制振構造と制震構造の違いは? 地震に備えるマンションの構造を解説

制振構造と制震構造の違いは? 地震に備えるマンションの構造を解説

家探しをする際に気になるのは、マンションや戸建ての地震に対する備えのこと。耐震、制振、免震という言葉のほかに、「制震」という言葉を目にしたことはありませんか? 制振と制震、この2つは同じもの?違うもの? この記事では、制振と制震の違いについて建築家の鈴木哲夫さんに話を伺いました。そのほか、耐震、制震、免震の3つの構造の基本についても解説します。

制振構造と制震構造、どう違うの?

制振と制震、建築業界での定義はあいまい

地震に備えるための建物の構造には種類がありますが、そのうちの「制振構造」と呼ばれるものは、建物に制振ダンパー(制振装置)を配置して、揺れのエネルギーを吸収する仕組みです。しかし、マンションの広告などでは「制振」ではなく「制震」というように、漢字表記が違う場合が見られます。「制振」と「制震」、これは同じ意味なのでしょうか?それとも違いがあるのでしょうか?

「国土交通省の『公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)』平成31年版を見ると、『制振改修工事』という項目があり、表記は『制振』で統一されています。つまり、国では制振という表記を使っていることになります。しかし、世の中では『制振』と『制震』のどちらも使用されているのが現状。ハウスメーカーやデベロッパーなど、その用語の使用者によって、どの表記を使用するのかが違っているようです」(鈴木さん、以下同)

では、表記は違っていても、意味は同じ、ということですか?

「制振(震)構造の施工技術はさまざまで、ハウスメーカーやデベロッパーでは、『制振』と『制震』にそれぞれに意味付けをして使用しているケースがあるようです。制振と制震はどう違うのかという定義は曖昧だといえます」

定義が曖昧な「制振構造」と「制震構造」。言葉の使用者によって定義付けがされているため、意味も異なるのが現状です。

揺れのエネルギーの大きさで使い分けられる傾向

制振も制震も地震エネルギーを吸収する構造または装置のことを指しますが、使い方の定義は定まってはいません。しかし、言葉のもつ意味から使い分けられる傾向もあるのだとか。

『制震』という言葉は大きな自然エネルギーの制御に使われます。一方、『制振』は小さな動きに対応する性質で、地震でいえば余震のわずかな動きにも対応し、敏感に反応することを指します。

つまり、『制震構造』の場合は、ビルやマンションなど比較的大規模な構造物で、大きなエネルギーを抑えるための大規模な装置が採用されることが多いといえます。『制振構造』の場合は、小さなエネルギー(揺れ)でも影響しやすい戸建て住宅などで、揺れに反応しやすく比較的設置しやすい大きさの『制振装置』が採用されます。

住宅など小規模な建物を中心にした場合は『制振』、ビルやマンションなど大規模なスケールで大きな力を制御する場合は『制震』を用いる使い分けもあるのです」

ビルやマンションなどの建物の地震に備える構造や装置の用語として、「制振」と「制震」という表記が混在するなか、一定の使い分けもされているようです。なお、この記事では表記を「制振」に統一し解説を進めていきます。

制震構造/制振構造の大規模な建物に設置された制震ダンパー
斜めに設置されているのが制振ダンパー(画像/PIXTA)

制振ダンパーとは?あとから制振構造にできる?制振に関するよくある疑問

制振ダンパー(制震ダンパー)とはどんなもの?

制振構造の建物で使われている制振装置が「制振ダンパー」です。壁や柱、床などの接合部に設置する装置で、地震や風による揺れを吸収して他の力に変えることで建物の揺れを抑えます。
・ダンパーの中にオイルを充填した油圧式
・ダンパー内のゴム(樹脂)が伸縮して振動を吸収するもの
・金属が曲がる力で揺れを吸収するタイプ
があります

マンションやビルなど大規模な建物に設置された制震装置(制振装置)のイメージ
ダンパー内の油圧やゴム、金属が地震や風で揺れる大きなエネルギーを吸収する(画像/PIXTA)

戸建ての筋かいとは違うの?

制振ダンパーと見た目が似たものに、戸建ての躯体で使われる「筋かい」があります。柱と柱の間に斜めに入っている筋かいは、制振構造で使われる制振ダンパーと同じようなものなのでしょうか?

「制振ダンパーと筋かいは、見た目はそっくりですが機能が違います。筋かいは、揺れに対して建物を硬く・強くするための部材で、揺れの力を真っ向から受け止めます。耐震構造の部材と考えたほうがよいですね。一方、制振ダンパーは、揺れを吸収し、熱エネルギーなど他の力の変えることで、揺れをかわす能力があります」

戸建て住宅などに使われている筋かいのイメージ
柱と柱の間に斜めに設置されているのが筋かい。制振ダンパーと見た目は似ているが、揺れに対応する機能は違う(画像/PIXTA)

あとから制振構造にできる?

1981年6月1日以降の建築確認に適用されるのが新耐震基準。「震度6強~7程度の揺れでも倒壊しない水準」であることが求められるものです。

「新耐震基準よりも前の基準で建てられた建物は、あとから制振構造にする耐震改修を行うことで耐震性能を上げることができます。公共施設や学校の校舎などで外側に制振ダンパーを取り付けた建物を見ることがありますが、制振ダンパーを後付けしたものでしょう」

外壁に制振ダンパーを設置することで外観に影響したり、窓から景色が見えにくくなるなどのデメリットはありますが、耐震性能がアップできるのは大きなメリットです。

制振ダンパーをあとから設置した建物のイメージ
建物の外側に制振ダンパーを設置した建物。耐震改修を行ったものと思われる(画像/PIXTA)

建物によって制振構造にするための方法は違うの?

制振構造では、建物の規模によって制振ダンパーの数や大きさ(太さ)が違ってきます。

「タワーマンションなど大規模な建築物の場合、例えば神社の鳥居のような太さのダンパーが使われたりします。地震に対抗するための構造は、さまざまな方法が開発されており、免震構造+制振構造のハイブリッド型も登場しています」

制振材は制振構造の建物に使われるもの?

制振材とは、機械などの振動を抑えるシート状のものを指しています。制振構造とは関係がなく、耐震関係では制振材という用語は使われていないようです。制振シートとも呼ばれ、空調設備や洗濯機、冷蔵庫など床や壁に伝わる振動音の低減に効果を発揮します。

「耐震」「制振」「免震」構造は、どのような建物に使われるの?

マンション探しで気になるのは地震に対してどのような備えをする建物なのかということ。広告などでは「制振(制震)」以外にも、「耐震」「免震」という言葉を目にします。耐震構造、制振構造、免震構造は、それぞれどのような建物で採用される傾向にあるのでしょうか。

マンションやビルの耐震構造、制振構造(制震構造)、免震構造
マンションやビルの耐震構造、制振構造(制震構造)、免震構造を解説するイラスト
左からマンションやビルの耐震構造、制振構造(制震構造)、免震構造。地震の際、耐震、制振、免震の順に建物上層部の揺れ幅が小さくなる(イラスト/つぼいひろき)

・耐震構造
耐震構造は建築基準法が定めている新耐震基準の基本性能に当たります。マンションやビル、戸建て住宅といった建物を全般に採用されています。

・制振構造
住宅や高層オフィスビル、マンション、タワーマンション、公共施設など、小規模から大規模建築物まで採用される傾向にあります。

・免震構造
高層マンション、タワーマンション、公共施設といった大規模建築物に採用される傾向にあります。なお、戸建て住宅を免震構造で建てることは可能ですが、大きなコストがかかるため現実的ではありません。

地震に備える3つの構造、「耐震」「制振」「免震」構造の特徴

これらの3つの構造について、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

耐震構造の特徴

・建物の一般的な構造形式で大規模(ビル)なものから小規模(木造戸建て住宅など)など、広く採用される基本性能
・壁や柱を強化したり、補強材を入れたりすることで建物自体の硬さと強さで地震に対抗する構造
・コストによって耐震箇所を設定できる。そのため予算を抑えることができる
・地震や風による建物の揺れは他の構造に比べて大きい
・規模の大きな地震では、柱、梁、壁などが損傷することはあるが、倒壊には至らないように耐力が設定される

耐震構造の建物の仕組みをあらわした図
耐震構造は建物自体の硬さと強さで地震に対抗(イラスト/つぼいひろき)

制振構造の特徴

・建物内に配置する、油圧、ゴム、金属でできた制振(震)装置(ダンパー)で地震や風で揺れる大きなエネルギーを吸収。ただし、小さな揺れには反応しないという特徴がある
・耐震構造に比べて地震のときの揺れが抑えられる
・地震の規模が大きくなった場合でも、柱、梁、壁の損傷を抑えられる

制振構造、制震構造の建物の仕組みをあらわした図
制振(震)構造は建物内に配置する制振(震)装置で揺れを抑える(イラスト/つぼいひろき)

免震構造の特徴

・建物と地面の間に免震部材(積層ゴムやダンパー)を設置。建物が受ける地震のエネルギーを吸収し、地面から建物へのエネルギー伝達を遮断する
・耐震、制震と比べて、建物の揺れを最も抑えられる。建物上層階の揺れが大きくなるビルやタワーマンションで採用されやすい
・コストが比較的高いため、一般的な木造住宅では採用しにくい
・建物内部の揺れが少ないため、落下物や家具の倒れなどによる二次災害が起こりにくい
・免震に分類される木造住宅には使いやすい安価な減震部材(土台と基礎の間に組み込むパッキン)がある

免震構造の建物の仕組みをあらわした図
免震構造は建物と地面の間に免震部材を設置し、地震エネルギーの建物への伝達を遮断(イラスト/つぼいひろき)

地震に耐えるための構造として採用される耐震構造、制振構造、免震構造。それぞれの特徴を知って、マンションを購入する際はどの構造なのかを確認するようにしましょう。

まとめ

制振構造と制震構造は、どちらも制振装置(制震装置)を配置することで揺れを吸収する仕組み

「制振」か「制震」か、表記はハウスメーカーやデベロッパーによって異なり、定義はあいまい

小規模な建物には制振、大規模な建物には制震の字が使われる傾向がある

地震に備える建物の構造は「耐震構造」「制振構造」「免震構造」の3種類

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取材・文/田方みき イラスト/つぼいひろき
公開日 2022年01月07日
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