今どきマイホームには駐車場は不可欠です。2台目用、来客用だって欲しいくらい。でも、限られた土地の中で駐車場を大きくすると、それだけ家は小さくなってしまいます。「駐車場にはどれだけのスペースの土地を確保すべき?」「2台、3台と複数台保有している場合はどうする?」、駐車場に関する不安を解消するために車種別に必要な土地のスペースや注意点を三協アルミの押田英一郎さんと三協アルミアドバイザー施工業者・一級土木施工管理技士の藤田喜廉さん(エムズワークス)にお話をお聞きしました。
建売住宅や中古住宅の図面にはよく「駐車場」と簡単に明記されていますが、その大きさにかなりの差があることをご存じですか?最小スペースでつくられた駐車場だと大型車は駐車できなかったり、出入りしにくくなったりする可能性もあるのです。例えば、軽自動車と大型車では、横幅が30cm以上、長さが160cmも違います。駐車場をつくる前に、まずはマイカーの大きさを確認してみましょう。ワンボックス車の場合は高さも要チェックです。
車を停めるには、車本体以外にもドアの開閉スペースや人が通るためのスペースが必要です。実際にどれくらいのゆとりがあれば使いやすいかを調べてみました。
軽自動車1台分の駐車場の広さは、国土交通省の指針では
幅2.0m×長さ 3.6mとなっています。
軽自動車は幅が1.48m以下、長さが3.4m以下と決まっているので、この指針では
幅0.52m×長さ0.2mのゆとりが設けられていることになります。
小型乗用車とはいわゆる5ナンバー車のことで、幅は1.7m以下、長さ4.7m以下と定められています。そのため下記指針では幅0.6m×長さ0.3m程度のゆとりが設けられています。
普通乗用車(「中型車」「ワンボックス車」「大型車」)はいわゆる3ナンバー車のことで、サイズは「小型乗用車より大きいもの」というくくり方しかありませんが、最近の普通乗用車は幅1.8m~2mほど、長さは5m前後になります。下記指針では幅0.5m~0.7m×長さ1m程度のゆとりが設けられていることになります。
駐車場の広さを決めるには、まずマイカーのサイズを調べましょう。サイズは車検証やメーカーのホームページ等で確認できます。
駐車場の幅を決める際は、乗り降りできるスペースを車のサイズに加える必要がありますが、一般的に人ひとりが歩くために必要な幅は60cmとされています。また60cm余裕があれば、たいていの車はドアを開けて乗り降りができます。ですから、駐車場の幅はマイカーの全幅+0.6mは最低限確保したいところ。運転席と助手席側両方でドアを開けて乗り降りしたいのであれば全幅+1.2mが目安です。
ただし、軽自動車や小型車でも、スポーツカータイプでドアが左右に1枚ずつしかない車もあります。この場合、ドアが長いため、0.6m以上余裕がないと乗り降りしにくくなります。このように車によって駐車場に必要な幅は変わります。まずはマイカーの全幅+0.6mは最低限確保し、車によってはさらにどれくらい余裕を取るべきか、左右ドアから乗り降りする頻度はどれくらいかなど検討しましょう。
また屋根のあるガレージやカーポートを設置する場合、高さにも注意が必要です。特にミニバンやSUVは、成人でも小柄な人では手が届かないほどバックドアが跳ね上がる車もあります。
そのためミニバンやSUVなど車高が高く、跳ね上がるタイプのバックドアを備えている車の場合、バックドアを跳ね上げてもぶつからない天井の高さはどれくらいか、あらかじめ調べておく必要があります。こちらの数値はカタログ等には掲載されていないケースがほとんどですから、車を購入する際に店頭などで高さを確認しましょう。
※国土交通省が定める「身体障害者用駐車施設」では、「高齢者・身体障害者、特に乗降幅の必要な車いす使用者の乗降が可能となるよう、幅2.1m程度の車体用スペースに、車いす使用者が転換できるとともに介護者が付き添える1.4m以上の乗降用スペース幅を加えた3.5m以上を確保する」とされています。バリアフリー住宅を考える際には、駐車場の幅も通常より1m広くしておくと安心です。
車種によっても、必要なゆとりは異なります。
「それは『ドアの大きさ』と『トランクの扉の大きさ』が違うから。大型車やスポーツタイプの車はドアが大きいので、開閉用のスペースもそれだけ大きな駐車場が必要です。また最近は、大型の跳ね上げ式のトランクが増えており、その場合は車の後ろに1m程度のゆとりが必要になります。車の仕様・デザインの流行が変わっていくことや、乗り換えの可能性なども考えると、駐車場は広いに越したことはありませんが、3mの幅を確保しておけばほとんどのケースに対応できるはずです」(藤田さん)
駐車台数が1台だけの場合と複数台の場合、前面道路との関係などによっても、最適な駐車場サイズは変わってきます。それぞれの事情に合わせて考えてみましょう。
「例えば、複数の車を並列で駐車する場合は、車と車の間に通行用のスペースをそれぞれ60cm用意します。例えば、下図のような2台分の駐車場をつくるには、両サイドと車の間に60cmと、車体の幅をそれぞれプラス。一台目を軽自動車の148cm、二台目をワンボックス車の170cmとすると、必要な幅は60+148+60+170+60=498cmになります」(藤田さん)
ただし、幅60cmは、ドアを開けて出入りするには最低限の空間。ドアを全開にして出入りしたい場合は、ドアの全開幅を調べてそれをプラスしておきましょう。車と車の間に90cmの幅を取っておけば、かなり余裕を持ってドアを開けることができるはずです。
車での来客が多い場合は、来客用の駐車スペースも確保しておきたいものです。
「例えば、下図のように、駐車場の奥に境界をつくらずそのまま庭にしておくと、来客時に少しだけ車を後ろに寄せることで、前面に1台分の駐車スペースをつくれます。その場合、轍の部分だけでも敷石を並べておけば庭が傷まず、泥はねの心配もありません。日ごろは広い庭として、来客時には駐車場として活用できるのでおすすめです」(藤田さん)
前面道路幅や道路との接し方、駐車の仕方、敷地の形などによっても、最適な駐車場は違ってきます。前面道路幅が狭い、間口が広く取れないなどといった制限があるときほど、事前にしっかり考えておく必要がありそうです。
・直角駐車の場合
道路と直角方向に駐車する、最も一般的な「車庫入れ式」。前面道路の幅が4m以上、駐車場の左右に合計90cm以上のゆとりが必要です。
・並列駐車の場合
道路と平行に駐車する「幅寄せ式」の場合は、前面道路が狭くても設置できますが、車の長さの倍以上の間口と、車の幅+90cm以上の奥行きが必要です。
車が駐車場に出入りするときは、一般的にはカーブを描きながら動きます。駐車場の間口を決めるときには、車の回転半径を考える必要があります。
「前面道路幅がどれだけあるかによって、駐車のしやすさが大きく違ってきます。新しい住宅地の場合は道路幅が6m以上あることが多く、特に心配はありませんが、昔からある住宅地は幅4m以下のことも多く、その場合は間口を大きくするなどの工夫が必要になります」(藤田さん)
旗竿地は路地の部分に駐車場をつくるのが一般的です。ただし、路地の幅が狭い場合は、人が通行しにくくなったり、駐車できる車種に制限ができたり、縦列駐車しかできないなどの問題も。その点をクリアできれば、「奥の四角い敷地をすべて建物に使える」「駐車場の奥をアプローチとして使える」といったメリットもあります。
駐車場は水平につくることが基本です。駐車場に傾斜があると、車も傾いた状態でとめることになりますが、軽自動車でも車の重さは約1tあります。ミニバンなら約1.5t、大型SUVには2tを超える車もあります。
これだけの重さの車が傾いてとまったままですと、片側のタイヤやそれを支えるパーツに負荷をかけ続けることになり、最悪の場合まっすぐ走らなくなることがあります。また傾斜の角度次第では、片方のドアは重くなって開けにくくなり、もう一方は一気に開いてしまい、ドアを傷つける可能性もあります。
ですから、駐車場は必ず水平につくるようにしましょう。
傾斜地に家があり、前面道路に勾配がある場合、水平の駐車場との間に段差ができます。段差が大きいと出入りする際に車の下を擦る可能性がありますから、段差の角度を小さくしたいところですが、そうなると水平部分までのアプローチを長く取る必要があります。つまり駐車場がアプローチ分だけ大きくなってしまいます。
傾斜地に駐車場のある家を建てる場合、どこに駐車場を作るのか、あらかじめ検討する必要があります。
費用相場についてもっと詳しく
駐車場・ガレージリフォームの種類と費用相場
重い自動車を何百回、何千回と出し入れする場所だからこそ、駐車場の地面(床)の素材にはこだわりたいもの。コンクリートが主流ですが、他にも砂利やレンガ、芝などさまざまな素材から選べます。素材ごとの特徴を知ったうえで、マイホームに合うものを選んでいきましょう。
・コンクリート
駐車場によく用いられる素材がコンクリートです。コンクリートの強みは優れた耐久性で、他素材と比べて長年使い続けても変形や破損の可能性が低いです。デメリットは、他素材と比較して施工費用が高くなること。とはいえランニングコストがあまりかからないことを考えると、特別割高というわけではないでしょう。
・砂利
施工費用を抑えたいときに選ばれやすいのが砂利です。一般的な住宅用の駐車場にはあまり使われませんが、野外施設の駐車場やコインパーキング、臨時駐車場などをイメージするとわかりやすいでしょう。最大のメリットは施工費用の安さですが、お手入れの手間がかかる点に注意。雑草が生えてきたり、水はけの悪さから水たまりができたりするため定期的なメンテナンスが求められます。また、タイヤの重みで弾かれた小石によって車体が傷つく可能性があることも理解しておきましょう。
・レンガ、タイル
デザイン性を重視したいなら、組み合わせの自由度が高いレンガやタイルがおすすめ。施工費用も比較的安く、自分好みにデザインできます。ただし、耐久性はやや低く、特に車重が重点的にかかるタイヤ周辺は砕けやすくなります。コンクリートや砂利など、別素材と組み合わせることでデザイン性と機能性を両立できるでしょう。
・芝
マイホームの外観に緑をプラスできる芝も人気素材のひとつ。天然芝ではなく、人工芝を採用すればお手入れの手間も比較的かかりません。ただし、衝撃には弱いので、車重がかかる部分にコンクリートや砂利を採用するなど、異素材とうまく組み合わせましょう。
ニュースでもたびたび取り上げられているように、近年自動車の盗難被害が多く報告されています。自動車本体だけでなく、ときにはカーナビやナンバープレートといった一部が盗まれることも。大切な愛車を守るためにも、確実な施錠やイモビライザー装着、ハンドルガードなどで対策するほか、駐車場への防犯設備の導入も検討しましょう。
完全に閉め切れるシャッターガレージや堅固なカーゲートが安心ですが、より手軽なものであればチェーンポールも効果的でしょう。また、人感センサーライトや防犯カメラなどをつけるだけでも盗難抑止につながります。
駐車場は大きく分けて、屋根のない「オープンタイプ」、屋根だけをつける「カーポートタイプ」、建物ですっぽり覆う「ガレージタイプ」の3種類に分けることができます。
屋根があると、乗降時に雨に濡れないだけでなく、愛車を雨や霜や紫外線から守ることができます。屋根をつくるためには柱や基礎が必要になり、また、外構デザインにも影響します。後回しにしがちですが、駐車場づくりも家づくりと一緒に計画するようにしましょう。
「カーポートには、みなさんが想像される以上に大きな基礎が使われています。柱の位置次第では、ドアを開け閉めしにくくなることもあります。また、駐車場をつくる場所には排水管や排水桝が設置されがちです。柱と基礎をどこにつくるかについては、早い段階から考えておくことをおすすめします」(藤田さん)
・片側支持タイプ
最も一般的なタイプ。柱が片側だけですむため、柱のない方からの駐車や乗り降りがしやすくなります。
・両側支持タイプ
両側の柱で屋根を支える、安定感があるタイプです。柱が両側にあるので、間口が狭いと駐車しにくくなります。最近では、敷地形状に合わせて柱の位置を調整できるタイプもあります。
・後方支持タイプ
後ろ側の柱だけで屋根を支えるタイプです。前方に柱がないので駐車しやすく、運転席や助手席のドアを開閉する際にも邪魔になりません。
・背面支持タイプ
背面側にのみ柱があるタイプ。片側支持や両側支持、また後方支持以上に駐車や乗り降りがしやすくなります。柱の位置を気にせず設置でき、正面からの見た目もすっきりします。
最近、街中でもよくEV(電気自動車)・PHEV(プラグインハイブリッドカー)を見かける機会が増えてきました。国もこうした電動車(EV=Electric Vehicle)の普及を補助金制度等で支援していますから、やがて電動車は当たり前の時代になるでしょう。
そういう時代に備え、これから駐車場をつくるならEVに充電できるようにすることが理想です。家に太陽光発電を設置すれば、従来のガソリン代にあたる電気代がタダになる可能性もあります。
では家の駐車場にどんな充電器を設置すればよいのでしょうか。
現在販売されている電気自動車やPHEVは、普通の家電と同じ100V電源でも充電は可能です。ただし充電に時間がかかり、車種にもよりますが、満充電にするまで10時間以上かかってしまいます。
そこで多くの電気自動車やPHEVは短時間で充電できる200V電源を推奨しています。だいたい100Vの約半分の時間で充電できます。
最近は200Vを使うIHクッキングヒーターやエアコンが多いため、ほとんどの家には既に200Vが引かれています。引かれていない場合も簡単な工事ですので、電気工事会社に相談すれば施工してくれます。あとは駐車場やその近くに屋外コンセントを設置する電気工事を行うだけです。
200Vの屋外コンセントの大きさは、一般的なサイズで幅100mm以下×高さ150mm以下×奥行き100mm以下といったところ。これくらいのサイズですから、家の外壁部分に備えても目立たないでしょう。また外壁に屋外コンセントを設置すれば、配線を壁の裏に隠せるので、見た目もすっきりします。
なお、車種によって車側の充電口の位置や充電ケーブルの長さが異なるので、家のどこに設置すればケーブルが届くのか確認が必要です。購入する車の充電口の位置や充電ケーブルの長さを確認しておきましょう。
また車種によって充電ケーブルを収納する壁掛けケースを用意している場合もあります。壁掛けケースを使う場合、それを設置する壁や柱が駐車場か駐車場に隣接する場所に必要になります。こちらもあわせて事前に確認しておきましょう。
電気自動車やPHEVは大容量のバッテリーを搭載しています。このバッテリーから電気を取り出せば、停電時でもテレビや洗濯機など家で家電を使うことができます。
そのための装置をV2H(Vehicle to Home)といいます。現在、国は電気自動車やPHEVの購入費用だけでなく、V2Hの設置費用も補助するなど、普及を支援しています。
ただし、V2Hを設置するためのスペースが必要になるので注意が必要です。大きさは機種によって異なりますが、幅約1000mm×高さ約1000mm×奥行き約500mmといったところです。
家を建てるときにはエクステリアは後回しになりがち。でも、駐車場のことを考えずに家を建ててしまうと、「車が大きくて入らない!」「ここにあと10cmあればもう1台分の駐車場がつくれたのに!」なんて後悔する可能性も……。台数、車種、停め方、前面道路幅、カーポートの種類によっても、必要な大きさは違ってきます。駐車場はぜひ家を建てる前にプランニングしておきましょう。
とめる車やとめ方によって、サイズも必要なゆとりも違う
駐車場の地面はコンクリートや砂利、レンガ、芝などさまざまな素材から選べる
屋根の有無やカーポートの種類によっても必要な大きさは違う
駐車場のプランは、家を建てる前から考えておきたい