既に電気給湯器を使っている人や、家を建てるに際してガスではなく電気給湯器を検討している人も、電気温水器とエコキュートではどっちがおトクなのか気になるのでは? そもそもエコキュートとはどんな機器? 何がどう違うの? ガス給湯器(温水器)と比べてメリットはある? 三菱電機の担当者に教えてもらいました。
電気温水器に電気給湯器、エコキュートと、電気を使ってお湯を沸かす機器の名前がいろいろあります。さらにエコジョーズ(ガス給湯器/ガス温水器)やエネファーム(家庭用燃料電池)と似たような名称の機器もあるので、まずは一度整理しておくと、下記のようになります。
└【電気温水器】電熱ヒーターでお湯をつくる
└【エコキュート】大気中の熱を使ってヒートポンプでお湯ををつくる
└【エコジョーズ】ガス給湯器(温水器)の中でも高効率なタイプ。燃焼時の熱を再利用することで省エネ化
上記以外では、「エコキュートと同じ機能」と「エコジョーズと同じ機能」を自動で使い分ける電気とガスのハイブリッド給湯器もあります。
上記のとおり、電気給湯器には電気温水器とエコキュートがありますが、お湯のつくり方が違います。電気温水器は電熱ヒーター(金属に電気を流して発熱させる)の熱と水の熱を熱交換することでお湯をつくります。電気ポットと基本的に同じです。一方のエコキュートは電熱ヒーターを使いません。電気は主にお湯をつくるためのサイクルを回す動力として使います。
「まず外気を集めて、その中の熱をそれより温度の低い冷媒(熱を移動させるための媒体。エコキュートの場合はCO2ガス)に移します。『熱は高いほうから低いほうへ移動する』という物理の法則を利用するのです。次に冷媒を圧縮すると、これも物理の法則で冷媒の温度が高くなります。この冷媒の熱を今度は水に移してお湯をつくります。一方熱を奪われたあとの冷媒を、今度は一気に膨張させると温度をグンと下げることができるので、再び大気中の熱を受け取れる温度にできます(三菱電機 嶋谷さん)」
この仕組みはヒートポンプと呼ばれるもので、エアコンでも活用されています。それにしても真冬の寒い外気より温度が低い冷媒があると言うと、あまりピンとこない人も多いでしょうが、世の中にはマイナス200度以下にもなる物質もあるのです(物理的に考えられる最低の温度・絶対零度はマイナス273.15度)。「弊社の場合、寒冷地向けのエコキュートではマイナス25度まで対応しています」
■電気温水器とエコキュートとの違い
では価格の違いはどうでしょうか。三菱電機の電気温水器とエコキュート、それぞれ3~4人用(370L)で最新機能もついた最上級モデル(2019年5月現在)で比べると、カタログ価格で電気温水器が43万5000円、エコキュートが93万円(いずれも税別)。ちなみに3~4人用相当のガス給湯器のエコジョーズ(給湯・追い焚き付き)24号で約40万円前後です。
もちろん実際に購入する際の価格は、設置の工事費や機器によって、あるいは施工会社で異なるなどありますから、一概に比べることはできません。しかしカタログの本体価格のみで比べれば、電気温水器が1だとすればエコキュートは2くらいで、電気温水器のほうが安くすみます。
しかし、ランニングコストでは省エネなエコキュートのほうが安いのです。「比較対象機種や機能、さらに電力会社や契約プランによって変わりますが、エコキュートは10年前後で電気温水器との差額を埋められると計算できます(佐藤さん)」
ちなみにガス給湯器とエコキュートとの光熱費の比較も、三菱電機のホームページ内にあるシミュレーションで調べることができます。
出荷台数を比べてみても、2005年時点で電気温水器が24万1447台、エコキュートが19万6428台と、確かに約15年前は電気温水器のほうが売れていました。ところが2017年時点では電気温水器は9万1101台、エコキュートは45万330台(数字はいずれも経済産業省「生産動態統計」より)と大きく逆転しています。こうした状況もあり、電気温水器の生産メーカー数は10年前と比べて半減。つまり今買うならエコキュートのほうが機種も多くて選びやすいのです。
エコキュートを購入する際には、国や自治体から補助金を受けられる場合があります。まず一戸建ての新築の場合、各自治体によっては補助金制度を設けていることがあるので、購入前に各自治体のホームページで確認してみましょう。
リフォームで導入する場合は、各自治体で補助金制度を設けている場合があるほか、国による「次世代住宅ポイント制度」で、エコ住宅設備の対象となるため2万4000ポイントを受け取ることができます。「以前の制度では断熱工事などとセットでしか認められていませんでしたが、今年度(令和元年)の制度ではエコキュートを導入するだけでもポイントがもらえるようになりました(嶋谷さん)」
リフォームでエコキュートの購入を検討している人には、今がチャンスと言えるでしょう。
2001年に登場したエコキュートですが、この10年で技術が飛躍的に進化しています。エコキュートは貯湯タンクにお湯(熱エネルギー)を貯められるのでAIやIoTを使って上手にエネルギーを活用する事が出来るのです。
まず初期のエコキュートで指摘されていた問題を解決した、最新の技術を見てみましょう。なお以下で紹介する機能を備えたエコキュートは三菱電機の製品以外にもあるものです。
●過去2週間の使用状況を元にお湯を沸かし「湯切れ」を解消
過去2週間の使用状況をエコキュートが「学習」。例えば夕食前の時間に自動で沸き増しするなど、その家庭で最も効率的な給湯時間や量を判断して沸かしてくれます。また友人が泊まりにきたときなど、急に使うお湯の量が増えてもボタンひとつで沸き増しすることができます。こうした技術の進化で初期のエコキュートにあった「湯切れ問題(お湯が足りなくなる)」を解消しています。
●お湯を出す圧力をアップさせたり、素早くお湯を張る
初期のエコキュートでは「シャワーの勢いが弱い」という指摘がありましたが、現在ではガス給湯器同等のシャワー圧力で給湯できるタイプも登場しています。また従来より短い時間で(三菱電機の場合で約25%短縮)お湯が張れる機能を備えたモデルも開発されています。
次に従来にはなかった快適技術を紹介しましょう。
●マイクロバブルでポカポカ&お肌の保湿ができる
約0.1ミリという微少な泡=マイクロバブルを浴槽に噴射します。マイクロバブルが全身を包み込むと湯冷めしにくくなり、入浴後の保湿効果も期待できます。
●マイクロバブルで配管内の掃除をしてくれる
マイクロバブルは、皮脂汚れなどを吸着する性質もあります。これを利用して、エコキュートとお風呂を繋ぐ配管内をマイクロバブルでキレイに掃除する機能もあります。
●残り湯の「熱」も無駄なく使える
その日最後に入浴した人がボタンを押すと、残り湯の「熱」を貯湯タンクに入っている水に移して温め、翌日の給湯を省エネ化する機能です。ちなみに「熱」のみ移るので、残り湯を洗濯に使うこともできます。
家の中の電気の使用状況を把握できるHEMS(ヘムス。ホーム・エネルギー・マネージメント・システムの略)と接続することで、さらに快適な機能を使うことができます。
●太陽光発電と連携してAIが自動で省エネしてくれる
エコキュートとHEMS、太陽光発電システムをつなぐと、太陽光で発電した電気を有効に活用することができます。エコキュートが夜のお湯を沸かし始める前に、HEMSが気象庁の天気予報データにアクセスして、翌日の天候から太陽光発電で発電できる量を計算。普段のお湯の使用状況など各種データも活用して、太陽光発電を使って沸かすお湯の量を決め、そこから逆算して、夜間電力でどれくらいお湯をつくればよいか(通常時からどれくらい削減するか?)をAIが判断するというものです。
太陽光発電は2009年に国が余剰電力を購入してくれる制度が出来てから一気に普及しましたが、電力の買取り期間は10年間です。そのため2019年から余剰電力の買取価格が下がってしまう家も出てきます。もともと自家消費を推奨するために始まった制度ですから仕方ありませんが、昼間に太陽光が発電しても、会社や学校に出かけているので使えないという人も多いでしょう。ですから太陽光発電システムを取り入れている家庭にはうれしい機能になります。
●外出先からスマホでお風呂のお湯張りができる
帰りが遅くなったときなど、帰宅後すぐにお風呂に入りたいときはHEMSをつないでいれば、外出先からスマートフォンを使ってお湯を張っておくことができます(お風呂の栓は事前にしておく必要があります)。
災害など非常時にもエコキュートは役立ちます。「貯湯タンクを家の水がめ代わりにする目的でエコキュートを購入される方もいらっしゃいます(嶋谷さん)」
エコキュートは一見すると貯湯タンクの背が高く、地震で倒れそうですが「官公施設に納入される設備には耐震レベルが設けられていますが、各社それをクリアする耐震構造の製品を出しています(嶋谷さん)」。倒れないだけでなく、揺れて建物を傷つけることが無いように配慮されています。停電時でも貯湯タンクにあるお湯を出せますから、例えばトイレの排水などに利用することができます(佐藤さん)」
また災害時には電気・ガス・水道の3つのインフラが止まることがありますが、これまでの災害時を振り返ると3つの中でも電気は比較的復旧が早い傾向があります。ですから電気が復旧した後、水道が復旧次第お風呂に入ることもできます。
エコキュートは室外機と貯湯タンクの2つを設置する場所の確保が必要です。ちなみにエコキュートのサイズは、三菱電機のSシリーズ・370Lの場合で室外機が高さ715mm×幅800mm×奥行き285mm、貯湯タンクは高さ1830mm×幅630mm×奥行き760mm。機種やメーカー、貯湯タンクの貯湯量により異なりますのでカタログ等で必ず確認しましょう。
「一戸建ての場合、設置スペースだけでなく設置する際に塀と家の間を通れるかなど搬入経路の確認も大切です。最近はコンパクト薄型タイプもありますから、搬入経路が多少狭くても設置がしやすくなっています(嶋谷さん)」
また設置する位置にも注意が必要です。エアコンの室外機と同様で、塀に向けて室外機を置くと運転中の音が響きやすくなりますし、隣家に向けて置くと、夜中に運転するためトラブルになりかねません。
マンションで電気温水器からエコキュートに変更する場合、従来の場所に入るかどうかサイズの確認が必要です。最近はコンパクトタイプも登場していますから事前に確認しておきましょう。
給湯器は壊れてから新しいものに交換する人が多いですが、上記で述べたようにエコキュートはランニングコストが安いので、早めに導入したほうがそのメリットを受けやすいと言えます。さらにこの10年で新機能がグンと増えていますから、従来より快適な暮らしを導入した日から送ることができます。しかも令和元年度はエコキュートに変える(リフォームする)だけでポイントがもらえるおトクな「次世代住宅ポイント制度」まであります。
エコキュートの場合2万4000ポイントがもらえます。2万4000ポイントで交換できる商品にはA5ランク和牛肉や魚沼産こしひかり(20kg)、ふとん乾燥機、高圧洗浄機などがあります。現在の給湯器が故障するのを待たずに、交換を検討してみてはいかがでしょうか。
なおエコキュートは家電量販店で扱っているところもあります。メーカーや機種毎に機能の違いがありますから、購入前には必ず比較検討するといいでしょう。
エコキュートが登場してから約20年を迎え、従来の電気温水器にはない機能がたくさん備わっています。初期費用はかかりますが、ランニングコストが安く多機能で、IoTやAIといった最新技術も導入されていますので、ぜひ検討してみてください。