建築資材の値上がりやウッドショック、人件費増、古家付き土地を買った場合は解体費の高騰など、ここ数年、家を買う人、建てる人にとってはコストが心配な環境が続いています。そしてさらに円安。さまざまなものの値上がりはこれからも続きそうです。そんな中、頭金を数年かけて貯めてから家を買うよりも、いま、予算内での購入に踏み切ってしまったほうがよいのでしょうか?これからマイホームを買う場合の考え方のポイントを解説します。
下のグラフは国土交通省が毎月公表している「不動産価格指数の推移(住宅)」です。これを見ると、マンションは2013年あたりから価格上昇が続いていることがわかります。住宅地や戸建て住宅については、2020年あたりから上昇傾向になっているようです。
ここ最近では、「ウッドショック」とか「アイアンショック」などと呼ばれ、木材価格や鋼材価格が高騰してきています。さらに、円安も進み、輸入物価の上昇から国内物価も上昇傾向になっているように見受けられます。
これからマイホームを買おうとする場合、どのように考え、どのようなスタンスで返済計画を立てていけばいいのか、ポイントを整理しましょう。
いま、将来の夢のマイホームのために、頑張って頭金を貯めている人もいるかもしれませんね。その行動自体は素晴らしいです。でも、ハッキリ言います。その頭金を貯めている時間がもったいないです。その間に支払っている家賃ももったいないです。
不動産価格や建築コストが上がりそうだから、というのが一番の理由ではありません。それも気にすべきではありますが、不動産価格や建築コストの先行きは正確には予測できません。外部要因の気にし過ぎは禁物です。
住宅ローン金利の動向や、住宅ローン減税などの制度の有無なども同様です。それらを理由に、早く買ったほうがいいかどうか、早く建てたほうがいいかどうかを判断するのはよくないでしょう。
一方で、自分と家族のライフプランや、家計の収支状況や貯蓄状況は内部要因です。これらの内部要因が、住宅取得のタイミングを考える最も重要な要素になります。
したがって、頭金が貯まっているかどうかだけではタイミングは判断できないのですが、トータルの住居費負担(家賃負担や住宅ローン返済、維持費の負担など)は、早く買った(建てた)ほうが軽くなります。
例えば、現在の毎月の家賃が10万円だったとすると、頭金を貯めるのに1年かかれば120万円、2年かかれば240万円の家賃負担が続くことに。
現在は、住宅ローン金利が超低金利の水準にあるので、頭金を多く入れることで借入金額を減らしても、トータルの利息負担がそれほど大きくは減りません。頑張って頭金を貯めるより、早く買って(建てて)家賃負担から卒業し、住宅ローンの返済を始めたほうが、金銭的にはトクなのです。
ただし、マイホームを急いで買うのはキケンな人もいるので、該当する人は注意しましょう。
まずは、現在、貯金ゼロの人。
特に、結婚をして何年も経っているのに貯金ができない人は、まずは家計簿をきちんとつけて、家計の見直しをしましょう。将来の教育資金や老後資金を貯めながら住宅ローンを返済していくことができるような家計にするためにも、貯金をする練習が大切です。
それでも、貯金の練習をする時間がもったいない、早く買いたい、という人は、いまの家賃の半額くらいの住宅ローン返済で、60歳くらいまでに返済が終了するような返済計画が立てられるなら、なんとかなるかもしれません。
それから、結婚して1年経っていないような新婚夫婦も急いで買うのはキケンです。家計が安定して、貯金をしっかりできる家計であることを確認できてからにしましょう。子どもを産むことも考えているなら、子どもが生まれるまで待ったほうが安全です。共働きができるのかできないのかで、資金計画は大きく変わります。老後の生活も大きく変わるでしょう。
とにかく、住宅取得の資金計画を立てるのは、冷静に慎重に行うべきです。夢のマイホームを悪夢のマイホームにしないためにも、教育資金や老後資金のことも考慮した安全な計画を立てるようにしましょう。
マンションは2013年ころから、土地や戸建ては2020年あたりから価格が上昇傾向に
住宅価格の上昇傾向はまだ続きそう、いまは頭金を貯めるより、早く家を取得したほうが金銭的にはトク
現在、貯金ゼロの人は貯められない理由の分析を!家計簿をつけるところからはじめよう
新婚カップルは急いで家を買うのは要注意。家計の安定としっかり貯蓄できるかを見極めてから
イラスト/杉崎アチャ