テレビなどでよく耳にする「欠陥住宅」。家は人生に一度あるかないかの大きな買い物なだけに、「せっかく手に入れたマイホームが欠陥住宅だった!?」などという事態は避けたいもの。そこで、欠陥住宅をつかんでしまわないために注意すべきことや、万が一欠陥が見つかったときにどうすればいいかを解説しよう。
「欠陥住宅」という言葉がよく聞かれるようになったのは、1995年の阪神・淡路大震災以降。建物の倒壊による圧死事故の原因として、住宅の構造上の欠陥が多く指摘されたことから社会問題として注目され、一般に知られるようになった。しかし、一級建築士の佐川旭さんによると、欠陥住宅が注目された90年代当時から法整備なども進み、手抜き工事やコストカットなどによる悪質な欠陥住宅というものは、昨今では減少しているという。
「欠陥住宅というのは、基礎や土台、柱や梁など、家の骨子となる部分に安全性を欠いた欠陥があり、住む人の安全性が守られていない住宅を指します。例えば、建具や設備など、安全性には関係のない軽微な欠陥は”不具合“であり、そのような不具合があるからといって、一概に欠陥住宅であるということにはなりません」(佐川旭建築研究所 代表 佐川旭さん)
では、不具合で多く見られる現象は、どのようなものが多いのだろうか。専門的な見地で住宅の欠陥の有無などを見極めてアドバイスを行うさくら事務所によると、新築一戸建ての引き渡し前に見られる不具合の現象は、窓サッシや室内ドアなどの開口部、床下面・基礎、外壁仕上げなどが多いという。これらの不具合には、住宅の性能に直結するものや、修復に時間を要するものもある。
「住宅の欠陥によって引き起こされる現象は入居後1~3年の間に顕在化することが多いですね。新築の場合、売主や工務店、ハウスメーカーなどによって1年ごとなどの定期点検が行われるのが一般的なので、欠陥による不具合などが生じている箇所については、そのときにきちんと確認してもらいましょう。経年による劣化などではなく、新築時の施工が原因である場合は無料で対応してもらえます」(佐川さん)
中古住宅の場合は2018年4月の宅建業法の一部改正にともない、売買時の建物状況調査(インスペクション)に関する告知が義務化。売買の仲介をする不動産会社は、インスペクション会社の斡旋や売主・買主への説明などが必要になった。建物状況調査済みの場合は、購入前に報告書をもらうなどして、調査結果に問題がないかなど確認をしておこう。もし調査内容に不安があれば、別のインスペクション会社に相談し、必要に応じてさらに詳しい調査を依頼するとよいだろう。
マイホームに欠陥(瑕疵)が見つかったとき、建主/買主を守る法律は住宅の種類により異なる。そこで、2020年4月1日以降に工事請負契約または売買契約を結んだ場合について解説しよう。
工事請負契約で建てた注文住宅の瑕疵は、『品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の瑕疵担保責任』と『契約不適合責任』の法律が適用される。(2000年4月施行)
品確法では、構造耐力上主要な部分と、雨水の侵入を防ぐ部分の瑕疵に対する責任期間を引き渡しから10年と定めている(特約で20年に延長可能)。責任期間内に瑕疵が見つかった場合、品確法の瑕疵担保責任に基づく権利として損害賠償や修補などを請求できる。
契約不適合責任とは、住宅の種類や品質が契約内容に適合しない場合、修繕や代金減額、損害賠償などができる権利のこと。責任期間は引き渡しから10年と定められているが、特約で短くでき、注文住宅の場合は引き渡し後2年(住設備機器は1年)なのが一般的。ただし、建築会社によっても異なるため、契約内容や保証書の内容などをよく確認することが重要だ。
「注文住宅の場合、工事請負契約書に図面が必ず添付されるため、図面と現況が違うかどうかが契約不適合責任の主な論点になります。
ときどきみられるのが、現況が自分の理解していた内容と違うので瑕疵だと思ったが、実際には図面どおりに建てられているケースです。住宅の図面を読み解くのは難しいですが、分からない点は営業担当者や設計担当者などに聞いて、正しく理解したうえで契約を結びたいですね。また、打合せた内容が図面に反映漏れしているケースもよくありますので、打合せの記録もその都度文書化しておくことがとても重要です。特に数、種類、品質については理解や確認が足りないことが多いので注意しましょう」(さくら事務所 プロホームインスペクター 友田 雄俊さん)
欠陥かもしれないと思ったときは、工事請負契約を結んだ住宅メーカーや工務店などに連絡して相談するのが一般的。このときに注意したいのが、相談の履歴を残すことだ。
「瑕疵担保責任と契約不適合責任は、瑕疵または契約不適合を知ってから1年以内に通知し、瑕疵または契約不適合を知った時から5年以内に権利を行使しなくてはならないという『責任期間の制限』があります。
つまり、瑕疵に気づいた時期と、住宅メーカーなどに連絡した時期が非常に重要なため、相談内容や時期を残せるようにメールで伝えましょう」(友田さん)
住宅メーカーなどに相談したときに曖昧な対応を取られたら、早めにインスペクション会社にチェックを依頼し、報告書を作成してもらうのがおすすめ。チェックで瑕疵が見つかっても、責任期間の期限前に報告書の内容を伝えればきちんと対応してもらえるだろう。
新築分譲住宅の瑕疵も、注文住宅と同様に『品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の瑕疵担保責任』と『民法の契約不適合責任』が適用されることに加えて、売買契約になるため『宅建業法(宅地建物取引業法)』も影響してくる点が異なってくる。
「注文住宅と異なるのは、契約不適合責任の責任期間です。先述したように、注文住宅は特約で引き渡し後2年(住設備機器は1年)とするのが一般的ですが、建築会社によっても異なります。しかし分譲住宅は売買契約なので宅建業法が適用されるため、特約でも2年未満に短くすることはできません。宅建業法により引き渡しの日から2年以上の期間での特約のみ許されていますが、その最低限度となる2年で定められることが一般的です」(友田さん)
新築の分譲住宅の場合、瑕疵の相談先は売主の不動産会社になる。
「瑕疵の相談を受けた不動産会社は、住宅を施工した工事会社にその内容を伝えたり、工事会社の対応を買主に伝えたりと間に入って対応してくれるでしょう。しかし、間に入ることで話に齟齬が生じたり、時間がかかったりするかもしれません。
可能であれば買主、売主の不動産会社、施工した建築会社の三者が一緒に話し合う場を設けてもらうと、話し合いはスムーズに進むと思います」(友田さん)
中古住宅の瑕疵は、『契約不適合責任』が適用されますが、売主によって特約の責任期間や責任範囲が異なることが一般的です。
「特約の内容は、売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合、宅建業法の定めに基づき、責任期間は2年以上となり、また責任範囲については限定されません。
一方、売主が個人の場合、責任負担が重くなり過ぎることを避けるために、責任期間を2カ月または3カ月とすることが一般的で、責任範囲についても雨漏り、シロアリ、給排水管の水漏れ、構造耐力上主要な部分の腐食に限定されることが多くなります。また、築古の場合などには契約不適合責任を免責とされるケースもあるので注意が必要です。
不動産会社が仲介に入っているかどうかではなく、あくまでも売主が個人か宅建業者かによる違いになる点にも気を付けましょう」(友田さん)
ちなみに、購入する中古住宅の築年数が数年~20年程度の場合、施工した住宅メーカーと施主が結んだアフターメンテナンス保証を、買主が引き継げることがある。築年数が比較的浅い中古住宅を購入するなら、契約前に仲介会社に確認しておこう。
中古住宅の入居後に瑕疵かもと思ったら、売主が個人/不動産会社を問わず、仲介をしてくれた不動産会社に相談することになる。
「相談する前に、売買契約書の特約の責任期間や責任範囲を確認しましょう。例えば、リビングの床の“傾斜”が気になったとしても、責任範囲に“傾斜”が含まれていなければ責任を問うことはできません。責任範囲に含まれている場合、責任期間内なら補修などを要求することができます」(友田さん)
欠陥住宅を建築・購入してしまう事態はできれば避けたいもの。そのためには、どのような点に気を付けておくべきだろう。
「家を建てるのは”人“なので、注文住宅の場合は何より信頼関係をしっかりと築いていけるかどうかが重要です。まずは会社選びの段階で、社長の人柄や現場監督の能力などまで考えて、信頼して任せられるか判断するようにしたいですね。
また、現場監督の指示が行き届いていなかったり、職人がスキル不足だったりすることから欠陥や不具合につながることもあるので、きちんと統制が取れているかどうかなども、建設中の現場に足を運び、コミュニケーションをとりながら自分の目で確認しておきましょう。きれいに清掃され、道具なども整理整頓して管理されているかなどもチェックすべきポイントです」(佐川さん)
先述のとおり、新築/中古住宅の購入は売買契約となり、宅建業法が適用される。宅建業法では、最初に重要事項の説明を受け、内容に納得したら売買契約を結ぶとしているが、同時に行われることが多いために細部まで理解せずに契約するケースがある。
「重要事項や契約書の特約などに、瑕疵に関する責任期間や責任範囲が記載されています。万が一瑕疵があったときのために、契約前には必ず不動産会社に説明を求め、内容に納得してから締結しましょう」(友田さん)
また、中古住宅の場合、売主が住んでいる状態で内見し、気に入ったら購入するケースが多いだろう。しかし、売主の引越し後に改めて見ると、家具で隠れていた場所に雨漏りのシミや床の傾きがあることも…。
「できれば内見時だけではなく、引き渡しを受ける前にも改めてチェックしたいですね。内見時には売主の家具や家財があって見られなかった箇所に、雨漏りの跡を見つけるということもあります。瑕疵が見つかっても、引き渡し前なら売買の取引が完了していない状態なので売主との交渉がしやすいですし、引き渡しを受けて引越してしまうと、こういった不具合に気付きにくくなってしまいます」(友田さん)
建築会社や不動産会社とは、マイホームを取得後も長く付き合うもの。信頼できる会社かどうか契約前に見極めるのはもちろん、万が一不具合が起きてもトラブルに発展しない関係性を構築しておくことも大事だ。
欠陥住宅とは、住宅の基礎、壁、柱、屋根や外壁などに欠陥があり、住む人の安全性が守られていない住宅のこと
住宅の欠陥の保証は、契約時期や新築(注文住宅/分譲)中古によって異なるため、契約時に確認を
トラブルに発展しないよう、事前に慎重な会社選びをすることに加え、つくり手との信頼関係もつくっておくことが大切
●取材協力
佐川 旭さん
(株)佐川旭建築研究所 代表取締役
一級建築士、インテリアプランナー
友田 雄俊さん
さくら事務所 住まいと暮らし事業部部長
二級建築士 プロホームインスペクター