新築マンションよりも、選択肢豊富で価格も手ごろというイメージの中古マンション。ただし、中古マンションと一口に言っても、築年数やリノベーションの有無など、状態や性能もさまざま。また、契約や税金についてなども、大きな買い物なだけに不安はつきません。今回は中古マンション購入に際し、気になるポイントや注意点について、さくら事務所会長の長嶋修さんに解説してもらいました。
中古マンションの魅力といえば、やはり価格。新築マンションに比べると、購入予算を抑えられるというのが中古を検討する大きなの理由のひとつではないでしょうか。ただし、価格が安いということは、そこには理由があるものです。中古マンションの価格を左右する大きなポイントとしてまず挙げられるのは築年数ですが、ほかにも、管理状況、耐震性、リノベーションの有無などがあります。
立地や管理状況にもよりますが、中古マンションの場合、築年数が経過するほど、価格は下がるというのが一般的です。
「築20年くらいまでは築年数に伴って、古くなるほど価格は下がっていきますが、20年を過ぎると、価格の落ち方が穏やかになるというのが最近の傾向です。築年数と価格のバランスを考えると、築20年程度のマンションはお買い得といえるかもしれません」(長嶋さん、以下同)
多くの人が新居を購入する際、新築マンションだけでなく、中古マンションを視野に検討するようになったこと、また、中古を買って自分好みにリフォームやリノベーションをしたいという人が増えたということなどから、築20年程度でも、築古だと避けることなく選択する人は以前よりも増えているようです。
価格(万円) | 面積(m2) | m2単価(万円) | |
---|---|---|---|
築0~5年 | 5,411 | 66.83 | 80.96 |
築6~10年 | 4,602 | 67.62 | 68.06 |
築11~15年 | 4,242 | 70.04 | 60.56 |
築16~20年 | 3,716 | 70.42 | 52.77 |
築21~25年 | 2,528 | 65.32 | 38.70 |
築26~30年 | 1,697 | 57.19 | 29.68 |
築31年~ | 1,815 | 57.25 | 31.70 |
マンションは10数年に1度ごとに大規模修繕が必要になります。中古マンションを購入する際には、築浅物件の場合でも、修繕計画について確認をしておきましょう。
「修繕計画がきちんとしているかどうかは、マンションの持続可能性という観点で非常に大事なポイントです。マンションを買うと住宅ローンの支払いのほかに、管理費と修繕積立金を毎月支払うことになりますが、修繕積立金は大規模修繕に備えて所有者全員で行う積立貯金のようなもの。当然貯金が足りなければ、大規模修繕の際に足りない費用を皆で出し合ったり、修繕積立金を値上げしたりして対応することになります。
タワーマンションなど豪華な設備がついているものを除いて、修繕積立金額の目安としては、専有面積のm2当たり200円程度が適切な額。つまり、50m2であれば毎月1万円程度の金額を修繕積立金として第1回目から積み立てている場合は、2回目、3回目の大規模修繕の際も、修繕積立金の値上げなどをすることなく対応できる可能性が高いと言えます。
ただし、修繕積立金の設定がきちんとしているかどうかだけで判断してしまうと、選択肢が減ってしまいます。購入後に修繕積立金の値上げもあり得るなど、マンションの状況を理解した上で選択をすることが大事です」
また、マンションの管理状態について購入前に把握するためには、マンション管理組合の理事会・総会の議事録などを事前に見せてもらうという方法もあります。
「議事録にはマンション内で起きているさまざま事象について、良いことも悪いことも書かれています。管理費や修繕積立金の滞納などについても一目瞭然です。1~2年ほどさかのぼって確認することができれば、マンションの管理状況などを細かく把握することができるでしょう。ただし、管理組合に議事録の開示義務はないため、見せてもらえないこともままあります。
議事録を確認できない場合は、マンションのHPで管理状況を確認するという方法もあります。最近は独自のHPを持っているマンションも多く、マンション内で行われている行事や管理組合の内部情報を公開している所も少なくありません」
さらに、マンションの管理が透けて見えるのは共用部分です。エントランスや植栽、集合ポスト、掲示板、駐輪場やゴミ置き場など、住民皆で使う場所が整理整頓されているか、きちんと清掃されているかという部分を見ると、管理組合や住民の管理に対する姿勢を推し量ることができます。
中古マンションを購入する際、建物の耐震性は最も気になるポイントの一つ。耐震基準は1981年の建築基準法改正により強化され、1981年6月1日以降に建築確認申請が受理された建物の場合は新耐震基準で建てられているということになります。ただし、法改正前に建築確認が完了している場合は、法改正後に竣工しているものでも、旧耐震の建物の場合があるため、注意が必要です。
「旧耐震の建物でも、新耐震基準と同等の設計をされているものもあります。旧耐震の場合には、過去に耐震診断を受けて、必要な耐震改修などを行っているかどうかなども確認して、購入するかどうか検討するといいですね」
以前は、リノベーションなどは行われずに流通しているものが多かった中古マンションですが、最近ではリノベーション済みの物件も人気です。設備や内装など、新築同様の性能を備えるものも多いのですが、その分通常の未リノベーション物件よりも価格は高くなります。
「未リノベーション物件の場合は、売主が個人になるケースが多いですが、リノベーション済みマンションの場合、買取再販になるので売主が事業者というケースがほとんどのため、建物部分には消費税がかかります」
リノベーション済み物件の場合はリノベーションの分、価格が高くなるのはもちろんですが、それに加えて、消費税が発生するケースが多いということも覚えておきたいポイントです。
また、リノベーション済み物件については、表面的に新築同様の状態で売り出されている分、見えない部分がどういう状態になっているか、忘れずに確認する必要があります。
「リノベーションで表面的には新築同様になった物件も、築30年を超えるような場合、上下水道の配管、電気配線、インターネット回線など、見えない部分に不具合があるケースは少なくありません。1年、2年、5年などの瑕疵保険がついている場合でも、物件が万全の状態であるという保証にはなりません。保証期間が過ぎた後に不具合がでるということもあるので、目で見てわからない部分については、事業者が物件の状態をどのように見立て、どのような工事を行ったかなどを必ず確認しておきましょう」
新築同様のきれいな状態で販売されるリノベーション済み物件に対し、一般的な未リノベーションの物件の場合、物件の性能や状態は築年数などにもよりさまざまですが、購入後に自分好みにリノベーションをすることができます。また、リノベーション済みは空室の状態で見学でき、すぐに住みはじめることができますが、未リノベーションの場合は内見時には居住者がいる場合も少なくありません。
購入したい物件が決まったら、不動産会社に申込書や申込金を渡し、購入の申し込みを行いますが、この時点ではまだ契約は成立していません。申込書の内容をもとに不動産会社が売主と交渉を行い、契約内容に売主、買主ともに合意できたら、いざ契約です。
契約は仲介会社から重要事項説明書の説明を受け、不動産売買契約書に記名押印し、買主が売主に手付金を支払うことで正式に締結します。その際、重要事項説明書、付帯設備表、物件状況報告書などの書類は事前に預かりしっかり読み込んで、不明点などがあれば、必ず事前に確認しておきましょう。疑問は残さず、納得してから契約することが重要です。
「重要事項説明書は後ろの方に特記事項など重要なことが書かれています。頭からじっくり読むと疲れてしまうということもあるので、後ろから読むのがコツです」
忘れてはいけないのが、マンションを購入すると支払うことになる税金です。購入後、不動産取得税を1度支払うほか、所有している間、毎年ずっと固定資産税と都市計画税を支払うことになります。
税額は地域によって異なり、各市町村が土地と建物の固定資産税評価額を決め、それに一定の税率をかけて計算します。固定資産税は「固定資産税評価額×1.4%」が標準の税額で、都市計画税は「固定資産税評価額×0.3%」が上限金額となります。固定資産税評価額は3年ごとに見直され、建物に関しては築年数が経つごとに下がっていくのが一般的です。
中古マンションを購入すると、毎月のローンの支払いや管理費・修繕積立金のほか、毎年固定資産税や都市計画税などの税金を支払うことになることも覚えておきましょう。
マイホーム購入は大きな買い物になるため失敗しないか、後悔しないかと不安はつきものですが、ポイントを押さえてしっかり検討し、自分自身が納得して購入できるかどうかが成功の秘訣です。今回ご紹介した注意点を踏まえて、理想の中古マンション探しの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
中古マンションの価格は築年数だけでなく、管理などによっても左右される。築古ほど、家の状態などについて確認がしっかり必要
リノベーション済み物件はすぐ住めてきれいな分、価格は高め。未リノベーション物件は購入後自分好みにリノベーションができる
契約は、売主・買主・仲介会社で行うのが通常。疑問を残さないように納得して契約しよう