住宅購入を考えるとき、土地選びのポイントとなるのが敷地面積です。敷地面積の基礎知識や、売買前に知っておきたいポイントについて、よつば鑑定の不動産鑑定士である河野さんに聞きました。
敷地面積とは、建物が建っている、あるいはこれから建つ土地の面積を指します。
「家を建てるときの土地取引においては、建物が建つ部分だけでなく、アプローチ、庭、駐車スペースなどをまとめて1つの敷地と呼びます。
また土地の基本単位は『筆(ひつ)』ですが、敷地は1筆とは限らず、複数の筆がひとまとまりとして評価される「画地」となっている場合もあります」(河野さん/以下同)
日本では、取引や証明においての面積の単位は「m2」を使用すると計量法で決められています。そのため敷地面積も、m2で表すのが基本です。
「商習慣の名残として、坪で表すこともあります。ただしその場合も、取引や証明に使用される正式な書類ではm2とあわせて表記しなければなりません」
「2021年度 フラット35利用者調査」によると、土地付き注文住宅の敷地面積の平均的な広さは以下のようになっています。
土地の需要が多いエリアほど、敷地面積は狭いことがわかります。
敷地面積と関係する言葉に、「建築面積」「延床面積」があります。それぞれの違いや敷地面積との関係を確認しておきましょう。
建築面積とは、実際に建物が建っている部分の面積のことです。ただし建物が地面に接している面積ではなく、真上から見た水平投影面積を指します。そのため建物が2階建て以上の場合、もっとも広い階の面積が建築面積になります。
延床面積は、建物の各階の床面積を合計した広さを指します。「延べ面積」と呼ばれることもあります。
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延床面積とは ―含まれない部分はどこ? 部屋を広くできる?
建物面積は不動産広告などで一般的に使われる用語で、延床面積と同じと考えて問題ありません。なお建物面積に地下室や1階で車庫として利用している部分を含むときには、不動産広告においては、その事実と該当する面積を表記しなければならないとされています。
建築面積についてもっと詳しく
建築面積とは?バルコニーやひさしは含まれる?敷地面積・延べ面積・延床面積との違いは?
土地面積は、敷地面積を意味するのが一般的です。
「ただし土地面積というときには、敷地面積には入らない私道部分が含まれている可能性があるため注意が必要です。念のため確認しておきましょう」
敷地面積はどのように調べればよいのでしょうか? 敷地面積と関係が深い、建蔽率・容積率とあわせて説明します。
敷地は傾斜がついていることも多いため、敷地面積は実際の表面積ではなく「水平投影面積」とすることが定められています。水平投影面積とは、ある面を水平に投影したときの面積を指します。
敷地面積には「2項道路」は算入できないとされています。「2項道路」とは、建築基準法第42条第2項により、道路とみなされた道を指し、「みなし道路」とも呼ばれます。2項道路は、幅員4m未満でも建築基準法上の道路とみなされます。
敷地が2項道路に接している場合には、道の中心線から2m(特定行政庁が幅員6m以上を道路として扱う区域では3m )後退したところを道路境界線とみなして家を建築しなければなりません。これをセットバックといい、セットバックした部分の土地は敷地面積に算入できません。
なお、道の反対側が川やがけなどの場合は、道路の中心線からではなく、岸やがけから4mのラインを道路の境界線とみなしてセットバックさせます。
法務局に備えつけられている地積測量図を調べると、敷地面積を確認できます。地積測量図は、法務局の窓口のほか、ホームページからも請求できます。
「ただし地積測量図は、2005年(平成17年)に不動産登記法が改正されるまでは、残地求積(ざんちきゅうせき)が行われていたことから、残地求積に基づく地積測量図の場合には、不正確である場合が多い点には注意しましょう。
残地求積とは、土地を分筆するときに、片方の土地だけを測量し、残った土地は残地としてもとの土地から引き算することで地積を算出することをいいます。昔は測量技術が未熟で不正確だったケースが多く、さらに残地求積が行われたことで、現状の敷地面積と合致しなくなっていることも多いのです」
地積測量図には境界標の場所と、各区間の距離がm(メートル)で記載されています。現地で境界を確認するときには、地積測量図に記載された内容と照合しながら進めましょう。
「ただし、地積測量図はすべての土地にあるとは限らず、ない場合も少なくありません。なぜなら土地を登記する際に地積測量図が必須とされるようになったのが1960年(昭和35年)であるためです」
地積測量図がない土地は、正確な敷地面積はわかりません。そのような場合は、不動産会社や売主に依頼して、確定測量してもらいましょう。地積測量図を作成する確定測量は、「土地家屋調査士」の国家資格を有した専門家しか行えません。
「確定測量が行われていない土地であっても、売買自体は可能です。しかし購入後、隣地の所有者と境界でもめ、トラブルになる恐れがあるため避けましょう」
建蔽率とは、敷地面積に対して建てられる建物面積の割合のことです。都市計画を立てるうえで、風通しや防災を確保するための規制基準です。建蔽率は、以下の計算式で求めます。
例えば敷地面積140m2の土地に、70m2の建築面積の家を建てた場合、建蔽率は50%になります。建蔽率は、都市計画法で定められた用途地域ごとに割合が決められていて、原則としてその割合を超える家は建てられません。ただし、防火地域や耐火建築物、角地などには、建蔽率を上乗せできる緩和条件があります。
容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。都市計画において、土地の立体利用をコントロールし、より良い街づくりを行うための規制基準です。容積率は、以下の計算式で求めます。
例えば1階の床面積が70m2、2階の床面積が50m2、敷地面積が200m2の場合、容積率は60%になります。容積率も、用途地域ごとに割合が定められており、原則指定された割合を超えて家を建てることはできません。
また前面道路が狭い場合などは、容積率に制限が加えられることがあります。正確な容積率については、専門家に確認しましょう。
建蔽率と容積率は、用途地域ごとに異なります。ここでは住居系の用途地域の建蔽率と容積率を紹介します。
用途地域(住居系) | 用途 | 建ぺい率(%) | 容積率(%) |
---|---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域。小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられる | 30・40・50・60 | 50・60、80・100・150・200 |
第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅のための地域。小中学校などのほか、150m2までの一定のお店などが建てられる | ||
田園住居地域 | 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域。住宅に加え農産物の直売所などが建てられる | ||
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域。病院、大学、500m2までの一定のお店などが建てられる | 100・150・200・300・400・500 | |
第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅のための地域。病院、大学などのほか、1,500m2までの一定のお店や事務所など、必要な利便施設が建てられる | ||
第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域。3,000m2までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられる | 50・60・80 | |
第二種住居地域 | 主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられる | ||
準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域 |
「用途地域は、これからどのように土地が開発されていくのかを示すものです。将来どのような環境で暮らしたいのかまで考えて、土地を購入するエリアを選ぶことが大切です」
ここからは、家を建てるために土地を購入する際、知っておくべき敷地面積の制限を紹介します。
住居系専用地域では、都市計画において建物の敷地面積を一定以上としなければならないとする「敷地面積の制限(最低限度)」が設けられていることがあります。
これは、狭小地が増えると建物が密集して住環境が悪くなるため、小規模な開発を抑えてよりよい街づくりを行うことが目的です。建築基準法では、制限の上限面積を200m2としており、範囲内で自治体が自由に上限を定めて良いとされています。
土地の購入を検討している地域の最低敷地面積は、自治体のホームページをチェックする、もしくは直接電話や窓口で確認しましょう。
最低敷地面積以下の土地であっても、売買すること自体は問題ありません。また建築についても、都市計画で決定される以前から最低敷地面積以下であった土地であれば、建築は可能です。
「ただし、家を建てる条件を満たす土地であるかを判断するのは、簡単なことではありません。購入を検討する場合は、不動産会社などの専門家に確認することが重要です」
2006年から2021年までの、全国・首都圏・近畿圏・東海圏・その他エリアにおける、注文住宅と土地付き注文住宅(建築条件付き注文住宅)の敷地面積の推移はどのようになっているのでしょうか。住宅金融支援機構のフラット35利用者調査のデータで確認してみましょう。
注文住宅・土地付き注文住宅(建築条件付き注文住宅)の敷地面積は、全国平均は増加していますが、住宅需要が高い首都圏・近畿圏ではゆるやかに縮小傾向にあるようです。
最後に、注文住宅を建てるときに押さえておきたい注意点を紹介します。
第一種・第二種低層住居専用地域や田園住居地域では、都市計画によって住宅の高さは10mまたは12mに制限されています。これは「絶対高さ制限」と呼ばれます。絶対高さ制限があるエリアでは、容積率に関係なくこのサイズより高い家は原則として建てられません(※敷地周囲に広い公園や道路などがある場合、緩和措置が取られることがある)。
さらに隣地や隣家の日当たりや通風を確保するための高さ制限もあります。代表的なのは、以下の3つです。
北側斜線制限について詳しくはこちら
日影規制とは? 北側斜線制限とは? 土地を探す前に知っておきたい基礎知識
道路斜線制限について詳しくはこちら
道路斜線制限って建物の高さや形にどう影響するの?緩和されるのはどんな場合?
それぞれ自治体により最大値が異なり、数値を把握しておかないと、希望する高さや形状の家を建てられない可能性があるため注意が必要です。不動産会社、建築士などに確認しましょう。
建蔽率や容積率を考えるときに、ひさしやバルコニー、ウッドデッキ、ガレージなどが建築面積や延床面積に含まれるのか迷う人も多いようです。
基本的には柱と屋根がある部分は建築面積に含まれます。しかし建築確認における取り扱いは各自治体により運用が異なるため、都度確認が必要です。ここでは一般的な例を紹介します。
バルコニーやひさしは、奥行きや柱・壁の有無によって建築面積に含まれるかが決まります。
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ウッドデッキは建築面積には含まれませんが、床面積に含まれる場合があるため注意が必要です。
※最終的な算定範囲の判断は自治体が行うため確認しましょう。
ガレージ・カーポートは、屋根と柱がある場合、基本的には建築面積に含まれます。ただし含まれる面積は、構造によって異なります。具体的には、屋根と柱があっても以下の条件に該当して「開放性が高い」と認められる場合は、算入される建築面積が縮小される緩和措置を受けられます。
(1)外壁を有しない部分が連続して4m以上である
(2)柱の間隔が2m以上である
(3)天井の高さが2.1m以上である
(4)地階をのぞく階数が1である
※カーポートの形状などにより算定範囲は異なります。最終的な判断は自治体が行うため確認しましょう。
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土地を購入するときには、建蔽率や容積率を確認し、希望する広さの家を建てる条件を満たすかを見極める必要があります。そのためには、正確な敷地面積を把握することが重要です。
「希望する土地がセットバックの必要があるのか、最低敷地面積の条件をクリアしているのかなどは、専門知識がなければ簡単には判断できません。その地域の土地に詳しい不動産会社や建築士などプロの手を借りながら、後悔のない土地選びをしてください」
敷地面積とは建物を建てる土地の水平投影面積を指す
みなし道路は敷地面積に含まれない
家を建てる自治体の最低敷地面積を把握しておく