雨やホコリ、花粉を気にせずに洗濯物や布団を干したり、お茶を飲んだりできるサンルーム。たとえ広くなくても、太陽の光を楽しめる空間がわが家にあるのはいいものだ。リフォームでサンルームをつくる場合のポイントや費用について、戸建やマンションのリフォーム、リノベーションを手がける土屋ホームトピアの三橋竜太郎さんに聞いた。
サンルームとは屋根や開口部をガラス張りにして、太陽の光を取り入れられるようにした部屋のこと。椅子とテーブルを置いて庭や星空を眺めながら食事やお茶を楽しんだり、ひなたぼっこをしたり、そんな優雅でゆとりのある時間をわが家で過ごすことができます。雨の日には子どもの遊び場として、洗濯物を干せる空間として、便利に使えます。
また、庭に面したサンルームは、開口部を開け放つことで、外と住戸内をつなぐアウトドアリビングのような空間としても楽しむことができます。
気密性や断熱性にも配慮してつくられたサンルームは一年を通して快適でくつろげる場所ですが、花粉の季節やPM2.5などにはそのメリットをさらに感じることができます。
花粉が飛散する時期、外に干した衣類を取り込むときに払っても家の中に花粉を持ち込むことになります。かといって、毎日、部屋干しをすれば室内の湿度が上がり、カビが心配。「花粉がつかない」「日当たりがよい」「湿気がこもらない」という、花粉の時期に洗濯物を干すための理想条件がそろっているのがサンルームなのです。花粉だけでなく、PM2.5や黄砂への対策にも有効です。
サンルームと似ている空間に「テラス囲い」があります。サンルームが部屋と同様に使える空間であるのに対して、テラス囲いは家の外に張り出したテラスをガラスで囲ったもの。サンルームに比べると、断熱性や気密性は低いですが、その分、価格も抑えることができます。天候や時間帯を気にせず洗濯物を干す場所としてとても便利です。
また、1階テラスや2階バルコニーの上部に取り付けるのが「テラス屋根」。サンルームのように囲われてはいませんが、雨の心配をせずに洗濯物を干したり、雨の日に窓を開けていても雨水が部屋に入るのを防いだりできます。
そのほか、室内や屋根に覆われた空間にテラスを設けた「インナーテラス」や、2階のバルコニーに壁や屋根を設けた「バルコニー囲い」など、さまざまなタイプがあります。
サンルームは注文住宅を建てるときはもちろん、建売住宅や中古住宅購入後、今の家にリフォームでもつくることは可能です。ただし、いくつか注意ポイントが。
「既存の部屋をサンルームに変更する場合は問題ないのですが、10m2を超える増築の場合は建築確認申請が必要です。建蔽率(建ぺい率)や容積率をオーバーしている家や、現在の耐震基準に満たない既存不適格住宅だと、建蔽率(建ぺい率)や容積率の調整、耐震改修が必要になります」(三橋さん、以下同)
増築するサンルームの広さや、どんな建材を使うかなどで費用は違ってきますが、参考にできる費用の目安はいくらくらいなのでしょうか。
「広さ4.5畳~8畳、基礎をつくり、断熱施工を行う場合で300万~600万円が目安。さらに、外壁施工などの付帯工事で50万~100万円程度かかることもあります。大きな出費になりますから、家全体のリフォームを行うときや、ライフスタイルを考え直してサンルームを必要と感じたときに、増築をするのがいいかもしれません」
サンルームを増築する場合、さまざまなことが工事の価格に影響します。
地盤によっては杭を打つ必要があり、例えば、8畳程度のサンルームで泥炭地なら杭は4~5本必要になるのだとか。新築なら更地の状態ですから、杭を打つための機械を敷地に入れやすいのですが、リフォームの場合、外構ができていると塀などを一度壊して機械を入れ、杭を打ったあとにまた塀をつくり直す、といった手間と費用がかかります。
「増築ではサンルームと既存の建物のつなぎめのサイディングをはがして施工します。はがした部分に新しいサイディングを張り直すことになりますが、既存の壁は汚れがありますし、増築した壁とは色や質感、模様が違います。気になって家全体の外壁を張り直すと、その費用も必要になります」
「増築する場合、重要なのは既存の建物と増築部分のつなぎめの処理です。躯体に雨水が浸入することのないよう、接合面の防水処理をきちんと行うことが大切です」
プランやデザインも大切ですが、重視したいのは施工技術。でも、施工技術の高い依頼先はどう選べばいいのでしょうか。
「リフォーム専門の会社で、長年営業を続けている実績があるところを選んでいただきたいです。リフォームをした人から評判を聞くほか、インターネットでクチコミをチェックしましょう。ネットには悪い評価が書き込まれがちですが、あまり酷いクチコミがなく、良いことも書かれている会社や、施工件数が多いところから候補を選ぶといいかもしれません」
増築ではなく、設備メーカーが販売しているユニット商品から予算や好みに合わせて選び、施工会社に取り付けてもらうサンルームもあります。色や素材、デザインなどのバリエーションも多く、仕上がりがイメージしやすい点もメリットです。
注意したいのは施工の精度。外壁にビスを打って固定する施工法の場合、ビスが雨にさらされてわずかな隙間から雨水が浸入し、躯体を傷める原因になります。サンルーム商品選びを楽しむだけでなく、施工実績が豊富な施工会社かを確認することも大切です。
なお、費用には商品本体の価格のほかに施工費や搬入費等がかかります。総額でいくらになるかは、施工会社や敷地や住宅の状況によって違いますから、事前に見積もりを確認するようにしましょう。
サンルームは食事をしたり、子どもを遊ばせたり、洗濯物を干したり、さまざまな使い方ができる空間です。より満足度の高い仕上がりにするなら、何をするためにつくるのか、目的を決めてからプランニングするのがいいと三橋さん。
「植物を育てたいなら温度や湿度を調整できるようにするといいですし、ペットを遊ばせるなら足腰にやさしい床材を選ぶといいでしょう。日本の住宅街では、サンルームは道路や隣家の2階などから丸見えになりがちなので、リラックスした格好でくつろぎたいなら、外から見えないように目隠しをする工夫も必要です」
家の中とは違ったくつろぎが得られるサンルーム。まずは、どんな過ごし方をしたいか、暮らしをどう変えたいかをイメージしてみましょう。
太陽の光を浴びながら、ゆったりとくつろげるサンルームは、さまざまな楽しみ方ができる
増築のほか、設備会社のユニット商品を設置する方法も
既存の建物の外壁に施工を行うため、施工技術の確かな会社に依頼することが大切