次にくる住みたい街はここだっ! ~川越編~

次にくる住みたい街はここだっ! ~川越編~

美しい「蔵造りの町並み」で知られる埼玉県の川越は、ここ10年ほどで年間650万人もの観光客が訪れる関東屈指の観光地に成長し、テレビや雑誌でも頻繁に取り上げられています。その一方で、観光に訪れたのをきっかけに「住んでみたい」と思う人が増えているようです。
SUUMOの「みんなが選んだ住みたい街ランキング2015」(リクルート住まいカンパニー調べ)の総合ランキングでは圏外でしたが、埼玉県民が選んだ「居住都県別ランキング」では6位にランクイン。2014年の圏外から、いっきにランクアップを果たしていることからも、川越には、単なる観光地に留まらない魅力がありそうな気がします。それはいったい何なのか? 歩きながら掘り下げていきたいと思います。

意外にも、駅前は超都会!?

「小江戸」と称され、しっとりした「和」のイメージが強い川越ですが、駅前はビックリするほど都会的なことをご存じでしょうか。
JR・東武東上線が通る「川越駅」の周辺は、「ルミネ川越」「アトレ川越」といった、20、30代の若者向けの人気商業施設がそろっています
東口を出てすぐには、全長1200mにおよぶ巨大な商店街「クレアモール」が。ここは、アパレルショップや居酒屋・飲食店やカラオケなどがズラリと建ち並ぶ若者の街で、原宿の竹下通りにたとえられるほどにぎわっています。
川越駅から歩いて数分の距離にある西武新宿線「本川越」の駅前には「西武本川越ペペ」「イトーヨーカドー」などがあり、日用品や生鮮食品の買い物に便利。
飲食店、アパレルショップ、スーパーの環境は、大宮並みに整っているのではないでしょうか。都内在住の取材班から見ても、もはや東京に行く必要はないのでは……という気がするほど。

JR・東武東上線川越駅
JR・東武東上線川越駅。「アトレ川越」も直結している
西武新宿線本川越駅前。左手の建物が「西武本川越ペペ」
西武新宿線本川越駅前。左手の建物が「西武本川越ペペ」
百貨店やアパレルショップが建ち並ぶ「クレアモール」
百貨店やアパレルショップが建ち並ぶ「クレアモール」

明治・大正・昭和・平成が共存する町並み

クレアモールを抜けると、大正時代の石造りの建物が残る「大正浪漫夢通り」に出ます。プチヨーロッパのようなかわいらしい町並みを着物で闊歩(かっぽ)する人がいたりと、ここまで来ると駅前とは別世界。
さらその先は、「蔵造りの町並み」として有名な「一番街」となっており、川越のシンボル「時の鐘」などの観光名所が点在。重厚な明治期の蔵づくりの建物が数多く残る一角で、まさに「小江戸」の風情を堪能できます。和雑貨店やレトロなカフェ、「川越いも」「コエドビール」や鰻といったグルメも盛りだくさんで、とにかく街歩きが楽しい。大通りもいいですが、一歩路地を入れば、昔ながらの商店もあり、歩くほどに新しい発見があります。

「もともと古い街に憧れがあって、京都の町家や鎌倉の古民家で暮らしてみたいなぁと思っていたんですが、川越に行ってみて、レトロな町並みに惚れ込みました。かわいいカフェや雑貨店も多いし、歴史ある街で四季を感じながら暮らせたらすてきだなあと思います」
というのは、最近、引越し先に川越を検討しているという都内在住の文化系女子。また、「都内に住んでいるときは、自分の住む街に両親や友人を呼ぶことはあまりなかったけど、川越に越して来てからは、ちょくちょく遊びに来てくれるようになりました。私も、自分の街を案内できるのが楽しいですね。それに、外からたくさんの観光客が来るから、街に活気があるのがいいです」と、結婚を機に川越に越して来た30代男性は言います。
やはり、観光地としての成功が住む人にとっての魅力にもなっているようです。

ヨーロッパ調の石造りの建造物が並ぶ「大正浪漫夢通り」
ヨーロッパ調の石造りの建造物が並ぶ「大正浪漫夢通り」
一番街を人力車で観光する親子
一番街を人力車で観光する親子
川越のシンボルと言われる「時の鐘」
川越のシンボルと言われる「時の鐘」

川越に、こんなに活気がある理由は?

とはいえ、じつは一番街は、30年ほど前はよくある寂れかけた地方都市のひとつだったそうです。それがたった30年ほどで、観光客は3倍以上に、人口も約6万5000人も増加した背景には、住民の大きな働きがありました。

「一番街は、江戸時代のころから『商人の街』として栄えた川越の中心地でした。明治26年(1893)に大火があって、川越の3分の1が焼けてしまったのですが、商人たちは防火性にすぐれた土壁の蔵をつくり、街を復興しました。これが今の蔵造りの町並みなんです。ところが、時代が下って昭和50年(1975)ころになると街の中心が駅前に移っていき、一番街には数えるほどしか人が来なくなってしまったんです。そこで、”どうにかして一番街に人を呼び戻そう”と、若手の商店主たちが集まって1983年に『NPO法人川越蔵の会』を発足させました」

そう教えてくださったのは、NPO法人川越蔵の会の代表理事・原知之さん。
NPO川越蔵の会は、市民を中心とした町並み保存・まちづくり活動の先駆け的存在。これまでに、一番街の景観を損なう看板の掛け替え、電柱の地中化、アスファルトから石畳への変更といった提言を行い、行政と協力して景観保護を実現させてきました。この努力が実って、一番街を中心とした周囲7.8haのエリアは、1999年に全国で54番目の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたのです。

「じつは昭和40年(1965)ころには既に、専門家から蔵造りの町並みを残したほうがいいという指摘はありました。けれどそのころはまだ、商店主たちも蔵の価値に気づいていなかったし、『文化財に指定されると、釘一本打てなくなって商売がしにくくなるのではないか?』と、蔵の保存に消極的だったんです。そこで蔵の会の前身は、『まずは、商店街を活性化することで蔵を保存していこう』という切り口で働きかけ、住民の賛同を得ていきました。この街に住んでいる自分たちの手で、街を盛り上げていかないとダメだと思ったのです」(原さん)

「お上に任せっきりにするのではなく、自分たちで街を盛り上げよう!」という住民の気概なくして、現在の川越の活気はありえなかったわけです。今でこそ”街づくり”や”住民が主体となる”というコンセプトはよく見かけますが、それを30年以上前に行った一番街店主たちの先見の明には驚かざるを得ません。

NPO法人川越蔵の会代表理事の原知之さん
NPO法人川越蔵の会代表理事の原知之さん

市民の団結力が強い理由

川越市には、蔵の会のほかにも、町会や商店会組合、市民団体など、住民が主体となり地域活動をする団体が数多くあります。このように川越市民の結束力が強い理由は、「川越まつり」の伝統が息づいていることが大きいと言えるでしょう。
「川越まつり」は、毎年10月の第3土・日曜に開催される、川越氷川神社の例大祭を起源とする祭りで、2日間で90万人を超す人々を動員する関東有数の祭り。1台1億数千万円(!)という豪華な山車(だし)が街を練り歩き、山車がすれ違う際にリズミカルで優美なお囃子(はやし)で競い合います。

「川越まつり運営には、すごくたくさんの人と組織が関わっているの。お囃子をやる人は子どものころから囃子連に入って練習するし、山車を先導する人も、町会で何年も下積みしてからルールを勉強しなければならない。それこそスタートは雑巾掛けからだよ(笑)。大変に感じるかもしれないけど、やっぱり祭りは最大の楽しみで、僕らの誇りだから。会社員なんか40やそこらで出世コースが決まっちゃうでしょ?いつまでも会社にしがみついてないで、早く祭りに参加したほうがいいよ(笑)」(60代シルバーボランティア男性)

川越では、こんなふうに祭りを軸にした結束があり、子どもからシニアまで、世代間の交流も盛んなのです。
とはいえ、このような伝統が息づく「古都」ほど排他的で、よそ者が入りづらいのではないかという心配もあります。
「いえいえそんなことはありません、大歓迎ですよ。私たちの町会では、毎年まつりの日に、新しく町会に入った方や、生まれた子どもを皆さんに紹介するんです。新しく引越して来た方は、まず、町会に挨拶に行ってみるといいんじゃないですか。きっとあたたかく迎えてくれると思いますよ」(原さん)

観光客を魅了し、住みたい人が増え続けているいちばんの理由は、こうした人の絆の強さとオープンさゆえなのかもしれません。

「川越まつり会館」に展示されている山車
「川越まつり会館」に展示されている山車

オリンピック開催地として、街をさらに盛り上げる

そんな川越をさらに盛り上げていこうと、行政も頑張っています。

「2020年の東京オリンピックのゴルフ競技が、市内の『霞ヶ関カンツリー倶楽部』で開催予定です。市ではこれを機に、国内外でのPR活動に、さらに力を入れていく予定です。観光客によってにぎわいが生まれ、街の魅力が高まることで定住人口が増加することを狙い、地元への愛着が育まれることを目指します」(川越市政策企画課)

という大きな目標をかかげ、ファミリーに向けての新しい政策を強化しています。
子育て関連では、産前産後の家事・育児をサポートする「川越市第三子多胎児産前産後ヘルパー派遣事業」などが行われており、ウェブページ『ママフレ』や、育児情報誌『こえどちゃん』、メール配信サービスなどを設け、子育てに関する支援制度や補助金などの情報提供を充実させています。

教育関連にも注目です。
子どもたちの素朴な疑問に大学教授たちがやさしく答える「子ども大学かわごえ」は、地元川越の3つの大学(東京国際大学、尚美学園大学、東洋大学)が連携して子どもたちの学びを育む、日本初の試み。あの池上彰さんも講義を行いました。
また、先進的な理数教育を行う「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に、県立川越高校、県立川越女子高校が指定されており、2010年には、ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章・東京大宇宙線研究所長が、川越高校で講演を行っています。じつは梶田さんは、川越高校の出身。
「母校からノーベル賞受賞者が出たのは本当に誇らしいですねぇ。ほかにも川越高校からは、福澤桃介のような明治の実業家から、内田康夫さんやコエドビールの『コエドブルワリー』の社長さんといった、各界で活躍している有名人も出ていますよ。あ、それから、映画『ウォーターボーイズ』はうちの高校のシンクロ部がモデルなんです(笑)」とは、川越高校出身の編集者男性。
伝統ある街で育つと学力も上がる!? かは分かりませんが、お子さんの教育に力を入れたい家庭にとっては気になる街ではないでしょうか。

川越市民の憩いの場になっている「川越水上公園」
川越市民の憩いの場になっている「川越水上公園」。家族でのレジャーにもぴったり

どんどん開発されていく西口

蔵造りの町並みとは反対側の川越駅西口側(駅の南側)の開発も進んで来ています。
じつは、これまで川越のにぎわいは、蔵の町並みやクレアモールがある東口側(駅の北東側)が中心で、西口側にはこれといった商業施設などはありませんでしたが、2014年春には、西口駅前広場のロータリーがリニューアルし、地上とデッキで車両と歩行者が完全分離され、安全性が向上しました。ここから、タクシーや路線バス、空港連絡バスなどが発着しています。
また、2015年春には、西口徒歩数分の場所に、複合拠点施設「ウェスタ川越」がオープン。1700人収容の大ホールや、市民活動・生涯学習施設・男女共同参画推進施設・南公民館・証明センター・子育て支援センター・市民相談室などの公共施設のほか、ショッピングセンター「ウニクス川越」も入っています。

コミュニティ施設が集まる「ウェスタ川越」
コミュニティ施設が集まる「ウェスタ川越」。写真左の「ウニクス川越」には、スーパーマーケットや保育所などが入る

さらに、今年(2016)春には、これまでひとつしか出口がなかった西武新宿線本川越駅に、西口が開設されます。この西口の開設によって、本川越駅と東武東上線川越市駅との乗り換え所要時間が、約11分から約5分へ短縮され、駅周辺の移動の利便性がアップ。これを機に、西口にも新しい人の流れができ、さらに街は活性化していくことでしょう。

気になる交通や家賃相場は?

では最後に、川越の家賃相場と交通事情について触れておきましょう。

川越駅にはJR川越線と東武東上線、本川越駅には西武新宿線と、街の中心には3つの路線が通っています。どの線も乗り換えなしで都内まで行けるのが魅力ですが、都内に出るなら、値段・速さともに東上線に軍配が上がります(池袋駅まで38分470円 ※平日7時台の直通運転の場合)。けれど、座って通勤したい派は、JR・西武新宿線の始発を狙うのがオススメ。目的地や用途によって使い分けられるのが便利です。2013年からは、東武東上線・東急東横線・横浜高速みなとみらい線との相互直通運転(東京メトロ副都心線経由)が開始され、横浜まで1時間30分で乗り換えなしで行くことができるようになったのも高ポイントですね。

家賃や分譲住宅の相場は、1K・1DKの5.1万円(大宮は5.6万円/SUUMO家賃相場 2016年1月22日現在)。新築一戸建ての場合は、駅から徒歩20分程度の3LDKで、2000万円台前半〜3000万円台の物件が多い様子。交通の便が良いぶん、川越線沿線の近隣駅よりは少し価格は上がりますが、大宮と比べるとかなりおトク感があります。

伝統と利便性を備えた川越はただのベッドタウンではない!

さて、今回取材してみて感じたことは、川越は、交通や家賃相場・地価や商業施設の面がバランス良く充実していながらも、伝統や、昔ながらの地域コミュニティが息づき、単なる東京のベッドタウンにはない懐の深さがあるということです。川越っ子のように、誇りをもって自分たちの街に関わっていくことで、「ただ、帰って寝るだけ」では得られない豊かな人生経験をもたらしてくれるのではないでしょうか。

取材・文:鈴木さや香 撮影:中村宏覚
公開日 2016年03月02日
最終更新日 2016年09月22日
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