どんなにきれいな部屋でも、悪臭が漂っていればイメージダウンは必至。部屋のにおいは住んでいる人が気付かないことも多く、自分で「なにかにおう?」と思う時にはすでにかなりのレベルかも?臭気判定士「におい刑事」こと共生エアテクノの松林さんに、家の中のにおいを徹底的に「消す・出さない」コツを教えてもらって、空気から美しく快適な住まいにしましょう。
どんな家にだって、多少なりともその家独特のにおいがあります。それが気にならないレベルなのか、他人には気になるレベルなのか、実は健康を害するにおいなのか?住んでいる人には判断が難しいもの。気になるにおいの正体が何なのか、におい刑事と一緒に真実を徹底追及していきましょう。
人が家の中で活動すると、多かれ少なかれどうしてもにおいは発生します。たとえばこのようなにおい…。
キッチンやゴミ箱周りで
・料理のにおい
・排水口のにおい
・何かが腐ったにおい
トイレやお風呂周りで
・トイレのにおい
・カビのにおい
・排水口のにおい
人(衣服)やペットから
・汗のにおい
・タバコのにおい
・ペットのにおい
新築の部屋やリフォーム後に
・化学物質のにおい
などなど。一時的に発生したにおいをすぐに外に出せる場合はいいのですが、たとえばカビのように、原因がどこかで存在し続けると当然においも続きます。また、においがいくつも重なると、原因を追究しにくくなってしまいます。においが発生したときはできるだけ早く原因を特定して、家に染み付く前に元から断つようにしたいですね。
「一般住宅では、気になるにおいの原因がカビであることが多いのです。カビは嫌なにおいをさせるだけでなく、胞子が飛び回るのでそれが体に入り健康を害する可能性も。
例えば、太陽光が入らず風通しが悪く、換気の状態が悪い環境ではカビが発生しやすいため、においに悩まされることも。帰宅後に玄関でにおいを感じたときはどこかにカビが潜んでいるサイン。消臭剤を使う前に、まずは除湿をするなど、湿度をコントロールすることが大切です」(におい刑事/松林宏治さん 以下同)
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厄介なことににおいは目に見えず、「なにか臭う」と思っても原因を特定しにくいもの。
「私たちにおい刑事のところにも、『においがどこからするのか分からないので見て欲しい』という依頼がよくきます。実は、一般住宅のにおい事件のはほぼ半分が『水まわり』で発生しています。
悪臭には必ず発生源があります。まずは排水口のある場所をすべて疑ってみてください。キッチンやトイレ、洗濯機の排水口、洗面台の下などは特に怪しいですね。排水口の周辺はきれいでも、その奥の見えにくい場所に原因があればやっかいです。
家の中には嗅ぐべきチェックポイントがいくつかあって、その一つが床下収納です。漏水していないか。異臭がしていないか。動物などの死骸はないか。カビはないか。何か異常や異変があれば、すぐに対策を」
まるでポルターガイスト現象のような事件も、実は排水口が原因だったりします。最近の家は気密性が高く、家じゅうのドアや窓、給気口をうっかり閉めたまま換気扇をつけていると負圧(室内の空気の圧力が外の空気より低い状態)になり、どこかから空気が入ってこようとします。開いているところと言えば…排水口。この事件の場合は、カタカタ音と同時に下水のにおいも発生しているはず。「ドブ臭いにおいがする!」と思ったら、負圧を疑ってみてください。
におい問題が発生したら、まずは発生源を特定し、その後原因を取り除くことが大切です。消臭スプレーでにおいを消しても、それはすでに出ているにおいに効果があるだけ。元から断たなければいつまでもにおいは出続けて、家自体に染み込んでいきます。
「くさいと思うにおいの半分は『菌やカビなど』なんです。においを退治するということは『菌やカビなど』を退治するということ。原因がカビであればまずそのカビを取り除くこと。エアコンから雑巾が腐ったようなにおいがしたり、靴や靴箱がにおう場合も、菌やカビが原因であることが多いのです。消臭効果だけではなく、除菌効果も発揮してくれるスプレーを使うのが正解です」
また、建材から出る化学物質のにおいは退治方法が異なります。よく『新築のにおいがする』と言いますが、それはほとんどがホルムアルデヒド・トルエン・キシレンなどの化学物質のにおい。いわゆるシックハウス症候群の原因になるもので、ひどくなると『化学物質過敏症』という、わずかな化学物質にも反応してしまう体質になりかねません。
においが気になったら、室内の空気環境測定会社や臭気調査会社などにどんな成分がどれくらい出ているかの測定を依頼して原因を特定し、においの原因を無くす、または放散させるようにしましょう。検査に使う「測定バッジ」は1検体用12,000円程度で個人購入も可能です(価格は参考。設置費用等は別途)
人が生活しているとにおいの発生は避けられません。しかし、掃除をこまめにするなど、においが発生しにくい生活を心掛けることはできます。
においが発生するといえば、次の3つが気になる人が多いでしょう。
「トイレ」「ペット」「洗濯ものの生乾き臭」それぞれについてポイントを紹介していきます。
まずトイレのニオイが思い浮かびますが、ずっとにおい続けるのは、掃除が行き届かずに尿石(尿に含まれるリン酸カルシウムという有機成分が、尿素やたんぱく質などの無機成分と結合して固まったもの)が残っていることが原因なのだそう。
トイレを使った後にきちんと水を流していても、便器の縁などに飛び散った尿は洗い流されずに残り、尿石の原因に。尿石に雑菌が増殖すると、尿石がどんどん蓄積して頑固な汚れになります。床や壁に飛び散れば、そこでも尿石が蓄積していきます。落としにくくなる前にこまめに除去することが大切です。
「おしっこなどの自然由来のにおいはいずれ酸化分解されるため、比較的消しやすいにおいです。そもそもアンモニアは空気より軽いので、換気扇を回せば飛んで行ってくれます。トイレのにおいが気になるのは尿石などが残っているから。
ペットのにおいが気になるなら、全体換気をきちんと行った上で、ペットがいる場所やトイレの掃除をこまめに行うこと。さらに言えば、難しいかもしれませんが、できるだけ居場所を決めることです。
雨から夏に発生しやすい『洗濯物の生乾き臭』は菌が原因。扇風機やサーキュレーターで風を当てるなど、菌が繁殖する前にすばやく乾かすように心掛けましょう。そして、何より大切なのは、カビ対策を徹底すること。水をたまらせないようにして、湿気を上手にコントロール。防カビ処理や防カビ加工も有効です」
発生したにおいをこもりにくくすることで、人体や建物への被害を最小限に抑えることができます。そのためにできることはやはり「換気」。少なくとも2か所以上の窓を開けて空気を通すこと。空気が流れにくい場所には、サーキュレーターや扇風機を使って部屋全体の空気を循環させましょう。
「2003年7月の建築基準法改正により、住宅には24時間換気システムの設置が義務化されました。それ以降に建てられた家には24時間換気が搭載されていますが、その換気量だけでは足りない場合があります。
空気の死角をつくらないこと。部屋のドアやクローゼットの扉を定期的に開けて、空気がこもりがちな場所にも風を送ってあげましょう。
また、うっかり給気口を閉めてしまうと、家の中が負圧になって、下水のにおいが上がってくる可能性大。
24時間換気をきちんと稼働させたうえで、空気がよどみやすい場所にもしっかり外気を取り入れること。それが、カビ対策やにおい対策に有効になります」
においがこもったままだと建物や家具に染み付いて、いつの間にか「その家のにおい」になってしまいます。日当たりと風通しのよい爽やかな住環境をつくることは、健康のためだけでなくニオイ対策にも大切なのです。
いつも以上に蒸し暑い夏が終わった頃、あるお宅から「急に服がカビだらけになった!」とSOSが。その家には10年ほど住んでいるのに、今まではそんなことはなかったそう。詳しく聞くと、妻が働き出したため、以前ほど毎日換気できなくなっていたそう。その結果、カビを繁殖させる酸素、湿度、栄養源が急激に揃ってしまったのです。除カビ作業、防カビ作業を施し、高温多湿の密閉状態とならないようにお願いして、現場を後にしました。
家に入った瞬間にいい香りで満たされると、ふんわりと幸せな気持ちになるもの。「くさくない」部屋づくりからさらに一歩踏み込んで「いい匂いがする」家にするにはどうすればいいでしょうか?「におい・かおり環境アドバイザー」でもある、におい刑事にアドバイスをお願いしましょう。
「芳香剤はにおいをマスキングするために使ってはダメ。嫌なにおいがしたら、まずは掃除や除菌消臭剤などでその原因を徹底的に無くすこと。
そして、においの好みは十人十色。最近では柔軟剤の使い過ぎによる『香害』や、会社での『スメルハラスメント』も社会問題になっています。
香りを付けたい場合は、一般個人のご家庭では『消臭+アロマ』がおすすめ。アロマのいいところは、人にもよりますが、ストレス解消やリラックスに繋がるところです。『香りの押しつけはNG』だということを確認した上で、質の高い香りを上手に活用していきましょう」
においは、「いい匂いだけど嫌い」だったり「臭いけど好き」なんてことも起こる繊細なもの。「せっかく嫌なにおいを取り除いたのに、いい匂いにしようとしてかえって臭くしてしまった」なんてことがないように気を付けたいですね。
「マンションのカビ臭が気になって壁裏まで対策したのに、においがなくならないどころか、換気扇を回すとよけいにひどくなる」という相談が寄せられました。捜査に伺い確認すると、カビ臭も感じるものの雑排水臭が中心と判断。キッチンよりも浴室、浴室よりも洗面室、洗面室よりもトイレまわり、とにおいの強い箇所を絞り込んでいき、最後にトイレの点検口を開けてみたところ、配管関係の不良を発見!配管のすき間から漏れたにおいが、キッチンの換気扇を回すことでトイレから引っ張り出され、家じゅうに広がっていたのです。事件を無事解決すると住人様から称賛のお言葉を頂き、颯爽と現場をあとにすることができました。
どんな部屋でもにおいはゼロではなく、家には様々な理由からその家独自のにおいがするもの。そのにおいが不快であれば解消して、家族はもちろん、来客にも気持ちのいい住まいにしましょう。
においが気になったときは、まずにおいの元を特定し、原因を取り除こう
においの原因は大半が細菌やカビ。健康のためにも対策が必要
におい対策には何よりも換気が大切。定期的に空気の入れ替えを
「いいにおい」の基準は人それぞれ。「香害」にならないよう気を付けて
●取材協力
松林宏治さん
共生エアテクノ代表取締役。脱臭装置の設置、悪臭調査と対策提案・設計などを行うほか、「におい刑事(デカ)」の愛称で、テレビ、新聞、雑誌なども活躍中。臭気判定士、シックハウス診断士、におい・かおり環境アドバイザー
株式会社共生エアテクノ
臭気判定士/におい刑事(デカ) におい110番ブログ