土地や戸建て、マンションを購入した場合にかかわってくる固定資産税。土地にかかる税額を出すもとになるのが「固定資産税路線価」です。固定資産税路線価は、誰がどうやって決めるものなのでしょう? 固定資産税評価額の計算方法や固定資産税路線価についての基本的な知識を解説します。
土地や建物など不動産を所有していると、毎年、固定資産税という地方税を納めることになります。土地にかかる固定資産税の算出基準になるのが固定資産税路線価です。固定資産税路線価から固定資産税評価額が求められ、税額が算出されます。
路線価というのは「道路に面した土地の1m2当たりの評価額」のことをいいます。実は「路線価」と呼ばれるものには相続税や贈与税の税額算定の基準になる「相続税路線価」というものもあり、一般的に「路線価」というと、相続税路線価を指します。
このほか、土地の価格は、その価格を何に利用するかによって基準が違うため、複数の種類があり、とてもまぎらわしいもの。今回は、固定資産税路線価について解説しますが、まずは、いろいろな土地の価格について整理しておきましょう。
●時価(実勢価格)
一般の人や自治体などが土地を売ったり、買ったりする際に付けられる価格です。
価格:取引によって異なる
●公示地価(地価公示価格)
国土交通省が公示する標準地の価格。一般的な土地取り引きの指標、公共事業用地の取得価格算定の基準になります。
調査時点:毎年1月1日
発表:毎年3月
価格:他の地価を決める際の基準になる公的な指標となる価格
●都道府県地価調査価格
都道府県知事が公示する標準地の価格。公示地価の補完、地方公共団体などの公共事業用地の取得価格算定の基準となります。
調査時点:毎年7月1日
発表:毎年9月
価格:公示地価とほぼ同じ
●路線価(相続税路線価)
国税庁が発表する価格。相続税や贈与税にかかわる土地の評価額を出す際に用いられます。
調査時点:毎年1月1日
発表:毎年7月
価格:公示地価の80%程度
●固定資産税路線価
市町村(東京23区の場合は都)が算出する価格。この固定資産税路線価から求められる固定資産税評価額が、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の算定に用いられます。
調査時点:基準年(3年ごと)の1月1日
発表:基準年の4月ごろ
価格:公示地価の70%程度
相続税路線価についてもっと詳しく
「路線価とは?マップの見方や土地の評価額の出し方を紹介」
固定資産税路線価はどのように決められるのでしょう。不動産鑑定士の藤田絵理子さんに聞きました。
「固定資産評価額は総務大臣が定めた固定資産評価基準により決定されます。評価方法には市街地宅地評価法(路線価方式)とその他の宅地評価法があり、市街地宅地評価法(路線価方式)については、固定資産税路線価をもとに画地計算や所要の補正を行うことにより算出します。
この路線価については、3年に1度、市町村から委嘱を受けた不動産鑑定士が、標準宅地の価格の鑑定を行い、その結果をもとに各市町村が決めるのが一般的です」(以下、藤田さん)
毎年評価され公示される公示地価や相続税路線価と違い、固定資産税路線価の評価は3年に1度。この3年の間に、土地の価値が上がったり下がったりした場合はどうなるのでしょうか。
「固定資産税評価額は地方税法上、固定資産税路線価を評価した基準年度から3年間据え置くことになっています。しかしながら、地価は常に変動の過程にあります。
地価が上昇している状況であれば、価格の据え置きは納税者の不利益にはなりませんが、地価が下落している状況であれば納税者の不利益が生じるので、地価下落をできる限り評価額に反映させるため、市町村の判断により簡易方法で修正を加えることができます。これを時点修正といい、都道府県地価調査や不動産鑑定士等を活用して算出します」
固定資産税路線価は多くの市町村のホームページで公開されているため、誰でも調べることができます。東京23区の場合は東京都主税局のホームページで基準年度の路線価を地図や町名から探すことができます。
ホームページで公開されていない市町村の場合でも、市税事務所や町役場、村役場の担当部署などで閲覧ができます。まずは、調べたい市町村のホームページで「固定資産税路線価」などのワードで検索してみるといいでしょう。
東京23区の固定資産税路線価は東京都主税局のホームページで確認できる
路線価公開(23区)|東京都主税局
そのほか、一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」でも調べることができます。固定資産税路線価のほかに相続税路線価、地価公示価格、都道府県地価調査価格も掲載されています。
固定資産税路線価図は、市町村によってフォーマットが違っています。とはいえ、地図上の道路に路線と路線価が記載されているのは同じです。
例えば、下の「固定資産税路線価図の例」を見てみましょう。道路上に書かれた矢印が路線で、路線上やすぐそばに書かれた数字が、その道路が面している土地の1m2当たりの価格、つまり固定資産税路線価ということになります。下図では土地Aの固定資産税路線価は18万5000円です。
すでに取得している土地の場合、1月1日時点での所有者に固定資産税の納税通知書が送られてきます。その通知書に固定資産税評価額が記載されています。
固定資産税評価額がわかれば、その不動産の固定資産税額を知ることができます。原則、固定資産税は下記の計算式で算出されます。
固定資産税評価額 × 1.4%
固定資産税評価額についてもっと詳しく
→『固定資産税評価額とは?知っておきたい計算方法や調べ方』
例えば、購入したい土地がある場合、事前に固定資産税評価額がわかれば、取得後に毎年納める税額がいくらになりそうか知ることができます。では、固定資産税路線価図で固定資産税路線価を調べれば、自分でその土地の評価額を計算できるものでしょうか。
固定資産税路線価は1m2当たりの価格。「路線価が10万円で、土地が200m2なら10万円×200m2だから、固定資産税評価額は2000万円」というような単純な計算では算出することができないケースがほとんどです。
「固定資産税評価額を出す際には、土地が面している道路の本数や土地の形などを勘案して補正がかけられます。土地はきれいな正方形や長方形とは限りません。区画の奥まった場所にあって道路とは細い通路でつながっている旗竿地と呼ばれる土地や、台形や多角形などの不整形の土地もあり、計算方法は複雑です。
そのほか、『高圧線の下にあって建物が建てられない』『急な傾斜地になっている』など、その土地の実情によって調整され評価額が低くなることも。どのような調整がかけられるかはその土地で違ってくるため、自分で評価額を出すのは難しいといえます」
固定資産税路線価がわかっても、専門知識のない人がその価格から固定資産税評価額を出すのは困難。概算や目安を知りたい場合は、不動産鑑定士などの専門家に相談するといいでしょう。
この記事は、2022年3月17日現在の情報です
固定資産税路線価は固定資産評価額の算出に用いられる土地の価格
3年に1度、市町村(東京23区は都)によって決められる
固定資産税路線価は公開されていて誰でも見ることができる
固定資産税路線価から土地の評価額の目安を知りたい場合は専門家に相談を