【フラット35】Sとは?【フラット35】との違いは?長期固定金利型のメリット、借りるための基準や条件を総まとめ

最終更新日 2023年02月15日
【フラット35】Sとは?【フラット35】との違いは?長期固定金利型のメリット、借りるための基準や条件を総まとめ

【フラット35】Sとは、【フラット35】を申し込んだ人が一定の条件を満たすことで利用できる制度。全期間固定金利の【フラット35】のメリットに加えて、借入金利が一定期間引き下げられます。つまり、【フラット35】よりも返済額が減らせる、ということ。今回は、利用するための条件やメリット、また、利用の際の知っておきたい注意点をファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに聞きました。

【フラット35】Sとはどんな制度?【フラット35】との違いを比較

【フラット35】とはどんなローン?

住宅ローンにはさまざまな種類があります。銀行など民間の金融機関が独自に提供している住宅ローン(民間ローン)のほか、財形貯蓄を1年以上続けているなどの条件を満たす人が利用できる財形住宅融資(公的ローン)。そして、今回、詳しく解説するのが【フラット35】です。

【フラット35】は、国土交通省と財務省が管轄する独立行政法人「住宅金融支援機構」が民間金融機関と提携して提供する住宅ローン。大きな特徴は完済まで金利が変わらない「長期固定金利型」だということ。経済情勢による金利推移に左右されることなく融資実行時の金利が完済まで続くため、毎月返済額が完済まで変わりません。住宅ローンの返済がスタートしてからの返済計画が立てやすいといえます。

■【フラット35】と銀行の住宅ローンの特徴
【フラット35】 銀行の一般的な住宅ローン
金利タイプ 完済まで固定金利 変動金利、固定期間選択型など
金利 金融機関によって異なる 金融機関によって異なる
借入窓口 民間金融機関 民間金融機関
特徴 保証料、繰り上げ返済手数料が不要 保証料が必要、繰り上げ返済手数料は金融機関によって異なる

【フラット35】と民間銀行の住宅ローンの違いについてもっと詳しく
【フラット35】は人によってデメリットも? 民間銀行の住宅ローンと徹底比較

【フラット35】Sとは?【フラット35】との違いは?

では、【フラット35】Sとはどのようなもので、【フラット35】とはどう違うのでしょうか。

【フラット35】Sとは、【フラット35】を申し込む人が、省エネ性や耐震性などに優れた質の高い住宅を建てたり、購入したりする場合に利用できる制度のこと。

【フラット35】との違いは適用金利です。

【フラット35】Sと【フラット35】の違いは適用金利

【フラット35】Sなら一定期間金利が引き下げられる

【フラット35】Sが適用になると返済開始から当初10年間、または5年間は【フラット35】よりも低い金利で借りることができます。金利が引き下げられる期間には2つのプランがあり、金利Aプランは当初10年間、金利Bプランは当初5年間が適用期間です。当然、金利の低い期間が長い金利Aプランのほうが、総返済額が少なくなりおトク。

どちらのプランが利用できるかは、クリアする技術基準(文末の参考サイトを参照)によって違うため、不動産会社や建築会社に確認するといいでしょう。

■【フラット35】Sの金利引き下げ幅※と期間
プランの名称 金利引き下げ幅と期間
【フラット35】S
(金利Aプラン)
当初10年間 【フラット35】の借り入れ金利から-0.25%
【フラット35】S
(金利Bプラン)
当初 5年間 【フラット35】の借り入れ金利から-0.25%
※金利引き下げ幅は2021年3月31日申し込み受け付け分まで

【フラット35】、【フラット35】Sを利用するための条件は?

完済まで金利が変わらない安心感と、返済当初の低金利の適用が受けられる【フラット35】Sは、どのような人や家が利用することができるのでしょうか。

まず、前提となるのは【フラット35】を利用するための住宅や、申し込む人の条件をクリアしていること。利用条件についての詳細は、【フラット35】の公式サイトや金融機関で確認できますが、ここでは、主なものをご紹介します。

●【フラット35】の主な利用条件

<申し込む「人」について>
・申し込み時の年齢が満70歳未満(親子リレー返済利用の場合は満70歳以上でも可)
・年収に占める年間合計返済額の割合が年収400万円未満なら30%以下、年収400万円以上なら35%以下

<取得する「家」について>
・申し込み本人またはその親族が住むための新築住宅の建設・購入、中古住宅の購入であること
・住宅の床面積が一戸建てなら70m2以上、マンションなら30m2以上
・住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合すること

このような条件をクリアしたうえで、さらに、「省エネルギー性」「耐震性」「バリアフリー性」「耐久性・可変性」という4つの基準のうち、1つ以上をクリアすると【フラット35】Sを利用することができるのです。

●【フラット35】Sを利用するための基準

・省エネルギー性:高い水準の断熱性などを実現した住宅
・耐震性:強い揺れに対して、倒壊や崩壊などをしない程度の性能を確保した住宅
・バリアフリー性:高齢者などの日常生活を行いやすくした住宅
・耐久性・可変性:長期優良住宅など、耐久性があり、長期にわたって良好な状態で暮らせるようにした住宅

【フラット35】Sを利用するための物件の基準

【フラット35】Sの返済額はどれくらいおトク?

毎月返済額、総返済額を【フラット35】と比較

一定期間、金利が引き下げられる【フラット35】Sは、【フラット35】に比べてどれくらいおトクになるのでしょうか。

下の表は、4000万円を借り入れて、35年で返済する場合の毎月返済額と総返済額をシミュレーションしたものです。

【フラット35】Sの金利Aプランも金利Bプランも、引き下げ金利が適用になる期間は、【フラット35】に比べて毎月返済額は4744円、年間返済額では5万6928円少なくなります。総返済額を比べてみると、引き下げ期間が10年間の金利Aプランでは約95万円、引き下げ期間が5年間の金利Bプランでも約51万円も返済額が少なくなります。借りた金額は同じわけですから、総返済額は少ないほうが当然おトクです。

「性能が高い家は長持ちします。【フラット35】Sの適用になれば、住宅ローンの面でもメリットがあるということ。質の高い家を建てようと考えるなら、【フラット35】Sが利用できるよう設計段階から検討するのがいいでしょう」(竹下さん、以下同)

■借入額4000万円の場合の毎月返済額と総返済額
【フラット35】 【フラット35】S
(金利Aプラン)
【フラット35】S
(金利Bプラン)
適用金利 1.30% 当初10年間 1.05%
11年目以降 1.30%
当初5年間 1.05%
6年目以降 1.30%
毎月返済額 11万8592 円 当初10年間 11万3848 円
11年目以降 11万7292 円
当初5年間 11万3848 円
6年目以降 11万7947 円
総返済額 4980万8848円 4884万9328円 4929万1993円
【フラット35】との総返済額の差 約95万円おトク! 約51万円おトク!
※融資率9割以下、元利均等返済、ボーナス返済無し、返済期間35年
※金利1.30%は【フラット35】(買い取り型)の2020年10月最多金利
※総返済額には融資手数料、物件検査手数料、火災保険料などは含まれない
※試算結果は概算

金利引き下げ期間が過ぎても【フラット35】Sはおトク?

【フラット35】Sは、金利引き下げ期間が終了すると、確実に金利が上がり、返済額がアップします。前出の表のように金利が1.30%から1.05%に引き下げられて毎月返済額が11万3848円だったのが、金利Aプランは11年目以降に毎月返済額が3444円、金利Bプランは6年目以降に4099円アップ。それでも、低金利で残債の減りが早い分、【フラット35】よりも金利Aプランは1300円、金利Bプランは645円、毎月返済額は少なくなります。

また、【フラット35】Sで一定期間返済した後は、変動金利への借り換えでも金利変動リスクが抑えられるメリットもあります。

「金利引き下げ期間が終わって、これから確実に返済額が増える、という時点で、銀行の変動金利のほうが【フラット35】よりも低金利の場合、借り換えして低金利の恩恵を受けようと考える方はいらっしゃいます。変動金利には、将来の金利上昇で返済額がアップするリスクがありますが、それは長期間で借り、かつローン残高が多いとき。【フラット35】Sですでに5年または10年間の返済が終わっていて、ローン残高も減っていますから、変動金利への借り換えでもリスクは低くなります。手数料を考えても借り換えのメリットはありそうです」

【フラット35】S、そのほかのメリットは?

金利が低いうちに教育費を貯めやすい

返済当初の返済額が抑えられる【フラット35】Sは、子育て世帯にとってメリットが大きいと竹下さん。

「家を取得するのは、子どもが生まれるタイミングや、まだ小さいころ。これからの教育費が心配……と感じる時期と重なります。ですから返済がスタートしてからの10年間、または5年間に家計にゆとりがもてるのはとてもいいこと。無理なく積極的に教育費を貯めておくといいでしょう」

金利が低い内に教育費を貯めやすい

子育て支援型・地域活性化型との併用が可能

そのほかにも、子育て世帯にうれしいメリットがあります。

「【フラット35】Sは、【フラット35】の子育て支援型・地域活性化型との併用が可能です。
【フラット35】Sで-0.25%、
子育て支援型・地域活性化型で-0.25%
で、
合わせて-0.5%も金利が引き下げになります。

ただし、子育て支援型も地域活性化型も、自治体が住宅金融支援機構と連携していなければ利用できず、利用可能な自治体は多くはありません」

【フラット35】のサイトで確認し、家を建てたり購入したりする地域が制度の対象になっていれば、利用を検討するのがオススメです。

性能の高い家だから売却しやすい

【フラット35】Sが適用になる家は、将来、売却をすることになった場合にも買い手がつきやすく有利。

「【フラット35】が利用できる家は性能が高く、それだけでも売却しやすいのですが、【フラット35】Sだとさらに性能の高さをアピールでき、購入する人も【フラット35】Sが利用できるので、売却に有利です」

【フラット35】Sの注意点は?しっかり把握しておこう

メリットが多い【フラット35】Sですが、知っておきたい注意点もいくつかあります。

借り過ぎに注意

年間返済額が抑えられる分、【フラット35】に比べて多めに借りることができる【フラット35】S。ついつい多めに借りてしまって、返済が苦しくなることも。金利引き下げ期間が終了してからの返済額アップも要注意です。

「今、【フラット35】では購入資金の100%を借りることはできますが、【フラット35】Sを利用するなら、頭金1割は入れていただくのがオススメ。【フラット35】は頭金の割合で適用金利が違い、頭金が1割以上のほうが低金利。より低い金利を利用できますし、借り過ぎも防げます」

建築費が割高になりやすい点に注意

【フラット35】Sが適用になる家は、性能が高い分、建築費が割高になりやすいことを知っておきましょう。

「【フラット35】Sは、建てるなら性能の高い家を建てよう、と考える人にとってメリットのある制度。建築費は割高になっても、住宅ローンの総返済額を減らせることで、トータルでのコストを抑えることができます」

【フラット35】Sが使える物件は少ない

一戸建てを新築する場合は、【フラット35】Sの対象になるように建てればいいのですが、マンションの場合はそうはいきません。

「残念ながら、【フラット35】Sの対象物件はあまり多くありません。ですから、マンションを探していて、購入したいと思った物件が【フラット35】Sの対象物件だったらラッキーだと考えましょう」

設計図と家の模型
注文住宅の場合は、技術基準をクリアするよう設計することで【フラット35】Sが利用できる(画像/PIXTA)

【フラット35】Sは申し込みができなくなる場合がある

【フラット35】Sには予算金額があり、その金額に達した場合は受付が終了されます。その場合、終了する約3週間前までに【フラット35】の公式サイトで案内されるため、申し込みを検討している場合は事前にチェックしましょう。

【フラット35】Sは借り換えには利用できない

【フラット35】Sは新たに住宅を取得する場合にしか利用できないため、借り換えには利用できません。【フラット35】は借り換えにも利用できるため、全期間固定金利の住宅ローンに借り換えたい場合には、そちらを検討しましょう。

引き下げ金利の適用期間が終わると金利が上がる

【フラット35】Sが適用になると金利Aプランは当初10年間、金利Bプランは当初5年間の金利が引き下げられますが、適用期間が終了すれば、金利は元に戻るため、返済の負担が大きくなる点に注意が必要です。返済計画を立てる際には、金利が元に戻ることも加味しておきましょう。

2021年1月、【フラット35】Sは何がどう変わる?

金利プランBの省エネルギー性の基準が変更に

【フラット35】Sは2021年1月に金利Bプランの省エネルギー性の基準が見直されます。
これまでは、「断熱等性能等級4の住宅」か「一次エネルギー消費量等級4以上の住宅」のどちらかを満たせば、省エネルギー性の基準はクリアできたのですが、制度変更後は、「断熱等性能等級4の住宅」と「一次エネルギー消費量等級4以上の住宅」の両方を満たす家であることが必要になります。

制度の変更によって、基準が大幅に厳しくなるわけではありませんが、依頼先の建築会社が変更点を把握しているかが重要。注文住宅を建てる際には、制度変更後の基準で設計されているかを確認したほうがいいでしょう。

まとめ

当初10年間、または5年間の金利が引き下げになるのが【フラット35】S

【フラット35】に比べて毎月返済額、総返済額が少なくなるのが大きなメリット

自治体によってはおトクな制度との併用ができる場合も

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取材・文/田方みき イラスト/竹村おひたし
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