2020年5月29日現在、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がまだまだ続いています。日本経済だけでなく世界経済に与えるインパクトは、10年ほど前のリーマンショックをはるかに超える大打撃となってしまいそうな情勢です。
不安を煽るような記事は書きたくないのですが、自営業者やフリーランスで働いている人たちの多くは、すでに売上減少や収入減が始まっているでしょうし、仕事がなくなってしまったという人もいることでしょう。アルバイトやパートで働いていた人も、勤務先の休業などで働けなくなってしまった人もいると思います。
現時点では給与の減っていない会社員も、勤務先企業が業績悪化になれば、ボーナスカットや給与カットが実施される可能性もありますし、最悪の場合は勤務先企業の破綻によって失業してしまうかもしれません。
このような状況が続くと、住宅ローンを返済中の人にとっては、これからの返済に不安を感じる人も多いことでしょう。今回は、住宅ローンの返済が苦しくなってしまったときの対処法をまとめたいと思います。
結論から言うと、返済が苦しくなったら、というか、返済が苦しくなりそうな雰囲気を感じたら、できる限り早く返済中の金融機関に相談しましょう。毎月の返済額を減らしたり、返済期間を延長したりなど、返済条件の変更を受け付けてくれる場合があるからです。
【フラット35】の運営母体である住宅金融支援機構では、以下のような返済方法の変更メニューを用意しています。
変更メニュー | 対象となる人 | 効果と注意点 |
---|---|---|
返済特例 (返済期間の延長など) |
新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少し、返済が苦しくなった | ・毎月の返済額を減らすことができる ・総返済額は増加する |
中ゆとり (一定期間、返済額を軽減) |
しばらくの間、返済額を減らして返済したい | ・一定期間、毎月の返済額を減らすことができる ・減額期間終了後の返済額と総返済額が増加する |
ボーナス返済の見直し | ボーナス返済が負担になっている | ・ボーナス返済月の変更 ・毎月返済分・ボーナス返済分の返済額の内訳変更 ・ボーナス返済の取り止め |
ただし、「返済特例」については、以下の3つの項目すべてに当てはまる人が対象となります。
「返済特例」を受けられる人は、最長15年の返済期間の延長が可能になります(ただし、完済時の年齢上限は80歳)。さらに、現在失業中または収入が20%以上減少した人は、最長3年の元金据置期間を設定することが可能になります。つまり、最長3年間は利息の支払いだけで済むということです。
いままさに返済が苦しいという人にとっては、多少なりとも目先の負担を緩和する方法として、利用を検討してもよいでしょう。ただ、注意点としては、返済期間を延長したり、元金を据え置いたりすると、トータルの利息の負担は重くなります。今後の総返済額が増加するということです。慎重に検討すべきでしょう。
「中ゆとり」についても同様です。一時的に返済額を減らすことはできますが、トータルの利息の負担は重くなります。利用せずに乗り切れるのであれば、利用しないに越したことはありません。
「ボーナス返済の見直し」については、総返済額に与える影響はそれほど大きくはありません。今後のボーナス減少の可能性を考えると、ボーナス返済の割合を下げるのもひとつの方法です。ただし、ボーナス返済の割合を下げた分だけ毎月返済額が増えることになるので注意が必要です。
これを逆手に利用するのであれば、現在ボーナス返済を利用していない人が、ボーナス返済を利用することで毎月返済額を減らすこともできます。毎月返済が苦しくなりそうな人は、ボーナス返済を利用するのもひとつの方法です。ただし、ボーナス返済の割合を高めるほど、ボーナスが減ったときの危険性が高まりますので注意すべきでしょう。
なお、【フラット35】の団体信用生命保険(機構団信)を利用している人で、収入減少などの条件に当てはまる人は、団信特約料(保険料)を最長6カ月猶予してもらえる措置も実施されています。
【フラット35】以外の住宅ローン商品については、各金融機関によって対応が異なる場合があります。それでも、現在の情勢からして、返済が苦しくなった場合の返済条件の変更は、柔軟に受け付けてくれる可能性が高いでしょう。とにかく、現在返済中の金融機関等に相談することが先決です。できる限り早めに連絡してみましょう。
イラスト/杉崎アチャ