生け垣におすすめの種類とは おしゃれで手入れしやすいのは? 価格は?

家と外を仕切る役割として、古くから利用されている生け垣。最近では、生け垣をつくる費用の一部を補助してくれる制度を取り入れている自治体もあり、生け垣自体にも変化が現れているそうだ。緑一色できれいに刈り込まれた従来のイメージとは違う、「ちょっとおしゃれな生け垣」について、一般社団法人日本造園組合連合会の井上花子さんに聞いた。

生け垣の役割と魅力とは

生け垣はもともと家の境界を明確にし、外からの侵入を防ぐために植物を列植してつくった垣根のこと。なんとなく日本家屋でないと合わない印象をもつ人も多いのではないだろうか。しかし、現代の住宅は洋風が多くなり、外構も道との境界をつくらないオープンなタイプが多いため、生け垣をつくることで、外とのつながりをやんわりと保てる。また、侵入防止や目隠しにも利用でき、内外の両側から美しい植物を観賞することができるそう。

「一般的にイメージされるような、年間を通して緑の葉が付く常緑で、枝葉が緊密な樹木を隙間なく植え、きっちりと面を刈りそろえる生け垣は、どうしてもそれなりの広さの敷地やこまめな手入れを必要とします。そのため、手間もコストもかかります。

ですが敷地のちょっとしたスペースに、花壇のような感覚で樹木を並べて植えるだけでも、簡易的な生け垣をつくることはできます。近年では季節ごとに葉の色が変化したり、花を咲かせる樹種を取り入れるなど自由な発想の生け垣も多く見られます」(井上さん、以下同)

花咲く生け垣(写真/PIXTA)
小さなスペースにつくる、これも生け垣(写真提供/株式会社 中央園芸)

ちなみに、地域の緑化や景観保全の観点から、東京23区(一部除く)や三鷹市や八王子市、神奈川県横浜市や横須賀市、埼玉県さいたま市や川口市など、生け垣をつくる費用の一部を補助してくれる制度を取り入れている自治体もある。生け垣づくりを考えている人は、お住まいの自治体のサポート体制についても確認してみると良いだろう。

生け垣に向いている樹種の特徴は?

目隠しや侵入防止、防風や防火、観賞など、目的によって生け垣に適した樹種は異なる。ただし、目的が違っても生け垣に適した樹種を選ぶには、共通のポイントがいくつかあるそうだ。

1)枝葉が密集していても育つこと
「生け垣は樹木を列植するため、隣り合う樹木同士の間隔が狭くなるので、狭い空間でも育ちの良い樹木が生け垣には向いています。ただ、例えば背の高い樹木の間に、背の低い樹木を配置することで、枝が伸びるゆとりをつくることも可能です。混ぜ垣といって、異なる特徴をもつ樹木を組み合わせることも視野に入れると、選べる樹種の幅は広がるでしょう」

(写真/PIXTA)

2)枝葉の密度が高く、遮蔽性が高いこと
「視線を遮ることを考えるのであれば、枝葉は緊密であるほど良いでしょう。しかし、あえて透かし剪定(せんてい)で、枝と枝の間に空間をつくり、軽やかに見せることもあります」

3)刈り込みに耐えて、よく萌芽すること
萌芽(ほうが)とは新芽が生じること。萌芽力が強い樹木=成長が早いというわけではない。例えばツバキなど萌芽力は強いが成長はゆっくりという樹種もある。

「樹木の枝は上にも横にも伸びていきますので、美観を保つためにはある程度の剪定や年3回ほど刈り込みを行う必要があります。角や面を滑らかに整える場合には、よりこまめな刈り込みが必要となるため、枝葉を切り落としても弱らず、良く萌芽する樹種が生け垣に向いています」

なお、刈り込みとは刈込バサミ(生け垣用のバリカンもある)で樹木の外形を整えること。目的の形を目指して容赦なく枝葉を切り落としていく。対して、剪定も樹木の枝を切って形を整えることだが、同時に風通しを良くしたり、見栄えの良い枝を成長させるために余分な枝を間引くなど、切り落とす枝や芽を選ぶため、刈り込みに比べて時間がかかる。

「自分で刈り込みや剪定を行う場合、自分の身長を超える高さの樹木は手入れが大変です。1~1.5mほどの高さにすると良いでしょう」

(写真/PIXTA)

4)病虫害の被害を受けにくいこと
「一番気を付けなければならないのが、樹木に付く害虫や、樹木が感染する病気です。付着した虫が樹木を病気にすることもありますし、感染力の強い病気になると、隣接したものだけでなく同じ土壌に植えられたすべての樹木が枯れてしまうこともあります。

チャドクガという害虫は、人間に直接的な被害を及ぼすため、特に注意が必要です。卵も幼虫も抜け殻や成虫まですべて毒害を及ぼし、アレルギーを引き起こす可能性もあります。ツバキ科の樹木(ツバキやサザンカなど)に付きやすいため、これらの樹種は基本的に生け垣には使用しないことを推奨しています」

ほかにもサンゴジュ、クチナシ、ツゲといった樹種は樹木を傷める虫が付きやすいそうだ。害虫対策として定期的に消毒をしなければならず、生け垣にはあまり向かないとのことなので注意しよう。

「また、樹種によって付きやすい虫や、感染しやすい病気は異なるため、複数の樹種を混植することで、病気による生け垣の全損を回避しやすくなります」

なお、病気で枯れた樹木を抜いたあとの土壌も病原体に汚染されているため、抜いた樹木と同じ樹種を植えると、同じ病気に感染して枯れるとのこと。植え替えの際には注意しよう。

(写真/PIXTA)

プロに聞く“おしゃれな生け垣”のつくり方

では実際に、今時のおしゃれな生け垣にぴったりの樹木にはどんな種類があるのだろうか。井上さんにおすすめの樹種と、その評価を聞いてみた。

※評価項目は以下4つで、評価ポイントを5段階評価してもらった(最低☆1~最高☆5)
コスト :手に入りやすく、価格が安いかどうか
遮蔽性:生け垣にしたとき、反対側を見通しにくいかどうか
おしゃれ度:季節ごとの見た目の変化や、印象的な特徴をもっているかどうか
扱いやすさ:植える場所を選ばず、手間をかけなくても育つかどうか

1)トキワマンサク

ベニバナトキワマンサク(写真提供/GAヤマザキ)
白い花のトキワマンサク(写真/PIXTA)

【評価】※各項目5点満点

コ ス ト  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
遮 蔽 性  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
おしゃれ度  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
扱いやすさ  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「トキワマンサクには白い花を咲かせるトキワマンサクと、紅い花を咲かせるベニバナトキワマンサクの2種類があります。最近はベニバナトキワマンサクが人気となり、生産量も増えているので価格もだいぶ安価になっています。樹木全体を覆うように花を咲かせるため華やかで、見応えがあります。ただ、ベニバナはとても目立つため、私はどんな樹種や家にもなじむ、上品な色合いの白い花を咲かせるトキワマンサクをおすすめします」

すべての項目で満点のトキワマンサクは、手がかからず、手に入りやすく、見栄えも良いオールラウンダー。比較的寒さや日陰にも強いため、生け垣にはぴったり。刈り込んだときに見栄えを損ねない、常緑の小ぶりな葉も評価が高い。強いて欠点を挙げると成長が速いため、剪定する機会は比較的多くなるかもしれない。また、寒冷地では生育が難しいという。

2)アラカシ

アラカシの葉(写真/PIXTA)
アラカシの生け垣(写真提供/GAヤマザキ)

【評価】※各項目5点満点

コ ス ト  ☆ ☆ ☆
遮 蔽 性  ☆ ☆ ☆ ☆
おしゃれ度  ☆ ☆ ☆ ☆
扱いやすさ  ☆ ☆ ☆ ☆

「アラカシは関西、中でも京都で良く見られる樹種で、特に和風建築に良く合います。いわゆるドングリの木の一種で、東京では同じ仲間のシラカシが一般的ですね。枝葉の密度が荒く、遮蔽性は高くないため、刈り込まなくても問題ありません。向こう側が緩やかに透けて見える、透かし剪定による伝統的な生け垣に用いられ、味わい深いものがあります」

なお、病気や害虫にも強い樹種だが、温暖な環境ではうどん粉病という、葉が白くなる病気にかかることもあるという。また、アラカシは高木のため、放っておくと大木に育ち、低い位置の枝がなくなりやすい。上に伸びすぎないように、最低でも年に1回は頭頂部の刈り込みを行うと良いだろう。

3)オウゴンマサキ

黄色の葉が鮮やかなオウゴンマサキ(写真/PIXTA)

【評価】※各項目5点満点

コ ス ト  ☆ ☆ ☆
遮 蔽 性  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
おしゃれ度  ☆ ☆ ☆ ☆
扱いやすさ  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「オウゴンマサキはその名のとおり、黄色の若葉を付ける樹木です。葉が成熟するにつれ緑になるため、変化を楽しむことができます。日陰や寒さにも強く、土地を選ばない強い樹木ですので、手もかからず非常に扱いやすいと思います」

徒長枝(とちょうし)と呼ばれる、太い枝から上方向に長く勢いよく伸びる枝が出やすい。そのような枝は見栄えを損ねるため、見つけたら早めに剪定すると良いそうだ。

4)シルバープリペット

白いきれいな花が咲くシルバープリペット(写真/PIXTA)

【評価】※各項目5点満点

コ ス ト  ☆ ☆ ☆ ☆
遮 蔽 性  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
おしゃれ度  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
扱いやすさ  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「シルバープリペットは縁が白い緑の葉が特徴的な常緑の低木です。萌芽力が強く、特別な手入れをしなくてもかわいらしい白い花を咲かせます。乾燥にも強いため、自然の降雨だけで水やりも特に必要としません。寒さにも強いですが、冬場に落葉するため、落ち葉を掃除する必要があります。また、気温が低くなるほど落ちる葉の量が多くなるため、寒冷地にはあまり向かないかと思います」

なお、白縁のない緑色の葉が出てきた場合、放置しておくとすべての葉がただの緑になってしまうことがあるという。緑の葉を見つけたら、剪定するようにしよう。

また、低木の背丈の低さが気になる場合、石積みをして植える位置を高くしてあげると良いそうだ。積み上げる石やレンガの種類によって雰囲気も変わり、自分なりのおしゃれを楽しめる。植える位置が高くなれば、下枝の手入れもしやすくなりそうだ。

5)レッドロビン

赤い新芽が鮮やかなレッドロビン(写真/PIXTA)

【評価】※各項目5点満点

コ ス ト  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
遮 蔽 性  ☆ ☆ ☆ ☆
おしゃれ度  ☆ ☆ ☆ ☆
扱いやすさ  ☆ ☆ ☆ ☆

「レッドロビンは萌芽力が強く、剪定をすれば1年中真っ赤な新芽が芽吹きます。病気に強く、成長が早いのも特徴です。その分、定期的な刈り込みを行わないと、特に上のほうが鬱蒼(うっそう)と茂ります。また、非常に鮮やかですが葉が大きく、それほど枝葉の密度が高くないため、面をそろえて刈り込むような生け垣には、葉が小ぶりなカナメモチ※の方が適しています」

※カナメモチは日本原産の樹木。セイヨウベニカナメモチとも呼ばれるレッドロビンは、カナメモチとオオカナメモチの交配種

なお、春には白く可憐な小花を咲かせ、秋には赤い実をつけるそうだが、一般的には赤い新芽を楽しむためにこまめに刈り込まれるため、生け垣にすると花や実を楽しむ機会はあまりないようだ。

紹介した以外にも、例えばローズマリーなどハーブ系の樹木や、とげのないツル植物のモッコウバラなども生育が容易で手がかからず、生け垣に混ぜるとアクセントになるそうだ。樹木を植えるスペースがない場合は、フェンスにツル植物を絡ませて生け垣の代わりにしてもOKとのこと。

「水や肥料をこまめに与える必要もなく、植物の中でも生育に手がかからないのが樹木の良いところです。生け垣をつくる際の注意点は、敷地の境界ギリギリに植えてしまうと、道路側や隣家側の手入れが難しくなること。手入れする隙間も残すように意識すると良いでしょう」

ガーデニングに興味はあるけれどなかなか手が出ない。そんな人も自由な発想で緑を楽しむ、今時の生け垣づくりにトライしてみてはいかがだろうか。

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取材・文/宮崎 林太郎(ブリーズ)
公開日 2018年09月18日
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