マンションでギターは弾けるの?防音のコツと騒音トラブルの解決策を専門家に聞いてみた

最終更新日 2024年10月07日
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マンションでギターは弾けるの?防音のコツと騒音トラブルの解決策を専門家に聞いてみた

在宅時間が長かったコロナ禍を経て、防音性能の高い新築マンションが増加しています。一方で、中古マンションは築年数により防音性能にばらつきがあり、自宅で楽器を楽しみたい方にとって悩みの種です。

そこで本記事では、楽器のなかでも気軽に楽しめる「ギター」に焦点を当て、ギターが弾けるマンションの選び方や防音のコツ、騒音トラブル対策などについて解説します。

さくら事務所のマンション管理組合向けコンサルタントと、らくだ不動産の不動産仲介エージェントを兼任する佐藤健斗さんと、さくら事務所でホームインスペクター(住宅診断士)を務める田村啓さんの知見やアドバイスを交えながら紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ギターをマンションで弾けるかは、管理規約の内容で決まる

管理規約のイメージ
マンションには管理規約がある(画像/PIXTA)

マンションでギターを弾くことができるか否かは、居住者共通のルールブックである管理規約で確認できます。

各マンションで管理規約の様式や内容は異なりますが、国土交通省による「マンション標準管理規約(※)」では、楽器の使用について具体的な規定がなく、第18条で「対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする」とされています。

したがって、多くのマンションでは、この使用細則のなかで楽器の使用に関するルールが定められているのです。

※参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

「管理規約や使用細則に、楽器の使用可否について明確に書いてある場合もありますが、具体的に使用できる楽器を指定する事例は少なく、ざっくりとした内容になっていることが多いですね」(佐藤さん)

楽器使用に関する使用細則の例は、以下のとおりです。

◆楽器の使用そのものを禁止
・「マンション内での楽器の演奏を一切禁止する」

◆楽器に関する制限
・「楽器の演奏は午前○時から午後○時までとし、それ以外の時間帯は禁止する」
・「長時間にわたる楽器の演奏をしないこと」
・「ギターのアンプなど、特に音量の大きい楽器の使用を禁止する」
・「ピアノの設置は管理組合の承認を得ること」
・「楽器を定期的に演奏する場合は、管理組合に届け出ること」

◆騒音全般に関する制限
・「テレビ、ラジオ、ステレオ、各種楽器等の音量を著しく上げることを禁止する」
・「騒音、振動または電波等により、ほかの居住者に迷惑をかけることを禁止する」

マンションでギターなどの楽器演奏が許可されていたとしても、多くの管理規約には「円滑な共同生活を維持する」という趣旨の条項があるため、トラブルを避けるための防音対策など、隣人に対する配慮は忘れずに行いましょう。

なお、詳しくは後述しますが、賃貸契約や物件購入前に、建物の防音性についてチェックしておくことも重要です。

ほかの住戸のギター音がうるさいときのトラブル対策

ギターなどの楽器を演奏する側ではなく、楽器の音が頻繁に聞こえて「うるさい!」と感じた場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか。

まず考えられるのは、ギターを含めた楽器の演奏が、マンションの管理規約で認められているかの確認です。

楽器の使用が許可されていたとしても、先述のように、演奏できる時間帯の条件や、使用禁止の楽器があるかもしれないので、しっかりチェックすることが重要です。

もし、管理規約に違反していた場合は、演奏されていた日時や聞こえた楽器の種類、可能であれば楽器の音を録音するなどして、管理会社や管理組合、大家に相談しましょう。

音の伝わり方は2種類。空気伝搬音と固体伝搬音がある

2種類の音の伝わり方
空気伝搬音と固体伝搬音の違い(画像/SUUMO編集部作成)

マンションの住戸から発生した音の、ほかの住戸への伝わり方(伝搬)は2種類あります。防音対策の効果を上げるために、伝わり方の特徴と具体例を確認しておきましょう。

空気伝搬音

空気が振動して伝わる音のことです。
具体例:ギターなどの楽器の音、人の声、テレビやラジオの音、生活家電の駆動音、換気扇の音、ペットの鳴き声、電車や車の走行音など

固体伝搬音

壁や床に力や衝撃が加わったときに、振動として伝わる音のことです。
具体例:ギターのペダルを踏むときの振動音、足音、ドアの開閉音、物の落下音、家具を引きずる音、洗濯機の振動、エレベーターの動作音、配管を通る水の音など

アコースティックギターなどの生音は、弦の振動が表板全体に伝わり、ボディー内の空気が共鳴することで発生します。これらは空気伝搬音です。空気の振動は、壁や窓などを透過して外部へ音として漏れていきます。

また、ギターのペダルを踏んだ際の音などは壁や床に振動として伝わり、固体伝搬音に変化することもあります。
固体伝搬音は、壁や床などから建物の構造躯体を通じて振動が広がり、別の場所で再び音として聞こえるのが特徴です。

さらに、ギターアンプを使用した場合は、空気伝搬音が大きく増加するうえ、アンプ本体の振動が、床から固体伝搬音として建物の構造躯体に伝わり広がります。

このように、ギターの音は、空気伝搬音と固体伝搬音の両方に当てはまるため、片方ではなく両方の対策が必要です。

ギターは種類によって音の大きさ(デシベル)が違う

ギターにはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的なアコースティックギターとエレキギターの音の大きさについて紹介します。

アコースティックギターの音の大きさを数値で表すと、約80~95デシベルです。
これはパチンコ店の中や、間近にいる犬の鳴き声、走行中の電車内と同じくらいの音の大きさです。

エレキギターの生音は、アコースティックギターより低く、約65~75デシベルです。これは騒々しい事務所の中や、セミの鳴き声、高速走行中の自動車内とほぼ同じで、アンプを使用するとさらに大きくなります。

ほかの楽器については、ピアノが90~110デシベル、バイオリンが80~90デシベル、サックスや金管楽器が110~120デシベル、ドラムやパーカッションは130デシベルが目安になります。

環境省が定めている騒音に関する環境基準(※)では、一般的な住宅地の昼間の基準値が「55デシベル以下」、夜間が「45デシベル以下」とされているので、マンションで楽器の使用が許可されていても、マンションの内外へ音が漏れない防音対策は欠かせません。

騒音とdbの関係
騒音とデシベルの関係(画像/SUUMO編集部作成)

ギターなどの楽器の音に不安を感じない・悩まされないマンション選びのコツ

騒音に悩む女性
騒音に悩む女性(画像/PIXTA)

楽器の演奏はマンションの騒音トラブルに発展する可能性があるため、ギターなどの楽器の音を出す側も聞かされる側も、不安や悩みを抱えないマンションを選びたいものです。

そこで、楽器の音をなるべく気にしないで済むようなマンションの探し方について、ポイントを整理しました。

音の伝わりにくい鉄筋コンクリート造のマンションを探す

マンションの建築構造には大きく3つあり鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)の順で防音性能が高いとされています。

物件を探す際は、防音性能の高い鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のマンションに絞ってみましょう。

ただし、防音性能は床や壁の厚さなどにより大きく異なります。床の厚さは200mm以上で、壁の厚さは180mm以上だと、高い防音性能が期待できるでしょう。

築年数が古いマンションだと、床・壁ともに150mmというケースもあり、その場合は防音性能が低い傾向です。

「築年数が古くても、リフォームで防音性能を高めたマンションもあります。しかし、鉄筋コンクリートのスラブの上に直接床材を設置するなど、防音があまり期待できない事例もあるので、事前に確認しておきたいですね」(佐藤さん)

マンションの最上階・角部屋を選ぶ

ギターを弾いたときの空気伝搬音を天井や壁から外へ漏らさず、また、音を外から住戸内に入れないようにしたい場合は、上に住戸がない最上階や、隣接した住戸が少ない角部屋がおすすめです。

「楽器の音の影響を軽減するには、最上階の角部屋が良いと思います。ただし、屋上や外壁の断熱材の設置状況、日光の入り方などによっては、冬寒く夏暑いなど温熱環境が悪くなりやすいこともあり、トレードオフになる可能性には注意が必要です」(田村さん)

内見時に張り紙を確認する

ギターなどの楽器の音が、居住者同士のトラブルになっていないかを簡単にチェックする方法は、共有スペースの掲示板やエレベーター内に、楽器を含めた騒音に関する張り紙がないか確認することです。

ただし、張り紙がないからといってトラブルが起こっていないとは限りません。

内見時には、近隣住戸からの音がしないか、窓を開閉して外部の騒音が遮断できているかなど、防音性能をチェックしましょう。

ギターをマンションで演奏するときの防音対策

部屋でギターを演奏する女性
部屋でギターを演奏する女性(画像/PIXTA)

マンションの構造や防音性能にもよりますが、ギターを弾く音がほかの住戸に影響を与える可能性があるため、防音対策は欠かせません。ここでは具体的な対策を紹介します。

防音室を設置する

防音室と聞くと大がかりなイメージがありますが、組み立て式の防音室であれば比較的簡単に設置が可能です。

設置前に管理規約を確認し、管理組合や大家への届け出や許可が必要な場合は、手続きを済ませてから作業を始めましょう。

防音室は、壁や床、天井のすべてが防音対策されているので、ギターの演奏による防音対策としては最も効果的です。

防音室のサイズは、ギターの演奏が快適にできる1~1.5畳程度をおすすめします。ギターの種類によって音の大きさが異なるので、最適な遮音性能(Dr値)のモデルを選びましょう。

壁に防音材を設置する

ギターを弾くことで発生する空気伝搬音は、壁などを透過して隣接した住戸に伝わるため、壁全体の防音対策は有効です。

壁に使用する防音材には、室内の音の反響を抑える吸音材と、外部への音の透過を抑える遮音材があります。

隣の住戸に接している壁には、音の透過を抑える遮音材を先に設置し、その上から吸音材を設置することで、音漏れと反響を軽減できます。

また、2003年の建築基準法改正による換気設備の設置義務化により、壁に給排気口や換気ファンが設置されるようになりましたが、そこから音が外に漏れる場合があります。

「2003年7月以降に着工したマンションには、シックハウス対策として換気設備が壁などに設置されています。給排気口などから生活音が外に漏れてしまうことがあるので、ギターなどの楽器を演奏する場合は注意したいところです」(田村さん)

では、給排気口なども防音対策はできるのでしょうか。

「給排気口や換気ファンに、防音の換気扇フードを取り付けると音漏れを軽減できますが、専門業者でないと設置はできません。個人で行うとすれば、レンコンのように穴が開いた吸音材を給排気口に入れることで、音漏れを軽減できることもあります。ただし、換気量が大きく減らないように、それぞれの給排気口に合わせた対策をすることが必要です。」(田村さん)

防音カーテンを設置する

窓は音漏れがしやすいですが、窓に防音材を設置するのは難しいため、防音カーテンを設置しましょう。

防音カーテンには、遮音カーテンや吸音カーテンなどいくつかの種類があります。

防音効果が高いとされているのは、遮音コーティングした層や吸音する高密度の生地層などを重ねた、多層構造のカーテンです。
ギターの場合は、4重構造以上のカーテンがおすすめです。

また、防音カーテンを設置する際は、窓枠より大きく床につくサイズを選び、隙間からの音漏れを防ぎましょう。

弱音器・消音器を活用する

弱音器や消音器は、ギター本体に取り付けることで手軽に音量を抑えられます。

弱音器はスポンジやフェルト製で、ギターのブリッジ付近に取り付けます。弦を弾くときの振動を抑えられるため、生音の音量を下げることが可能です。

また、ラバー素材などでできた消音器(サウンドホールカバー)は、本来ハウリングを防止するアイテムですが、サウンドホールを密閉することで音の放出を抑えられ、消音効果を発揮します。

音量が小さくなることで周囲への音漏れが軽減されるので、必要に応じて活用してみましょう。

サイレントギター・サイレントピックの使用

アコースティックギターのような音が共鳴するボディーがなく、音の響きを最小限にしたフレームとネックだけのサイレントギターであれば、音量を大幅に軽減可能です。

イヤホンやヘッドホンを使用すれば、音をしっかり確認できるので練習にも役立ちます。

また、通常より薄くやわらかい素材でできたサイレントピックは、弦の振動を抑えるので音量を軽減できます。

ギターの騒音に対してやってはいけないこと

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ギターの騒音に対してやってはいけないこと(画像/PIXTA)

住んでいるマンションでギターの騒音トラブルが発生している場合、冷静な判断が必要です。解決にはつながらない下記のような行動は、絶対に避けましょう。

直接クレームを言いに行く

ギターを弾いている音がうるさいからといって、当事者に直接クレームを言いに行くのは控えましょう。当事者間の話し合いは感情的になりやすく、さらなるトラブルに発展する恐れがあるためです。

「ギターを弾いた空気伝搬音は壁や天井などから伝わることもありますが、床の振動などによる固体伝搬音は建物の構造躯体を伝わって広い範囲に届くので、音の発生源が隣接した住戸とは限りません」(田村さん)

「ギターの音など騒音によるトラブルは本来、当事者間で解決する問題ですが、建設的な話し合いが難しいことがあります。
通常、マンションの管理会社と管理組合が締結する業務委託契約書では、管理会社がトラブルに対応するという契約内容になっていないことが多いですが、管理業務の延長としてサポートしてくれることもあるので、騒音を記録したメモなどを根拠に相談することから始めましょう」(佐藤さん)

こちらからも騒音を出す

騒音を発している住戸に対して、壁を叩いたり騒音を出し返したりしても、トラブルは解決できません。

「騒音を出し合うのは賛成できませんが、マスキング効果を活用して音を流すのはおすすめです。聞こえてきた音と同じような周波数の音を適切な音量で流すことで、一方の音を相殺して聞こえにくくするわけです」(田村さん)

「壁を叩くと振動が建物の構造躯体を伝わり、ほかの住戸への騒音となるので絶対にやめるべきです」(佐藤さん)

ギターの騒音が続く場合にすぐに対応できること

騒音に悩む女性のイメージ
騒音に悩む女性(画像/PIXTA)

ギターの騒音が頻繁に起こる場合は、管理会社などに相談して協力を仰ぐべきですが、解決するまでには時間がかかります。
そこで、ギターなどの騒音に悩まされないように、すぐにできる防音対策をまとめました。

音がする壁に防音材を設置する

先述の防音対策と同じように、壁などに防音材を設置することで、隣接した住戸から伝わる音を抑える効果が期待できます。

「入ってくる音を減らすことは、音を外へ出さない方法と基本的には同じです。
壁から聞こえる音を遮音材で抑えましょう。」(田村さん)

音が出ている方向に家具を設置する

壁などから伝わる空気伝搬音を抑えるために、音がする壁に沿って家具や本棚を配置することも有効な手段です。

ただし、振動による固体伝搬音は、天井などから聞こえてくる場合があるので、壁に家具を置いても音を抑えることはあまり期待できません。

耳栓などを活用する

耳栓は、外耳道を塞ぐことで外部の音を物理的に遮断するので、空気伝搬音を軽減できます。

「耳を塞ぐのも一つの方法ですが、お気に入りの音楽やBGMを適切な音量で流したり、イヤホン・ヘッドホンで聴いたりするのもおすすめです。外から聞こえてくる音が意外と気にならなくなります」(田村さん)

いずれの方法も一時的な対処にはなりますが、時にはマンション管理会社や、管理人の協力を得ながら、同じマンションに住む人たちが快適に過ごせるようにお互いに意識をすることが大事です。

まとめ

ギターの使用可否は、マンションの管理規約や使用細則で確認する

音の伝わり方は、空気伝搬音と固体伝搬音の2種類。固体伝搬音は建物全体へ広く伝わる

ギターの音に不安や悩みを抱えたくない人は、マンションの最上階や角部屋がおすすめ

楽器の防音対策は、防音材の設置や消音ツールの活用、家具を壁に配置するなどが有効

騒音トラブルは、記録したメモをもとに管理会社などに相談。直接クレームを入れるのは禁物

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取材・文/香川博人
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