木造住宅の耐用年数ってどれくらい? 法定耐用年数と実際の寿命はどう違う?

公開日 2019年12月26日
木造戸建ての耐用年数ってどれくらい? 法定耐用年数と実際の寿命はどう違う?

住宅の「耐用年数」という言葉を聞いたことがあるでしょう。「耐用」という言葉から、建物の寿命のことだとイメージしがちです。でも実は、耐用年数=寿命ではありません。ここでは、耐用年数とは何なのか、一級建築士事務所北工房代表取締役の栃木渡さんに聞きました。

木造住宅の耐用年数は22年。でも、実際に住み続けられる年数は違う

減価償却の計算に使われる「法定耐用年数」

「木造の家って、20年くらいが寿命なんでしょ?」、なんて言葉を聞いたことがないでしょうか。この「20年」は、おそらく木造住宅の法定耐用年数22年からきているもの。しかし、寿命が20年くらいというのは誤解です。

「木造住宅の耐用年数は22年ですが、これは減価償却の計算に使われるもので、建物の寿命とは関係はありません」(栃木さん、以下同)

耐用年数とは「減価償却資産が利用に耐える年数」のことで、正式には法定耐用年数といわれます。法定耐用年数は住宅などの建物だけでなく、工業用機械、パソコンなどさまざまなものに設定されていて、法定耐用年数が過ぎると税務上の資産価値がゼロになります。減価償却資産は購入した場合の代金を耐用年数の間、毎年、費用として計上することが可能で、例えば、50万円の減価償却資産の法定耐用年数が5年の場合、5年間にわたって毎年10万円ずつを費用として計上できるのです。木造の建物の場合、木造のアパートを建てたとすると、法定耐用年数の22年間に価値は徐々に下がって22年を過ぎると価値が0になりますが、その間はアパートのオーナーは毎年、経費として計上することができます。

イラスト

建物の耐用年数は構造によって下記のように違います。

木造 22年
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm以下 19年
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm超4mm以下) 27年
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超) 34年
鉄筋コンクリート造 47年

法定耐用年数が住宅ローン可否の判断材料になることも

減価償却の計算のために設けられている法定耐用年数ですが、中古住宅の購入に影響することも。
「その物件が法定耐用年数内かどうかを、金融機関が住宅ローンの可否の判断材料にする場合があります。しかし、判断の基準は金融機関によって違います」

つまり、法定耐用年数内であれば融資が受けやすい、と言い切ることはできませんが、住宅ローンを借りて中古住宅の購入をと考えているなら、物件が法定耐用年数内かを気にしておくといいでしょう。

1998年の税制改正で耐用年数が短縮

「法定耐用年数が最初に設けられたのは昭和26年。今では使われていない建築材料から割り出されたものでした。その後、建築材料の変遷や建築技術の進化に即して耐用年数は数度の改正があり、現在は木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造のマンションは47年となっています」

■店舗・住宅用建物の法定耐用年数
建物の構造 1998年の改正前 改正後(現在)
木造 24年 22年
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm以下) 20年 19年
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm超4mm以下) 30年 27年
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超) 40年 34年
鉄筋コンクリート造 60年 47年

改正によって、建物の法定耐用年数は短くなりました。このため、建物を事業に使用している人の場合は改正前であれば法定耐用年数内で減価償却の対象だったのに、税務上の資産価値が0になる時期が早まってしまった、ということがあります。例えば、1996年に建てた木造アパートの場合、改正前なら2019年まで減価消却で費用に計上できたのですがが、改正後は2017年までと期間が2年短くなりました。

また、築23年を超える木造住宅は、法定耐用年数からはずれるため、1998年以降は金融機関によっては住宅ローンの貸し出しの可否に影響している可能性も。とはいえ、融資では申し込む人の返済能力や、住宅性能、土地の条件などさまざまな項目で検討されます。中古の木造住宅の耐用年数はわずか2年の短縮ですから、売買で法定耐用年数が短くなったことを深刻にとらえる必要はないでしょう。

建物の実際の寿命はメンテナンス次第

コーキングの補修や雨どいの掃除などこまめな手入れを

木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、実際には22年を超えても快適に暮らせている家は多くあります。特に近年は、建物の性能が上がってきていることもあり、住宅の寿命はさらに延ばすことができるでしょう。

「どの構造、どの建材を採用した家屋なら何年もつ、ということは一概にはいえません。実際の建物の寿命は環境やメンテナンスによるところが大きいからです。例えば、海のそばに置いてある車は塩害ですぐに錆びてしまいます。家も同様です」

海の近くの家は鉄部が錆びやすかったり、雨の多い地域で屋根や軒の出を少なくしている家は外壁のヒビなどから壁内に雨が浸入しやすかったりします。また、同じ家でも、直射日光の当たる面はサイディングボードや窓まわりをつなぐコーキングの劣化が早かったりもします。そこで重要になるのが、それぞれの住宅に合ったこまめなメンテナンスです。

「車の場合、みなさんオイルを交換したり、洗車やワックスがけをしたりなど、メンテナンスをする人が多いです。ところが、なぜか住宅は完成後、なにもせずにいるケースが多いのです。窓と外壁の境目から壁内に雨水が入らないようコーキングを補修したり、雨どいが風で飛んでくる枯葉などで詰まらないよう定期的に掃除をしたり、自分でできるメンテナンスをぜひしてほしいです。昭和初期の建築でも、きちんと手入れをされて今も使われている家が多くあります。建物の寿命に、メンテナンスは重要なポイントです」

ただし、メンテナンスをしていても、建物は少しずつ劣化していくもの。施工会社の定期点検や、必要な修繕、リフォームは適切な時期に行うことで、法定耐用年数とは関係なく、快適に暮らせ、長く住める家になるのです。

イラスト

軟弱地盤などの外部からのリスクに注意することも大切

建物の構造などで決められた法定耐用年数よりも大切なのは、地盤などの外的要因。
「全国各地で多くの例があるように、軟弱な地盤で家が傾いたり、大地震で住めない状態になったり。家そのものの寿命や耐用年数だけでなく、地盤の状態を知って建てることが重要です。今はハザードマップで災害が発生したときの危険性が予測できますし、地盤も検査をすることができます。危険度の高い土地は選ばない、軟弱であれば杭をしっかり入れるなどの対策を考えておきましょう」

まとめ

法定耐用年数は減価償却の計算に使われるもので、実際の建物の寿命ではない

法定耐用年数が、住宅ローンの貸し出しの判断材料になる場合も

実際の建物の寿命は、メンテナンスによって違ってくる

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取材・文/田方みき イラスト/竹村おひたし
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