ファッションやインテリアでよく耳にする「ワードローブ」。お気に入りの服をどのように収納にするかによって、服を選ぶときの楽しみ方も変わる。おしゃれを楽しむワードローブにするためのアイデアをMAアーキテクト 一級建築士事務所の伊藤宗明さんに伺った。
ワードローブとは、ファッション業界では、その人の持っている衣装全体または衣装の組み合わせを指すが、住宅関連では「洋服ダンス」、「クローゼット」の意味で使われることが多く、洋服を収納するための設備全般のことを言う。
「ワードローブは寝室などに設けることが多いのですが、壁の一面のスペースのみでは足りないこともあるので、最近ではウォークインクローゼットを導入することが主流になってきています。スペースに余裕があれば、ウォークインクローゼットとクローゼットを併用すると、よく使うものは手前にあるクローゼットで出し入れし、季節物や布団などはたっぷりと収納できるウォークインクローゼットにしまっておけるので効率よく使えます」(MAアーキテクト 一級建築士事務所の伊藤さん。以下同)
「ワードローブは、お気に入りの服をしまっておけて、服を選ぶ楽しさが増すというメリットがあります。シャツやジャケットなどハンガーに掛けるもの、Tシャツやボトムスなど畳んでおくものなどそれぞれゾーニングして服をきれいな状態で保管できることで、定期的に断捨離をするきっかけにもなります」
また、オープンタイプにするとワードローブがインテリアの一部になり、セレクトショップのようなおしゃれな空間に。
一方、ただ服をしまっておくだけではなくディスプレー要素をもたせる場合は、居室の広さが必要になるので、手持ちの服をしまえる十分なスペースを確保できるようにしよう。また、詰め込みすぎると、どこに何があるかがわからなくなり、探している服がすぐに見つからなかったりもする。自分が持っている服を把握できるよう、整理整頓を心掛けたい。
・お気に入りの服をしまって置けるので服を選ぶ楽しさが増す
・服をきれいな状態で保管でき、断捨離をするきっかけにも
・オープンタイプにするとインテリアとしておしゃれな空間を演出
・服をしまえる十分な収納スペースが必要
・整理整頓できるようにしておかないと探している服がすぐに見つからない場合も
ワードローブは、ただ服を収納するだけではなく、ファッションを楽しむ場としての視覚的効果も大切だ。ショップで服を選んでいるようなディスプレーの工夫など、ワードローブをおしゃれにしつらえることで、より服を選ぶ時間を有意義なものにできる。
「ワードローブをおしゃれにするには、クローゼット内の正面部分をアクセントカラーで遊び心をプラスするのがオススメ。ダークカラーにすれば上品な雰囲気になりますし、カラフルな色や木目調など、ファッションのテイストに合わせてしつらえると、統一感が出ます」
ワードローブ内に照明をつけると、服が探しやすくなるだけでなく服の良さをより引き立ててくれる効果も。
また、ワードローブの一部や扉の裏側に姿見の鏡をつけると、全身コーディネートを確認できる。ワードローブ内に鏡が収められるため、居室がスッキリとした空間になるというメリットも。
「それから、靴やネクタイ、ベルト、バッグなど細々した小物類は、ワードローブ内に飾りながらしまえるようなスペースを設けると選びやすくなりますし、見ているだけでも楽しめます」
まずは、どのくらいの収納が必要かを確認するために、持ち物のチェックを。それから普段使いの服をしまうスペースがどのくらいになるか、季節物の服や布団などをどこに置くかなど、動作を考えながら収納する場所を決めよう。
「元々持っている収納ケースなどを活かしてワードローブを造作することも可能です。持ち物や既存の収納アイテムをきちんと洗い出して、しっかりと収まるようワードローブを選びましょう」
ウォークインクローゼットを設ける場合は、湿気がこもらないように換気扇を取り付けたり、桐のパネルや漆喰など調湿効果のある天然素材で防虫・防湿対策を。
「間取りとして可能であれば、通気と採光のために小さな窓をつけるのも有効です」
ライフステージに応じた使い方ができるようにする場合は、可動式タイプにしておくと便利だ。
「子ども部屋などは可動式のクローゼットにしておけば、子どもが成長して独立したときにクローゼットを移動して夫婦の趣味部屋として使うなど、ライフステージの変化に合わせてレイアウトを変更することができます」
住宅は水まわりの次に家具にコストがかかるため、収納を既製品にすることで造作するよりもコストを抑えることができる。
「既製品のクローゼットで、中のパーツをカスタマイズできるタイプもあります。それでも一から造作するよりはコストダウンが可能です。既製品のクローゼットを置く際にサイズが足りない部分があれば、居室のインテリアテイストに合わせてつながりを持たせてトータルコーディネートすると全体がまとまります」
注文住宅やリノベーションの場合には、ファッションから派生したスペースとの兼ね合いを考慮してプランニングするのもポイントだ。
「例えば、ファッションとメイクは一連の流れなので、洗面室を近くに配置したり、ドレッサーをワードローブの近くにレイアウトすると、コンパクトな動線になります。よりすっきりとした空間にしたい場合は、ワードローブ内にドレッサーを組み込むケースも」
寝室の真ん中を壁で仕切り、片方をワードローブに。見せる収納にしてインテリアの一部になっている。たっぷりと収納することができるだけでなく、収納する場所というよりも、居住空間として服を着る時間を楽しむ場所だ。
ウォークインクローゼットの中の収納棚には扉を設けず、ディスプレーしながらしまうスタイルに。ビンテージ感のある木目調にしつらえ、カジュアルなデザインの服ともマッチしている。見せる収納にすることで何がどこにあるかがわかりやすくなり、服のコーディネートが楽しくなる空間になっている。
ウォークインクローゼットの壁紙に好みのカラーや柄を取り入れて、おしゃれな空間にしつらえれば、まるでショップで服を選んでいるような感覚で毎日服をコーディネートできるので、服を選ぶ時間が楽しみに。
子ども部屋のワードローブ。デスク一体型にすることで、学校の準備と身支度が一緒にできる。子どもの成長に合わせて使い方を変更できるように可動棚に。収納部分に机があるので、空間もスッキリとまとまる。
クローゼットの奥行きを深めにして壁面に可動棚を設け、手前にハンガーにかけた洋服、奥に畳んだ洋服や小物を置くなど奥行きを2つのスペースに分けて収納。そうすることで、洋服をかけたうしろのデッドスペースをうまく使うことができる。
使う人やライフステージに合わせて、ワードローブの使い方も変わる。人別に区切り、可動式の棚にしておくことで、例えば子どもの成長に合わせてハンガーの位置を変えられるようにしておくと、使う人の変化や使う物の変化にも対応しやすい。
ワードローブとは、住宅関連では「洋服ダンス」、「クローゼット」の意味で使われることが多く、洋服を収納するための設備全般のこと
ワードローブはただ服を収納するだけではなく、ショップで服を選んでいるようなディスプレーなど視覚的な工夫をすることで、ファッションを楽しむ場になる
ワードローブを選ぶ際は、どのくらいの収納が必要かを確認するために、持ち物をチェックし、ライフスタイルに合わせてどのようなワードローブにするか検討しよう