洗濯物を干す、家庭菜園やカフェタイムを楽しむ……。マンションで暮らしのこんなシーンが見られる場所といえば、ベランダ、それともバルコニー? 実は知らないそれらの定義や特徴の違い、メリット・デメリット有意義な使い方、NG使用例などを紹介。また、テラスやデッキ(ウッドデッキ)との違いやルーフバルコニー、インナーバルコニー、回りバルコニー、サービスバルコニー、スカイバルコニーなどバルコニーの種類についても解説します。
「雨が降ってきたからベランダの洗濯物を早く取り込んで!」「私、バルコニーでプチトマトを育てているんです」――日常生活でこんな会話が出てくることがあると思いますが、みなさんは、「ベランダ」「バルコニー」の違いを知っていますか? 改めて問われると「分からない」という方が多いかもしれません。住まいづくりの情報発信を行う岩間光佐子さんに伺いました。
「一般的には、ベランダは2階以上にあり、住戸から外に張り出していてある程度の雨風をしのげるひさしや屋根のあるスペースを指します。形状、広さにもよりますが、雨の日でもそこで濡れずに過ごせますし、洗濯物も干すことができます」(岩間さん、以下同)
「バルコニーは、一見ベランダと同様のスペースで、こちらも建物本体から外側にせり出して設置されていますが、大きく異なるのはひさしや屋根がないことです。ベランダもバルコニーも奥行きは最低でも1m程度が目安で、ある程度、人が動けるスペースが欲しいですね」
「バルコニー」だと思っていたけど、厳密には、実は「ベランダ」だったいうお宅は多いかも!?
「マンション、一戸建ての1階から庭などに張り出した平らなスペースで、家との段差を少なくするため、土地の一部を盛り上げて設置される場合が多く見られます。石やタイル、コンクリートなどが敷き詰められており、洗濯物干し場として使われるケースも多いです」
「グランドレベル(地面)からある程度の高さに設けた木製の甲板のこと。室内との出入りがしやすいよう、部屋の床面に高さを合わせたプランが多く見られます。一般的には、天然木を使用したものを指しますが、木粉と樹脂を混ぜるなどした人工的なエクステリア建材も含むことも。最近では、天然木と見分けがつかないリアルなものもあります。天然木のデッキの魅力は、その心地よい素材感。一方、樹脂製のデッキは、素材としての均一性、耐久性、メンテナンス性の高さが特徴です」
ベランダ、バルコニー、テラス、デッキそれぞれの意味を把握したところで、続いてはメリット・デメリットを解説いただきました。
「いずれのスペースも外気を直接感じられる、開放的な空間です。プランや家具の配置などに注意して、室内とスムーズに行き来しやすくすれば、より広がりのある家になるでしょう。用途も多彩です。洗濯物干し場など実用的な使い方はもちろん、セカンドリビングや子どもの遊び場、ペットの居場所など、くつろぎ、楽しむためのスペースとしても活用できます」
また、室内干しに比べれば、洗濯物が乾きやすいのもメリットでしょう。ひさし、屋根があるベランダなら、(雨の降り方にもよりますが)雨の日でも洗濯物を外に干しておくことが可能。室内干しによって室内の湿度が上がることを避けることもできます。
ひさし、屋根がないバルコニー、テラス、デッキには、雨の日は洗濯物が干せません。また、夏には、床面の素材によっては太陽光が照り返し、室内温度を上げてしまうデメリットが生じることも。
「近年では異常気象による猛暑対策も必須となりつつありますので、日差しを遮る工夫をすべきでしょう。マンションなら管理規約に抵触しないよう注意し、なおかつ強風で飛ばされないように配慮しつつ、シェード、スクリーンなどを使ってみては。これらの工夫はプライバシーを守る効果もあります」
さらに、これを怠るとデメリットにつながりかねないこととして、いくつか注意点をアドバイスしてくれました。
「入居前はデッキチェア二脚とテーブルを置いて、優雅なティータイムを……などとイメージしていても、実際にはそのような使い方ができるほどの広さがなくて実現できず、あまり使わなくなる……といった残念なケースも聞きます。広さに応じた家具選び、使い方のアレンジが必要ですね。また、ベランダ、バルコニー、テラス、デッキとつながる窓が開閉しにくかったり、室内側に家具が置かれていたりすると使い勝手が悪く、このケースでもいつの間にか使用頻度が減少する場合もあります」
ベランダ、バルコニー、テラス、デッキの広さや室内の動線に配慮して、せっかくのスペースをデメリット空間にしてしまわないようにしたいものです。
次に、名称が多く混乱しがちな「バルコニー」の種類、違いについて教えていただきました。
「建物の屋上や屋根にあたる部分に設置された平らなスペース。多くは、陸屋根といった下階住戸屋根の上に設けられます。、一般的に、ルーフバルコニーは通常のバルコニーより広いケースが多いですね。マンションでは、隣地斜線制限で外観フォルムを階段状にするケースがありますが、その階段部分がルーフバルコニーで形成されている物件をよく見かけます。また、面積を広めに取ったルーフバルコニーを設ける一戸建てもあります」
「バルコニーが、建物本体から外側にせり出して設置されているのに対して、“インナー”は文字どおり、建物の内側に入り込んでいます。屋根付きのプランが多く、雨の日でも洗濯物干し場として活躍する点では、ベランダに似ているかもしれません。ただ、外とつながって開放感がありつつも、内側に引っ込んでいるので適度なプライベート感もあり、ほかのバルコニーに比べると、室内との一体感が強めです。プライバシーを守りつつ、アウトドア気分も楽しめるので、住宅が立て込みがちな都市部の一戸建てで人気の仕様です」
「直線的な通常のパルコニーではなく、住戸をL字に取り囲む形に配されたバルコニー。マンションの場合、角住戸のみの希少なタイプです。リビングだけでなく、ほかの洋室やキッチンなどもバルコニーに面する場合が多いため、家全体の開放感がアップします」
「エアコン室外機の設置スペースや、一時的なごみ置き場などの用途で設けられるもの。奥行きは1m以下程度と狭くなっています。階下の窓のひさしの役割を果たすこともあります」
「近年聞くようになった名称ですが、実質的にはルーフバルコニーとほぼ同じ場所を指すことが多いです。一戸建ての屋上に設けたスペース(屋上テラス)を、スカイバルコニーと呼ぶ場合も。プランニングによっては、洗濯物から子どものプール遊び、飲食など用途が広がります」
ベランダやテラスについてもっと詳しく
→ルーフバルコニーのある暮らし
→テラスやバルコニーの屋根は必要?
マンションのベランダ、バルコニー、いずれも自宅住戸からしかアクセスできないため「わが家専用」と考えている人は多いはず。
「しかし、マンションではベランダ、バルコニーは共用部分。専有部分の住戸内はリフォームなどができますが、べランダ、バルコニーは勝手に仕様を変えたりすることはできません。そのマンションの管理規約を守った使い方が求められます」
ありがちなNG使用例は、隣の住戸のベランダとの境に設けられ、いざというときに蹴破って隣戸のベランダに避難できる「蹴破り戸」の前や、避難はしごの開閉扉の上にモノを置いてしまうこと。これでは緊急時に避難ができなくなり、重大な危険を招く恐れも。
さらに最近の管理規約では喫煙や、外観の美観や安全を守るという理由から、手すりに布団を掛けて干す、植物を這わせてグリーンカーテンなどをつくることを禁止するマンションもあります。
「マンションの場合はもちろん、周辺環境によっては一戸建てでも、ベランダやバルコニーでの過ごし方にも配慮することが大切です。喫煙と同様に、煙やニオイ、音などには注意を。テーブルやチェアを置いて、大きな声で話したりせず節度をもってお茶を飲んだりするのは問題ありませんが、煙やニオイも伴うBBQパーティーなどは避けるべきでしょう。また、洗濯物を干す場合、最近はやりの香り付きの柔軟剤や洗剤の使用にも配慮を。強い香りが苦手な方もいるものです」
「ベランダやバルコニーをおしゃれ&快適に活用する方法としては、住戸内とつながるようなセカンドリビング的スペースとすることが考えられます。居心地を高める方法のひとつとして、床にデッキ材やタイル素材を設置するプランが考えられます。建材メーカーからも専用の床材商品が発売されており、専門業者の施工が必要なものから、DIYで手軽に敷けるものまで豊富にそろっています。なお、DIYの場合は、強風で飛んでしまわないように配慮することが大切です」
バルコニーの形状に合わせてきれいに敷き詰められるデッキ材やタイル素材、打ち水をすると床面の低温を維持できる『保水機能』を備えたタイルもあるそうです。
「テーブルやチェアなどを置くとより快適に過ごせますね。家具ショップ、ホームセンターでもアウトドア用の商品などが充実しており、ベランダ、バルコニーでの使用にも向いています。ただ、前述したとおり、スペースに応じたサイズ感のテーブル、チェアを選びましょう」
「スロップシンク(掃除などの家事用の流し)が設けられていれば、ガーデニングや家庭菜園などを楽しむ際に便利です。ガーデニングを楽しむ場合は、土や枯葉が床面の排水溝に溜まり、水はけが悪くならないように注意を。排水溝が詰まってしまうと、階下への水漏れなどが生じるケースもあります」
「小さなお子さんがいるファミリーの場合、十分にご注意いただきたいのが転落事故。テーブル、チェア、エアコン室外機、プランターなど足がかりになりそうなモノを手すりのそばに置かない、設置しないことが大切です。また、ベランダの下に投げ落とす心配のある小さな鉢やおもちゃを置かないこともお忘れなく。一回遊んだら、その都度しまうクセをつけましょう。何より安全性を最優先に考えてくださいね」
使い方や時間帯に注意して、ベランダ、バルコニーを活用すれば、暮らしがさらに楽しくなりそうです!
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デッキ材を敷く、ガーデニングなど使い方次第でさらにおしゃれ、快適な場所に