相続時精算課税制度とは?どんな手続きが必要?メリット・デメリットは?

相続時精算課税制度とは?どんな手続きが必要?メリット・デメリットは?

マイホームを手に入れるときに、親や祖父母から現金や土地などの贈与を受ける人は多いでしょう。今回は贈与を受ける前に知っておきたい「相続時精算課税制度」について、制度概要や利用するメリット・デメリット、利用時の手続きなどについて、税理士の池田里美さんに教えて頂きました。

相続時精算課税制度とはどんな制度?非課税枠はいくら?

贈与者1人につき、最大2500万円までの贈与が非課税になる制度

住宅を取得するとき、頭金分として親や祖父母から贈与を受ける人が増えています。その際に“オトクな制度”として「相続時精算課税制度」という制度を見聞きしたものの、詳細がわからないという方もいるかもしれません。

「相続時精算課税制度とは、親や祖父母からそれぞれ最大2500万円までの贈与について、贈与税が非課税になる制度です。贈与財産の種類には制限はなく、現金や不動産などで利用できます。贈与回数にも制限はありません」(税理士 池田里美さん。以下同)

家の模型をもつ2世代家族の写真
相続時精算課税制度は、親世代の長寿化が進んでいるため、子世代に財産を早めに渡す(=贈与する)のを促すことを主旨として創設されました(画像/PIXTA)

相続時精算課税制度は、以下を満たす場合に利用が可能です。

・親や祖父母などの贈与者が、贈与をした年の1月1日時点で60歳以上
・子や孫などの受贈者が、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上
・贈与者と受贈者の関係が、親子か祖父母と孫であること

ちなみに、控除額の上限は贈与者ごとに2500万円です。例えば、父から2500万円、母から2500万円、祖父母4人からそれぞれ2500万円、合計1億5000万円の贈与を受けても、すべての贈与者について相続時精算課税制度を選択すれば贈与税がかかりません。

贈与税 非課税枠の上限

相続時精算課税制度の説明
夫同様、妻もすべての贈与者について相続時精算課税制度を選択すれば、夫婦で合計3億円の贈与を受けても贈与税はかかりません(画像/SUUMO編集部)

また、制度の選択は贈与者ごとに行います。例えば、父からの贈与は相続時精算課税を選択し、母からの贈与は暦年課税(詳細は後述)を選択することも可能です。

相続税が発生しない場合には制度を利用しても

相続の総額が相続税の基礎控除額に収まる場合は、相続税の課税はない

ただ、相続する財産総額が相続税の基礎控除額(※)に収まる場合は、どのタイミングで財産をもらっても最終的に相続税の支払いは発生しないので、相続時精算課税制度を使って早めに贈与を受けてもよいでしょう。

相続時精算課税制度を利用した場合の相続税の計算例
相続時精算課税制度を利用した場合の相続税の計算例。相続発生時の手元財産2000万円と、この制度の利用以降に行われた生前贈与1000万円との合計額3000万円は相続税の基礎控除範囲内なので、相続税は課税されません(画像/SUUMO編集部)

生前贈与を受けても、相続税は課税される

相続時精算課税制度で注意したいのが、この制度を使って生前贈与を受けたときに2500万円までは贈与税はかかりませんが、相続時には、この制度の利用以降の生前贈与と、相続発生時の手元財産との合計額で相続税が計算される点です。

相続時精算課税制度を利用時した場合の相続税の計算例
相続時精算課税制度を利用した場合の相続税の計算例。相続発生時の手元財産6000万円と、この制度の利用以降に行われた生前贈与2500万円との合計額8500万円に、相続税が課税されます(画像/SUUMO編集部)

贈与税がかかっても、早めに生前贈与を受けてながく住み続ける

「例えば、今住んでいる親名義のマンションにずっと住み続けたいと考えている方は、制度を利用して早めに贈与してもらうのも1つの手です。2500万円を超えた金額分には贈与税がかかりますが、購入するより安く済むケースは多く、ずっと住み続けられる安心も得られます」

3500万円のマンションを贈与する例
3500万円のマンションを贈与する例。相続時精算課税制度の上限2500万円までは贈与時に課税されず、残りの1000万円については20%の贈与税が課税されます。そして、相続発生時に3500万円が相続税の対象となりますが、既に課税された贈与税分は還付されます(画像/SUUMO編集部)

一方で、財産総額が相続税の基礎控除を超え、相続税が発生する可能性がある場合は、他の税制を利用した方が節税につながるかもしれません。自分がどちらなのかわからない方は、相続時精算課税制度の利用前に税理士に相談することをオススメします。

※相続税の基礎控除:計算式は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」。法定相続人とは、民法で定められた相続人で、被相続人に配偶者と子ども2人がいる場合は、配偶者+子ども2人=3人が法定相続人となる

住宅取得なら特例制度を利用しても

贈与されたお金を住宅取得のために使うなら、「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」という非課税制度を利用する方法もあります。

住宅取得等資金贈与の非課税の特例とは、令和3年12月31日までの間に、両親や祖父母から住宅取得資金として贈与を受けた場合、一定の金額が非課税となる制度です。非課税限度額は建物の種類や契約日によって異なり、令和3年3月31日までは最大1500万円(消費税10%、省エネ等住宅の場合)となります。

相続時精算課税制度と、住宅取得等資金贈与の特例を混同される方はとても多いので注意してください。住宅取得等資金贈与の特例制度は、
・相続時に贈与分を精算しなくてよいこと
・暦年贈与を利用できること
(詳細はデメリット箇所を参照)が、相続時精算課税制度との大きな違いです。

住宅取得のために資金贈与を受けるなら、まずはこの特例制度の利用を検討するとよいでしょう」

住宅購入イメージ
住宅取得等資金贈与の特例は、相続時精算課税制度か暦年課税と組み合わせて使うことも可能です(画像/PIXTA)

相続時精算課税制度を使うメリット・デメリットは?

メリットは、相続時の争いを回避しやすいこと

贈与に関するいくつかの税制と比較すると、相続時精算課税制度のメリット・デメリットはどのような点でしょうか。

「大きなメリットは、親や祖父母が亡くなったときの相続よりも、もめにくい点です。生前贈与は“渡す側”の意向を反映した贈与になりますし、多くの子や孫は親や祖父母の言うことであれば聞くので、『本人がそう言うなら』という同意を得やすいケースが多いです。

このメリットを活かすためには、制度を使うときに当人同士だけで決めず、相続人全員と話し合う機会を持つとよいでしょう」

他のメリットには、相続税の節税効果があげられます。
「例えば、親名義の賃貸物件や投資物件の家賃収入は親の財産になるため、相続時までに財産が大きくなると相続税が発生します。これらの物件を、相続時精算課税を使って早めに贈与すれば、家賃収入は子どもの財産となるため、その分は相続税の節税につながります」

さらに、値上がりする可能性がある財産の贈与についても節税効果があります。例えば、住宅や株式などの財産は贈与時点での金額になるため、贈与時よりも相続時に値上がりしていれば節税効果が得られます。ただ、価格は下がる可能性もあり、その場合はより多く税金を払うことになるため、必ず節税できるとは限りません。

2階立て賃貸アパートイメージ
親名義の賃貸物件や投資物件を贈与すれば、物件はもちろん、家賃収入も子どもの財産になります(画像/PIXTA)

デメリットは、一度選択したら撤回できないこと

相続時精算課税制度は、一度選択すると、制度の利用を撤回することができません

「相続時精算課税制度を選択すると、生前贈与によく利用される暦年贈与が使えなくなります。暦年贈与とは、1年間の贈与額が110万円までなら贈与税が非課税になる制度です。

1年では110万円ですが、10年で1100万円、30年で3300万円と、長い期間をかけるほど節税効果は大きくなります。将来、節税対策に暦年贈与を利用する可能性がある方は、相続時精算課税制度を選択する前に税理士に相談するとよいでしょう」

また、相続時精算課税制度を利用して土地を贈与すると、相続時に小規模宅地等の特例が使えなくなります。小規模宅地等の特例とは、自宅の土地のうち330m2までは評価額が80%減額される制度で、評価額が減額されることで相続税の負担が軽くなります。ただし、相続直前に子が親と同居しているなど、いくつかの要件を満たす必要があります。

「土地価格が高い都市部の方は、小規模宅地等の特例を使わないと莫大な相続税が発生するケースがあります。親や祖父母の家に同居している方は、小規模特例を使えば相続税がかからないこともあるので、深く考えずに相続時精算課税制度を選択することは避けた方がよいかもしれません」

他には、諸費用が高くなる点です。建物や土地を相続する場合は登録免許税のみですが、贈与の場合は登録免許税と不動産取得税が必要になります。さらに登録免許税の税率は、相続時が0.4%、贈与は2.0%となります。税額は不動産価格によって変わりますが、例えば、課税標準額が2000万円の土地の登録免許税は、相続では8万円、贈与では40万円となります。

相続相談をする夫婦の写真
相続時精算課税制度は、選択後に利用を撤回することができません。選択する前には税務署の相談会に参加したり、税理士へ相談するとよいでしょう(画像/PIXTA)

相続時精算課税制度の手続き方法は?

申告は贈与を受けた翌年、期間内に行う

相続時精算課税制度を利用するためには、初めて贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税申告期間)に、贈与税の申告を行う必要があります。申告の際に提出する書類は以下の通りです。

●「贈与税の申告書」と「相続時精算課税選択届出書」
両方とも国税庁のホームページから入手できます。相続税精算課税制度を利用する場合は、贈与税の申告書の第一表と第二表の両方を記入します。

●添付書類
添付書類は、贈与する財産や、受贈者が推定相続人であるか否かなどにより異なります。受贈者が贈与者の子や孫である場合には、次の3つの書類が必要になります。いずれも、贈与を受けた日以降に取得した書類を添付する必要があります。

1:受贈者の戸籍謄本又は抄本
(受贈者の氏名、生年月日、受贈者が贈与者の推定相続人である子か孫であることがわかる書類)

2:受贈者の戸籍附票の写し
(受贈者が20歳に達したとき以後の住所又は居所を証する書類)

3:贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の戸籍の附票の写しなど)※
(贈与者の氏名、生年月日、贈与者が60歳に達したとき以後の住所又は居所がわかる書類)
※令和2年1月1日以後の贈与については不要

「申告書や添付書類を期限内に提出しないと、相続時精算課税制度が適用されず、暦年課税での贈与税が課税されるので注意しましょう。自分はどの書類が必要なのかを早めに把握し、計画的に用意しておくとスムーズに進めやすくなります」

ちなみに、相続時精算課税制度を選択すると、申告をした翌年以降、110万円以下の贈与でも、その贈与者から贈与を受けたら贈与税の申告が必要です。ただ、申告初年度以外は選択届出書と添付書類が不要になります。この申告を怠ると贈与税が課税されたり、延滞税や加算税を支払う場合があります。申告時期は確定申告と同じなので、確定申告をする人は、贈与税の申告も一緒に行うと良いでしょう。

土地を贈与される場合は追加書類も準備

相続時精算課税制度を利用して土地の贈与を受ける場合、上記の添付書類に加え「土地の評価明細書」を提出します。

「土地の評価明細書は、土地の評価額を算出し明確にする書類です。書類は国税庁のホームページから入手できますが、評価方法が煩雑で難しいため、税理士が作成するケースが非常に多くなっています。まずは書類を入手して確認し、記入が不安な方は早めに税理士に相談しましょう」

贈与税の申告書イメージ
贈与税の申告書、相続時精算課税選択届出書、戸籍謄本などの必要書類を期限内に提出しないと、適用できなかったり、ペナルティがあることも…(画像/PIXTA)

相続時精算課税制度を使う前に、他の制度も調べておきたい

生前贈与には、相続時精算課税制度だけでなく、暦年贈与や住宅取得等資金贈与の特例など、いくつかのおトクな制度があります。

「住宅取得に際して贈与を受ける場合、現在は優遇を受けられる制度か複数あります。ただ、制度により適用条件が異なりますし、ご家庭ごとに財産総額や相続人数は違うので、わが家の場合はどの制度がおトクになりそうか、よく調べておくことがとても重要です。

しかし、多くの方が家の間取りやデザイン、どの物件を購入するかなどに気を取られ過ぎて、制度に関する情報収集を後回しにしがちです。その結果、おトクな制度を見逃したり、相続発生時に大変な思いをするケースがあります。

金銭の贈与はもちろん、親名義のマンションや土地をもらう、二世帯住宅を建てる予定がある方は、贈与や相続を見越したうえで土地や建物の登記をしたいものです。そして贈与のために相続時精算課税制度を使う際には、当人同士だけでなく親族も交えて税理士に相談し、アドバイスを受けおくことをオススメします」

まとめ

贈与者1人につき最大2500万円までの贈与が非課税になる制度で、父・母・祖父母の4人から合計1億5000万円の贈与を受けることが可能

相続時には、相続時精算課税制度の利用以降の生前贈与と、相続発生時の手元財産との合計額で相続税が計算される

“渡す側”の意向を反映した生前贈与となるため相続時の争いを回避しやすいというメリット、一度選択すると制度の利用を撤回できず、暦年贈与が使えなくなるというデメリットがある

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取材・文/山南アオ
公開日 2020年07月28日
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