和室の壁によくある、長押(なげし)というハンガーなどをつるせて便利な木の板。この長押にはどんな役割があるのだろうか? 長押があると壁面が有効に使えるため収納に便利だが、どのように活用されているのか? 取り付け方は簡単なのか? など、長押の可能性に迫る。
長押とは、和室の壁面をぐるりと囲む化粧部材で、開口部のすぐ上にある長押は内法長押(うちのりなげし)と呼ばれており、この部分を一般的に長押と呼んでいる。元々は柱を固定するための構造材としての役割があったが、工法の変化・発展によりその役割がなくなったものの、書院造りの装飾要素として残り、今でも和室には欠かせないものになっている。
本来は化粧部材である長押だが、長押の上部の出っ張った部分にハンガーなどを掛けたり、「長押フック」を使って帽子やバッグを掛けたり、長押の上に写真や絵を立て掛けて飾ったりと、壁面を有効に活用できるのが魅力だ。
鴨居(かもい)とは、和室の襖や障子などの建具を立て込むために上部に取り付けられた横木のこと。現代の住宅でも和室には欠かせない要素で、和の雰囲気を演出する重要な建築部材である。建具を滑らせるために溝が付いており、造作材として襖や障子など引き戸を開閉させるための役割が一般的で下部に同様に取り付ける敷居とは、対になっている。
また柱と柱の間に渡す横木によって建物の強度を高める役割の差し鴨居というものもある。鴨居(かもい)は長押の下部にあるため混同しやすいが、それぞれ役割が異なるので覚えておこう。
和室に広く採用されている長押だが、壁面収納として活用の幅が広く、最近では現代風にアレンジされて洋室でも取り入れられるケースが増えている。特に、洋室の壁面はフラットな場合が多いため、長押を設けることで収納やディスプレーなどインテリア性が高められる。
長押は後付けが可能で、細いピンで壁を傷付けることなく設置できるものもあり、長押ラックともいわれる。サイズやカラーが豊富で、ちょっとしたスペースに取り付けられるのがメリットだ。
長押を後付けするには、ホームセンターやオンラインショップで木目調やステンレス製など、インテリアに合わせて好みの長押を選ぼう。壁に印を付け、水平を確認してから穴を開けて固定具を挿入したら、選んだ長押をしっかりと取り付ける。
設置後は耐荷重に注意しながら、つり下げ棚やフックを組み合わせて自分流にアレンジしたり、洋室に和のエッセンスを取り入れた空間をつくったりしよう。アレンジ方法によって、ハンガーラックや収納、本棚などの役割をもたせることも可能だ。
後付けの長押は賃貸物件でも簡単に取り付けられるのがメリットだが、賃貸物件で長押を設置する際は、壁を傷付けないよう細心の注意が必要だ。多くの賃貸契約では退去時に原状回復が求められるため、壁に穴を開けたり壁紙を傷付けたりすることは避けるべきである。
壁を傷付けずに長押を取り付ける方法として、強力な両面テープの使用や突っ張り棒式の長押の利用、接着剤で固定できる軽量タイプの選択などがある。いずれの方法でも、必ず事前に管理会社やオーナーに確認を取ることが重要だ。
また、壁の素材を確認し、適切な取り付け方法を選択することも大切。万が一、壁に跡が残った場合の補修方法も、事前に調べておくとよい。
長押は、フックなどのオプションを組み合わせることでさまざまなアレンジができる。「見せる」収納や洗濯物干しスペース、小物置きスペースなど、長押を有効活用してユニークな空間づくりをしよう。
後付けの長押は、木壁用のネジや石こうボード用のピンなどで取り付けられ、外したときに壁に跡が残りにくいものも多いため、賃貸でも採用しやすいのもメリットだ。取り付けの際はまず、石こうボード壁、ベニヤ壁など取り付ける壁の種類を確認し、商品が取り付けられるかどうかを確かめることが重要だ。また、耐荷重がどれくらいなのかもしっかりチェックし、用途に合わせて安全に利用したい。
このように、和室の装飾部材として古くからなじみのある長押は、今でも現代風にアレンジされておしゃれで実用的なインテリアにするために活用されている。後付けも簡単で、住居形態にとらわれず取り付けられるので、気軽に長押を取り入れてインテリアをアレンジしてみよう。
長押(なげし)は和室の壁面を囲む装飾部材で、現代では壁面収納や装飾として活用される場合がある。洋室にも後付けで長押を設置でき、フックや棚を組み合わせることで収納やディスプレーとして活用が可能
賃貸物件や壁の種類によっては設置に制限があるため、取り付け方法や耐荷重を事前に確認することが重要