住宅ローン繰り上げ返済のメリットや注意点。繰り上げ返済額の決め方は?

最終更新日 2024年09月24日

住宅ローン繰り上げ返済のメリットや注意点。繰り上げ返済額の決め方は?

住宅ローンの返済は毎月やボーナス時に決まった金額を支払う方法が一般的だが、任意で借入元金の一部をまとめて支払う「繰り上げ返済」という方法もある。どんなメリットや注意点があるのか、繰り上げ返済額やタイミングの決め方なども併せて見ていこう。

住宅ローンの繰り上げ返済とは?

繰り上げ返済とは手元に余裕資金があるときに、月々やボーナス時の返済とは別に任意で借入元金(以下、元金)の一部を返済する方法のこと。支払ったお金はすべて元金の返済に充てられるので、支払う予定だった利息を減らすことができる。

繰り上げ返済にはどんなメリットがある?

繰り上げ返済のメリットは、住宅ローンの返済負担を軽くできることだ。返済期間を短くしたり、月々の返済額を減らすことができる。

 
元金の全額を返済する「全額繰り上げ返済」に対し、一部だけ返済することを「一部繰り上げ返済」ともいう。以下で述べる繰り上げ返済はすべて一部繰り上げ返済についてだ。

繰り上げ返済には2つのタイプがある。繰り上げ返済によって返済期間が短くなる「返済期間短縮型」と、繰り上げ返済後の毎月返済額が減額される「返済額軽減型」だ。

返済期間が短くなるタイプ(返済期間短縮型)とは

繰り上げ返済のイメージを示したのが下記の図だ。この図で確認すると、返済期間短縮型は繰り上げ返済した額に相当する元金が“中抜き”される形となり、短縮された期間分の利息がすべてカットされることがわかる。繰り上げ返済することで返済期間が短くなるので、「退職までに住宅ローンを完済したい」といったケースで有効だ。

返済額が軽くなるタイプ(返済額軽減型)とは

一方、返済額軽減型は繰り上げ返済した分だけ元金が減るのは同じだが、返済期間は変わらず、繰り上げ返済後の元金残高と残りの返済期間で返済額を計算し直す仕組みだ。元金が減っているので利息も減り、毎月の返済額が軽くなる。このタイプが適しているのは、「教育費が重くなるのに備えて月々の返済負担を軽くしたい」といったケースだ。

繰り上げ返済の返済期間短縮型と返済額軽減型のイメージ図

返済期間短縮型のほうがトータルの軽減額が大きい

繰り上げ返済でどのくらいの支払いを減らせるのか。3000万円を金利1.9%(固定型)、35年返済で借り入れ、3年後に約100万円を繰り上げ返済する設定で試算したのが下記の表だ。

まず繰り上げ返済をせずにずっと返済し続けた場合を試算すると(1000円以下切り上げ)、毎月返済額は9万8000円で、35年間の総返済額は4110万円ほど。この住宅ローンを返済期間短縮型で繰り上げ返済すると、返済期間が1年7カ月短縮され、総返済額は約83万円の軽減となる。

一方、返済額軽減型で繰り上げ返済をすると、毎月返済額が4000円軽くなって9万5000円にダウンする。総返済額は約34万円の軽減だ。

繰り上げ返済のタイプによる軽減額の比較

3000万円を借りて3年後に約100万円繰り上げ返済するケース。
※1000円以下切り上げ。繰り上げ後の総返済額には繰り上げ返済額を含む。返済期間短縮型の繰り上げ返済額は102.9万円。

▼当初の資金計画
借入額 金利 返済期間 毎月返済額 総返済額(A)
3000万円 1.90% 35年 9万8000円 4110万円
▼返済期間短縮型
残りの期間 毎月返済額 総返済額(B) 軽減額(A-B)
30年4カ月 9万8000円 4027.1万円 82.9万円
▼返済額軽減型
残りの期間 毎月返済額 総返済額(C) 軽減額(A-C)
31年11カ月 9万5000円 4076.6万円 33.4万円

このように同じ時期に同じ額を繰り上げ返済すると、返済期間短縮型のほうがトータルの軽減額が大きくなる。また、同じ金額でも早い時期に繰り上げ返済したほうが軽減は大きくなり、金利が高いほうが軽減効果は大きい。

繰り上げ返済の注意点

手数料がかかる場合がある

繰り上げ返済をする場合、窓口で手続きをすると数万円の手数料がかかるケースがあるので注意したい。ただし、インターネットで手続きする場合は無料のケースがほとんどだ。借り入れ時に保証料を一括払いしている場合は、保証料の一部が返戻される際の保証会社の事務手数料も確認したい。無料になるケースも多いが、窓口で手続きする場合は1万円程度かかるケースもある。

返済期間短縮型は月々の支払いが変わらない

返済期間短縮型は支払う利息を大きく減らせる点がメリットだが、繰り上げ返済した後も月々の支払いは変わらない。ローンを早く返すという意味では効果があるが、その後の家計が苦しくならないよう見通しを立てることが大切だ。

繰り上げ返済すると貯蓄が減ることになる

繰り上げ返済をすると手元の貯蓄を取り崩すことになる点にも気をつけたい。当面は使う予定がないという理由で、安易に貯蓄を繰り上げ返済に使ってしまうと、いざというときに困ることにもなりかねない。住宅設備や家電の故障といった予定外の出費があると、それだけで10万円単位の負担になることもある。ある程度の予備費は常に手元に残しておくようにしたい。

繰り上げ返済額の決め方

繰り上げ返済できる下限額がある

金融機関によって繰り上げ返済をできる金額に下限を設けており、いくらからできるかは金融機関やローンにより異なる。1万円以上としている金融機関が多いが、1円以上という銀行もある。なお、【フラット35】では金融機関の窓口で手続きする場合は100万円以上の返済が必要だが、インターネットの場合は10万円から繰り上げ返済できる。

なお、繰り上げ返済額の上限はその時点のローン残高だ。ローン残高の全額を繰り上げ返済することを「全額繰り上げ返済」と呼び、手数料が別途かかるケースが多い。

住宅ローン控除との兼ね合いも考えて

入居したばかりのころは住宅ローン控除を利用する人も多いだろう。住宅ローン控除とは年末の住宅ローン残高に応じて、所得税や住民税が入居から13年間減税されて戻ってくる制度。控除期間中に住宅ローンを繰り上げ返済するとローン残高が減り、戻ってくる税金が減ってしまう場合もある。住宅ローン控除の控除率である0.7%より低い金利で住宅ローンを借りている場合は、13年間の住宅ローン控除期間(住宅の条件によっては10年間)が終わってから繰り上げ返済したほうがトータルの負担が軽くなるケースもあるので注意しよう。

また、繰り上げ返済で返済期間を短くすると、住宅ローンを借りるときに加入した団信(団体信用生命保険)の保険期間も短くなる。

繰り上げ返済の最適なタイミングの決め方

早い時期に繰り上げ返済するほど効果が大きい

繰り上げ返済は早い時期に行うほど利息の軽減効果が大きい。例えば3000万円を借りて返済期間短縮型で100万円繰り上げ返済する場合、5年後に繰り上げ返済したとすると、返済期間が1年6カ月短縮されて、トータルで支払う利息が約75万円軽減される。これに対し、同じく100万円を10年後に繰り上げ返済すると、返済期間の短縮は1年5カ月となり、トータルの利息軽減額は約60万円に減少する計算だ。

繰り上げ返済のタイプによる軽減額の比較

3000万円を借りて返済期間短縮型で100万円繰り上げ返済するケース。
※1000円以下切り上げ。繰り上げ後の総返済額には繰り上げ返済額を含む。繰り上げ返済額は5年後が101.2万円、10年後が105万円。

▼当初の資金計画
借入額 金利 返済期間 毎月返済額 総返済額(A)
3000万円 1.90% 35年 9万8000円 4110万円
▼5年後に繰り上げ返済
残りの期間 毎月返済額 総返済額(B) 軽減額(A-B)
28年5カ月 9万8000円 4035.6万円 74.4万円
▼10年後に繰り上げ返済
残りの期間 毎月返済額 総返済額(C) 軽減額(A-C)
23年6カ月 9万5000円 4050.1万円 59.9万円

「まとめて」より「こまめに」繰り上げ返済するほうが効果は大きい

住宅ローンの繰り上げ返済は1回限りではなく、複数回行うことができ、回数の制限もない。

繰り上げ返済は手元にお金がある程度貯まってからまとめて実行したほうがよいイメージがあるかもしれないが、実は少額ずつでもこまめに繰り上げ返済したほうが効果は大きい。例えば3000万円を借りて返済期間短縮型で繰り上げ返済するケースでは、5年後にまとめて100万円繰上げ返済すると、返済期間が1年6カ月短縮され、トータルの利息が約75万円軽減される。これに対し、1年ごとに20万円ずつ5年間繰り上げ返済すると、返済期間の短縮は1年8カ月、利息の軽減額は約87万円となる計算だ。

繰り上げ返済の額による軽減額の比較

3000万円を借りて返済期間短縮型で繰り上げ返済するケース。
※1000円以下切り上げ。繰り上げ後の総返済額には繰り上げ返済額を含む。繰り上げ返済額は「5年後にまとめて」が101.2万円、「1年後~5年後までこまめに」が合計109万円

▼当初の資金計画
借入額 金利 返済期間 毎月返済額 総返済額(A)
3000万円 1.90% 35年 9万8000円 4110万円
▼5年後にまとめて100万円繰り上げ返済
残りの期間 毎月返済額 総返済額(B) 軽減額(A-B)
28年5カ月 9万8000円 4035.6万円 74.4万円
▼1年後~5年後まで毎年20万円ずつこまめに繰り上げ返済
残りの期間 毎月返済額 総返済額(C) 軽減額(A-C)
23年6カ月 9万5000円 4023.6万円 86.4万円

ただし、前述のように繰り上げ返済を銀行の窓口で手続きすると手数料がかかる場合がある。こまめに繰り上げ返済をしてそのたびに手数料を払っていると、せっかく利息を減らしても効果が薄れてしまうので気をつけよう。

6カ月~1年程度の生活費は残しておこう

このように繰り上げ返済は住宅ローン控除との兼ね合いに気をつけつつも、なるべく早い時期に、少額からでも実行すると利息の軽減効果が高くなる。とはいえ、繰り上げ返済のしすぎで手持ちの貯蓄がゼロになってしまうのは避けたい。では、貯蓄や臨時収入などのうちどのくらいを繰り上げ返済に充てればよいのか。

まず確保しておきたいのは、教育資金や老後資金だ。教育資金は進学する学校が私立なのか公立なのか、文系か理系かなどによって変わるので、あらかじめどの程度の費用がかかるのかを念頭に計画的に貯蓄するようにしたい。老後資金については退職金と年金でもらえる額から退職時のローン残高や老後の生活費を差し引き、不足する分を手元資金で補えるよう貯蓄を確保する必要がある。

さらに現役時代の生活費についても、病気やケガによる入院などによる予期せぬ出費や収入ダウンに備えて、6カ月~1年分程度の予備費を手元に残すようにすべきだろう。これらの必要なお金を除いたうえで、なお貯蓄に余裕があるのであれば、住宅ローンの繰り上げ返済に充てることが可能となる。

長い目で見て繰り上げ返済のメリットは小さくはないが、家計に支障が出てしまっては本末転倒だ。生活費や教育費などとの兼ね合いも考慮しながら利用するようにしよう。

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済には返済期間短縮型と返済額軽減型があり、同じ時期に同じ金額を繰り上げ返済するのであれば返済期間短縮型のほうが利息の軽減効果が大きい。

繰り上げ返済はなるべく早い時期に、少額からでも実行したほうが効果は大きくなるが、窓口での手続きは手数料がかかるので要注意。

繰り上げ返済のしすぎで家計が圧迫されないよう、生活費や教育費、いざというときの予備費を確保したうえで実行しよう。

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監修/SUUMO編集部
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