テラスやバルコニーに屋根があると、洗濯物を干せたり、雨などを気にせず物を置けたりと便利です。種類や価格、注意しておきたいポイントなど、設置を検討している人に役立つポイントを株式会社LIXIL酒井さんに教えてもらいました。
建物の外に突き出しているスペースを指す『テラス』や『バルコニー』。『デッキ』や『ベランダ』などの言葉も合わせ、どれが何を指すのか、曖昧な認識でいる人も多いのではないでしょうか。実際に、明確な定義はないようですが、一般的には1階の場合をテラス、2階の場合をバルコニー、そして、バルコニーに屋根がつくとベランダと呼ぶことが多いようです。
また、1階の場合はテラスと呼ぶほかに、デッキと言う場合もあります。テラスは庭の延長、デッキは室内の延長というイメージですが、こちらも厳密な決まりがあるということではないようです。
ベランダやテラスについてもっと詳しく
→ベランダとバルコニーの違いは? 意外と知らない「言葉の意味」
テラスやバルコニーに屋根をつける最大のメリットとしては、雨・風・日差しを軽減できるということが挙げられます。テラスを自転車置き場として利用できたり、急な雨を気にせず洗濯物を干せたりと、屋根を設置することで、屋外スペースの用途が広がります。
「近隣からの視線が気になる場合、屋根の前面にスクリーンを設置すると、室内の様子や洗濯物をさりげなく隠すことができます。プライバシーを守り、雨や風の吹きこみを防ぐこともできるので、より安心して洗濯物を干すなどすることができます」(LIXIL広報、酒井さん、以下同)
さらに、屋根を設置することで、室内に差し込む紫外線を軽減することが可能です。「採光性を保ちながら、熱線をカットするポリカーボネート屋根材をつけることで、室内の明るさを確保しながら、熱線をカットすることができます」。遮熱効果で、室内の冷暖房効率が上がることも期待できそうです。
最近ではテラスやバルコニーの床を室内の床の高さとそろえてフラットにし、第二のリビング空間として活用する人も増えてきています。通常、バルコニーやテラスに出入りする掃き出し窓には立上りがつくものなので、新築でない場合は、ウッドデッキなどをバルコニーに敷いたり、屋内の床を上げたりして段差をなくします。フルフラットなバルコニーやテラスに屋根をつけると、外部スペースであっても、食事をしたり、くつろいだりできる、アウトドアリビングとして活用しやすくなります。
「最近ではベランピングという言葉が注目され、一戸建てのベランダでキャンプ風の演出をしたり、普段とは違う豪華なキャンプ料理を自宅で楽しんだりする方もいるようです」。近隣への煙や臭いには配慮が必要ですが、キャンプのような非日常的な雰囲気を気軽に自宅で味わえるというのは嬉しいポイントです。
屋根を設置するデメリットとして挙げられるのは、暴風雨の際の音。設置しない場合に比べると、音が気になるというケースもあるようです。また、日差しを軽減する分、室内が暗くなるという心配もありますが、テラスやバルコニーに設置する屋根のパネルは、前述した、採光性を保ちながら熱さの元となる熱線をカットする屋根材が標準的に使われています。また、特に日差しが強い部屋で、室内温度調整のために屋根をつけたいという場合も、標準的なものよりも、さらに熱線カット率の高い、熱線吸収タイプを選べば、明るさは保ちながら日射による熱さを軽減することが可能です。室内の明るさを保ちながら日差しによる熱さは軽減できるのかという心配は、屋根材を選ぶことで解消することができます。
屋根のサイズは、横幅はテラスやバルコニーと同じ位のもの、奥行は、一回り大きいものを取り付けるのが一般的で、柱については、施工せずに屋根だけを設置することも可能です。さまざまな選択肢の中から住まいに合わせて設置する屋根を選ぶことができます。
「屋根の形状は、シンプルでモダンな住宅にも調和するフラットな形のF型と、ゆるやかなカーブ状で、雨や風の吹きこみに対して効果があるR型があります。また、デザインはシンプルなもののほかに、木目調のタイプなどもあります。パネルは、熱線カット率が高いものや防汚機能がついたものもあり、希望や用途に合わせて選ぶことができます。色調もクリアなもの、くもりガラスのようなマット調、ブラウン調などさまなざまです。さらに、雪の多い地域に住んでいる場合は、耐積雪仕様などを選んだ方がいいケースもあります。耐積雪強度は20cm、50cm、100cmなどのタイプがあり、耐積雪性能が高いほど、補強材が大きくなります。住んでいる地域に合わせて選ぶといいでしょう」
例えば、バルコニーやテラスの方角によっては、熱線吸収率のより高い材質のものを選んだり、上部からのプライバシー性を重視して、パネルをマット調のものにしたりするなど、自分の生活に必要な機能は何かを考えて選ぶことが大事です。
リフォームで屋根をつける場合、費用も気になるもの。「価格は商品によってさまざまですが、1日程度の工事で設置する簡易的なものであれば、商品代と工事費で12万~18万円程度が目安です」。ただし、サイズの大きいものや、耐積雪仕様など標準以上の機能が付加された商品の場合、費用が数十万円になるということもあります。
長期優良住宅の場合、住宅の構造に影響するようなリフォームなどは認定が取り消されてしまうことがあります。通常、テラスやバルコニーの屋根は住宅の躯体にねじ止めをして設置するものなので、長期優良住宅の場合、そのような屋根の設置は避けた方がいいでしょう。また、長期優良住宅でなくても、ハウスメーカーなどの外壁保証の対象外になることもあるので、リフォームする場合には事前にメーカーなどに確認が必要です。「躯体にねじ止めをするタイプの屋根を設置できない場合は、独立タイプのテラスという選択肢もあります。外壁とは離れた独立構造のため、住宅を傷つけることがありません」
予算や外観デザインなどを理由に、テラスやバルコニーに屋根を設置するか迷っている人もいるかもしれません。そこで、SUUMO編集部が考える屋根を設置しない場合のメリット・デメリットをご紹介します。
屋根がないことで空の眺めを遮る物がなくなるため、開放感はアップします。気候の良い季節はBBQや、簡易ハンモックを置いてお昼寝をすれば、自宅に居ながら手軽にリフレッシュできます。広いスペースがありテントを張れれば、遠出しなくてもキャンプ感覚が味わえるでしょう。
屋根がないと日光が当たりやすくなるため、植物が育ちやすくなります。趣味がガーデニングや家庭菜園という人には、存分に楽しめるスペースになるでしょう。
屋根がないと雨は直接テラスやバルコニーに降り注ぎます。天気が急に変わり雨になると、干していた洗濯物が濡れてしまい、洗濯をやり直すことになるかもしれません。
雨だけでなく日光や砂ぼこり、落ち葉などが入りやすくなるため、屋根がある場合と比べると汚れやすくなります。また、床にウッドデッキやウッドタイルを敷いていると、色あせや反りなどで傷みやすくなる可能性があります。
方位にもよりますが、テラスやバルコニーの屋根は、室内に入る日差しを軽減する効果があります。屋根がないと、夏場の強い日差しによって室温が上昇しやすくなるでしょう。さらに、床や壁などの日が当たる部分だけ、色があせたり黄ばんだりなどの劣化が進みやすくなります。
住まいに合わせて、さまざまな選択肢があるテラスやバルコニーの屋根。屋根を設置することでテラスやバルコニーを洗濯物干しスペースとして活用できるのはもちろんですが、それだけでなく、食事をしたり、仲間と語らったり、家族でくつろいだりできるアウトドアリビングとしての可能性も広がりそうですね。屋根なしのメリット・デメリットも考慮したうえで、用途にあったテラスやバルコニーをつくりましょう。
テラスやバルコニーに屋根を設置することで、雨・風・日差しなどを軽減できる
住む地域の気候や設置する方角など考慮して、適切な機能やデザインを選ぶのが大事
長期優良住宅などの場合は外壁と離れた独立型テラスという選択肢もある