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昔ながらの日本家屋をリノベーションする、「古民家リノベーション」が人気です。レトロモダンな雰囲気やデザイン性の高さに魅力を感じる人も多いと思いますが、実際にどんな住み心地なのか、リノベーションをする際は何を注意すればいいのか気になりますよね。古民家リノベーションの魅力や注意点、費用などについて、数多くの古民家リノベーションなどを手掛ける住友林業ホームテック・営業設計推進部の牧さんに教えてもらいました。
古い日本家屋には現代的な家にはない、趣や雰囲気があるものです。そういった古民家ならではの佇まいを活かしながら、住まう人が暮らしやすい家につくり直すことが古民家リノベーションです。
「古民家が築何年以上のものを指すのか、明確な定義はありませんが、住友林業ホームテックでは、建築基準法が制定された1950年以前に建築された建物を旧家・古民家と呼んでいます。実際に今までにリノベーションを行った古民家の築年数は、築70年程度のものから、築300年というものまでさまざまです」(牧さん、以下同)

古民家リノベーションでは、古い家独特の色みや質感、土間や縁側などの空間が醸し出す雰囲気を活かした家をつくることができます。
「古民家の場合、柱や梁など、元々の素材が露出していることが多いので、それらをそのまま活かすような、間取りや内装の仕上げをすることが多いです。新築の場合は整形された角材などが使われているのに対し、古民家の場合、柱や梁の建材が曲がっていたり、ごつごつしていたりするものです。大部分を新しくする場合でも、古い部分をあえて残すことで、新しさと古さの落差をデザインの中に生み出すこともできます。
年月を経ることで生まれた素材や建物の味わいというものは、なかなか一から生み出せるものではないので、その建物自体の魅力を引き出して、新築では出せないような古民家ならではの味わいを活かせるというのが、古民家リノベーションの醍醐味ですね」
家のデザインにも流行り廃りがありますが、古民家には流行にとらわれない普遍的な魅力があるものです。
「新しいものは古くなります。トレンドを求めると、いずれ流行遅れになりますが、古民家はもともと古いものなので、流行から取り残されるということがありません。古さの中に普遍的な魅力がある古民家リノベーションは流行に左右されないという良さがあります」
また、ヒノキやケヤキなど、立派な建材などが柱や梁に使われている、しっかりとしたつくりの建物が多いのも古民家の特徴の一つ。今ではもう手に入らないような建材や、歴史のある建物を活かすことは、資源の保護という観点からも注目したいポイントです。
「建物の質が良ければ、わざわざエネルギーを使って建て替えをする必要はありません。建て替えではなく、リノベーションすることで、風土に合った佇まいの建物を残せるというのは省エネにもなります」

古民家は古さの中に魅力があるとはいえ、住まいである限り、やはり住みやすさは担保したいもの。現代の暮らしに合った設備への刷新や断熱性・耐震性の補強、ライフスタイルに合った間取りへの変更などを行うことで、住まいの機能性を上げることができます。
「リノベーションの範囲はケースバイケースですが、キッチンやリビングダイニングの工事を希望する方は多いです。次いで多いのは浴室や洗面、トイレなど。寝室にウォークインクロゼットをつくることを希望する方も多いですね。古民家リノベーションでは、見た目は新築にはない趣を残しつつ、使い勝手の面では、現代風の快適な住み心地が得ることができます」
固定資産税の税額は、築年数により左右されるため、築年数の古い古民家をリノベーションする場合、新築に建て替えるよりは固定資産税を抑えることができます。
「古民家は建物の資産価値がそもそも下がっている状態です。リノベーションで建物の資産価値が上がったとみなされても、新築で同じ規模のものつくるよりは、税金を軽減できるというメリットもあると思います」

古民家は耐震基準などが設けられていなかった時代の建物のため、耐震補強が必要になることがあります。また、伝統的な日本家屋は風通しがよく、夏の過ごしやすさを考慮してつくられたものが多いので、断熱リフォームをしないと寒いということもあります。
「リノベーションの範囲が建物の一部の場合、住まい全体の耐震補強を行うことは難しくなることもありますが、断熱性を高める工事は、部分的なリノベーションの場合でも希望の箇所に施工することが可能です。古民家の場合、壁の内側に空間がなく、一般的な木造住宅で用いるような板状の断熱材を使用できないケースもありますが、そのような場合は非常に薄いシート状の断熱材などを用いて対応することもあります」

急な階段や室内の段差など、バリアフリーの概念が無い時代に建てられた古民家は、年をとると住みにくい部分もでてきます。
「キッチン・浴室・洗面などへの動線上の段差をなくすという工事を希望する人が多いですね。ほかにも、古民家の場合、家の中や廊下に上がるのに、非常に高い段差がついていることがあるので、1段で設けられていた段差を2段に分けてつまずきにくくする工事を行うこともよくあります」
建築当時の図面が残っていないことも多い古民家の場合、建物の性能調査などは事前にしっかりと行います。
「築年数にかかわらず、必ずリノベーションを行う前には建物の下見や調査を行いますが、段取りは同じでも、古民家の場合は築年数の浅い建物に比べて、時間をかけて調査を行うということがあります。
また、古い建物の場合、梁がものすごく太かったり、製材されていない丸太が使われていたりと、現代的な建物に比べて、施工に時間を要する部分も多く、一般的なリノベーションよりも工期が長くかかります。
さらに、事前に破壊検査をした部分以外の場所では、シロアリの被害や腐食、壊れている箇所が工事の途中で見つかることもあります。追加の補修などを提案することもあるので、プラスαの費用や工期が必要になることもあります」
持ち家ではなく、これから古民家を購入するという人は、リノベーションしやすい物件を選びたいものです。家の土台や柱、梁などの傷み、雨漏りなど、構造部分の欠陥の有無も気になる部分ですが、現状の建物の佇まいが気に入るかどうかも、物件選びで気にすべきポイントだと牧さんは指摘します。
「外観など、現状の建物が気に入っているかどうかは大事なポイントです。屋根の形を変えたり、玄関の位置を移動したりといった大掛かりなリノベーションになると費用も手間もかかります。“今”の建物が気に入っているのであれば、そのまま活かせる部分が多くなる可能性は高くなるので、そのままの状態でも住みたいと思う家かどうか考えて、建物選びをするといいと思います」
古民家の場合、リノベーション費用も高額になるイメージですが、実際の相場はどのくらいなのでしょうか。
「リノベーション費用は施工内容や広さなどによってさまざまなので、一概には言えませんが、例えば、設備の刷新や内装のデザイン変更程度の内容であれば、500万円程の予算で行うこともあります。古民家ならではのデザインなどに興味を持って、新たに古民家を購入し、自分たちが住まうためにリノベーションを行うような場合は、1000万円以内の予算でリノベーションを検討する人も多いです。一方で、古民家を受け継いで、家を残していくために、建物全体の大掛かりなリノベーションを行いたいというケースも少なくありません。そのような場合は工事範囲が広くなるので、費用が数千万円とかかることも珍しくありません。予算を重視するのか、建物の品質を保ちたいかなど、住む人の希望によってリノベーション費用の目安も変わってきます」
古民家リノベーションと一口に言っても、建物の築年数や広さ、リノベーションの内容はさまざまです。古民家リノベーションの実例から、リノベーションで古民家がどう生まれ変わるのか見てみましょう。
柱や梁など、残せるものはできる限り残しながら、快適な住空間になるようプランニング。傷みの激しかった水まわり部分は大きく減築し、バス・トイレ・洗面などは一カ所に集め、使い勝手を改善したそう。「建具など古民家ならではの良い部分があるので、なるべく残せるものは残したいと思っていました。雨漏りや部屋の寒さ、暗さなどが解消され、安心して暮らせる住まいになりました」(Iさん)


<建物・リノベーション内容>
築年数 80年
費用 約2000万円
工期 280日
施工面積 約73m2
<間取り>


両親が住む築120年の家と同じ敷地内、築20年の別棟に住んでいたKさん家族。同居をはじめるタイミングで、間取りや動線などを今の暮らしに合うようリノベーション。2世帯になるため、家族間の動きに配慮した間取りにし、解体時に切れてしまっている箇所を発見した既存の梁は安全のため補強を行ったそう。「梁の存在感が際立つLDKは家族が気軽に集まって団らんできる場所になりました(Kさん)」


<建物・リノベーション内容>
築年数 120年
費用 約5000万円
工期 180日
施工面積 約199m2
<間取り>


古民家ならではの雰囲気やデザインを活かしながら、現代の生活スタイルに合わせ、住まいの機能性を上げることのできる古民家リノベーション。注意点も踏まえつつ、唯一無二の家づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。
古民家リノベーションは古い伝統家屋などを、現代の暮らしに合わせて住みやすく改修すること
古民家ならではの趣を活かせるのが魅力だが、耐震性や断熱性などの補強が必要になることもある
施工内容などによって、かかる費用は大きく異なる