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土地が狭くて庭がつくれなくても、身近に自然を感じながら暮らしたい。そんなときにオススメなのが「坪庭」だ。小さなスペースでも明るく開放的な空間を演出することができ、暮らしを豊かなものにしてくれる。そこで、坪庭の特徴やメリット・デメリット、プランニングのポイントや注意点について、一級建築士の横山浩介さんに解説してもらった。
坪庭とは、周囲を壁や塀、垣根で囲われた2~3坪程度の小規模な庭のこと。
もともと神社や仏閣、武家屋敷などにあった日本庭園を、安土桃山時代に庶民の民家に取り入れたのが始まりと言われている。
当時、京都の町家は同じ形状の建物が隣家と近接し、間口が狭く奥行きが長いことから鰻の寝床とも呼ばれていた。採光と通風の悪さを解消するために、住居の間に草木や竹、灯篭(とうろう)や飛び石、鹿威し(ししおどし)などを配して小さな日本庭園をつくるようになった。
最初は和風住宅に取り入れられたものだが、現在は洋風のモダンな坪庭を取り入れるケースが多くなっている。玄関や廊下、バスコートなどに取り入れられることが多く、坪庭を中心に居室をぐるりと配置するケースも。
「家の中で光や風、緑などの自然を感じられる場所があるだけで、暮らしはとても豊かなものに。坪庭を設けて敷地全体の余白を有効に使い、家の内部と外部を繋げることで、開放感が生まれて気持ちの良い空間になります。例えば、植栽の緑を囲むように部屋の配置をすれば、どの部屋からも緑を眺めて楽しむことができます」(横山浩介建築設計事務所 横山浩介さん。以下同)

坪庭は建蔽率(建ぺい率)に含まれないことから、敷地の余白部分を有効利用することで明るく開放的な空間をつくることができる。また、窓を多くすると、日光などの明るさを取り入れやすくもなる。樹木の数や窓の位置などで、家の中に入る光の量を調節しやすい点も利点といえるだろう。
坪庭を設置していると、周囲の視線が気にならないため、窓が開けやすく風通しを良くすることができる。部屋に湿気がこもりにくく、通気性が良い点も見逃せない。
家の北側など日差しが入りづらく暗くなりがちな場所や、玄関や廊下など日常生活の中で過ごす時間が短く閉塞感のあるスペースに取り入れると、空間に奥行きが生まれて視界的な広がりを感じられる。特に周囲に建物が多い場所は圧迫を感じやすいため、開放感を得るための方法として坪庭をつくることを検討したい。
家にいながら、四季の変化や景色が楽しめるのも坪庭のメリットだ。
「坪庭はプライバシーを確保しながら、自然を感じられるのが魅力。家の雰囲気に合わせた植栽で空間をデザインすると、内と外の空間に繋がりをもたせることができます。また、日中は坪庭に光が降り注ぎ、緑を楽しめる爽やかで心地いい空間に、夜はライトアップにより幻想的で魅力的な雰囲気にと、季節や時間によってさまざまな景色を楽しむことができるのも醍醐味ですね」と横山さんも語る。
また、中庭のように各居室をぐるりと回遊するようにレイアウトすれば、家族の気配を感じたり、コミュニケーションが円滑になったりすることも。
ちょっとした遊具も置けるため、子どもやペットの安全な遊び場としても活用できる。
一方、坪庭を設けることによって居住スペースを圧迫してしまい、建物面積が狭くなってしまうのがデメリットとして挙げられる。特に、中庭のように家の中央部にレイアウトし、上階まで抜けるような坪庭をつくる場合は注意が必要だ。
「坪庭をつくることで外壁面が多くなります。プランによって費用の幅が広いので単純に坪単価で換算するのが難しいのですが、坪庭の広さや形、室内の使用などによって、建築費用が上がる場合もあります」
坪庭をつくることで壁面が増えて建物内部の構成が複雑になりやすく、窓が増えることで熱損失が大きくなって断熱性能が下がることも。冷暖房効率が下がる分ランニングコストも上がる。植栽の剪定など、定期的なメンテナンスを業者に依頼する場合はその分の費用もかかる。
坪庭の手入れを怠ると、樹木や雑草が伸び放題となり見栄えが悪くなる。きれいな景観を保ちたいのであれば、定期的な手入れは必要と考えておこう。なるべく手間をかけたくないのであれば、植栽を植えず石を置くだけにするなどの工夫をしたい。
中庭についてもっと詳しく→
中庭のある家のメリット・デメリットは? 間取りや、おしゃれな中庭づくりのコツは?
坪庭はこだわるほど費用が高くなると考えておこう。例えば、防草シートを敷いてブロックで舗装する、砂利を敷いて石や水鉢を配置する、といった工事であれば50万円台でつくれるが、芝生を設置する、植栽を多く植える、ライトアップ設備をつくる、などのこだわりを出すと100万円を超えることも珍しくない。
また、新築する家に坪庭をつくる場合、坪庭の場所に合わせて家の形を考える必要が出てくるため、建築費が高くなる可能性もある。
坪庭をつくる際は、予算とこだわりのバランスについてしっかりと検討しよう。
玄関のようなコンパクトな空間に坪庭を設けると、明るく開放的に感じられる。扉を開いた正面に坪庭の抜け感をつくるだけで、奥行きのある空間を演出できる。緑も見えるので爽やかな気分に。

洗面室やバスルームなどに坪庭を設けると、プライバシーを守りながら、通風と採光を確保できる洗面室に。3階にまで届く高さの植栽を設け、各階のどこででも緑を感じられる。朝日が差し込み自然を感じられる空間で気持ちよく身支度することができる。

「隣家に囲まれた敷地条件の場合、大開口の空間をつくってしまうと人の視線などが気になってしまい、結局カーテンを閉め切ってしまうということも。プライバシーの保たれた坪庭に面した居室があれば安心です。坪庭に面した寝室にすると、毎朝爽やかな緑と自然光で清々しい気持ちで目覚めることができます」

廊下や階段は暗く閉鎖的になりがちだが、坪庭を設けることで明るく抜け感のある空間にすることができる。敷地形状に合わせて建物の輪郭を造り、内側の余白を利用して坪庭を配置すると、閉じられつつも、内部と外部が連続する、明るく広がりのある構成に。
「スケルトン階段と組み合わせることで視線が坪庭に向かって抜けるので、面積以上の開放感が生まれます」

「最近は、シンプルな洋風住宅が主流になっているので、坪庭も洋風が多くなっています。樹種や庭石など日本庭園の要素を組み合わせて、和モダンテイストの坪庭にすると、すっきりと落ち着いた雰囲気を楽しむこともできます」
シンプルモダンな住宅に和テイストの坪庭をしつらえると、庭石と植栽の緑が白い外壁によく映え、リビングと庭が一体となった心地のいい空間に。

坪庭があることで、家の中に光が入りやすくなり、風が通りやすくなる。また、樹木や草木で季節の演出も可能だ。景観を楽しめる落ち着いた家をつくりたいのであれば、ぜひ坪庭を検討したい。
ただし、坪庭をつくると建築費用が高くなる。樹木の剪定や草むしりなどのメンテナンスが必要な点も注意点といえるだろう。
つくる際は、予算をどの程度かけられるかだけでなく、継続してメンテナンスできるかまで考えておこう。
坪庭とは、周囲を壁や塀、垣根で囲われた2~3坪程度の小規模な庭のこと。プライバシーを確保しながら、自然を感じられる
坪庭は建蔽率(建ぺい率)に含まれない。敷地の余白部分を有効利用し、明るく開放的な空間づくりができる
坪庭を設けることによって居住スペースを圧迫してしまい、建物面積が狭くなってしまうことも
建築費用やランニングコストも上がる場合がある