ペニンシュラキッチンを注文住宅に取り入れたい!後悔しないためのポイントを家づくりのプロが解説

公開日 2023年04月05日
ペニンシュラキッチンを注文住宅に取り入れたい!後悔しないためのポイントを家づくりのプロが解説

便利なだけでなくスタイリッシュで見た目もおしゃれなペニンシュラキッチン。注文住宅にペニンシュラキッチンを取り入れる場合、どのようなことに気をつけたらよいでしょうか。ペニンシュラキッチンの特徴をはじめ、アイランドキッチンやウォール型キッチンとの違い、新築時に検討したい水はね・油はね対策、後悔しない間取りやレイアウトのポイントについて、住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所の井上恵子さんに伺いました。

ペニンシュラキッチンとは?

定義や特徴

「『ペニンシュラ』とは半島を意味する言葉であり、壁に片面だけ接している半島状のキッチンのことをペニンシュラキッチンと呼びます。ペニンシュラキッチンには4種類のレイアウトパターンがあり、多くの場合が対面式になっています」(井上さん、以下同)

ペニンシュラキッチンには下図のように1列型(I型キッチン)、2列型、L字型、U字型の4つのレイアウトパターンがあります。

ペニンシュラキッチンのレイアウト4例
ペニンシュラキッチンには4つのレイアウトパターンがある(イラスト/高村あゆみ)

ウォール型キッチンやアイランドキッチンとの違い

ペニンシュラキッチンと混同されやすいのがアイランドキッチンです。アイランドキッチンとはその名の通り離島のように壁面から離れた場所に設置されたキッチンのことです。一面だけ壁に接しているペニンシュラキッチンとは違い、アイランドキッチンは完全に独立しているのが特徴です。

アイランドキッチン
ペニンシュラキッチンとは異なり、壁には接していないのがアイランドキッチンの特徴(画像/PIXTA)

また、キッチンが壁に面して付いているウォール型キッチン(壁付型キッチン)も人気です。ペニンシュラキッチンやアイランドキッチンのように対面式のスタイルではありませんが、LDKを開放的に見せることができ、間取りの自由度も高いことが魅力です。

ウォール型キッチン
ウォール型キッチン。壁にぴったりと面しているため、間取りの自由度が高くなる(画像/PIXTA)

サイズの目安や設置に必要な広さ

一般的なペニンシュラキッチンの横幅の目安は180~270cm程度、奥行きは75~100cm程度、高さは JIS規格で決められている80cm・85cm・90cm・95cmの中から使いやすい高さを選びます。設置に必要な広さは最低4畳ほどで、アイランドキッチンよりもコンパクトな面積で設置できます。

「キッチンの通路幅によっても作業のしやすさが変わります。1人が立って快適に使える広さは通路幅90cmほどです。常に複数人で作業をするならもう少し広い120~150cmほどの幅があるとよいでしょう。バリアフリー設計にしたいときは、例えば車椅子を使用する場合、直径150センチの円が内接するスペースがあると車椅子を回転させることができます。車椅子は横移動がしにくいため、キッチンのレイアウトは1列型よりL字型、またはU字型が使いやすいです」

設置に必要な広さとキッチンのサイズの目安
一般的なサイズの目安。ライフスタイルや好みに合わせて各サイズを選ぶことが大切。なお、ワークトップの高さはJIS規格で80・85・90・95cmと定められている(イラスト/高村あゆみ)

ペニンシュラキッチンのメリットは?

コミュニケーションを取りやすい

「ペニンシュラキッチンの多くが対面式のレイアウトになります。キッチンで作業をしながらダイニングやリビングにいる人と会話ができたり、宿題をしている子どもを見守りながら洗い物をするといったことも可能です。そのため、キッチンで作業をしている人が孤独を感じにくく、家族とコミュニケーションが取りやすいというよさがあります」

LDKに集う家族
ペニンシュラキッチンを採用することで家族との会話も弾みやすくなる(画像/PIXTA)

LDKに開放感を演出できる

「キッチンの前が壁で塞がれていないため、リビングやダイニングとのつながりがあり、空間が開放的な雰囲気になります。特にフルフラット(対面キッチンの中でも腰壁などの立ち上がりがなく、天板が全て平らになっている)のキッチンは見た目もすっきりとしていてLDK全体のデザイン性が高まります」

開放感のあるLDK
キッチンを囲う壁がないことによりLDKを広く感じることができる(画像/PIXTA)

キッチンを家族の共有スペースにしやすい

「昔の日本のキッチンは煙やニオイを嫌って家族のいる居間から離れた場所に設けられることが一般的でした。しかし時代と共にキッチンは家の中心に置かれるようになり、みんなで使う場所になりました。オープンな雰囲気のペニンシュラキッチンは家族の共有スペースとして活用しやすいところが魅力といえます」

ペニンシュラキッチンで料理をする家族
隔たりのない空間だから、家族と一緒に使いやすい(画像/PIXTA)

カウンターを設置できる

「リビング・ダイニング側にカウンターを設置することが可能です。食卓やワークスペース、バーカウンターのようにおしゃれに使用することもできます。また、カウンターの下に収納を設けることもできます」

カウンターを設けたペニンシュラキッチン
キッチン前に設けたカウンターはワークスペースなどちょっとした作業場として活用できる(画像/PIXTA)

ペニンシュラキッチンのデメリットは?

ニオイや煙、音がリビングやダイニングに広がりやすい

「キッチンがリビング・ダイニングにオープンで前面に壁がないレイアウトが多く、料理のニオイや煙がリビングやダイニングに広がりやすいというデメリットがあります。また、換気扇や調理をしているときの音なども、遮るものがないため伝わりやすい傾向があります」

オープンなレイアウトのキッチンで料理をするイメージ
オープンなレイアウトのため、ニオイや煙も伝わりやすいという特徴がある(画像/PIXTA)

油はね・水はね対策が必要

「油はねや水はねにどのような対策を講じるかは対面式キッチンの課題の一つといえます。ガードを設置したり、コンロの前だけ袖壁をつくったりして、油はね・水はね対策をすると良いでしょう」

フルフラットタイプのキッチンのイメージ
前面に立ち上がりのないフルフラットタイプのキッチンは特に水はねが起こりやすい(画像/PIXTA)

収納不足に陥りやすい

壁に接している面が少ないペニンシュラキッチンは、収納不足に陥りやすいというデメリットがあります。
「キッチンは食器や調理器具など収納したいものが多い場所です。ペニンシュラキッチンの場合、キッチンの背面に棚を設けたり、作業台の下にフロアキャビネットを設ける、または吊り戸棚などを上手く活用して収納計画を立てる必要があります」

フルフラットタイプのキッチンのイメージ
シンプルなレイアウトにこだわるほど収納を設けることが難しくなる(画像/PIXTA)

リビングやダイニングから丸見えになる

壁がなくリビングやダイニングとの隔たりがないことは、開放感を演出できるというメリットである一方、キッチンが丸見えになりやすいというデメリットとしても捉えられます。

「キッチンは生活感が出やすい場所です。ペニンシュラキッチンはリビングやダイニングから見えやすい構造のため、こまめな整理整頓が必要となります」

リビングとつながりのあるペニンシュラキッチン
特にフルフラットのキッチンの場合はリビングから見えやすいため注意が必要(画像/PIXTA)

後悔しない収納や間取りのコツは?レイアウト例を紹介

吊り戸棚を付ける

「吊り戸棚とは、キッチンの壁の上部、または天井に設置する収納のこと。ペニンシュラキッチンに吊り戸棚を付けると収納量を増やすことができて便利です」

ただし、吊り戸棚があるのとないのではキッチンの見た目も変わります。より開放感を出したい、LDKの一体感を演出したいという理由で吊り戸棚を付けないことを選択する人もいます。

ペニンシュラキッチンの吊り戸棚
キッチンの上にある吊り戸棚。空間を有効活用して収納量を増やしたいときにおすすめ(イラスト/高村あゆみ)

背面収納を活用する

ペニンシュラキッチンの背面に収納を設置すると、食器や調理器具、調理家電などを収納できて便利です。建築後に収納棚を買い足して設置することもできますが、建築段階で計画して取り入れたほうがLDKに一体感が生まれ、見た目もおしゃれに仕上がります。

ペニンシュラキッチンの背面収納
背面収納は調理家電の置き場にもなる(画像/PIXTA)

食卓との動線を考える

「キッチンから食卓までの距離が遠いと配膳が大変になるため動線の計画も重要です。キッチンにカウンターを併設して食事ができるようにしたり、ダイニングテーブルをキッチンの近くに置くことができる間取りにしたり、建築段階からよく検討しましょう」

キッチンから食卓へ配膳する人
キッチンから近い距離に食卓があると配膳のときに便利(画像/PIXTA)

家族構成やライフスタイルをもとにレイアウトを考える

「現在、そして将来の家族構成やライフスタイルに合ったキッチンのレイアウトを考えてみましょう。車椅子がスムーズに出入りでき座ったまま作業ができることや、小さなお子さんやペットの侵入を防ぐゲートの付けやすさなど暮らし方や家族構成によって使いやすいキッチンは異なります」

キッチンで作業する車椅子の女性
車椅子に座ったままキッチンで作業をするためには通路幅が広めのレイアウトにする必要がある(画像/PIXTA)

コンセントは多めに設ける

「調理家電が増えることを想定し、コンセントは少し多めに設けることをおすすめします。コンセントは入居後に増やすことが難しいため、注文住宅を計画する段階でしっかりと計画したほうがよいでしょう。また、コンセントの位置を決める際はその家電をどこで使用するかをイメージしてみましょう。調理台の手元や背面収納、カウンターなどにコンセントを設けるケースが多いです」

キッチンに設置した防水カバー付きのコンセント
水はねを考慮して、防水カバー付きのコンセントが便利(画像/PIXTA)

作業しやすい高さに台を設計する

JIS規格でキッチンの高さは80cm・85cm・90cm・95cm(5cm刻み)と決まっています。多くのキッチンメーカーではこの中から選ぶことになりますが、メーカーによって異なることもあるので事前にチェックをしてください。また、オーダーメイドキッチンの場合は、もう少し細かく寸法を指定でき、作業しやすい高さにすることも可能です。

「作業内容によって適切な高さは変わります。例えば、まっすぐに立って作業をするシンクは少し高めに、火にかけた鍋を見たりかがんだりする必要のあるコンロは少し低めにといったようにです。但しシステムキッチンはワークトップが一体となっていることが基本です。もし2列型の配置を採用する場合は、それぞれのワークトップの高さを作業内容に合わせて変えるとより使いやすいキッチンになるでしょう」

ペニンシュラキッチンで洗い物をするシニア女性
造作キッチンであれば、家族の使いやすさを考えてキッチンの高さも細かく決められる(画像/PIXTA)

便利でおしゃれなペニンシュラキッチンにするためのポイント

キッチンの一部に壁を設置する

開放感やリビングやダイニングとの一体感が魅力のペニンシュラキッチンですが、コンロの前に袖壁を設けるという手法もあります。袖壁ありタイプのメリットは、汚れやニオイが広がりづらいことです。

「コンロの前に袖壁を設置すると油はね対策として効果的です。また、袖壁があることで料理のニオイや煙がリビングに流れにくくなります」

コンロの前に袖壁があるペニンシュラキッチン
コンロ前に袖壁を設置したペニンシュラキッチン。油がリビング側にはねないようにガードする効果がある(画像/PIXTA)

また、ワークトップの前面に腰壁(立ち上がり)を付けるのも、油はね、水はね対策として有効です。作業をしている手元や作業台の上がリビングやダイニング側から見えないように隠すこともできます。

腰壁を設けたキッチン
ワークトップの前面に腰壁(立ち上がり)を設けたキッチン。リビング側から手元が見えないように隠すことができる(画像/PIXTA)

透明ボードを設置する

油はね・水はね対策はしたいけど袖壁や立ち上がりはつくりたくないという場合は、透明ボードを設置することで汚れがリビングやダイニング側に広がるのを抑えることができます。建築段階で取り入れる透明ボードもあれば、入居後に設置する市販のタイプもあります。壁とは違い視界を遮らないため、LDKの開放感を保つことができます。

シンクの前に水はね対策のボードを設置したキッチン
透明のボードであれば視界のノイズになりにくい(画像/PIXTA)

ワークトップをフルフラットにする

「よりシンプルでおしゃれなキッチンにしたい人にはワークトップがフルフラットになっているキッチンが人気です。見た目もすっきりし、LDKとの一体感を強めることができます」

注意点はリビングやダイニング側から調理台や手元が丸見えになってしまうため、常にキッチンを整理整頓しておく必要があるということです。デザイン性の高さは抜群ですが、おしゃれな見た目を保てるようにする心掛けも大切です。

フルフラットなペニンシュラキッチン
スタイリッシュでモダンなデザインが魅力のフルフラットなワークトップ(画像/PIXTA)

手元隠しやワークトップの素材にこだわる

「天然石やステンレスをワークトップに使用したり、立ち上がりの一部にタイルを張ったりするなど、こだわりの素材を使用してお気に入りのキッチンに仕上げる方法もあります。ポイント的に腰壁の部分にタイルを張って個性を打ち出すこともできます」

天然石をワークトップに使用したペニンシュラキッチン
ワークトップの素材はキッチンの印象の決め手にもなる(画像/PIXTA)

静音タイプのシンクやレンジフードを採用する

「シンクで洗い物をしている音やレンジフードの音がリビングやダイニングに響いてしまうことを防ぐ方法の一つに、静音タイプのシンクやレンジフードを採用するという選択肢があります。音が響きにくい仕様になっているので、キッチン内の音を気にすることなく作業に集中できます」

静音タイプのシンクとレンジフードを採用したペニンシュラキッチン
静音タイプのシンクやレンジフードにすれば、キッチンの音が響くことを抑えることができる(イラスト/高村あゆみ)

リビングやダイニングとのつながりを意識したおしゃれな照明器具を設置する

「デザイン性の高い照明器具を取り入れることでキッチンがおしゃれな雰囲気になります。また、リビングやダイニングとのつながりを意識したデザインの照明をキッチンに設けることでより空間の一体感が生まれます」

スポットライトを設置したペニンシュラキッチン
個性のある照明器具を使うとキッチンがおしゃれになる(画像/PIXTA)

ペニンシュラキッチンを上手く設置するためのポイント

最後にまとめとして、ペニンシュラキッチンの設置を成功させるためのポイントを伺いました。

「ペニンシュラキッチンはリビングやダイニングとつながりのある開放的なキッチンです。空間のつながりを意識した統一感のあるデザインを取り入れることで、素敵なキッチンに仕上がります。

また、何をどこまで見せるのかをよく考えて設計することもポイントです。リビングから見えやすいことを踏まえ、どのようにレイアウトするのかを計画してみてください。
キッチンというとキッチンメーカーのシステムキッチンをイメージする方が多いかもしれませんが、注文住宅なら海外製のものやオーダーメイドキッチンを取り入れることだって可能です。視野を広く持ち、好みのスタイルのキッチンを探してみてくださいね」

まとめ

ペニンシュラキッチンとは、片面だけ壁に接している半島状のキッチンのこと

リビング・ダイニングとつながる空間になるため、インテリアや照明などのデザインの統一感を意識する

前面がオープンになっているため、油はねや水はね対策について検討する

収納不足になりやすいため、ライフスタイルや好みに応じて収納をレイアウトする

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取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/高村あゆみ
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