最近の光熱費の高騰に愕然としている人は多いはず。特に、住宅を建てたり購入したりした人の中には、以前より住宅が広くなって想定外の光熱費の出費に困っている人も。このままでは来年の夏にもエアコン代が家計を圧迫しそうです。こんな場合、保険や住宅ローンなどは、どう見直せばいいのでしょうか。
ここ7年ほどの電気代・ガス代・水道代の推移を、消費者物価指数の数値で見てみると、確かに、2021年から2022年にかけて、電気代とガス代は4割ほど上昇したことがわかります。
グラフを見ると、2023年に入って電気代・ガス代は少し下がってきた感じはしますが、下表のように、消費者物価指数の数値は、前年同月比で+3%を超える上昇が続いています。
・2023年7月の消費者物価指数
「総合指数」… 前年同月比+3.3%
「生鮮食品を除く総合指数」… 前年同月比+3.1%
「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数」… 前年同月比+4.3%
日本銀行の政策委員による先行きの物価の見通し(中央値)は、
・2023年度 … 前年度比+2.5%
・2024年度 … 前年度比+1.9%
・2025年度 … 前年度比+1.6%
ということで、日本銀行の物価上昇の目標である「安定的に前年比+2%」というのは、まだ微妙に届かない見通しのようです。
とはいえ、ジリジリと物価が上がっていくことは間違いなさそうです。今後も、光熱費や日常生活費にかかわるモノの値段が上昇していくとすると、ますます家計を圧迫する可能性が高まります。
「物価の上昇率」を「手取り給与の上昇率」が上回っているなら、教育費の急上昇などイレギュラーな出費が増えていない限り、基本的に生活が苦しくなることはありません。しかし、手取り給与が増えない状況が続いたとすると、ジリジリと生活は苦しくなってしまう可能性があります。
家計の見直し、住宅ローンの見直し、保険の見直しなど、家計全般の見直し余地を探りましょう。特に、保険については、必要な保障があるなら、それを掛け捨ての保険で準備することで、保険料負担を軽くすることができます。
昨今の低金利下では、貯蓄性のある保険商品(満期保険金やお祝い金が出るタイプ、死亡保険の終身タイプ)は、他の運用商品(債券や投資信託など)と比べて不利な場合が多く、掛け捨ての保険商品と比べると保険料が高くなっていますので、ご注意ください。
住宅ローンの見直しとしては、とにかく金利の低いローンに借り換えを検討しましょう。借り換えの諸費用を考慮しても、総返済額が減る可能性がある、毎月返済額が減る可能性があるなら、借り換えをすべきです。
毎月の家計運営が苦しくなってきているなら、固定金利から変動金利への借り換えを検討してもよいでしょう。それで毎月返済額が減らせるなら、貯蓄を減らすことなく乗り切れるかもしれません。
一方、ある程度の貯蓄があるなら、「返済額軽減型」の繰り上げ返済をして毎月返済額を減らす方法もあります。
残存期間20年 | 残存期間25年 | 残存期間30年 | |
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借入金利 年0.5% |
13万1380円 →12万7000円 (-4380円) |
10万6400円 →10万2854円 (-3546円) |
8万9756円 →8万6764円 (-2992円) |
借入金利 年1.0% |
13万7968円 →13万3369円 (-4599円) |
11万3061円 →10万9293円 (-3768円) |
9万6491円 →9万3275円 (-3216円) |
借入金利 年1.5% |
14万4763円 →13万9938円 (-4825円) |
11万9980円 →11万5981円 (-3999円) |
10万3536円 →10万84円 (-3452円) |
ほとんど利息のつかない預貯金に、ただただ置いてあるお金なのであれば、貯蓄を取り崩して家計の足しにするのではなく、このような返済額軽減型の繰り上げ返済をするのもひとつの方法です。数千円でも毎月返済額が減るなら、年間で数万円程度の負担軽減効果が得られます。その分だけ家計にゆとりが生まれるでしょう。
20年、30年といった比較的長期の運用期間を確保できる場合は、住宅ローンの借入金利と期待できる運用利回りを比較し、繰り上げ返済なのか、資産運用なのかを検討することも重要です。昨今の住宅ローンの金利が低いからこそ、繰り上げ返済よりも、きちんと運用を考えたほうが有利になる可能性もあるのです。
日本の公的年金の積立金の運用のように、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式といった4資産に均等に分散投資をするシンプルな積立投資でも、過去の実績からすると、20年30年の期間をとれば、年4~6%の運用利回りを達成できる可能性が十分にあります。そのくらいの利回りが得られるなら、住宅ローンの繰り上げ返済に充てるよりも運用したほうがおトクです。
今まさに住宅ローンは、令和の時代に入り、過去の常識とは考え方を変えるべき時期が来ているようにも思えます。「無茶な返済計画で住宅ローンを組むのはNG」という点は不変ですが、「とにかく住宅ローンは早く返したほうがいい」とは一概に言えなくなってきています。教育資金や老後資金の準備状況など、個別の家計の事情によってもベターな見直し法は異なりますが、過去の常識も経済情勢の変化に応じて変わっていくということは知っておくとよいでしょう。
物価上昇は続きそう。家計、保険、住宅ローンの見直しなど家計全般の見直しを探ることが必要
住宅ローンは金利の低いローンへの借り換えを検討
ある程度の貯蓄があるなら、繰り上げ返済で毎月返済額を減らす方法も
長期運用が可能なら、繰上げ返済よりも高利回りが期待できる運用を検討する選択肢も
イラスト/杉崎アチャ