玄関は、靴や雨具など、多種多様な家族の荷物が集まる場。物でごちゃつきがちな場所ですが、来客があれば必ず目に入る場でもあります。
それを解消してくれるのが、最近人気のシューズインクローゼット。ちょっとした収納スペースであっても、あれば玄関まわりをスッキリした空間にしてくれます。
この記事では、「NLデザイン設計室」代表の丹羽さんにお話を伺い、後悔しないシューズインクローゼットづくりのコツを教えてもらいました。
シューズインクローゼットとは、玄関まわりにある収納で、靴を履いたまま使えることが多いものです。シューズボックス(下足入れ)との違いは、奥行きがあり、人が中に入れる程度のスペースがあること。そのため、傘をしまったり、ゴルフバッグを置いたりと、靴に限らない収納として使い勝手が良いものです。外で使うもの、外に行くときに持っていきたいものを置くのに重宝します。
シューズインクローゼットには、土間の一部に棚を設けたオープンタイプや、ウォークインまたはウォークスルーのタイプがあります。シューズインクロークや土間収納とも呼ばれ、間取図上はSICやSCと表記されることもあります。
入口が1カ所で壁が多い分、収納量を確保しやすい。靴や荷物を片付けた後、もう一度玄関に戻ってから家に入ることになるので、靴以外に収納したいものが多い場合に使い勝手が良い。
玄関側と居住スペース側の両方に入口があり、靴や荷物を片付けてそのまま家に入れるので、動線を重視する人に人気。奥まったシューズクローク側を家族用の玄関とすれば、玄関には靴が1足も出ていない状態をつくれるのでかなりスッキリとした空間をつくれ、来客時の出入りもサッとできる。
限られた空間で土間を広くつくろうとする場合に、収納を壁で仕切らずに棚板やハンガーパイプを設置するタイプ。壁がない分、圧迫感が軽減される。基本的に土間と収納が一体ですべて見えているので、片付けが上手な人向け。マンションリフォームで土間をつくる場合に採用されることが多い。
シューズインクローゼットは、収納としてはもちろん、使い勝手の良い土間の一部として、ベビーカー置き場、作業スペースや子どもの安全な遊び場、趣味のスペースといった人が過ごす場、また、収納兼通路など、プラン次第で2WAY、3WAYで使えるフレキシブルな空間となるのが魅力です。
では、シューズインクローゼットを設けることで、どのようなメリット、デメリットがあるのか確認してみましょう。
・ものがあふれがちな玄関まわりをスッキリとした印象にできる
・外で使うものをまとめて置けるので、外の汚れを家に持ち込みたくないものの置き場として重宝する
・外に出る動線上に収納があるので、外で使うものの出し入れがしやすく、コート掛けや鏡などを備えれば身支度をする場としても使える
収納例/靴、雨具、外遊び道具、スポーツ用品やアウトドア用品、防災グッズ、ベビーカー、足蹴り自転車、宅配物や資源ゴミの一時置き、など
・下足入れなど収納家具を置くよりも、玄関まわりに広いスペースが必要
(シューズインクローゼットを優先した結果、玄関や居室が狭くなることがある)
・収納家具を置くよりも建築費が上がることが多い
なお、収納するものは、外で使うものか、段ボールや古新聞など外に出すものの一時置きには適していますが、外で使うものであっても園芸用肥料など臭いがするものは適しませんので気をつけましょう。
シューズインクローゼットをつくる場合にまず考えておくべきことは、なぜその収納にスペースを割きたいかということです。延床面積には限りがありますから、希望の暮らしを実現させるために、何が必要か、というところを確認して優先順位を決めていく必要があります。
「人気がある収納だし、あれば便利そうだからつくっておきたい」というだけでは、せっかくのシューズインクローゼットを使いこなせない可能性があります。まず、「何をどれだけ入れたいのか」「どんなシーンでどう使いたいのか」を整理しておきましょう。自分でシューズインクローゼットのプランを考える、というのではなく、プランナーに自分たちの要望や暮らしを伝えるための準備をしておく、というイメージです。
シューズインクローゼットをつくるのに必要な広さは、玄関プラス1.5畳~2畳程度から検討可能です。収納だけでなく作業スペースを兼ねるなら、3畳程度あると良いでしょう。コンパクトなサイズのシューズインクローゼットの場合、扉を付けずに玄関と空間をつなげたタイプにすると圧迫感を軽減できます。来客時など、必要に応じて目隠しできるよう、カーテンやロールスクリーンを付けられるフックなどを付けておくと便利です。
シューズインクローゼットは、靴からの湿気やニオイがこもりやすいものです。換気しやすいよう窓を付けたり、引き戸にしたりして、対策しておくと良いでしょう。通気口のあるドアを選ぶのも手です。玄関のインテリアのアクセントとして調湿性や消臭効果のある機能性タイルを使うのも良いでしょう。
中の棚は、可動式にしておくと、ブーツや長靴の量に応じて調整できます。住んでいるうちに家族の人数や持ち物が変わりますから、後から調整できると重宝します。コートや雨具、ボールや縄跳びなどが掛けられるようハンガーパイプやフックを設けておくと、しまえるもののバリエーションが広がります。また、ロッカータイプにして自分専用のスペースを決めておくと、子どもが自分で荷物を片付ける習慣づけに役立つ、なんてこともあるでしょう。
もし、ベビーカーやキャリーケースなど転がして入れるものがあるなら、ぜひ玄関の三和土(たたき)と段差がないつくりをオススメします。シューズインクローゼットがウォークスルータイプで廊下収納を兼ねる場合、コンセントを設けておくと、掃除機やロボット掃除機の充電に役立ちます。
シューズインクローゼットは、出し入れする際の照明の確保も必要です。荷物で手がふさがっていてもオン・オフができるよう、センサー式の自動点灯する照明を選ぶのも良いでしょう。
広さやプランによりまちまちではありますが、「2畳程度で入り口(ドア)は1つ、棚は壁の2面、照明あり」のシューズインクローゼットをつくる場合、費用は50万円~60万円くらいが目安です。費用を少しでも抑えるなら、ドアをつけない、棚は後からDIYで自分でつける(下地はプロにお願いしておく)、といった工夫もできます。
プラン | 費用相場 |
---|---|
・入り口(ドア)は1つ ・棚は壁の2面 ・照明あり |
50~60万円くらい |
一戸建てのリフォームでシューズインクローゼットをつくる場合、玄関まわりの基礎の状態によりつくるのが難しかったり、費用が割高になるケースがあります。
シューズインクローゼットをつくりたい位置に基礎の立ち上がりがあり、構造上その基礎を撤去できない場合は玄関の三和土を広げられず、設置が難しくなります(広い玄関で、その範囲内につくる場合は問題ありません)。
基礎を撤去できる場合も、基礎を壊す解体撤去費が数万円かかり、割高になります。なお、シューズインクローゼットがつくれるかは、プロが間取図をチェックすれば判断できるので、中古を買ってリノベーションする場合は購入前に確認しておくと良いでしょう。
マンションの場合は、多くの工法では躯体(くたい)がフラットなので、一戸建てほどの難しさがないケースが多くなります。
シューズインクローゼットはオーダーメードの収納です。後悔しないために先輩たちが選んだプランを参考に、わが家の場合を検討してみましょう。
玄関まわりのスペースにゆとりがない場合、シューズインクローゼットは扉を設けず、玄関とのつながりが感じられるようにつくると圧迫感が出ない。目隠しにカーテンやロールスクリーンを付けるのも◎。
胸の高さあたりの小さな扉“スイングドア”なら、適度に目隠ししつつ、荷物を持ったまま出入りしやすい。
玄関にゆとりがあるなら、一般的に下足入れを置くあたりに収納をつくり、靴や外で使う物はシューズインクローゼットに、掃除用具やストック置きは玄関収納に、と役割を分けても。
シューズインクローゼットの出入口が三和土にある場合、必ず1足は上がり框(かまち)の前に靴が並ぶことになるので、気になる場合は廊下収納にも少し靴を置くスペースを設けると良い。
入口の扉を設けない場合、シューズインクローゼット自体のデザイン性を高めるのも手。スクエアならシャープに、アーチ型なら柔らかな印象に。出入口が小上がりにかかるようにつくれると、シューズインクローゼットの中で靴の脱ぎ履きや片付けができるので、玄関が散らからないのもうれしい。
三和土と上がり框側の2カ所に出入口があると、靴を脱いだあと玄関に戻らずに家に入れるので動線がシンプルにまとまる。玄関で来客対応中でも、シューズインクローゼット側からサッと出入りできるので重宝する。シューズインクローゼット内で靴を脱いで家に上がれるので、玄関に家族の靴が並ばず、常に片付いている状態になるのが◎
ウォークスルータイプのシューズインクローゼットの場合、通路としての役割もある。例えば、キッチンやパントリーにつながる間取りなら、買い物後に土足のままでキッチンやパントリー近くまで荷物を運べて重宝する。接続先はクローゼットやガレージなど、つなぐと動線がシンプルになるものを選びたい。泥だらけになるスポーツをしているなら、浴室までの動線を検討してみるのもオススメ。
玄関まわりは意外と物が多い。片付けやすいシューズインクローゼットがあるとスッキリとした空間になる
外出時の動線上にある収納なので、外で使うものを出し入れしやすく、汚れたものを室内に持ち込まずに済む
身支度の場としても使えるので、コート掛けなど用途をイメージしてつくり込むのがオススメ