屋根は普段目にしない部分なので、修理やリフォームのタイミングの見極めが難しいものです。また、いざリフォームを行うとなると、費用はどのくらいかかるのか、どんな業者に頼めばいいのか、不安に思うものですよね。今回はそんな住まいの屋根の修理について、埼玉県を中心に多くのリフォームを手掛けるI-PRO代表取締役の森幸夫さんに教えてもらいました。
雨漏りなどの場合以外に、屋根の修理やメンテナンスが必要だと感じることはほとんどないものですが、目に見えない部分だからこそ、適切なタイミングで不具合がないか確認することも必要です。
「家全体のリフォームを築10年から15年のタイミングで考える人が多く、屋根もその時にほかの部分と合わせて修理やリフォームを行うのが一般的です。屋根と外壁のリフォームは同時に行うことで、その都度足場を組む必要がなくなるため、費用も抑えられます。
屋根に使われている素材は大きく分けて、瓦、スレート、金属という3種類がありますが、素材によってメンテナンスが必要になるタイミングも異なります。
瓦屋根は最近少なくなりましたが、瓦自体の耐用年数は長く、強い衝撃などがなければ、素焼き瓦や陶器瓦だと50年以上など、半永久的に長持ちします。しかし、瓦の場合、10年位のタイミングで色褪せが気になったり、接着や防水の役目を果たす漆喰が劣化したり、苔が発生するなどの不具合が見られることがあります。また、地震などで動いたり、ずれたりということもあるので、やはり10年から15年位のタイミングで修理が必要になることが多いです。
次に、住宅の屋根で最も良く使われるスレートの場合は、放っておくと割れたり、反ったりしやすい素材のため、定期的な塗装が必要です。メンテナンスのスパンはメーカーによって異なりますが、10年から15年のタイミングで塗装が推奨されているものが多いです。
一方、ガルバリウム鋼鈑など金属屋根の場合は耐久性が高く、壊れる心配もあまりないため、一般的に20年から 30年は修理の必要はありません」(I-PRO 森さん、以下同)
屋根は天候や自然災害などの影響を受けやすいため、屋根材の違いに加え、立地条件によって、劣化や不具合が生じるタイミングも異なるそうです。
屋根の素材 | 素材の耐用年数 | 屋根のメンテナンス時期 |
---|---|---|
スレート | 15~20年 | 10~15年 |
瓦 (素焼き・陶器) |
50年以上 | 10~15年 |
金属 (ガルバリウム鋼鈑) |
20~40年 | 20~30年 |
屋根の修理ではほとんどの場合、作業のために足場を組む必要があります。
「延床面積30坪(約99m2)程度の2階建ての家場合、リフォームの際に組む足場の面積は200m2から300m2位になります。施工業者によって費用は異なりますが、1m2当たりの費用は600円から1000円なので、例えば200m2の足場なら12万円から20万円程度が目安となります」
このような足場代に加えて、屋根の修理自体の費用が発生します。屋根の劣化や損傷の状態によって修理内容や費用は異なるので、修理方法や内容ごとに費用の目安を見ていきましょう。
※記事内の費用の目安は参考値。足場代は含まない。費用は施工面積や使用する材料などによって異なる
※文中の「1棟当たり」は30坪程度の2階建てを想定
屋根材の塗料が劣化することは屋根材自体の劣化につながるため、塗装はよく行われる屋根のメンテナンス方法の一つです。高圧洗浄をして汚れなどを落とした後、下塗り、中塗り、上塗りと3回塗装を行います。
「スレートや金属屋根はもちろんですが、瓦の場合でも材質によっては塗装を行うこともあります。瓦の場合は1枚1枚塗装するため面積が少し増える分、ほかの素材に比べて費用がプラスになる傾向があります」
全面的な屋根のリフォームとして、既存の屋根材を撤去して新しい屋根材に取り替えることを葺き替えと言います。葺き替えは、防水材や野地板という下地も同時に補修できるというメリットがある一方で、古い屋根材の処分費用なども発生します。
「瓦からガルバリウム鋼鈑などの金属の屋根に葺き替える場合は、既存の雨樋の交換が必要になることがほとんどです。その場合は雨樋の交換費用もかかります」
費用は葺き替える屋根の素材によっても左右されるため、例えば、スレート屋根に葺き替える場合よりも、ガルバリウム鋼鈑などの金属屋根や陶器瓦に葺き替える場合の方がコストはかかります。尚、既存の屋根がスレートや金属などの軽い素材の場合は、重量がある陶器瓦に葺き替えると建物に大きな荷重がかかるため、通常陶器瓦に葺き替えることはできません。
葺き替えのほかに、全面的な屋根リフォームのもう一つの方法として、既存の屋根材の上に防水材を被せ、新しい屋根材を重ねて施工する、カバー工法(重ね葺き)があります。
「瓦の場合は葺き替えになりますが、スレートや金属屋根の場合は葺き替えではなく、カバー工法が主流です。カバー工法の場合は既存の屋根材を処分する費用がかからない分、コストが抑えられます」
既存の屋根に新しい屋根を重ねるカバー工法は、屋根部分の荷重負担が大きくなるため、家の構造によっては選択できない場合もあります。積雪が多い寒冷地などの場合は特に、既存の建物の状態がカバー工法に適したものであるか、リフォーム会社に確認をしてもらうようにしましょう。
前述した葺き替えやカバー工法、塗装などは屋根全体のリフォームになりますが、不具合のある箇所を部分的に補修することもあります。良く行われる部分補修の例と費用目安は以下の通りです。費用目安に幅がありますが補修の大小や補修箇所の状況によって金額は異なります。
一部の瓦が壊れるなどした場合、壊れた瓦を新しい瓦に取り替えます。壊れた瓦が1枚でも、周囲の5~10枚程度を一度外して交換を行うそうです。
屋根材を固定している金属が板金。浮いていると雨漏りの原因になります。
漆喰は瓦より耐用年数が短いため、漆喰が劣化し剥れ落ちると、瓦の落下や雨漏りの心配もあります。また、費用については補修範囲が短いほど割高になる傾向があるそうです。
屋根に落ちた雨水を下に流す雨樋が壊れると、家の外壁などに雨水が浸水し、腐食や雨漏りを引き起こすこともあります。
部分補修の場合でも、補修規模の大小にかかわらず足場を組む必要があるため、修理費用には足場代が加算されることも覚えておきましょう。
修理の規模や内容によっては、費用が高額になることもある屋根のリフォームですが、経年劣化ではなく、風雪や豪雨などの自然災害で修理が必要になった場合には、火災保険の保険料を利用して修理やリフォームを行うことができます。
「火災保険は火災の場合だけでなく、自然災害による損傷などでも申請が可能です。屋根の修理の際に申請すれば、火災保険が適用される場合があります。
ただし、火災保険の申請には、いつ、どのような災害で被災したのかを明確にした上での修繕の見積もりが必要になりますが、一般的なリフォーム会社などは修繕の見積もりは可能でも、被災に対する見立てのノウハウを持っていない会社が少なくありません。また、保険を申請する施主自身で見積もりを算出することもできないため、火災保険を上手く活用できないケースが多いというのが実情です」
火災保険を活用すれば、修理費用を保険でまかなうことも可能です。しかし、火災保険の申請を検討する場合は、リフォームを依頼する修理業者選びの時点で、被災に対する見積もりができる業者を選ぶ必要があります。また、悪徳業者などによる、火災保険活用を利用した詐欺などの被害も少なからず発生しているため、業者選びには十分注意して検討しましょう。
屋根の修理業者は数多くあり、普段見えない部分の修理などは不正もわかりにくく、トラブルになることも中にはあります。そんな中、修理業者を選ぶ際のポイントなどはあるのでしょうか。
「修理業者によって、リフォーム費用は異なるので、複数の会社に見積もりを出してもらい比較検討するのはもちろんです。しかし、見積もりはしっかりとしていても、工事がずさんということもあるので、金額的な面だけで判断するのは避けた方がいいでしょう。
業者を選ぶ判断材料の1つとして、契約する前に、その会社の施工事例を確認させてもらうのがいいと思います。また、修理の後に修理内容を報告する施工完了報告書を出してくれたり、施工中の写真などを報告として共有してくれる業者もあるので、そういったフォローが手厚いかどうかも、信頼して任せられるかどうかの目安になるかもしれません」
費用が高額になることもある屋根修理ですが、金額だけを見て施工業者を選ぶのは危険です。満足度の高いリフォームを行うためにも、過去の事例なども確認しながら業者選びは慎重に行い、安心のリフォームを実現させましょう。
屋根に使用されている素材などに合わせて、適切なタイミングでメンテナンスを
部分補修か大々的にリフォームするかで費用は大幅に異なり、リフォームの場合は数百万円の単位で費用がかかることもある
業者選びの際は、複数社に見積もりを出してもらい、施工実例なども確認して選択する