「所得証明書」は、サラリーマン等が住宅ローンを借りて家を買う時や賃貸住宅に入居する時に必要な書類の一つです。所得証明書は市区町村が発行し、市役所などのほかコンビニで受け取れるケースもあります。
ただし、「所得証明書」ではなく「課税証明書」「課税非課税証明書」といった名称を用いる市区町村も多いので、所得証明書の取り方には注意が必要です。ここでは「所得証明書」の取り方や、本人以外の代理発行はできるのか、発行時に必要になるものなどについて説明しましょう。
所得証明書は、市区町村が発行する『所得額』が記載された書類のこと。所得額とは、各年(1月1日~12月31日)の収入(年収)から必要経費(会社員の場合は給与書等控除額)を差し引いた金額で、市区町村などが住民税(市区町村税・県民税等)を計算する際の基準となります。このため所得証明書は、収入を証明する公的な書類(収入証明書)の一つとして、住宅ローンや賃貸住宅の申し込みなどの際に提出を求められることがあります。
一方、「課税証明書」は、市区町村が発行する『住民税の課税額』を証明する書類のこと。課税額の計算基準となる『所得額』も掲載されているため、「課税証明書」は「所得証明書」として利用できます。実際のところ、「所得証明書」の代わりに「課税証明書」を発行する市区町村も少なくありません。
このため、所得証明書(課税証明書)の名称は市区町村によって異なり、大きく次の2パターンに分かれます。
一つは、「所得証明(課税・非課税証明書)/福岡市」「所得(市・道民税)証明書/札幌市」というように、『所得証明』というキーワードが入っているケース。
もう一つは、「市民税・県民税課税(非課税)証明書/横浜市」「市民税・県民税証明書/名古屋市」「特別区民税・都民税課税(非課税)証明書/千代田区」というように、『所得証明』というキーワードが入っていないケースです。
ですから、インターネットで検索した市区町村のページに「所得証明」という名称が無くても、「課税証明」「市民税・県民税等の証明」「税証明」などのキーワードが入っている書類があれば、それが所得証明書の代わりになると考えてよいでしょう。
所得証明書(課税証明書)は、翌年の1月1日に居住している市区町村で発行されます。例えば、2020年分の証明書は2021年1月1日に居住していた市区町村が発行するため、2021年1月2日以降に引越した場合、前住居の市区町村に請求することになります。
また、配偶者の扶養や年金、奨学金、融資(住宅ローン等)の申請など、所得証明書の利用目的によって、必要な「記載情報・証明する年・証明書の枚数」などが異なります。所得証明の提出先(銀行など)に事前に確認しておきましょう。
所得証明書(課税証明書)は、市役所の担当課(市民税課など)のほか、出張所や連絡所などで申請できるケースもあります。
本人が請求する場合に必要な物は、多くの市区町村が「本人確認書類(マイナンバーカード・免許証など)」と「手数料(市区町村で異なり、300~400円程度)」としています。このほか、窓口で「交付申請書(請求書)」を記載しますが、「証明書の利用目的」「どの種類の証明書が必要か」など、その場で分かりにくい内容もあるので、事前にダウンロードして、分からない点を提出先に確認しておくと申請の時短になります。
「委任状」と「代理人(来庁者)の本人証明書類」を持参すれば、本人以外(代理人)の請求も可能です。「委任状」はホームぺージでダウンロードし、必ず本人が記入。なお、該当市区町村内に住所があり、同一世帯の親族が申請する場合は委任状を不要とする市区町村もあります。
また、本人が請求する場合と同様に、手数料と交付申請書への記入も必要です。なお、窓口で申請する場合の持ち物については、市区町村によって異なる点もあるので、ホームぺージで事前に確認することをお勧めします。
所得証明書(課税証明書)は郵送申請ができます。また、全国で900を超える市区町村が、所得証明書や課税証明書などをコンビニで発行するサービスを導入。このサービスはマイナンバーカードを持つ人(本人)が対象で、全国のコンビニエンスストア等のキオスク端末(マルチコピー機)から所得証明書を取得できます。
このほか、スマホやパソコンなどからインターネットで申請し、所得証明書などを郵送してもらえる「オンライン申請」を導入している市区町村もあります。お住まいの市区町村のサービスについてホームぺージでチェックしてみるとよいでしょう。
ここまで所得証明書(課税証明書)の取り方を説明してきましたが、サラリーマンの場合、身近な書類が所得証明書の代わりになるケースもあります。それは「住民税(市民税・県民税等)の特別徴収額の通知書」または「住民税(市民税・県民税等)決定(納税)通知書」。
前者は、社員の住民税の納付を勤務先が行っている場合に、勤務先から配布されるもの。給与以外の収入がある場合などに市役所から送付されるもの。
毎年5~6月頃に配布(送付)され、前年度(前年1月1日~12月31日)の所得額と今年度の住民税の課税額が記載されています。
住宅ローンや賃貸住宅の入居申し込みの場合、この通知書を「収入を証明する書類」として認める金融機関や不動産会社もあるので、住宅の購入や引越しを考えている人は、これらの書類を保管しておくのがお勧め。わざわざ所得証明書(課税証明書)を取りに行く手間が省けます。
最後に、サラリーマン等の住宅ローンや賃貸住宅の申し込みには、所得証明書等の他に「源泉徴収票」が必要なケースがあります。源泉徴収票は、年末に勤務先から配布される書類で、年間の給与額や社会保険料、源泉徴収された税額などがまとめられたもの。直近で住宅ローンの借り入れや賃貸住宅の契約の予定がある人は、こちらも無くさないように保管しておきましょう。
以上のように所得証明書には、市区町村の役所に申請で発行される「所得証明書(課税証明書)」と、市区町村などから毎年受け取る「住民税の特別徴収額の通知書(住民税決定通知書)」などがあります。
所得証明書の提出を求められた時には、どの書類が必要なのか具体的に確認したうえで手配することが大切です。
「所得証明書」は「課税証明書」で代用できる
所得証明書を取る方法は、窓口申請や郵送申請がある
所得証明書をコンビニで入手できる市区町村もある