住まい購入では、広さやプランなどさまざまな希望や条件があるもの。そのなかで、子どもが健やかに成長できる家かどうかも重視したい。子どもの成長には長い時間を過ごす家の影響が大きいからだ。そこで今回は、「好奇心」「自立心」「コミュニケーション能力」という子どもの成長に大切な3つの観点から、『子どもが伸びる』間取りに着目してみた。親の温かい見守りのなかで、子どもの可能性を広げる間取りの見方と特徴知れば、きっと親子がともに満足できる家が手に入るはず。ぜひ参考にしてほしい。
好奇心を育む間取りとは「自由な発想を育てやすい空間があること」(江ヶ崎さん・以下同)
「自分でその空間をどう使おうかと考えたくなる空間があると、子どもはワクワクするもの。特に幼い子どもは、目に付いたものに興味をもちやすい。そこでリビングや階段の踊り場などに、工作ができるカウンタースペースや、子どもがつくったものや絵を飾れるスペースがある間取りがおすすめです。最初は親目線でいいなと思うものを飾ったり、触れさせることで、子どもが興味をもちやすい。暮らしながら刺激を感じられるスペースがあるといいですね」
さらに、好奇心を育むアイテムを活用する方法も。自由に落書きできるウォールや黒板塗装の建具を設ければ、遊びながら発想力も高めやすい。
家の中だけでなく、庭やバルコニーなど外の空間にも目を向けたい。
「DIYや植物を育てたりという行動ができます。親子一緒に、もしくは見守りながらチャレンジさせられるようにしたいですね。リビングに隣接した配置や道路に飛び出す危険がない中庭になっているかなどが見極めるポイントになるでしょう」
どのアイデア空間にしろ、大切なのは「親の視線や存在を感じられること。子どもは親が見ていることでやる気が出たり、親にほめてもらいたいと頑張るからです」
好奇心を育む間取りとは「自由な発想を育てやすい空間があること」(江ヶ崎さん・以下同)
「小学校入学を機に子どもの持ち物の量は増えます。片付けや身支度などを子ども自身が行う習慣付けが自立心を育むポイントの一つになります」
そこで収納位置や形状に着目したい
「例えば玄関のすぐ隣やリビングへの廊下など、生活動線上に洗面や収納があり、子どもの制服や道具が手の届くところにあると、身支度を子どもだけでもやりやすくなるでしょう。また、リビングにおもちゃはここに入れると決めた収納があるなど、子どもの専用場所をつくってあげれば、自然と出したものをそこに戻す、という習慣が付きやすい。収納の形状も子どもが取り出しやすくしまいやすい高さや奥行きのものであれば使いやすく、より片付け習慣が付きやすいと思います」
また、子どもと一緒に調理できる広さがあったり、集まりやすいキッチンであれば、お手伝いしたいという気持ちが芽生えやすい。
さらに成長して子ども部屋ができれば、自分で起きて出かけるように。
「早寝早起きの習慣付けも考えたいですね。その場合、採光の良い部屋かどうかをチェック。自然と目覚めが良くなる部屋の要素です」
自立心を育てやすい間取りのキーワードは、「親がやりなさいと言うのではなく、子どもがやってみようと思って、自然とやれるようになるかどうかだと思います」
コミュニケーション能力を伸ばすには、「ただいま」「おかえり」といった挨拶から、会話のきっかけを増やすことが大切と江ヶ崎さん。
「そのためには、まず家族と顔を合わせる機会を増やす間取りかどうかが見極めポイントになります。例えばリビングを通って居室に入る動線の間取りなら、自然と会話が増え、コミュニケーション能力も伸びるでしょう」
また小学校低学年くらいまではリビングで過ごす時間が多い。そこで、家事中も子どもと会話ができるようなLDK配置を考えたい。
「特に乳幼児期、小学生時期は親との密なコミュニケーションが必要です。親が常に近くにいると安心し、会話量も増えるので、コミュニケーション力が養われやすいでしょう」
また、家族が自然と顔を合わせられるためには、「リビングイン階段もポイントの一つです。帰宅して自室にこもってしまい、何をしているのか分からないと会話がしにくくなりますからね。また、子ども部屋を中心とした共用空間の配置も一つの手。例えば洗濯物を干すバルコニーが子ども部屋を通るような間取りなら、普段から親子が会話する機会が増えるでしょう」
コミュニケーションは相手があるもの。そこで、相手の気持ちや状況をくみ取れる力も養いたい。料理中にリビングにいる家族とコミュニケーションを図りやすい対面式キッチンは、子どもからすると、親が家事をしている様子が見えるので、声をかけるタイミングを見計らうトレーニングになることも。さらに、「家族が集まるリビング内に、子どもスペース(スタディーコーナー、フリースペース)を設けるというアイデアもあります。家族共用にすれば、例えば勉強で分からないことがあっても親に聞きやすく、自然と親子の会話を増やしてくれますし、対面キッチン同様、親の様子をうかがいやすくなります。また、子どもの趣味専用の場にもなるので、親との距離が離れがちになる思春期なども身近にいる時間が増え、会話の機会が確保しやすいでしょう」。相手がどんな様子なのかが見えるので、たとえ会話が少なくとも、表情や態度から推し量りやすくなるのも特徴。さらに「リビングが居心地のいい場所であれば家族が集まりやすく、コミュニケーションを深める機会が増えます。隣室とつなげて拡張できると良いかもしれません」
一昔前は子ども部屋を用意し、集中して学習しやすい環境を与えながら子どもの自立心を育む間取りが一般的だった。現在は友達親子という言葉があるように、子どもは自室よりリビングで過ごすことが多くなっている。結果子ども部屋は小さくなる傾向で、例えば書斎やDENのような小さなスペースを子ども部屋にすることも。
また、吹抜けや間仕切り壁に小窓や欄間を設けるなど、子ども部屋の中にいても家族の気配を自然に感じられるような家も増えている。直接顔を合わせなくても、気配を感じることができるので、プライバシーを確保しつつ、家族の存在を感じられる。
昨今のトレンドになりつつあるのが広過ぎない、快適過ぎない子ども部屋。広さの目安として、1人部屋であれば4.5畳あればベッドと机を置くことができる。勉強と寝るだけの部屋としては十分だ。閉じこもりを防ぐためにテレビを置けないよう、アンテナジャックの有無を聞いたり、コンセントの数も最小限に。
階上階下をつなげる吹抜け。家のなかに声が通るのはもちろん、子ども部屋の中にいても音が聞こえて家族の存在を感じやすい。また、生活音も通りやすく、階下にいても子どもが何をしているか分かる。
江ヶ崎雅代さん
e do design一級建築士事務所代表。2児の母。子育て世代の悩みや感覚に寄り添い、建築・空間をつくる。子育てを応援する『e do salon』も主宰
2015年9月23日 SUUMOマガジン広島版より転載