住宅を買うときにかかる税金の1つに、「登録免許税」がある。聞き慣れない言葉だが、どのような税金でいくらくらいかかるのか、そして軽減などは受けられるのだろうか。知っておきたい、登録免許税の基礎知識について詳しく見ていこう。
そもそも、登録免許税とはどのような税金なのだろう。登録免許税の定義や対象から解説する。
住宅を購入するときには、土地や建物に買った人の所有権を登記する必要がある。これは法務局(登記所)にある登記簿に土地や建物の所有権を記録して公示するための手続きであり、簡単にいえば“この不動産は私が所有しているものです”ということを対外的に示すものだ。この登記手続きの際に国に納める税金を「登録免許税」という。
登録免許税の対象となるのは、大きく「土地」と「建物」の登記である。
土地 |
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住宅 |
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土地や中古住宅は自分が買う以前に別の持ち主がいるので、その持ち主(売主)から自分(買主)に所有権を移転する登記になる。これに対し、建物を新築する場合は新たに所有権を設定した登記簿を作成してそれを保存する登記になるのだ。
では、登録免許税はどのように算出できるのだろう。計算方法と免税されるケースについて解説する。
土地の所有権に関する登録免許税は、土地の評価額(固定資産税評価額)に税率をかけて計算する。税率は登記の種類によって異なり、土地の所有権移転登記(売買や贈与など)は2.0%(※)、相続、法人の合併または共有物の分割は0.4%となっている。
※2026年3月31日までの間に登記を受ける場合1.5%
建物の登記に関しては、建物(住宅用家屋)を新築したときの所有権保存登記はその固定資産税評価額に0.4%、中古住宅などの所有権移転登記(売買や贈与など)は2.0%を乗じて求めることとなっている。ただし、新築のため建物(家屋)に固定資産税評価額がまだ付けられていない場合には、法務局の登記官が認定した課税標準価格に税率をかけることになる。
なお、登録免許税は住宅ローンを借りるときにも課税される。金融機関が土地や建物に抵当権を設定する登記が必要になるからだ。抵当権とは土地・建物を担保にお金を融資し、もしも返済が滞ったら差し押さえて競売などにかけてその代金から貸したお金を優先的に回収できる権利のことで、抵当権の設定登記にかかる登録免許税は、住宅ローンの借入額に税率をかけて計算する。税率は0.4%だ。
登記の種類 | 登録免許税の税率(本則) |
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所有権移転登記(土地) | 評価額×2.0% |
住宅用家屋所有権保存登記(新築建物) | 評価額×0.4% |
住宅用家屋所有権移転登記(中古建物) | 評価額×2.0% |
抵当権設定登記(住宅ローン借り入れ) | 借入額(債権額)×0.4% |
通常は0.4%の登録免許税がかかる土地・建物の相続だが、2022年度(令和4年度)の税制改正によって、次の場合に免税措置を受けられることが決まった。適用期間も延長され、2025年(令和7年)3月31日までが対象となった。
メリットの大きい措置だからこそ、期間や条件をしっかり確認しておこう。
前述の税率は本則税率といって、登録免許税法に定められている本来の税率を示している。だが、住宅を購入するときは軽減措置が受けられ、税率が引き下げられる場合がある。
マイホーム購入時にさまざまな特別控除や軽減税率が用意されているように、登録免許税においても租税特別措置法に定められている軽減措置が用意されている。税率の軽減率は、登記の種類によって異なる。
登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
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土地の売買による所有権の移転の登記 | 2.0% | 1.5% |
土地の売買による所有権の信託の登記 | 0.4% | 0.3% |
住宅用家屋の所有権の保存の登記 | 0.4% | 0.15% |
住宅用家屋の所有権の移転の登記 | 2.0% | 0.3% |
上記のとおり、最大で1.7%も税率が引き下げられる。加えて、住宅用家屋が「長期優良住宅」の場合は所有権保存登記が0.1%に、所有権移転登記がマンションの場合は0.1%、一戸建ての場合は0.2%となる。このほか「認定低炭素住宅」では所有権の保存・移転の登記ともに0.1%に、宅地建物取引業者により所定の大規模修繕や耐震修繕、住宅性能向上などの増改築等がなされた物件の取得に関しても所有権の移転の登記が0.1%まで軽減される。
こちらの軽減措置にはいくつかの要件があり、まず登記簿上の床面積が50m2以上でないと軽減されない。
この「登記簿上の床面積」というのは、マンションの場合、壁の内側で囲まれた「内法(うちのり)面積」を指す。広告などに表示される専有面積は、壁の厚みの中心線で囲まれた「壁芯(かべしん)面積」なので、内法面積より少し広くなっている。つまり広告で50m2を少し超えている住戸でも、登記簿上は50m2未満となり、登録免許税の軽減が受けられないケースがあるので注意が必要だ。
なお、住宅ローン借り入れの際の抵当権設定登記も、軽減を受けると税率が0.1%に引き下げられる。
中古住宅の場合には、1982年以降に建築された建物であること等所定の要件を満たす必要がある。
前述した土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等、特定認定長期優良住宅など特定の住宅用家屋の所有権の保存・移転登記などにかかる登録免許税の税率軽減措置は2027年(令和9年)3月31日までとなっている。これは2024年度(令和6年度)の税制改正によって、3年延長されたかたちだ。該当家屋の新築または取得して居住の用に供し、取得から1年以内に登記を受ける必要があることを考えると、余裕を持って必要書面を用意するのが安心だろう。
具体的に登録免許税がいくらかかるのか、新築一戸建て、新築マンションそれぞれについて試算し、比較してみよう。なお、いずれも物件価格4000万円、住宅ローン借入額3000万円と仮定している。
税額の合計では、土地の評価額が高い新築一戸建てが最も高くなる。
土地評価額 1050万円 建物評価額1500万円 で試算
登記にかかる諸費用 | |
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土地の移転登記 | 15.75万円 |
建物の保存登記 | 2.25万円 |
建物の移転登記 | ― |
抵当権の設定登記 | 3万円 |
計 | 21万円 |
土地評価額 700万円 建物評価額1800万円 で試算
登記にかかる諸費用 | |
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土地の移転登記 | 10.5万円 |
建物の保存登記 | 2.7万円 |
建物の移転登記 | ― |
抵当権の設定登記 | 3万円 |
計 | 16.2万円 |
続いて、中古マンションと中古一戸建ての登録免許税の費用を見てみよう。新築物件と比較して、中古物件のほうが登録免許税が高いのがわかる。これは、建物の保存登記よりも移転登記のほうが税率が高いためだ。なお、いずれも物件価格4000万円、住宅ローン借入額3000万円と仮定している。
土地評価額 1050万円 建物評価額1500万円 で試算
登記にかかる諸費用 | |
---|---|
土地の移転登記 | 15.75万円 |
建物の保存登記 | ― |
建物の移転登記(要件を満たさない場合) | 30万円 |
抵当権の設定登記 | 3万円 |
計 | 48.75万円 |
中古住宅が所定の要件を満たし、所有権移転登記の税額軽減が利用できる場合には、移転登記に係る税額が4.5万円、合計額は23.25万円となる。
土地評価額 700万円 建物評価額1800万円 で試算
登記にかかる諸費用 | |
---|---|
土地の移転登記 | 10.5万円 |
建物の保存登記 | ― |
建物の移転登記 | 5.4万円 |
抵当権の設定登記 | 3万円 |
計 | 18.9万円 |
このように、登録免許税は1つの住宅に対し、抵当権を含めると3種類の登記それぞれに違う税率でかかるため、計算は少し複雑になる。
最後に、登記手続きの具体的な流れを解説する。
土地や建物の登記を行う場合は、オンラインもしくは書面で登記の申請人またはその代理人が申請を行う。不動産の売買や贈与などが決まった際は、まずどのような方法で誰が申請手続きを行うかを決めよう。
登記の申請時には、必要事項を記載した申請書と添付書類を登記所に提出する必要がある。申請書は自ら作成することもできるが、複雑な書面になるため、登録免許税の計算誤りも多い。そのため、実際には司法書士などの専門家に依頼するのが一般的だ。
専門家に依頼した場合、買主は特になにもしなくてもよい。その代わり、司法書士に手数料を支払うことになる。手数料はケースバイケースだが、5万~10万円前後を見ておこう。
登記手続きは、土地や建物の引き渡しと同時に行われるのが原則だ。引き渡しの際には代金の支払いと鍵の受け渡しが同時に行われる。住宅ローンを利用して購入する場合は、金融機関による住宅ローンの実行、つまり代金の口座への振り込みなども同時だ。そのため、引き渡しの手続きは金融機関の一室に売主や買主、不動産会社などの関係者が集まって行われることが多い。引き渡しと代金の支払いを同時に行うことを「同時決済」というが、登記手続きは同時決済のあとに、場所を法務局に移して行われる。無事に登記申請が処理されれば、「登記識別情報通知書」および「登記完了証」を受け取れる。
基本的な手続きは一任できるが、念のためきちんと軽減が受けられているかどうかを司法書士から渡される書類などで確認しておこう。
登録免許税は、不動産の登記手続きの際に国に納める税金のこと
登録免許税は土地や建物の評価額に税率をかけて算出される。ただし、相続においては一定条件下で免税される
登録免許税の軽減措置は令和9年3月31日まで延長された
登記申請は複雑な計算が多いため、申請手続きは司法書士などのプロに任せたほうが安心