家探しをはじめると「間口」という言葉を耳にすることがあります。
なんとなく知っている言葉かもしれませんが、実際に何を指すのか知っていますか?
間口とは何か、間口は建てる家にどう影響するのかなど、生活デザイン設計室 株式会社 サンクの古屋さんに聞きました。
間口とは、土地や家屋の幅のことを指します。そして、幅である間口に対し、もう一方を奥行きと言います。
「一般的に道路に面している土地の長さを間口といい、道路に接している面が長いほど、“間口が広い”と表現します。角地の場合は2面道路に接しているので、どちらを間口と呼ぶかはケースバイケースです。家屋の正面、玄関のある方が必ずしも間口というわけではなく、“間口が広い家”の方が好まれる傾向にあるので、道路に接している面が長い方を間口と呼ぶことが多いです。
また、マンションの場合、通常、間口はバルコニーなどの開口部がある側面の幅を指します。間口のことを“スパン”といい、開口部の幅が広い住戸の場合、“ワイドスパン”と表現することもあります」(古屋さん、以下同)
一般的に間口の長さの単位はメートル表記を用いますが、以前は尺貫法が使われていました。尺貫法では1尺は約30cm、1間=6尺=1820mm(1.82m)です。今でも、間口の長さを“3間半”などと尺貫法で表現することもあるので、1間はどのくらいの長さなのか、覚えておくと便利です。
家を建てる場合、道路と接する間口は2m以上なければならないという“接道義務” (建築基準法第43条1項)があります。
「接道義務とは、敷地が一定の距離、道路に面していないと家が建てられないという法律です。基本的には敷地が道路と接する長さを指しますが、道路から引きこみ部分がある旗竿敷地などの場合は、一番狭い部分の両側に内接する円の直径を間口と考えます。ほかにも、敷地が単純な形状でない場合は、建物を建てる前に、建築可能な敷地かどうか、役所に確認をする必要があります」
間口が狭い場合、間取りプランに制約が出ることがあります。
「一般的に接道部分から玄関位置を決めるので、間口が狭い場合、玄関位置は限られます。また、生活に必要な部屋数、採光窓、階段などを最低限配置し、間口方向に必要な耐力壁(※)を確保する必要もあるので、間口が広い家に比べると、設計の自由度は下がるかもしれません」
※耐力壁とは、建物の重さなど縦方向の荷重と、地震や風による横方向の力に対して、建築物を支えるよう設計された壁のこと。構造上バランスよく配置する必要がある
耐力壁についてもっと詳しく
→耐力壁とはどんな壁?リフォームするとき、移動したり窓をつけたりできる?
さらに、隣家とも距離が近いなど、開口部を十分取ることが難しい場合は、通風や採光に工夫が必要になります。
「うなぎの寝床と言われるような京都の町屋などででは、中庭や通り庭をつくって、光や風を取り込む工夫をしていました。現代の住まいでも、間口が狭く、奥行きがあり、開口部を大きく取れないような場合は、中庭を設けることで、自然の光や風を取り込むことができます。敷地の面積が限られている場合は、天窓をつけるなどの工夫をしてもいいでしょう」
土地の間口が狭い場合、できるだけ間口いっぱいに建物を建てたいと思うかもしれませんが、希望通りに建てられるとは限りません。
「隣地境界との距離については、民法第234条で、建物を建てる場合は建物を境界線から50cm以上離すことになっており、地域によってはそれ以上、隣地境界線から外壁面まで距離をとる必要がある場合もあります。最低でも50cmは離す必要があるので、建てられる家の間口は土地の間口から少なくとも1mは狭くなり、実際はそれ以上距離をとって建てることが多いです」
尚、注意しておきたいのは、古い家や分譲戸建てを建て替えるケース。新築の際、地域の慣例や、家同士の合意の上で隣地から50cm以上離して建てられていないこともあるので、建て替えのときに、元の建物の間口よりも狭い間口の家しか新しく建てられないということもあるそうです。
間口が狭くなると、設計に工夫が必要になってきますが、一般的なファミリーサイズの一戸建てを考えるのであれば、どの程度の間口が必要になるのでしょうか。
「玄関の横に居室を配置するような間取りだと、建物の間口は6~6.4m位。隣地とある程度距離を取ることを考えると、土地の間口は8m位必要です。この程度の間口があれば、奥行きにもよりますが、2階建てでも4LDK程度のファミリーサイズの家が建てられると思います。一方、間口が3~4mほどしか取れない場合は、玄関の幅だけで3m程度必要になるので、廊下を設けず、玄関から部屋を通って奥に進んでいくような間取りになります」
また、間口が狭いと駐車場のスペースも気になります。
「敷地内に駐車場を設ける場合、間口は玄関+車の幅程度あると、玄関までのアプローチを設けることができるので、人の出入りがしやすくなります。車の大きさにもよりますが、駐車スペースとしては、最低でも1台に対して2.4m程度の幅が必要です」
間口の狭い土地の場合、広いものに比べて、土地代のコストを抑えられるメリットがあります。間取りプランに制約がかかったとしても、工夫次第で予算内で理想の家を建てることができるかもしれません。
「角地や、間口の広い土地の方が好まれる傾向があるので、そういったケースと比較すると、土地代は抑えることができるでしょう。また、近隣の状況にもよりますが、通りからの視線を受けにくいので、間口の狭い家の方がプライバシーを確保しやすいといえると思います。例えば、南北に奥行きのある家で北側に玄関を設ける場合、南側に人目を気にしなくてもいい開口部を設けたり、庭をつくったりすることもできます」
間口が狭いことは制約につながる一方、優先順位を整理して家づくりにのぞめば、土地代のコストメリットを活かしながら、自分のライフスタイルに過不足なくマッチした家を建てるということもできそうですね。
間口は土地や家屋の道路に面した幅のこと
間口が狭いと間取りの選択肢が限られることも
間口の狭い土地を選択することで、予算を抑えられるメリットも