マイホームの購入は、保険の見直しの好機です。特に、死亡保障については減額できる可能性が高いので、あらためて必要保障額を冷静に見積もるべきです。そして、医療特約や医療保険についても見直しを検討しましょう。
まず、住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合、通常、団体信用生命保険に加入しますから、返済中にローン契約者にもしものこと(死亡または高度障害)が起きた際には保険金がおりてローン残高と相殺されます。つまり、残された家族にはローンが残らないわけです。
ということは、残された家族のための必要保障額のうち、住まいを確保する部分については考慮する必要がなくなります。そのほかの考えるべき要素は、残された家族の生活費や教育費あたりでしょう。
生活費については、遺族年金や妻のパート収入などである程度カバーできるとすると、必要保障額として考えておくべきなのは子どもの教育費くらいに限定されてくるわけです。
今後の教育費をどの程度に見積もるかにもよりますが、子どもが2人でも1000万~2000万円もあれば十分でしょう。これまで加入していた死亡保障の金額がそれよりも多いなら、減額することで保険料負担を下げることができるはずです。もしくは、契約する保険会社自体も、保険料の安いところを探して変更してしまうのも得策です。
医療に関する特約、または医療保険そのものについても、見直し余地があるかどうかを確認しましょう。
死亡保障などの主契約となっている保険に、入院給付金などがもらえる医療保険を特約としてつけたり、単体の医療保険に加入したりしている人は多いでしょう。あらためて、その必要性の確認と、保障の金額が適切かどうか、保険料が適切かどうかも検討すべきです。
そもそも病気やケガで入院したとしても、いわゆる健康保険である公的医療保険がありますので、通常の入院であればそれほど高額な負担になりません。公的医療保険には高額療養費の制度があるからです。1カ月で100万円の医療費がかかっても、一般的な所得の人であれば9万円弱の負担で済みますし、月200万円の医療費でも10万円弱で済みます。
ただし、高額療養費の計算には入れられない差額ベッド代や食事代などの負担は別途必要になります。また、公的医療保険の適用外の治療や投薬は、全額自己負担です。
なので、民間の医療保険も多少は必要性があるかとは思われます。入院1日につき5000円や1万円がもらえる保障に1つくらいは入っておいたほうが安心かもしれません。
しかし、どんなに安心のためでも、2つも3つも加入するのはよくないと思います。というのも、一般的には入院自体が頻繁にあることではないですし、入院日数も長くなる確率が低めであるからです。
下表は、厚生労働省が3年ごとに公表している患者調査の概況(2017年版)です。傷病分類別の平均在院日数がわかります。全体の平均は29.3日ですが、これは統合失調症等(531.8日)なども含まれた数字となっていますので、かなり多いほうに引っ張られた数字だと考えられます。
多くの人が心配していると思われる悪性新生物(がん)だけを見ても、平均在院日数は20日にもなりません。35歳~64歳では2週間も入院しないことがわかります。
もちろん、だからといって長期入院はしないから大丈夫だと言いたいわけではありません。いくら確率が低くても、可能性は誰にでもありますので、1つくらいは医療保険に入っておいたほうが安心だろうとは思います。
あとは貯蓄とのバランスです。例えば、100万円程度、家族の医療費用のお金としてキープしておくことができるなら、医療保険の必要性はそれほど高くないでしょう。逆に、貯蓄に余裕がないなら、医療保険もきちんと加入しておきたいところです。ただし、それでも保険に加入することで貯蓄ができなくなってしまうのは本末転倒です。
20代30代といった若い世代ほど、優先すべきは貯蓄です。貯蓄が増えれば増えるほど、保障の必要性は下がっていきます。究極の理想は、保険に入らなくても心配ない状態。貯蓄がたくさんあるので全く心配がないという状態です。ぜひそれを目指してください。
なお、お祝い金の出るタイプや満期保険金の出るタイプなど、貯蓄性のある保険を提案されるケースも多いかと思いますが、そもそも保険に貯蓄性を求めるのはナンセンスです。手取りベースの運用利回りが、他の金融商品の利回りよりも高くなることは考えにくいので、保険は基本的に掛け捨てタイプを優先しましょう。
そして、保障を買うコストとして保険料が割安かどうかを比較検討することが重要です。一度契約したら終わりではなく、最低でも1年に1回程度は見直しをするようにしましょう。
イラスト/杉崎アチャ