まさかの事態に備える。住宅ローンを借りるとき、確認したい5つのこと

公開日 2020年07月31日
ヒッシーのマネー騎士(ナイト)
まさかの事態に備える。住宅ローンを借りるとき、確認したい5つのこと

「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、そして、“まさか”だ」

この言葉は、ユーモラスでありながら、まさに本質をついた名言と言ってもよいでしょう。スピーチなどで使われることも多いので、聞いたことのある人も多いかと思います。

私の約50年の人生を振り返っても、何回か“まさか”がありました。
・25歳:兵庫県尼崎市の独身寮で震度6を体験した阪神淡路大震災
・28歳:勤めていた会社(山一証券)が自主廃業(破たん)

これらは、世間一般にも有名な“まさか”でしたが、そのほかにも小さな“まさか”はいくつもあったように思います。おそらく、これからもあるのでしょう。

皆さんの人生にも、さまざまな“まさか”があったのではないでしょうか。今回の新型コロナウイルスの世界的な蔓延も、多くの人にとって“まさか”の事態だったのではないかと思います。

住宅ローンという長期の借り入れをする際は、そのような想定外の“まさか”についても、できる限り備えておく、つまり、「想定外」を「想定内」にしておくことが重要です。

もちろん、すべての“まさか”を想定内にすることは不可能だと思います。しかし、できる限りのことは備えておく。そのようなスタンスが、安全安心の返済計画につながるはずです。

<まさか1>夫の死亡、妻の死亡

住宅ローンを返済中の現役世代の人が死亡する確率は、それほど高くはありません。
厚生労働省が6月5日に公表した「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」の数字で見てみると、40代前半の男性で10万人当たりの死亡者は112.6人、40代後半の男性で179.9人です。1000人当たりで言えば、1人か2人になります。50代男性になると、1000人当たり3、4人になるイメージです。

■男性
死亡率
(人口10万人対)
死因1位 死因2位 死因3位
30~34歳 59.4人 自殺 がん 事故
35~39歳 76.6人 自殺 がん 心疾患
40~44歳 112.6人 自殺 がん 心疾患
45~49歳 179.9人 がん 心疾患 自殺
50~54歳 297.2人 がん 心疾患 自殺
55~59歳 479.8人 がん 心疾患 脳疾患
■女性
死亡率
(人口10万人対)
死因1位 死因2位 死因3位
30~34歳 32.0人 がん 自殺 事故
35~39歳 45.1人 がん 自殺 心疾患
40~44歳 69.6人 がん 自殺 脳疾患
45~49歳 109.9人 がん 自殺 脳疾患
50~54歳 165.3人 がん 脳疾患 心疾患
55~59歳 240.0人 がん 心疾患 脳疾患
※がん=悪性新生物(腫瘍)、事故=不慮の事故、脳疾患=脳血管疾患

確率は低いけれども、ゼロではない。想像したくはないでしょうが、夫の死亡の可能性にはそれなりに備えておいたほうが無難だと言えます。

住宅ローンの場合は、団体信用生命保険(以下、団信)に加入することで、返済中の人が死亡または高度障害の状態になったときに保険金がおりてローン残高と相殺されます。団信の保険料はローンの金利に含まれているのが一般的です。銀行などの住宅ローン商品では、団信への加入が義務づけられているのが一般的ですが、【フラット35】などのように団信に加入しないことも選べるようになっているものもあります。団信よりも安い保険料で同様の保障を確保できるのであれば、検討の余地はあるでしょう。

また、夫婦共働きで、妻の収入もローン返済に欠かせない家計の場合は、妻の死亡にも備えておく必要があるでしょう。【フラット35】の団信(機構団信)では、デュエット(夫婦連生団信)という制度があり、夫婦のどちらかが死亡または高度障害になるとローン残高分の保険金がおりてローンと相殺されます。保険料(特約料)は1人で加入する場合の約1.57倍となっています。

なお、万一の場合、団信があればローンの返済はなくなりますが、固定資産税などの保有税、管理費や修繕積立金などの維持費の負担は続きます。子どもの教育資金、老後資金の準備なども考慮すべきです。遺族年金などの公的な保障、勤務先からの保障、これまでの貯蓄状況なども踏まえて、生命保険(死亡保障)の必要性の有無を検討しましょう。

<まさか2>病気やケガによる入院、就労不能

突然の病気やケガによる入院も、“まさか”の1つと言えるでしょう。とはいえ、短期間の入院で済み、後遺症もなく職場復帰できるのであれば、健康保険などの公的医療保障と少しの貯蓄で十分に対応できるでしょう。必ずしも民間の医療保険に加入しなければならないわけではありません。

しかし、「確率は低いとはいえ、長期入院の可能性には備えておきたい」、「もしもの入院時に貯蓄が大きく減ってしまうのは不安」などと考えるのであれば、保険料負担とのバランスを考慮しつつ、最低限の保障のついた医療保険への加入は検討してもよいでしょう。

それから、病気やケガが原因で働くことができなくなる可能性もゼロではありません。万一、働けなくなってしまった場合は、まずは健康保険の傷病手当金などの保障があります。それだけでは足りない、貯蓄でもカバーしきれないと思うなら、民間の保険として、損害保険会社の所得補償保険や、生命保険会社の就業不能保険などがあります。

これらの保険は、当然に保険料負担が発生します。保険料の負担と、受けられる保障(補償)を、冷静に比較することが重要です。本当に公的な保障と貯蓄だけでは対応できないのか、配偶者や家族が働くことで対応できないのか、十分に検討を重ねるようにしましょう。

これは、団信に3大疾病などの保障を上乗せするかどうかを検討する場合も同様です。保障を充実させれば、それだけ保険料負担が重くなります。重要なのは、保険料負担と保障(補償)とのバランスです。

<まさか3>収入減、失業

自営業者や会社員、企業経営者などであれば、収入減や失業は、いつ起きてもおかしくありません。大企業であっても、突然破たんすることがあります。私が20代のころ勤めていた山一証券も、経営状況が厳しいというのは社員もわかっていましたが、1万人近い社員がいる大企業が突然破たんするとは誰も予想していなかったはずです。日本経済新聞の1面トップに載るくらいですから、多くの人にとって“まさか”の事態だったのでしょう。

収入減や失業は、誰もが何度も経験するというわけではありませんが、人によっては人生のうちに複数回経験する場合があります。いつやってくるかわからない収入減や失業に備えるには、まずは「貯蓄」です。

住宅ローンを借りる際には、できる限り頭金を多く入れて、借入金額を少なく抑えるのが無難ですが、収入減や失業への備えを考慮するなら、手取り収入の3カ月分から6カ月分程度の貯蓄は手元に置いておくべきでしょう。突然の失業でも、会社都合なら1カ月程度、自己都合でも3、4カ月程度で雇用保険の基本手当(失業手当)が受け取れますので、その間の生活費をキープしておくイメージです。

もちろん、収入減や失業に備えて、所得補償保険や就業不能保険に加入するのもひとつの方法ですが、貯蓄でカバーできるのであれば、ムダに保険料負担を増やすのは得策とは言えないでしょう。

なお、病気やケガ、収入減、失業など、やむを得ない事情で住宅ローンの返済が厳しい場合は、一定期間の返済額圧縮や返済期間の延長などの救済措置が受けられることもありますので、返済中の金融機関に早めに相談に行くことが重要です。

<まさか4>離婚

厚生労働省の「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、令和元年の婚姻件数(概数)約60万件に対し、離婚件数(概数)は約21万件だったようです。2000年以降の数字を見ても、毎年の離婚件数が20万件を超えていますので、可能性としてはけっして低くないと言えます。

離婚を前提に夫婦で話し合いをすることはなかなか困難だと思いますが、万一離婚をした場合にどうなるのかは知っておいてもよいでしょう。離婚時には財産分与を行います。土地建物については、持ち分が単独なのか、共有なのか、離婚後は誰が住むのか、住宅ローンは誰が払い続けるのかなど、名義によっては贈与の問題が発生する可能性もありますので、早めに税理士などの専門家に相談すべきでしょう。もめそうなら弁護士にも相談すべきです。

<まさか5>転勤、移住

頻繁に転勤のある会社に勤めているのであれば、転勤は“まさか”ではないでしょうが、そうではない会社に勤めていて、転居を伴う転勤や海外転勤になると“まさか”と思うことでしょう。また、突然思い立って移住を決める可能性もゼロではないでしょう。

このような場合は、転勤だと、単身赴任か家族共々転居。移住だと、マイホームを売却するか、賃貸に出すかを検討することになるのが一般的です。

売却や賃貸を検討する場合は、事前に近隣の相場を確認したり、複数の不動産会社に連絡しておいたりすると、有利な条件を引き出すことも可能になるでしょうし、手続き等もスムーズに進めることができるはずです。

<まさか1>から<まさか5>まで簡単にまとめましたが、人によって“まさか”と感じる度合いはまちまちですし、これら以外にも“まさか”と思う事態が起きる可能性もあります。「想定外の事態」とは、まさに「想定外」に起きるからです。実際に起きた際には、できる限り慌てずに対処できるようにしたいものです。

イラスト/杉崎アチャ

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