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家や土地探しをはじめると「間口」という言葉を耳にすることがあります。でも、言葉自体は知っているものの、具体的に何をさすのかは知らない人も多いのでは? そもそも間口とは何か、間口は建てる家にどう影響するのかなど、生活デザイン設計室 株式会社 サンクの古屋さんに聞きました。
土地や家について話すとき、よく「間口が広い」なんて言葉を耳にします。この間口は、どのような意味なのでしょうか。
まずは、間口の意味からチェックしていきましょう。建物のどこからどこまでが間口で、どのような役割があるのでしょうか。
間口とは、土地や家屋の幅のことをさします。ただしマンションの場合、通常、間口はバルコニーなどの開口部がある側面の幅をさします。
「間口は、『スパン』とも呼ばれます。開口部の幅が広い住戸の場合、ワイドスパンと表現することもあります」(古屋さん、以下同)
土地や家屋の幅を意味する間口に対し、もう一方の辺を奥行きといいます。
「一般的に道路に面している土地の長さを間口といい、道路に接している面が長いほど、“間口が広い”と表現します。ただし、角地の場合は2面道路に接しているので、どちらを間口と呼ぶかはケースバイケース。家屋の正面、玄関のある方が必ずしも間口というわけではなく、“間口が広い家”の方が好まれる傾向にあるので、道路に接している面が長い方を間口と呼ぶことが多いです」
先述したように、間口とは道路と接した土地の長さ(距離)のこと。その距離を測ると間口が測定できます。
一般的に間口の長さの単位はm(メートル)表記を用いますが、以前は尺貫法が使われていました。尺貫法では1尺は約30cm、1間=6尺=1820mm(1.82m)です。今でも、間口の長さを“3間半”などと尺貫法で表現することもあるので、1間はどのくらいの長さなのか、覚えておくと便利です。

通常は簡単に測定できますが、間口が2つ以上あったり、隅切り(隅を削った土地)されていたりする場合には測定が少し複雑になるので注意しましょう。

家を建てる場合には、「接道義務」を守る必要があります。聞き慣れない言葉ですが、これはどのような決まりなのでしょうか。
建築基準法第43条に記された「建築物の敷地は規定する道路に2m以上接する必要がある」という決まりを接道義務といいます。道路に面した開放的な土地はもちろん、路地の奥にある狭い土地であっても、道路と一定距離以上接していなければなりません。仮に接道義務を満たしていない場合にはその土地に新たな家は建築できず、すでに立っている場合にも増改築などが禁止されます。
では、間口が狭い土地の場合、家づくりに何か影響はあるのでしょうか。注意したいポイントと対策をご紹介します。
間口が狭い場合、間取りプランに制約が出ることがあります。
「一般的に接道部分から玄関位置を決めるので、間口が狭い場合、玄関位置は限られます。また、生活に必要な部屋数、採光窓、階段などを最低限配置し、間口方向に必要な耐力壁(※)を確保する必要もあるので、間口が広い家に比べると、設計の自由度は下がるかもしれません」
※耐力壁とは、建物の重さなど縦方向の荷重と、地震や風による横方向の力に対して、建築物を支えるよう設計された壁のこと。構造上バランスよく配置する必要がある
耐力壁についてもっと詳しく
→耐力壁とはどんな壁?リフォームするとき、移動したり窓をつけたりできる?
しかし、“間口が狭い土地=快適に住めない”というわけではありません。開口部を十分取ることが難しい場合は、通風や採光を工夫しましょう。とくに隣家と距離が近い場合などは、空間を縦に広げて3階、4階建てにするのも一案。周囲の家より高く建てることで風や光を取り込みやすくなります。
敷地の面積が限られている場合は、天窓をつけたり吹き抜け構造にしたりするのも効果的です。
「うなぎの寝床といわれるような京都の町屋などでは、中庭や通り庭をつくって、光や風を取り込む工夫がとられていました。現代の住まいでも、間口が狭く、奥行きがあり、開口部を大きく取れないような場合は、中庭を設けることで、自然の光や風を取り込むことができます。
このほか、2階以上の高い場所に縦すべり窓を設置したり、屋上テラスをつくったりするのも効果的。光と風を効率よく取り込め、開放感のある空間をつくり出せます」

土地の間口が狭い場合、できるだけ間口いっぱいに建物を建てたいと思うかもしれませんが、希望通りに建てられるとは限りません。
「隣地境界との距離については、民法第234条で、建物を建てる場合は建物を境界線から50cm以上離すことになっており、地域によってはそれ以上、隣地境界線から外壁面まで距離を取る必要がある場合もあります。最低でも50cmは離す必要があるので、建てられる家の間口は土地の間口から少なくとも1mは狭くなり、実際はそれ以上距離を取って建てることが多いです」

なお、注意しておきたいのは、古い家や分譲戸建てを建て替えるケース。新築の際、地域の慣例や、家同士の合意の上で隣地から50cm以上離して建てられていないこともあるので、建て替えのときに、元の建物の間口よりも狭い間口の家しか新しく建てられないということもあるそうです。
間口が狭くなると、設計に工夫が必要になってきますが、一般的なファミリーサイズの一戸建てを考えるのであれば、どの程度の間口が必要になるのでしょうか。
「玄関の横に居室を配置するような間取りだと、建物の間口は6~6.4m位。隣地とある程度距離を取ることを考えると、土地の間口は8m位必要です。この程度の間口があれば、奥行きにもよりますが、2階建てでも4LDK程度のファミリーサイズの家が建てられると思います。一方、間口が3~4mほどしか取れない場合は、玄関の幅だけで3m程度必要になるので、廊下を設けず、玄関から部屋を通って奥に進んでいくような間取りになります」
また、間口が狭いと駐車場のスペースも気になります。
「敷地内に駐車場を設ける場合、間口は玄関+車の幅程度あると、玄関までのアプローチを設けることができるので、人の出入りがしやすくなります。車の大きさにもよりますが、駐車スペースとしては、最低でも1台に対して2.4m程度の幅が必要です」
間口の狭い土地の場合、広いものに比べて、土地代のコストを抑えられるメリットがあります。間取りプランに制約がかかったとしても、工夫次第で予算内で理想の家を建てることができるかもしれません。
「角地や、間口の広い土地の方が好まれる傾向があるので、そういったケースと比較すると、土地代は抑えることができるでしょう。また、近隣の状況にもよりますが、通りからの視線を受けにくいので、間口の狭い家の方がプライバシーを確保しやすいといえると思います。例えば、南北に奥行きのある家で北側に玄関を設ける場合、南側に人目を気にしなくてもいい開口部を設けたり、庭をつくったりすることもできます」

間口が狭いことは制約につながる一方、優先順位を整理して家づくりに望めば、土地代のコストメリットを活かしながら、自分のライフスタイルに過不足なくマッチした家を建てるということもできそうですね。
間口とは、土地や家屋の道路に面した幅のこと
間口が狭いと間取りの選択肢が限られることも
間口が狭い土地に家を建てる場合は、採光と通風を重視しよう
間口の狭い土地を選択することで、予算を抑えられるメリットも