マンションに関わる「敷地権付き区分建物」とはなに?登記や割合、メリット・デメリットについてプロが分かりやすく解説

公開日 2025年06月19日

マンションに関わる「敷地権付き区分建物」とはなに?登記や割合、メリット・デメリットについてプロが分かりやすく解説

マンションの売買や相続について調べると「敷地権」という言葉に出合うかもしれません。現在、日本の多くの分譲マンションでは敷地権が設定されているため、その意味を正しく知っておいたほうがよいでしょう。
敷地権付き区分建物の意味や位置付け、所有権との違い、敷地権が設定されていることのメリット・デメリットなどを、らくだ不動産の八巻侑司さんが分かりやすく解説します。

敷地権とは?

敷地権・敷地利用権・区分所有権の意味と位置付け

分譲マンションのように各部屋(専有部分)に所有権がある建物のことを区分建物といい、部屋ごとに区分所有者が存在します。

また、マンションの建物の敷地に対する権利を「敷地利用権」と呼び、敷地利用権と区分所有権が一体となって登記されている状態のことを「敷地権」といいます。現在、日本のほとんどのマンションでは敷地利用権と区分所有権が一体となり、敷地権化されています。

このように敷地権化されたマンションのことを「敷地権付き区分建物」と呼びます。

敷地権の図解
区分所有権と敷地利用権が一体となった状態を「敷地権」という。敷地権化されていない状態のマンションでは、売却や相続の際に手続きが複雑になりやすい(イラスト/あべさん)

敷地権があると、土地と建物を別々に売却できない

「建物と土地の権利が一体化されていない場合(敷地権がない場合)では、処分や売却も別々に行うことができます。一戸建て住宅の場合は、建物と土地を別々に売却することができますが、それは建物と土地の権利が一体化されていないためです。

一方、マンションの場合は建物の権利(区分所有権)と土地の権利(敷地利用権)が一体化されているのが通常で、別々に売却ができないようになっています。マンションでこの2つの権利が一体化されていないと、建物と土地の権利を別々に管理・登記する必要があるため、売却や相続の際に手続きが煩雑になるほか、トラブルの原因となることがあります。このようなことを防ぐために、区分所有法によって敷地権制度が1983年に導入されましたが、敷地権化自体は法的に義務づけられているわけではありません」(八巻さん、以下同)

敷地権が生まれた背景

敷地権の制度は、1983年(昭和58年)の区分所有法改正の際に導入されました。

「それ以前のマンションでは、建物と土地の登記が別々に行われており、マンションの住人ごとに土地の持ち分を登記する必要がありました。しかし、登記の変更が複雑で所有権の移転時に混乱するといったトラブルや、土地と建物を別々に登記・売買しなければならず、売買時の手続きが煩雑になる、といった数々の問題が起こっていました。こうした問題を解決するために、土地と建物の権利を一体化させた敷地権が導入されたのです」

敷地権化されていないマンションの問題
敷地権が設定されていないマンションは、手続き上のトラブルが発生しやすい(イラスト/あべさん)

敷地権の確認方法

マンションに敷地権が設定されているかどうかを確認する方法は、大きく分けて「登記簿謄本の取得」と「不動産会社・管理会社への確認」の2つがあります。

「登記簿謄本は法務局で発行される不動産の権利関係を証明する公的な書類です。建物の種類や構造、床面積、所有者の情報、抵当権および賃借権などが細かく記載されています。その中に「敷地権」といった記載があれば、敷地権が設定されたマンションということになります」

登記簿謄本は、法務局の窓口やオンラインで取得することが可能です。
そして、2つ目の方法は不動産会社や管理会社に確認することです。敷地権は、マンションの土地利用に関わる重要な権利なので、購入や売却の際のトラブルを防ぐためにも、しっかり確認しましょう。

マンションに敷地権が設定されていることのメリットとデメリットは?

マンションに敷地権が設定されているメリット

「敷地権が設定されたマンションでは、土地と建物の権利が一体となっているため、売買や相続時の手続きが簡素化されます。マンションを売買する際には土地の持ち分を個別に登記し直す必要がありません。また、登記簿の管理が一元化され、権利関係が明確になるというメリットもあります」

マンション売買のイメージ
敷地権が設定されているマンションは、売買の際も手続きがスムーズ(画像/PIXTA)

マンションに敷地権が設定されているデメリット

「敷地権が設定されていることのデメリットは特にありません。ただ、土地と専有部分を切り離して売買したいという場合は不可能なので注意が必要です」

また、敷地権があることで土地に対しても固定資産税や都市計画税が発生します。専有面積の持ち分が多いほど税金の負担が増えるため、持分割合が大きい場合は税負担も大きくなるということです。

マンションの固定資産税のイメージ
マンションを購入すると土地に対しても税金がかかる(画像/PIXTA)

敷地権のないマンションもある? 売買時の注意点を解説

新しいマンションは原則として敷地権化されていますが、築年数が古いマンションの場合、たまに敷地権化されていないことがあります。敷地権の有無は登記簿謄本を見ると分かるので、まずは確認してみてください。

ただし、法改正があった1983年以前に建てられたマンションであっても、法改正後に管理組合によって敷地権化の手続きがされた可能性があり、すべての古いマンションが敷地権化されていないというわけではありません。

敷地権化されていないマンションの場合、一戸建て住宅と同じように、土地と部屋を別々の不動産としてみなし、売買や相続をする必要があります。しかし、マンションの場合は土地と部屋を別々に売却することは区分所有法で許可されていません。そのため、土地と部屋の所有者や設定内容に相違がないように注意して、手続きを進める必要があります。

「敷地権化されていないマンションは売却や相続の際の手続きが複雑になるため、資産性が下がり売れにくいという特徴があります。こうしたデメリットを解消したい場合は不動産会社や司法書士等に相談をすることをおすすめします」

マンションの権利確認のイメージ
敷地権化されていないマンションは、土地と部屋の所有者が別々になっている可能性もある(画像/PIXTA)

敷地権化されていないマンションのリスク

売却がスムーズに進まない

「敷地権がないマンションは、購入希望者にとって『権利関係が複雑で手続きが面倒』と判断され、敬遠されるケースが少なくありません」

例えば、売主が部屋を売却しようとしたものの、敷地権が設定されていないことにより、買主側の金融機関が住宅ローンの融資を断る可能性があります。結果として、現金一括で購入できる買主を探さなければならず、売却までに通常よりも長い期間がかかるかもしれません。

マンションの売買のイメージ
敷地権がないマンションを手放す際には苦労する可能性がある(画像/PIXTA)

資産価値が下がる可能性がある

敷地権がないと、マンションの資産価値が低く評価されることがあります。特に金融機関が担保価値を低く見積もることがあり、購入希望者がローンを組みにくくなるといったリスクが懸念されます。

所有権のトラブルが起こりやすくなる

「敷地権が設定されていない場合、マンションの住人それぞれが土地の持ち分を個別に登記していることが多く、所有者が変わるたびに登記の変更が必要になります。しかし、相続や売買の際に適切な登記が行われていないと、誰がどの土地の持ち分を持っているのか分からなくなることもあります」

例えば、長年にわたり相続登記がされていなかったために、一部の土地の持ち主が不明となり、マンションの管理組合が大規模修繕の合意を取るのに苦労したケースもあります。

また、将来的にマンションの建て替えを検討する際は、土地の権利関係が明確でないと、住民間の合意形成が難しくなるおそれもあります。

マンション所有者のイメージ
所有権のトラブルを予防するためには、マンション購入前に登記簿謄本を取得し、「敷地権」と記載されているかを確認することが重要(画像/PIXTA)

敷地権の割合はどう決まる?

専有部分の床面積 ÷ 専有面積の総床面積

区分所有者が所有する敷地権の割合は、多くの場合、専有部分の床面積によって決まります。敷地権の割合は以下の計算式によって求めることができます。

敷地権の割合を求める計算式
専有部分の床面積 ÷ 専有面積の総床面積 = 敷地権の割合

計算例
70m2の部屋が10戸、80m2が20戸の総戸数30戸のマンション
80m2の部屋の所有者の敷地権割合を求める場合

80m2(所有者の部屋の専有面積)÷{(70m2×10戸)+(80m2×20戸)} = 80/2300 = 4/115

「専有部分の床面積は、壁芯面積と内法(うちのり)面積の2つの出し方があり、敷地権を求めるときは壁芯面積が使われることが多いです。壁芯面積とは壁や柱の厚みの中心線で囲まれた部分の面積のことをいいます」

通常、広告などで表示される専有面積とは壁の中心線で囲まれた壁芯面積のことをいいます。一方で、購入後に登記する際は壁の内側の内法面積が記載されます。多くの場合、壁芯よりも内法のほうが3%~5%ほど面積が小さくなります。

壁芯面積と内法面積
「床面積」の算出方法には2種類あるため注意が必要(イラスト/あべさん)

床面積以外で決まることもある

「敷地権の割合は床面積によって決まるのが通例ですが、稀に、購入金額で決まったり、居住者の数で等分されるケースもあります。入居予定者が主体となって建築するコーポラティブハウスなどの、自分たちで自由に規約を定められる集合住宅では、話し合いで敷地権の割合が決まる可能性もあります。

敷地権の割合を算出するイメージ
敷地権の割合が特殊なケースもあるため、購入前に管理規約等をチェックしておくとよい(画像/PIXTA)

敷地権以外の要素にも意識を向けて

最後に、マンション購入を検討中の人に向けて、敷地権について注意したほうがよいことを八巻さんに伺いました。

「お伝えしたように、敷地権があることによってマンションの売買や相続が昔よりもスムーズになりました。購入を検討中の物件があれば、敷地権化されているかどうかを確認してみましょう。新しいマンションでは気にしなくても大丈夫かと思いますが、古いマンションの場合は敷地権化されないままになっている場合があります。敷地権化されていないとトラブルが生じやすく資産価値も下がってしまうので、よく検討したほうがよいでしょう。

そして、マンション購入時には敷地権の有無以上に留意すべきポイントがたくさんあります。古いマンションということは、最新の耐震基準を満たしていない建物かもしれません。また、設備の劣化が見られたり、管理組合が適正に運営されていないこともあります。敷地権だけに囚われず、物件の要素を総合的に見て購入を判断することが重要かと思います」

まとめ

敷地権とは、マンションの「区分所有権」と「敷地利用権」を一体化した状態のこと

敷地権がないマンションは、売却が難しくなったり、資産価値が下がったり、土地の所有権トラブルのリスクがある

敷地権の有無は登記簿謄本などで購入前に確認できる

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