路線価とは?マップの見方や土地の評価額の出し方を紹介

最終更新日 2022年09月28日
路線価とは?マップの見方や土地の評価額の出し方を紹介

土地の贈与や相続が発生するとき、課税のための基準になるのが路線価。路線価を調べて、その数字をもとに土地の評価額(相続税評価額)を出すことができます。自分で土地の評価額を算出することもできますが、その計算方法はとても複雑。専門家に依頼するのが一般的です。そこで、この記事では路線価図(マップ)の見方を知っておきましょう。また、土地の評価額の計算方法の基本もご紹介します。

路線価とは?土地を評価する公的な「価格」のひとつ

土地には「定価」というものがありません。土地の価格は、その価格を何に利用するかによって基準が異なるため、複数の価格が存在します。路線価もそのひとつです。まずは路線価について簡単に説明します。

路線価

毎年1月1日を評価時点として、毎年7月1日に発表される価格。不動産鑑定士など専門家による鑑定評価額、精通者の意見価格などをもとに税務署(国税庁)が決めるもので、地価公示価格の80%程度が目安。相続税や贈与税にかかわる土地の評価額を出す際に用いられます。土地が面している道路の路線価をもとに、土地の評価額を算出します。 路線価は1m2当たりの価額ですから、路線価10万円の道路に面している200m2の土地は、路線価10万円×面積200m2=評価額2000万円となります。

では、次に複数ある土地の価格をまずは把握しておきましょう。

時価

実際に売買されるときに付けられる価格。一般の人や自治体などが土地を売ったり買ったりする際の値段です。この価格は、周辺で取引された実際の売買価格をもとに、地価公示価格や都道府県地価調査価格を参考にして、土地の形や周辺環境、将来性などの評価を加味して決められます。なお、売る人、買う人の交渉によって実際の売買価格は変動しますので、周辺での売買価格が必ずしも相場と一致するとは限らないことに注意が必要です。

地価公示価格

毎年3月下旬に発表される、国土交通省が公示する毎年1月1日時点での標準地の価格。一般的な土地の売買の価格を決める際の参考にされます。

都道府県地価調査価格

毎年9月後半頃に発表される、都道府県知事が公示する毎年7月1日時点での標準地の価格。一般的な土地の売買の価格を決める際の参考にされます。

固定資産税評価額

市町村(東京23区の場合は都)が3年ごとに算出する価格。地価公示価格の70 %程度です。

このように複数ある土地の価格や評価額は、それぞれ何に使われるのかを、次にご紹介しましょう。

土地を調べるイメージ
(画像/PIXTA)

土地の価格や評価額はそれぞれ何に使われる?

複数ある土地の価格は、土地の売買や、課税の際に使われます。

実際の売買

時価が土地の売買取り引きによって生まれる価格です。

取り引きの目安

売買の際の価格算定の目安になるのが地価公示価格と都道府県地価調査価格。地価公示価格は一般的な土地取り引きの指標や公共事業用地の取得価格算定の基準に使われます。都道府県地価調査価格は公示価格を補完するほか、地方公共団体などの公共事業用地の取得価格算定の基準となります。

課税の際の目安

課税の際に税額算定に利用されるのが固定資産税評価額と路線価。固定資産税評価額は固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の算定に利用されます。路線価は相続税や贈与税が課税される際の財産の評価に使われます。

■土地の価格は何に使われる?
地価の種類 何に使われるのか
時価 実際の売買取り引きの価格や裁判などの時価証明
地価公示価格 一般的な土地取り引きの指標、公共事業用地の取得価格算定の基準
都道府県地価調査価格 公示価格の補完、地方公共団体などの公共事業用地の取得価格算定の基準
固定資産税評価額 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の算定に利用
路線価 相続税や贈与税の財産を評価

土地の評価額を調べてみよう

土地の評価額の調べ方は路線価方式と倍率方式の2つ

土地が面している道路の路線価を使用して、相続税や贈与税にかかわる評価額を出すのが「路線価方式」といわれる方法です。

路線価が定められていない郊外など区域で評価額を調べる場合は、路線価ではなく「固定資産税評価額と評価倍率表」を使って調べる「倍率方式」が用いられます。

マップで路線価を調べてみよう

路線価方式で土地の評価額を出すには、まず、路線価を知ることが必要です。

路線価は、国税庁のホームページ内にある「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で誰でも調べることができます。また、一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」も、路線価の発表から数カ月後の掲載というタイムラグはありますが、路線価のほかに固定資産税路線価、地価公示価格、都道府県地価調査価格もまとめられていて便利です。

この記事では、路線価の検索方法や計算方法の基本を国税庁のホームページをもとに説明します。検索の方法は簡単です。また、トップページの左にある「このページの使い方」をクリックすると、路線価図の検索方法や説明などが詳しく書かれているので参考にするといいでしょう。

(1)国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」にパソコンやスマホでアクセス

(2)表示されたマップから路線価を調べたい都道府県を選択

(3)路線価方式で評価額を出す場合は「路線価図」を選択

(4)土地のある市区町村を選択。市区町村名がない場合は路線価が設定されていない区域ということ

(5)地名をもとに路線価図ページ番号を選択すると路線価図が表示される。ページ番号が複数ある場合はどれかを選んでみて、違った場合はそのページに表示されている隣接する路線価図から探す

路線価図の基本の見方

調調べたい土地のある路線価図が表示されたら、地図内に記載された記号や数字を確認します。

路線価や地区、借地割合などが記載された実際の路線価図
マップに記号や数字が記載された路線価図(国税庁ホームページより)。©ZENRIN

数字が路線価。単位は千円

路線価図の道路上に数字やアルファベットが書かれています。また、数字やアルファベットを囲む円や楕円、多角形もあります。これらの意味を知ることが、土地の路線価を知る最初の関門です。

数字は路線価を示すもの。1m2当たりの価額が千円単位で表示されています。例えば数字が「6960」なら、1m2当たり6960千円、つまり、路線価は696万円ということになります。

路線価図に記載されている記号
路線価図内に記載されている記号

数字の隣のアルファベットは借地権割合

記号の中の数字の隣にはA~Gのアルファベットがあります。これは借地権割合を表すもので、それぞれの割合がマップの上に一覧表で示されています。借地権割合は、土地が借地の場合の評価額算出に使用します。

借地権とは土地を借りる権利のこと。家は自分で所有していても、土地は地主さんから借りているケースもあるでしょう。借地権についての詳細や
借地権を相続するときのポイントは、下の記事で解説しています。

記号の枠の形や有無で地区をあらわす

数字やアルファベットを囲む枠はさまざま。枠のない場合もあります。これらはその道路のある地区の種類をあらわすもの。例えば、楕円は道路に面している土地全域が高度商業地区。楕円の上下が黒塗りになっている場合は道路沿いが高度商業地区ということ。枠がなく数字とアルファベットのみの場合は普通住宅地区であることを示しています。マップの上に凡例が記載されているので参考にしましょう。

路線価図に記載されている記号の説明
路線価図に記載されている記号

調べたい土地のある路線価図が表示されたら、地図内に記載された記号や数字を確認します。

路線価や地区、借地割合などが記載された実際の路線価図
マップに記号や数字が記載された路線価図(国税庁ホームページより)。©ZENRIN

数字が路線価。単位は千円

路線価図の道路上に数字やアルファベットが書かれています。また、数字やアルファベットを囲む円や楕円、多角形もあります。これらの意味を知ることが、土地の路線価を知る最初の関門です。

数字は路線価を示すもの。1m2当たりの価額が千円単位で表示されています。例えば数字が「6960」なら、1m2当たり6960千円、つまり、路線価は696万円ということになります。

路線価図に記載されている記号
路線価図内に記載されている記号

●数字の隣のアルファベットは借地権割合
記号の中の数字の隣にはA~Gのアルファベットがあります。これは借地権割合を表すもので、それぞれの割合がマップの上に一覧表で示されています。借地権割合は、土地が借地の場合の評価額算出に使用します。

借地権とは土地を借りる権利のこと。家は自分で所有していても、土地は地主さんから借りているケースもあるでしょう。借地権についての詳細や
借地権を相続するときのポイントは、下の記事で解説しています。

記号の枠の形や有無で地区をあらわす

数字やアルファベットを囲む枠はさまざま。枠のない場合もあります。これらはその道路のある地区の種類をあらわすもの。例えば、楕円は道路に面している土地全域が高度商業地区。楕円の上下が黒塗りになっている場合は道路沿いが高度商業地区ということ。枠がなく数字とアルファベットのみの場合は普通住宅地区であることを示しています。マップの上に凡例が記載されているので参考にしましょう。

路線価図に記載されている記号の説明
路線価図に記載されている記号

路線価をもとに土地評価額を出してみる

路線価がわかったら、その道路に面している土地の評価額を算出することが可能です。土地は、その形状や、面している道路の本数などの条件が土地評価額に影響します。正確な評価額を出すためには、単に土地面積に路線価を乗じるのではなく、奥行価格補正率や側方路線影響加算率、二方路線影響加算率などで補正されます。各種補正率は国税庁のホームページにある「奥行価格補正率表」で見ることができます。

ただし、専門的な知識がない人が評価額を出すことはとても難しいと、不動産鑑定士の河野栄一さん。

「土地の形が四角形の単純な形で、評価額も概算でよければいいのですが、現実的にはきれいな四角形の土地というのはそう多くはありません。間口と奥行きのバランスや、境界線の凹凸などさまざまな条件を加味して土地評価は行われます。そのため、知識をもたない人が評価額を正確に出すことは難しいと思います。誤った算出方法で土地評価額を出せば、土地面積にもよりますが、多額の差異が生ずるでしょう。それでは算出する意味がありません。評価額を出す目的にもよりますが、宅建士、税理士、不動産鑑定士といった専門家に依頼するのが無難です」(河野さん)

自分で算出するのは難しい土地評価額。この記事では、比較的シンプルな土地を例に、路線価方式による土地評価額の計算をご紹介することにします。

【case1】路線価220Dの路線(道路)に面している200m2の土地

路線価220Dの路線(道路)に面している200平米の土地

上の図のような奥行きが40mある長方形の土地。普通商業・併用住宅地区にあり、路線価22万円の場合、土地評価額は路線価 × 奥行価格補正率 × 土地面積で求められ、相続税や贈与税を算出する際の土地評価額は4092万円となります。

借地権が設定されている土地に建物を建てている場合、借地権も相続税や贈与税の課税対象となります。自用地(所有者以外に使用する権利がない土地)で算出した土地評価額にさらに借地権割合(D=60%)を乗じて出た数字が借用地の場合の土地評価額になります。

・自用地の場合
路線価 × 奥行距離40mに応ずる奥行価格補正率 × 土地面 = 土地評価額
22万円 × 0.93 × 200m2 = 4092万円

・借用地の場合
路線価 × 奥行距離40mに応ずる奥行価格補正率 × 土地面積 × 借地権割合 = 土地評価額
22万円 × 0.93 × 200m2 × 60% = 2455.2万円

【case2】3本の道路に面している200m2の土地

3本の道路に面している200平米の土地

上の図のように複数の道路に面した土地(普通商業・併用住宅地区)の場合、奥行価格補正率のほか、側方路線影響加算額率、二方路線影響加算率で補正・計算を行います。

その土地の接する路線価に奥行価格補正率を乗じて出した金額が高い方の路線が、原則として正面路線となります。
このケースでは、土地に接する道路の路線価がそれぞれ300(30万円)、220(22万円)、200(20万円)です。
それぞれ奥行価格補正率を乗じると、一番高いのが左側の路線の26.7万円(図の上側の路線は20.46万円、図の右側の路線は17.8万円)なので、左側の路線が正面路線となります。

【正面路線価の奥行価格補正】
正面路線価 × 奥行距離50mに応ずる奥行価格補正率 = A
30万円 × 0.89 = 26.7万円

【側方路線影響加算額の計算】
側方路線価 × 奥行距離40mに応ずる奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率 = B
22万円 × 0.93 × 0.08 = 1.6368万円

【二方路線影響加算額の計算】
二方路線価 × 奥行距離50mに応ずる奥行価格補正率 × 二方路線影響加算率 = C
20万円 × 0.89 × 0.05 = 0.89万円

  ▼  ▼  ▼  ▼

評価対象地の1m2当たりの価額
A 26.7万円 + B 1.6368万円 + C 0.89万円 = D 29.2268万円

  ▼  ▼  ▼  ▼
評価対象地の評価額
D 29.2268万円 × 土地面積200m2 = 5845.36万円

土地の形状や道路の条件などによって、評価額の計算方法は複雑になります。国税庁のホームページ(路線価方式による宅地の評価)を参考にしてみるといいでしょう。

路線価が設定されていない倍率区域の場合は?

土地評価額を調べようとしている土地に路線価が設定されていないことがあります。この場合は、固定資産税評価額と評価倍率表から調べることができます。

固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。また、評価倍率表は路線価を調べるときに使った国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」でわかります。計算式は下記のとおりです。

固定資産税評価額 × 固定資産税評価額に乗ずる倍率等=倍率による土地評価額

土地の評価額が時価と大きく離れることはある?

土地の時価が下がるのはどんなとき?

相続税や贈与税にかかわる財産の評価は、原則的には時価で評価されます。例えば、1000万円の預貯金は1000万円の財産として評価されます。しかし、家や土地などの不動産だけは例外で、土地の場合は路線価による土地評価額が使われています。路線価は地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度が一般的。つまり、相続税や贈与税は時価よりも路線価による土地評価額が使われるほうが、税額が抑えられることになります。

しかし、土地の時価は、売る人と買う人の受給バランスや環境の変化などで大きく変化することがあります。

例えば、極端に狭い宅地で間口も狭い、近くに騒音などを出す嫌悪施設ができてしまったなど当事者にとって利用価値が低い土地になった場合、土地の時価が下がることがあります。

相続税や贈与税の算出の際、評価額が時価よりも高い場合は?

土地の時価が大幅に下がっているのに、相続や贈与の際、税額が時価よりも高い評価額で算出されると、納税する側としては不満に感じるでしょう。実は、このような場合には、路線価による土地評価額で申告せずに、時価やその他の方法での土地評価額も認められています。

また、路線価等が時価を上回る状況が確認された地域では、路線価等に係る地価変動補正率を使って路線価の補正が行われます。ちなみに、2020年中に路線価などが時価を上回ることで、相続等で取得した土地に係る路線価などの補正がされたケースは、大阪市中央区の16地点で見られました。

「路線価が時価を上回るというのは頻繁にあることではありません。路線価は時価の80%程度に設定され、この20%のバッファで時価の変動を吸収しています。1年で時価が2割以上も上がることはめったにありません。2020年の大阪での大幅な時価の下落はコロナ禍の影響によるもの。時価の変動はさまざまな要因がありますが、2020年は観光客が減り、売り上げに大打撃を受けた地点の時価が下がっています」(河野さん)

通常は時価よりも低い評価額で算出される相続税や贈与税ですが、もしも、時価の下落などがある場合は、不動産鑑定士や税理士などの専門家や最寄りの税務署に相談するといいでしょう。

相続や贈与などで土地評価額を確認する機会が発生した場合、実際に算出するのは専門家であっても、路線価図の見方や土地評価額の計算の基本を知っておくと専門家からの説明も理解しやすくなります。評価額を知りたい土地があったら、まずは路線価が設定されているかどうか、国税庁のホームページで調べてみるところから始めてみましょう。

この記事は、2022年3月17日現在の情報です

まとめ

路線価とは土地の価格を評価する公的なものさしのひとつ

路線価は国税庁のホームページなどで調べることができる

路線価をもとに土地評価額を算出する方法を路線価方式という

路線価が設定されていない区域は固定資産税評価額と評価倍率表を使う倍率方式で土地評価額が算出される

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取材・文/田方みき 
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