い替え特約について、「買主側が希望するケースと比べると多くはありません」と説明します。
ただし、「例えば、土地を購入して新築住宅を建築中の場合、ハウスメーカーの倒産や自然災害など、何らかの事情で新居の建築や引き渡しができなくなる可能性もゼロではありません。“その新居”に住み替えられないのなら、今の家を売却する理由もなくなってしまうといったケースもあります。売主側も買い替えを検討している場合、そのような事態に備えて、自宅の売却契約も解除できるよう、売主側が買い替え特約をつけることもあります」(らくだ不動産・八巻さん、以下同)。

買い替え特約は実際にはどのように使われる?

買い替え特約は、実際の取引ではどのように利用されているのでしょうか。実務でよく見られるケースを紹介します。

実務では見通しが立った段階で利用されるケースが多い

買主側・売主側のどちらの買い替え特約であっても、もう一方の契約の見通しが立っていない状態では、相手方に受け入れてもらいにくいのが実情です。
例えば、買主側の買い替え特約で、自宅の売却先が決まっていないにもかかわらず、“自宅が売れなければ購入契約を解除できる”という条件を付けるケースです。このような内容の買い替え特約が認められるケースは多くありません。八巻さんは、「売れるかどうかも分からない状態で契約を進めるのは、売主にとって不確定要素が大きすぎます」と話します。
そのため実務では、自宅の売買契約がすでに成立している、あるいは買い替え先の購入契約が成立しているなど、もう一方の契約に一定の見通しが立った段階で買い替え特約が利用されるのが一般的です。
買い替え特約は、住み替え時のリスクを抑える仕組みではありますが、“とりあえず契約して、うまくいかなければ解除するための制度”ではありません。売却や購入が成立する見込みがあることを前提に、万が一の事態に備えるための仕組みと考えると理解しやすいでしょう。

解除条件と期限を明確にすることも重要

買い替え特約では、どのような場合に解除できるのか(解除条件)、いつまで解除できるのか(期限)も、大事なポイントです。
例えば、“自宅の売買契約が買主の責めに帰すべき事由によらず白紙解除された場合に限り、○月○日(自宅売買の住宅ローン特約の解除期日)までであれば解除できる”というように、どのような事態が起きたときに発動するかと、いつまで解除できるかをセットで明確にしておくことが重要です。
八巻さんも、「期限が曖昧なままでは、相手方はいつ契約が白紙になるか分からず、不安定な状態が続いてしまいます。買主の都合でいつまでも解除できる内容ではなく、解除条件や期限を明確にしておくことが大切です」と話します。

買い替え特約が認められやすい条件

ここまで解説してきたように、買い替え特約が認められやすいのは次のようなケースです。

  • 自宅の売買契約や買い替え先の購入契約が成立している
  • 売却や購入の見通しがある程度立っている
  • 解除条件や期限が明確に定められている

つまり、相手方にとって不確定要素が少なく、受け入れられる合理的な条件になっているかどうかがポイントになります。

売主が買い替え特約を受け入れるメリット

ここまで見てきたように、買い替え特約には買主側と売主側があります。ただし実際の取引では、買主側が希望するケースの方が一般的です。
買主側が要望する買い替え特約は、基本的に買主側の事情に配慮するための仕組みです。そのため、買い替え特約そのものが売主に利益をもたらすわけではありません。ただし、条件によっては売主にとってプラスに働くこともあります。

買主との交渉を有利に進められることがある

買い替え特約は、売主から見れば契約が白紙になる可能性を受け入れる条件です。そのため、「買い替え特約を受け入れる代わりに価格は下げない」といった交渉がしやすくなる場合があります。
また、買い替え特約を希望する買主の多くは住み替えを進めている人です。現在の住まいの引き渡し日が決まっているなど、購入時期に制約を抱えているケースもあり、条件に合う物件が見つかれば購入を優先することもあります。
もちろん高値売却が保証されるわけではありません。しかし、買主の事情や交渉次第では、希望価格に近い条件で売却できるケースもあるでしょう。

価格交渉のイメージ

(画像/PIXTA)

売主が知っておきたい買い替え特約のデメリット

買い替え特約を受け入れることは、そのほかの条件面で優位に立てることがあります。しかし、売主にとっては契約が白紙になる可能性を受け入れることであり、メリットよりもデメリットやリスクの方が上回ると感じるケースも少なくありません。
買い替え特約を検討する際は、どのようなリスクがあるのかを理解した上で判断することが大切です。

デメリットのイメージ

(画像/PIXTA)

契約後に白紙解除されるリスクがある

買い替え特約を受け入れる最大のデメリットは、契約後に取引が白紙になる可能性があることです。
通常の売買契約であれば、契約が成立した時点で売却に向けた準備を進められます。しかし、買い替え特約が付いている場合は、解除条件に該当すると契約が白紙になる可能性があります。白紙解除になると、契約は最初からなかったものとして扱われるため、受け取っていた手付金は返還しなければなりません。違約金も発生しないのが一般的です。
「万が一のときには契約が白紙になる可能性があることを、事前に理解した上で進めることが大切です」と八巻さんは話します。

ほかの買主を逃してしまう可能性がある

買い替え特約によって契約が白紙解除になると、結果として売却機会を失ってしまう可能性があります。
売主としては、契約を締結した時点で売却の目処が立ったと考えます。しかし、買主側の事情によって契約が解除された場合、その間に別の買主と成約できていた可能性もあります。
もちろん、実際にほかの買主が現れていたかどうかは分かりません。しかし、買い替え特約には、契約解除そのものだけでなく、本来得られたかもしれない売却機会を失うリスクもあることを理解しておきましょう。

売却スケジュールが長期化する

契約が白紙になった場合は、売主は再び買主探しからはじめることになります。
特に住み替え先への入居時期が決まっている場合や、売却代金を次の住まいの購入資金に充てる予定がある場合は注意が必要です。契約解除によって売却時期がずれ込めば、資金計画や住み替えスケジュールにも影響が及ぶ可能性があります。

買い替え特約付きの申し込みを受けたときの判断ポイント

買い替え特約付きの申し込みを受けた場合、買主側の状況や解除条件の内容などによって、受け入れるべきかどうかの判断は変わります。ここでは、売主が買い替え特約付きの申し込みを検討する際に押さえておきたいポイントを解説します。

買い替え特約付きの申し込みを検討するときの判断ポイント

☑ 買主の自宅売却はどの段階まで進んでいるか

☑ 売買契約が白紙になる可能性はどの程度あるか

☑ 買い替え特約はどのような場合に発動するのか

☑ 買い替え特約による解除期限はいつまでか

☑ そのリスクを踏まえても受け入れられる条件か

ポイント1:買主の自宅売却はどの段階まで進んでいるか

まず確認したいのは、買主の自宅売却がどこまで進んでいるかです。すでに売買契約が成立しているのか、まだ販売活動中なのかによって、買い替え特約を受け入れるリスクは変わります。八巻さんによると、買主の自宅の売買契約書の写しを見せてもらって確認するケースも少なくないそうです。

ポイント2:売買契約が白紙になる可能性はどの程度あるか

買主の自宅が契約済みであっても、その契約が確実に成立するとは限りません。重要なのは、“契約済みかどうか”ではなく、“どの程度成立する見込みがあるのか”を見極めることです。
例えば、住宅ローン審査の結果待ちの状態なのか、すでに承認を取得しているのかによってもリスクは変わります。契約の進捗だけでなく、売買契約が白紙になる可能性がどの程度残っているのかを確認しておきましょう。

ポイント3:買い替え特約はどのような場合に発動するのか

買い替え特約を受け入れる際は、どのような場合に契約を解除できるのかを確認することが重要です。例えば、住宅ローン特約による解除に限るのか、買主の責任ではない理由による解除全般を含むのかによって、売主が負うリスクは変わります。
特約が発動する条件が広いほど、契約が白紙になる可能性は高くなるため、その範囲を事前に押さえておきましょう。

ポイント4:買い替え特約による解除期限はいつまでか

買い替え特約によって解除できる期限も必ず確認しておきたいポイントです。期限が長すぎると、売主は契約が白紙になる可能性を抱えたまま待つことになります。いつまで白紙解除の可能性があるのかを明確にした上で判断しましょう。

ポイント5:そのリスクを踏まえても受け入れられる条件か

売主側に買い替え特約を受け入れる義務はありません。内容によっては、申し込みを見送るという判断もあります。
ただし、ここまで紹介したポイントのいずれかに不安要素があるからといって、直ちに申し込みを断るべきというわけではありません。重要なのは、その内容を理解した上で、自分が受け入れられるリスクかどうかを判断することです。
例えば、解除条件が広すぎる場合や、買主の売却状況に不安がある場合は慎重に検討する必要があります。物件への反響状況や価格条件も含めて、特約の内容やリスクを総合的に判断しましょう。

選択のイメージ

リスクも理解した上で判断することが大切(画像/PIXTA)

自分が買主として買い替え特約を利用するときのポイント

ここまでは売主側の視点から、買い替え特約の仕組みや判断ポイントを解説してきました。
一方で、自宅を売却しながら新居を購入する場合は、自分自身が買主として買い替え特約を希望するケースもあります。
自身が買主として買い替え特約を希望する際は、次の点を意識しましょう。

  • 自宅の売却状況や契約内容を正確に開示する
  • 買い替え特約の条件や期限を明確にする
  • できるだけ不確定要素を減らした状態で申し込む
  • 住み替えや買い替え特約の実績が豊富な担当者に相談する

八巻さんが特に強調するのが、担当者選びの重要性です。「買い替え特約は契約内容の組み立て方が大切です。経験のある担当者に相談しながら進めた方が安心です」と話します。住み替えや買い替え特約の取り扱い実績がある担当者であれば、状況に応じた適切なアドバイスも期待できるでしょう。

買い替え特約に関するよくある質問

ここまで買い替え特約の仕組みやメリット・デメリット、利用時の注意点について解説してきました。
最後に、買い替え特約に関するよくある質問にお答えしていきます。

不動産売買契約書のイメージ

(画像/PIXTA)

買い替え特約の期限はどれくらいですか?

買い替え特約の期限はケースによって異なります。「自宅の売却契約がすでに成立していて、例えば住宅ローン特約による白紙解除リスクのみが残っている状態であれば、1カ月〜1カ月半程度で設定されることも少なくありません。ただし、期限は契約状況次第でさまざまです」

契約が白紙になった場合、手付金はどうなりますか?

「買い替え特約による白紙解除であれば、通常、手付金は返還され、違約金も発生しません」というように、買い替え特約に基づいて契約が白紙解除になった場合、契約は最初からなかったものとして扱われます。そのため、買主が支払った手付金は返還されるのが一般的で、違約金も発生しません。
一方、買い替え特約の期限が過ぎた後に買主都合で契約を解除する場合は、通常の手付解除や違約解除のルールが適用されます。状況によっては手付金を放棄せざるを得なかったり、違約金が発生したりすることもあります。
買い替え特約による白紙解除と通常の契約解除では、手付金や違約金の扱いが異なる点に注意しましょう。

不動産の売買契約を解除する方法。契約成立後の解除(キャンセル)の条件と違約金の額は?

売主側が買い替え特約を付けると売れにくくなりますか?

「売主側の買い替え特約を付けたからといって、それだけを理由に売れなくなるわけではありません」と八巻さん。ただし、買主にとっては契約が白紙になるリスクが生じるため、条件によっては敬遠される可能性はあります。
そのため、売主側の買い替え特約は、買い替え先の契約が成立しているなど、解除条件を限定した上で利用されるのが一般的です。

買い替え特約と住宅ローン特約の違いは何ですか?

どちらも一定の条件を満たした場合に契約を解除できる特約ですが、解除できる理由が異なります。
買い替え特約は、自宅の売却や買い替え先の購入が予定どおり進まなかった場合に備えるための特約です。一方、住宅ローン特約は、買主が住宅ローン審査に通らなかった場合に契約を解除できる特約を指します。
どちらも特約に基づいて解除される場合は、一般的に白紙解除として扱われます。そのため、手付金は返還され、違約金も発生しません。ただし、解除できる条件や目的は異なるため、それぞれの内容を確認しておくことが大切です。

【まとめ】買い替え特約は仕組みとリスクを理解して活用しよう

買い替え特約は、自宅の売却と新居の購入を並行して進める人にとって、有効なリスク対策となる制度です。一方で、契約が白紙になる可能性があるため、売主・買主の双方がリスクや条件を十分に理解した上で利用する必要があります。
特に買主側が希望する買い替え特約は、売主にとって契約解除のリスクを伴います。買い替え特約付きの申し込みを受けた場合は、購入希望者の売却状況や解除条件、期限などを慎重に確認することが重要です。また、自分が買主として利用する場合は、できるだけ不確定要素を減らし、売主に十分な情報を開示した上で申し込むことが大切です。
買い替え特約を検討する際は、住み替えや買い替え特約の取り扱い実績が豊富な不動産会社に相談しながら進めていきましょう。

●取材協力/八巻侑司さん
らくだ不動産 執行役員、エージェント
大手不動産仲介会社での11年の経験を経て、らくだ不動産の「五方良し」の理念に共感し参画。 売買の経験は土地・戸建・区分・収益不動産とさまざまなジャンルを扱う。都内・神奈川県を中心に450件以上の取引実績がある。宅地建物取引士、JSHI公認ホームインスペクター。
●構成・取材・文/島田美那子
ページトップへ戻る