不具合を感じれば途中で気づくことができるが、多くの場合、突然壊れたように思える電気温水器やガス給湯器。お湯が使えない不便な生活を送らずに済むよう、建築家の佐川旭さんに機器の寿命や故障の前ぶれ、交換する場合の選び方のポイントなどについて教えてもらいました。
キッチンやお風呂で毎日使うお湯。お湯をつくるガス給湯器が突然故障すると、暮らしは不便になるだろう。「ガス給湯器が故障する前ぶれとして、お湯の温度が不安定になる、燃焼音が大きくなる、ガスのニオイがする、煙が出るなどの傾向があります。このような場合は、ガス工事会社に点検を依頼してください」(佐川旭さん、以下同)
ガス給湯器はどのぐらいの期間、問題なく使えるのだろう。
「ガス給湯器の寿命は10~15年が目安です。メーカーの設計標準使用期間(※)は家庭用で10年ですし、部品の保有期間も10年前後なので、それ以降に故障すると修理は難しいかもしれません」
新しいガス給湯器を使い始めるときに、取扱説明書に同封されているユーザー登録ハガキを送付するのがオススメだ。
「ユーザー登録のハガキを出しておくと、定期的に点検の通知が届いたり、寿命が近づくころに機器の交換を促すお知らせが届いたりします。ガス給湯器は何年使用したのか分からなくなることが多いので、メーカーのほうで安全に利用してもらうために配慮しているのだと思います」
※標準的な使用条件の下で、安全上支障なく使用することができる標準的な期間として、設計上設定されている期間のこと
少しでも長く使うために、気を付けるべきことはあるのだろうか。
「最も大事なのはガス給湯器の設置場所です。屋外に設置している場合、雨や風、紫外線が直接あたらない場所に設ければ、劣化を防ぎやすくなります。据置型の場合は、跳ねた雨水や泥が機器内に入らないように、コンクリートブロックや台座の上に設置してもらいましょう」
また、戸建住宅の新築時に気を付けたいのは、ガス給湯器と塀との距離だ。
「排気口の位置にもよりますが、塀に近すぎると、燃焼時の排気を再度吸ってしまうことが故障の原因になりがちです。塀との距離が近そうなときは、問題はないか工事会社に確認しておくとよいでしょう」
前述したとおり、お湯の温度が不安定になったり燃焼音が大きくなったりするのは故障のサインだが、自分で対処できるトラブルもある。
「トラブルが生じたとき、一般的にはリモコンにエラー番号が表示されます。エラー番号の詳細は取扱説明書に記載されているので、取扱説明書を読んで、トラブルの原因や対処法を確認してください。エラー番号は、インターネットで調べることも可能です。」
「ガス給湯器のトラブルや故障の原因は、燃焼系統、電気系統、安全装置、水の制御、リモコンの主に5つに分かれます。この5つは半導体などの精密機器が深く関連しているため、ちょっとしたことが原因で故障やトラブルにつながるのです」
故障した場合はガス工事会社などへの修理依頼が必要だが、トラブル内容によっては自分で対処できる。例えば、追い焚きができない場合、浴槽内の循環口フィルターが目詰まりを起こしている可能性があるので、掃除をすれば問題なく使えることも。また、使用中に水になる場合、何らかの原因で安全装置が作動した可能性があり、一度運転スイッチを切り時間を空けて入れれば使用できることもある。
ガス給湯器の寿命が過ぎたタイミングで故障した場合、交換となるケースは多い。「交換費用は、新しいガス給湯器の機器代と、プラス5万~7万円程度の工事費となります。工事費の内訳は、古い機器の処分費、新しい機器の設置費、ガス接続工事費、諸経費などがあります。工事はさほど難しいものではないので、機器の在庫があれば半日で終了します」
ガス給湯器の性能は「号数」で表示されている。例えば、4人家族で多く使われている「24号」の場合、1分間に水温+25℃のお湯を24L出せる。「水温が下がる冬に、お湯の出方が物足りないと感じているなら、交換時に号数を大きくするとよいでしょう。号数が大きいほうが機器代は高くなりますが、工事費はほとんど変わりません」
新しいガス給湯器を選ぶときのポイントは号数と機能だ。
号数とは、水温+25℃のお湯を、1分間に出せる量(L)のこと。例えば、4人家族で多く使われている24号の場合、1分間に水温+25℃のお湯を24L出せることになる。
「水温が下がる冬に、お湯の出方が物足りないと感じているなら、交換時に号数を大きくするとよいでしょう。号数が大きいほうが機器代は高くなりますが、工事費はほとんど変わりません」
ガス給湯器の号数と価格の目安
ガス給湯器は機種によって、さまざまな「機能」が搭載されている。「ほとんどの製品に自動でお湯張りができるオート機能が付いています。他には、指定した時間にお風呂が沸き上がる予約機能、浴槽のお湯を捨てるときにきれいなお湯で配管内の汚れを落とすクリーン機能などがあるので、自分たちのライフスタイルに合わせて選択してください」
配管を洗浄する機能
ガス給湯器を交換するとき、工事費の見積もりを依頼して、その金額で決める人は多いかもしれない。しかし、10~15年は使う機器なので、使用中に点検・修理が必要になることもあるだろう。「工事費も大事ですが、交換後に不具合を感じたとき早めに来てもらえるように、家から30~40分ぐらいの場所にある工事会社を選ぶとよいと思います」
また、戸建住宅の場合、佐川さんは“設置場所”を改めて検討することをオススメしている。「位置を数十cm動かすだけで、屋外に小さな物置や自転車置き場がつくれるのに……というケースは意外に多いと思います。交換は住まいの利便性をアップする機会ととらえ、改めて設置場所について考えてみましょう」
築年数を経た住まいの場合、機器の交換と同時に浴室やキッチンのリフォームを検討する人もいるだろう。「交換だけにするか、水まわりのリフォームも併せて行うかは、自分たちのライフサイクルと機器の寿命との兼ね合いで決めるとよいでしょう」
例えば、今は40代で、機器を使い始めてから15年を過ぎているとしよう。交換は10~15年ごとなので、次は50代後半、その次は70歳を超えているため、次の交換時にバリアフリーのリフォームを一緒に行うのがタイミング的によいといえそうだ。
「水まわり空間のリフォームは、不要なモノの片付けや、水やお湯が使えない期間があることから、予想以上に体力と気力が必要になります。収入面も考慮すれば、50代のうちにバリアフリーへとリフォームしておくと、それ以降も安心して暮らし続けられると思います」
賃貸住宅に住んでいる場合、他の住宅設備と同様に、機器の修理・交換は大家さんに負担してもらえる。お湯の出方が悪い、湯温が不安定、妙な音がするなどの不具合に気が付いたら、早めに管理会社か大家さんに連絡をして、工事会社を手配してもらおう。
ガス給湯器の寿命の目安は10~15年だが、設置場所への配慮により寿命を延ばすことは可能といえる。ただし、寿命の目安期間を過ぎたタイミングで“故障の前ぶれ”を感じたら、安全のためにも早めに交換を検討する方がベター。また、ライフサイクルや築年数によっては、交換だけでなく、水まわり全体のリフォームを行い、先々までの快適で安全な暮らしを手に入れたい。
・ガス給湯器の寿命は10~15年が目安
・機器の交換だけか、水まわりのリフォームも併せて行うかはライフサイクルと機器の寿命との兼ね合いで決めよう
・賃貸住宅の場合は故障の前ぶれに気づいたら大家さんに連絡を