次にくる住みたい街はここだっ! ~二子玉川編~

次にくる住みたい街はここだっ! ~二子玉川編~

「みんなが選んだ住みたい街ランキング2015 関東版」(リクルート住まいカンパニー調べ)では15位という微妙なランクに甘んじているものの、今後はランキング上位にガッツリ食い込んでくると予想されるのが、東京都世田谷区と神奈川県川崎市の境に位置する「二子玉川(通称ニコタマ)」です。
多摩川に隣接する郊外エリアにありながらも交通至便で、東急田園都市線(東京メトロ半蔵門線直通)を利用すれば渋谷まで約15分、大井町線を利用すれば自由が丘へもたったの10分ほどです。さらに今年5月には、民間が手がけたプロジェクトとしては都内最大スケール(東京ドーム約2.4個分)を誇る再開発事業が終了し、駅東側にショッピング施設・住居棟・オフィス棟・公園からなる巨大複合施設「二子玉川ライズ」がグランドオープンしました。利便性、快適性ともに劇的に進化を遂げたと噂される二子玉川は、はたしてどんな街へと生まれ変わったのか? 実際に街を歩きながら魅力を探っていくことにしましょう。

マツコに「世界で一番嫌いな街かも知れない」と言わしめた二子玉川

歩き始める前に、まず質問です。二子玉川と聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか?
「都心に近いわりに、自然が豊かで子育てがしやすそう」「さりげなくオシャレでセンスのいい人が暮らす街」と素直に答える人がいる一方で、「ファッション誌『VERY』や『STORY』を読んでいるような上昇志向の強いママさんたちが住んでるイヤミな街でしょ?」と、憧れとやっかみが入り交じった複雑な感情を抱いてしまう人も、おそらくは少なくないはずです。
ちなみに毒舌で知られるマツコ・デラックスは、バラエティ番組『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)のなかで、二子玉川をこんな言葉で一刀両断に切り捨てました。

「私、ニコタマって世界で一番嫌いな街かもしれない。合わない、私には。世田谷区に住みたいなんてヤツは、ファッション誌をうのみにするようなヤツラなのよ!」

日本で一番ならともかく、世界で一番嫌いとは、ずいぶん辛辣(しんらつ)な物言いですよね(苦笑)。マツコ嬢の語った二子玉川のイメージが実際と合っているかどうかは、さておき。確かに二子玉川という街には、上質、上品、高級という「ブランドイメージ」があるのは事実です。実際に駅周辺を歩いてみると、エルメスのバーキン片手にウインドーショッピングを楽しむ若いママや、高級レストランで真っ昼間からワインを楽しむマダムたちの姿が、あたりまえの日常風景として見られます。
都心部の歴史のある閑静な住宅街ならまだしも、郊外の二子玉川に、こうしたプチセレブたちが暮らすようになったのはなぜなのでしょう?

ニコタマ流
サンダル履きの普段着姿で有名ブランドのバッグを持ったり、シンプルでありながらも素材のいいものを身に着けていたりと、これ見よがしではなく、あくまで自然体なのが〝ニコタマ流″のオシャレ

二子玉川の歴史

1907(明治40)年 玉川電気鉄道開通
1909(明治42)年 玉川遊園地開園
1922(大正11)年 玉川第二遊園地開園
1925(大正14)年 玉川プール開場
1954(昭和29)年 第二遊園地が東急運営の二子玉川園へとリニューアル
1969(昭和44)年 玉川高島屋S・Cオープン
1992(平成4)年 二子玉川園跡地の一角にナムコ・ワンダーエッグ開業
1995(平成7)年 いぬたま・ねこたま開業
2007(平成19)年 二子玉川東地区市街地再開発事業着工
2011(平成23)年 第一期再開発事業が終了、「二子玉川ライズ」が一部オープン
2015(平成27)年 第二期再開発事業が終了、「二子玉川ライズ」が完成

上記の年表を見ても分かるとおり、二子玉川はもともとは、遊園地やプールがつくられたのをきっかけに庶民の憩いの場・行楽地として発展を遂げたエリアです。大正~昭和初期には多摩川での観光鮎漁や鵜飼いも盛んで、川沿いには多くの料亭や旅館が軒を連ねていたとも伝えられています。
昔から華やかな街であったことは分かりますが、現在の二子玉川のイメージとはつながりませんよね。二子玉川が庶民の行楽地から、セレブが集まる商業地、住宅地へと変貌を遂げることになったきっかけは、何だったのでしょうか?

地元の歴史に詳しい「大勝庵 玉電と郷土の資料館」の大塚勝利館長(72)に、二子玉川という街がブランド化していった理由をうかがったところ、こんな答えが返ってきました。

「玉川の風光明媚(めいび)でのどかなロケーションに魅力を感じた政財界人たちが、昭和初期に高台の瀬田地区に邸宅や別荘を建てて住むようになったのが、玉川=セレブが暮らす住宅地というイメージが形成される一つの要因になったとも考えられます。でも、街としてのブランド価値を高めるきっかけをつくった最大の功労者といえば、やはり『玉川高島屋』でしょう。デパートがこの街につくられたのを機に、それまでとは人の流れががらりと変わりましたからね」

大塚館長
瀬田の農家の生まれで、かつては二子玉川商店街で「大勝庵」という蕎麦屋さんを営んでいた大塚さん。現在は同じ場所に「玉電と郷土の歴史館」を開設。館内には本物の玉電の運転台をはじめ、郷土資料、昭和レトログッズなどを展示している

玉川高島屋S・Cは、昭和44年に二子玉川にオープンした日本初の「郊外型デパート」。それまでは都心部の繁華街に出店するのがデパート経営の常識でしたが、高島屋は、モータリゼーションの時代が到来することを見越し、自動車で訪れる買い物客を想定した新しい店舗づくりをこの地で行ったそうです。

「住民たちは玉川みたいな郊外にデパートなんかつくって、はたしてお客が来るのだろうか? と最初はみんな不安に思っていたんですよ。でも高島屋さんにはちゃんと勝算があった。彼らは二子玉川が、成城と田園調布という、富裕層が多く住むと言われる住宅街の中間地点に位置しているという点に目をつけたんです。当時はまだ庶民層には自動車はそれほど普及していませんでしたが、富裕層にとっては自動車移動がすでに当たり前になっていましたからね。高島屋さんのもくろみは見事に的中し、富裕層が街に多く訪れるようになるにつれ、街全体のイメージも徐々に上質なものに変わっていったというわけです」(大塚館長)

印象がまるで異なる駅の西側と東側

前置きはこれくらいにして、いざ街を歩いてみることにしましょう。まずは駅の西側からスタートします。駅前には、街のブランドイメージを牽引してきた玉川高島屋(本館・南館・西館・東館)がそびえています。シャネル、ルイヴィトン、フェンディなど、海外ブランドのショーウインドーが連なる様子は、まさに〝ニコタマダム″御用達デパートといった趣ですが、裏手に一歩足を踏み入れると、風景は一転。昔ながらの商店街(二子玉川商店街)が続く、庶民的な風景が広がっています。
さらに用賀方面へと歩みを進めると、昭和初期に政財界人の別荘地となった住宅街(瀬田地区)に到着。一角には「岡本静嘉堂緑地」「旧小坂家住宅・瀬田四丁目広場」など、かつての邸宅の庭園を一般開放したスポットもあり、うっそうと茂る木々や季節の花を眺めながら、のんびり自然散策が楽しめます。周辺住人によると「ここいらは野鳥や昆虫も多いけど、タヌキもしょっちゅう顔を出すのよ」とのこと(笑)。

玉川高島屋本館
今も西口のシンボル的存在として愛されている「玉川高島屋S・C」(写真は本館)。広大な駐車場を備え、百貨店と専門店街が同居する画期的な店舗スタイルは、その後の郊外型ショッピングセンターのビジネスモデルともなった
「玉川高島屋S・C」(西館)
海外ブランドのショップが多く入っている「玉川高島屋S・C」(西館)。高島屋のお客の年齢層は比較的高めで、駅東側に新しくつくられた商業施設ライズとはすみ分けがなされている。本館と南館の屋上は緑化されていて、休憩にもオススメ
二子玉川商店街
新旧入り交じった小さな店舗が軒を連ねる二子玉川商店街。ライズや高島屋ばかりに注目が集まりがちだが、個人商店が集まる昔ながらの商店街もまだまだ元気。地域活性化のためのアートイベントや祭りなどにも積極的に取り組んでいる
岡本静嘉堂緑地
三菱財閥の岩崎弥之介・小弥太父子所有の庭園を一般開放した「岡本静嘉堂緑地」。園内にはれんが造りの静嘉堂文庫(写真)や美術館などある。近くの「瀬田四丁目広場」には昭和初期の実業家・小坂順造(元信濃毎日新聞社長)の邸宅も残っている

では再び駅前に戻り、今度は再開発が終了したばかりの駅東側を歩いてみましょう。東地区はかつて遊園地やナムコワンダーエッグなどがあった場所ですが、現在、跡地には巨大複合施設「二子玉川ライズ」がつくられ、街はすっかり様変わりしています。
2011年に第一期再開発事業が終了し、住居棟「二子玉川ライズタワー&レジデンス」のほか、「二子玉川ライズS.C.」「ドッグウッドプラザ(西口)」「バーズモール」などの商業施設がオープン。
今年の春には第二期再開発事業も終了し、「二子玉川ライズS.C.テラスマーケット」「シネマコンプレックス」「二子玉川エクセルホテル東急」(7月開業)などが新しくオープンしました。
再開発エリアというと、無機質で味気のない街並みを想像しがちですが、ライズは「水・緑・光」をコンセプトにつくられたというだけあって、ゆとりや心地よさが感じられる空間となっています。緑も多いし、郊外エリアだけあって空も広々としていて、開放感満点です。

駅から住居棟へと続くプロムナード(リボンストリート)沿いには、日本初出店となるスペイン王室御用達のグルメストア「マヨルカ」、ニューヨーク発祥のカジュアルレストラン「バビーズ」などスタイリッシュな店も多く、一見「よそいきの街」といった印象がありますが、ライズS.C.地下には、約600㎡の食料品フロアからなる「東急ストア」「東急フードショー」などもあり、普段の買い物にも不自由を感じることはなさそうです。

玉川ライズS.C.のテラスマーケット
今年5月にオープンした玉川ライズS.C.のテラスマーケット。屋上部分はルーフガーデンとなっていて、木々や草花が植えられているだけでなく、人工の小川やめだか池なども整備されている。一角にはオフィス棟も建っており、今年8月には楽天本社(1万人弱)が移転してくる予定
青空デッキ
テラスマーケットの屋上につくられた「青空デッキ」。富士山を背景に多摩川や二子橋を行き来する田園都市線の姿を一望できるほか、夏は花火(たまがわ花火大会・今年は8月22日に開催予定)の特等席となる。夜景もロマンチック

新しいライフスタイルが生まれる可能性を秘めた街

新しくオープンした二子玉川ライズS.C.テラスマーケットのなかで、とくに注目を集めているのが「二子玉川 蔦屋家電」。蔦屋といえば本やDVDなどを扱うショップというイメージがありますが、この店舗では本と一緒に家電を販売しています。
なぜ、ほかの地域とは異なるコンセプトの店を二子玉川に開くことになったのか?出店の理由を、蔦屋家電の経営母体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の蔦屋家電広報・細井ミエさんにうかがいました。

「当社では、これまでも代官山や藤沢の蔦屋書店など、書籍や雑誌などを通じてライフスタイルを提案するリコメンド型の店舗を展開してきましたが、スマートフォンの普及状況を見ていくうちに、これからはソフトだけでなく、ハードとしての”家電″もライフスタイルに影響を与える大きな要素になりえるのでは……と考えるようになったんです。音楽も聴けて、写真も撮れて、さまざまな機器ともリンクするスマホを手にしたことで、私たちの生活は劇的に変化しましたよね。スマホだけでなく、最近の家電のなかには、生活をより快適にカスタマイズしてくれるものが、まだまだたくさんあります。当店では各売り場に、専門知識をもったコンシェルジュを配置し、お客様の望むライフスタイルをうかがいながら提案やアドバイスをさせていただいているので、ぜひ気軽に話しかけてみてください」

築野由佳さん
各売り場には、専門知識をもったコンシェルジュが常駐。機器の使い方はもちろんのこと、それぞれのライフスタイルにあった商品選びのアドバイスなども受けられる。コンシェルジュの経歴もユニークで、食の売り場ではレストランやカフェ勤務経験者(写真:築野由佳さん)、美容家電売り場には美容室勤務経験者、旅関連本のフロアには、豪華客船「飛鳥」のマネジャー経験者らを配置

「蔦屋家電」は、もともとは、趣味や生活にこだわりをもったプレミア世代(団塊世代)をターゲットに企画された店舗だそうですが、二子玉川には世代関係なく「食・住・健康」に対する意識の高い人々が多く住んでいるせいか、店内はさまざまな世代のお客でにぎわっているようです。

「これまでの二子玉川は、どちらかというと、50代・60代の多いマダムの街といった印象があったのですが、ライズがつくられたことで若いファミリー層が確実に増えているのは感じますね。高齢者からファミリー、学生まで、さまざまな世代が住むようになったのは、街としても素晴らしいことだと思うんです。文化には「継承」というものがすごく重要です。上の世代が次の世代に文化や知識を伝えていってこそ、そこに上書きされて新たな文化が生まれていく。そういう意味でも年齢層のバランスのとれた二子玉川は、今後、新しいライフスタイルや文化の発信地となる可能性を秘めた街といってもいいのかもしれませんね」(細井さん)

蔦屋家電
店内にはソファや椅子も多く設置されていて、併設されたスターバックスのコーヒー片手に本を読みながらくつろぐことも可能。家庭のリビングの延長のような気持ちで気軽に利用できるとあって、住民たちにも好評だとか

週末や休日は20~30代の買い物客が目立つライズですが、平日のプロムナードを歩いてみると、細井さんがおっしゃるとおり、三世代がそれぞれ思い思いに街を楽しんでいる姿が見られます。ベビーカーを押しながらウインドーショッピングを楽しむ主婦、ベンチに腰掛けて談笑するお年寄りたち、公園で遊びに興じるちびっ子たち。これは、渋谷や青山、六本木などの都心部の商業地では絶対に見られない風景です。
あまりにショップやレストランが充実しすぎているため、表層だけをとらえるとライズは単なるショッピング&グルメタウンのように思われがちですが、ここにはちゃんと地に足が着いた″生活”が存在していることが分かります。

近くに自然があってこそ、人間的な暮らしが営める

では、この街で暮らす生活者のみなさんは、二子玉川のいったいどこに一番魅力を感じているのでしょう?取材時に出会った10人前後の人に話を聞いたところ、ほとんどの人からは「ライズや高島屋もいいけど、やっぱり一番のお気に入りは多摩川の河川敷かなぁ」という意外な答えが返ってきました。

多摩川は駅から歩いてたったの3分の近距離にあります。広大な河川敷では、ジョギングやサイクリング、川遊び、釣り、バーベキュー(川崎市側の河川敷のみ可)などが楽しめるのはもちろんのこと、なにもせずにぼんやりと広い空と川面を眺めているだけでも心が癒やされます。東京近郊には、買い物に便利で都心部に出やすい街はたくさんありますが、こんなに身近で壮大な風景を楽しめるのは、まさに二子玉川ならではといっていいでしょう。
ちなみに、二子玉川の住民の皆さんの表情には、総じて余裕やゆとりのようなものが感じられますが、その秘密はどうやら多摩川の自然にあるようです。経済的にいくら豊かでも、心にストレスを抱えていては、余裕は生まれません。多摩川のような自然風景のなかにいつも身を置いているからこそ、気持ちの余裕が生まれるのでしょう。

兵庫島公園
河川敷に整備された「兵庫島公園」。もとは野川と多摩川のデルタ地帯だった場所で、現在は二子玉川の住民たちの憩いの場となっている。マンション住民たちにとっては、気軽に出かけられる多摩川河川敷は、自宅の庭のようなもののようだ
川を渡った先には二子新地の街並みが広がっている
川を渡った先には二子新地(川崎市)の街並みが広がっている。ゆったりとした時間が流れる河川敷では、のんびり読書を楽しむ主婦や、サックスやトランペットなどの楽器を練習する学生、魚釣りの男性などの姿が。日が沈む時間帯の風景が最も美しい

気になるのが家賃相場ですが、新しくつくられた「二子玉川ライズタワー・レジデンス」は、賃貸の2LDKで月額30万円前後とちょっぴりお高め。とはいえ、駅の西側には築年数にこだわらなければ比較的リーズナブルな物件(ワンルームの家賃相場は6万円台後半)もあるので、探してみる価値はありそうです。

今回、取材班は、じつはマツコ同様に「ブランド好きが暮らす、スカした街なんだろうなぁ」と、やっかみ半分で二子玉川を歩き始めたのですが、「非の打ち所がない街」というのが、歩き終えた後の正直な印象です。のどかな自然もあれば、洗練された都会的な要素もあるし、お年寄りから赤ちゃんまですべての世代が暮らしている。さらに三世代それぞれが楽しめる場所がちゃんと用意されている……。人間が快適に暮らせる街の条件をすべて凝縮したのが、新しく誕生した二子玉川なのです。8月に楽天本社が移転してきたら、ビジネスマンたちの姿が一気に増加し、さらなる活気が加わることでしょう。

最近は雑誌やテレビに取り上げられることも多い二子玉川ですが、今後さらに注目必至のエリアとなりそうです。

取材・文:中村宏覚 撮影:鈴木さや香

公開日 2015年07月29日
最終更新日 2016年09月22日
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