厚生年金と国民年金の統合は簡単ではない。年金制度の歴史と現状をおさらい

昨年あたりから、「厚生年金と国民年金の積立金の統合の検討が始まった」とか、「2025年の年金制度改正に向けて厚生年金と国民年金の統合案が出てきている」などという記事が、一部の新聞紙上やインターネット上で見られるようになりました。

さらに、それらの記事を受けて、「会社員などの厚生年金加入者の年金積立金が、自営業者や専業主婦などの国民年金加入者に渡ってしまい、老後の年金が大きく減らされてしまう」などと不安を煽るような記事も出ています。

しかし、日本の年金制度をきちんと理解している人であれば、積立金の統合の可能性はゼロではないにしても、厚生年金と国民年金が統合されるというのは、年金制度を根本からつくり直すような大改正になるので、そう簡単にはいかないだろうし、もしこれが事実なら、もっと大きなニュースになるはずだから、信憑性に欠ける記事だと判断できるでしょう。

なぜそう思うのか。
それは、日本の年金制度がどのようにつくられ、どのように改正されながら現在のかたちになったのかを知るとわかります。そして、日本の年金財政についても、正しく知ることで、いたずらに不安を感じる必要がないこともわかります。
今回は、誰もが知っておくべき日本の年金制度の歴史と現状をわかりやすくまとめます。

すべての人が加入できる日本の年金制度。成り立ちの流れをおさらい

日本の年金制度は、その昔、恩給の制度から始まったと考えられていて、その後、公務員のための共済年金へと変化し、昭和初期には会社員などを対象とする労働者年金が誕生し、その後、厚生年金へと改称されます。

第2次世界大戦後、公務員には共済年金、会社員には厚生年金がありましたが、自営業者等には年金制度がなかったので、1961(昭和36)年に自営業者等を対象とする国民年金がスタートします。公務員は共済年金、会社員は厚生年金、自営業者等は国民年金と、すべての人がいずれかの年金に加入できるようになり、「国民皆年金が実現した」と当時言われました

1961(昭和36)年に国民年金がスタートすることで、すべての人が年金に加入できるようになった(図制作/SUUMO編集部)

しかしその後、「同じ日本の国民で制度が異なるのはよくない、年金は一元化すべきだ」という意見が出始め、1986(昭和61)年に年金制度の一元化に向けた大改正が行われます。

それまで任意加入だった専業主婦にも国民年金の加入を義務付け、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する基礎年金と位置付けたのです。厚生年金や共済年金は、その上乗せとして給付されるかたちになりました。また、年金の支給開始年齢を将来的に65歳に統一することも決められました。

1986(昭和61)年、任意加入だった専業主婦にも国民年金の加入が義務付けられた(図制作/SUUMO編集部)

そして、2015(平成27)年には、「被用者年金」と総称される厚生年金と共済年金の統合が行われ、現在のかたちになります。

2015(平成27)年、厚生年金と共済年金が統合された(図制作/SUUMO編集部)

下の図は、2019年3月末現在の各加入者数の構成です。厚生年金の上に乗っているのは、いわゆる「企業年金」と総称されるもので、これは勤務先の企業等によって制度の有無や、制度内容が異なります。また、国民年金基金やiDeCoは任意加入の制度でもあり、「私的年金」と総称されます。

※数値は、2019(平成31)年3月末現在
※1 第2号被保険者等とは、厚生年金被保険者のことをいう(第2号被保険者のほか、65歳以上で老齢、または、退職を支給事由とする年金給付の受給権を有する者を含む)
※2 20~65歳未満人口は、6965万人。人口推計(2018年9月調べ)
(出展/厚生労働省)

ざっくりと日本の年金制度の歴史をまとめましたが、この図を見てもわかるとおり、会社員や公務員などの厚生年金加入者も、国民年金には加入していて、その上乗せとして報酬に比例する厚生年金があるというイメージです。

年金制度は言われているほどひっ迫していない?!

そもそも国民年金と厚生年金を統合するというのは、厚生年金と共済年金を統合するのとは次元が違います。国民年金は、保険料も年金額も収入による違いがありませんが、厚生年金は報酬比例が基本なので、根本的に違うわけです。

もし本当に国民年金と厚生年金を統合するような話になるなら、年金制度を根本から見直した1986(昭和61)年の大改正と同レベル、もしくはそれ以上の大改革になるはずです。

厚生年金と国民年金の年金積立金を統合するだけであれば可能かもしれませんが、制度そのものの統合は、制度の公平性を維持しながら行うのはかなり難しいのではないかと思われます。

だからこそ、厚生年金加入者の立場から見ると、今後も少子高齢化が進み、経済の低迷が続くと、年金財政はますますひっ迫していく。そのうえ国民年金と統合するなんて、自分たちの年金はどうなってしまうのかと不安を感じてしまうのでしょう。

しかし、5年ごとに行われている年金制度の財政検証の最新結果(2019(令和元)年版)を見ると、年金財政は一般に言われるほどひっ迫していないことがわかります。

今後概ね100年間の公的年金の財源(一時金換算)。 出所:厚生労働省2019(令和元)年財政検証関連資料より (前提:物価上昇2%、対物価賃金上昇率1.6%、対賃金運用利回り1.4%、人口中位予想)(図制作/SUUMO編集部)

そもそも日本の年金制度は、「賦課方式」が採用されています。現役世代が支払った保険料が、高齢世代の年金給付に充てられているのです。上の図にもあるとおり、年金給付の70%以上が保険料で賄われています。これが世代間扶養とも呼ばれる理由です。

よく、公的年金の積立金の運用が株価の下落によって大幅なマイナス利回りになっていることが報じられることがありますが、上の図にあるとおり、年金給付の財源としては1割にも満たない部分なので、運用の巧拙が年金財政に与える影響はそれほど大きくないことがわかります。

ちなみに、なぜだかはわかりませんが、積立金の運用利回りが大幅なプラス利回りになっていることが報じられることはめったにありません。

自分たちが支払っている保険料は、いまの高齢世代に送金されていて、自分たちの将来の年金はどうなるかわからない。そう言われてしまうと不安になるかもしれませんが、日本の年金制度の「賦課方式」はすごいんです。

下の図にあるとおり、ざっくり言えば、保険料収入、国庫負担、年金給付は、賃金や物価の上昇に連動します。積立金は運用利回り次第ですが、賃金や物価が上昇する局面では、同様に上昇するのが通常です。

経済変動が年金財政に与える影響のイメージ(出所/厚生労働省)

つまり、若い世代にとっては、40年後や50年後の賃金や物価の水準がどう変化していたとしても、その時代の賃金や物価に応じた年金額を受け取れることが決まっているのです。すごくありがたい制度設計になっていると思いませんか?

「積立方式」だとそうはいきません。例えば、1970年当時の大卒初任給は約4万円でしたが、そのとき積み立てた2000円を50年後のいま受け取っても、お金の価値が大きく変わっていて、当時ほどの価値はなくなってしまっています。それをカバーできるくらいの運用収益がついていればいいですが、そうでない場合はさみしい老後生活になってしまう可能性が高まります。

もちろん、「賦課方式」であっても、少子高齢化の影響はそれなりに受けます。だからこそ、少なくとも5年ごとに財政検証を行って、今後の見通しを作成し、年金財政の健全性を検証しているわけです。

皆さんも、これを機会に年金制度を正しく学んで、正しく備えていくようにしましょう。公的年金は老後生活のベースとなる収入として今後も続きます。一方で、その上乗せとしてのゆとりある生活のためには自助努力も必要です。iDeCoやつみたてNISAについては、改めて別の機会にまとめますが、利用していない人はまずは口座開設から始めてみてはいかがでしょうか。

イラスト/杉崎アチャ

新築マンションを探す
中古マンションを探す
新築一戸建てを探す
中古一戸建てを探す
注文住宅の会社を探す
リフォーム会社を探す
賃貸物件を探す
カウンターで相談する
土地を探す
売却査定する
公開日 2020年10月09日
関連する最新記事を見る
住みたいエリアや購入価格からマンション・一戸建てを探そう!
住まいの種類
住みたいエリア
  • エリア
  • 都道府県
  • 市区郡
購入価格

お役立ち講座・個別相談のご案内無料

住まい選びで「気になること」は、人それぞれ。スーモカウンターのアドバイザーは、新築マンション・建築会社選びをサポートするプロ。講座や個別相談を通じて、よかった!と思える安心の住まい選びをお手伝いします。
カウンターアドバイザー

住み替えサポートサービス

ページトップへ戻る