母と暮らす二世帯住宅の間取り。後悔しないプランにするためのコツを解説!

公開日 2022年07月25日
母と暮らす二世帯住宅の間取り。後悔しないプランにするためのコツを解説!

単身で暮らす母親と同居するために二世帯住宅を検討し始めたものの、どんな間取りにしたらいいのかわからないという人も多いはず。お互いのライフスタイルに合ったプランにすることが、快適な同居生活を送るために重要なポイントだ。そこで、母親と二世帯住宅で暮らすメリット・デメリット、ライフスタイルに合わせてどのような間取りプランにすべきか、二世帯住宅を建てる際の注意点について、数多くの二世帯住宅を手掛ける旭化成ホームズ 二世帯住宅研究所所長の松本吉彦さん、主任研究員の根本由美さんに伺った。

二世帯住宅とは? 二世帯住宅のメリット・デメリット

二世帯住宅について

親世帯と子世帯で同居するための二世帯住宅。女性の平均寿命が長いことから、父の他界後、単身で暮らす母親と二世帯同居の検討を始めるケースも多い。
二世帯住宅のプランはキッチンや水まわりを全てシェアする完全同居型、玄関は一つでキッチンや水まわりなどの一部を共有する部分共用型、玄関と生活空間を完全に切り分けた完全分離型の3つに分かれ、それぞれのライフスタイルによってプランを選択する。

二世帯住宅の3タイプ、完全同居型、部分共用型、完全分離型のイメージ
二世帯住宅は主に3タイプに分けられる。部分共用型はどこまでをシェアするかによってプランは幅広い(元図提供/旭化成ホームズ 二世帯住宅研究所、イラスト/杉崎アチャ)

二世帯住宅のメリット

二世帯住宅で暮らすことで世代を超えたつながりが生まれ、多世代のコミュニケーションが活発になる。食事や洗濯など家事の分担ができたり、宅配便の受け取りなど在宅が必要なときもお互い協力し合えるのが大きなメリットだ。防災・防犯面においても、万が一の事が起こっても同じ屋根の下で暮らしているので安心だ。
また、二世帯住宅は親世帯の土地を活用し、子世帯の建物ローンで建てるケースも多く、室内空間を共有することで建築費が節約できるという経済面でのメリットも。親世帯が所有する土地を活用する場合は、財産の継承もしやすい。

親世帯にとっては、携帯・家電製品の操作方法を教えてもらうなどデジタル面のサポートや、重いものの作業を助けてもらえるなど、体力面でのサポートをしてもらえることもメリットの一つだ。孫と触れ合うことで会話や運動量が増えるため、五感が刺激されて脳が活性化し、認知症の予防、健康寿命を延ばすことにもつながる。
子世帯にとってのメリットは、夫婦共働きの場合は、子育てに関しても親の協力が得られるのは心強い。生活を分けながらも親の様子や気配がわかったり、何かあればすぐに親世帯に行ける距離感という安心感があり、将来的に介護がしやすい環境であることも。

<二世帯住宅のメリット>
○両世帯

・多世代の交流によって、お互い家事や育児協力ができる
・土地・建物・室内空間のシェアによって建築費の節約ができる
・土地などの財産の継承がしやすい

○親世帯

・デジタル機器などの操作や重いものや高い所の作業を手伝ってもらえる
・孫と触れ合うことで会話や運動量が増え、認知症の予防にもつながる

○子世帯

・子育ての協力をしてもらえる
・将来的に親の介護がしやすい

二世帯同居で親世帯、子世帯がお互い助け合えるイメージ
デジタルツールの使い方やインターネット予約などのサポートもできるので安心だ(画像/PIXTA)

二世帯住宅のデメリット

二世帯住宅は双方のメリットが大きいため不満に感じることは少ないが、親にとっては、孫の世話や日常的な家事協力が体力的に負担に感じることも。子世帯も同様に、親の世話や日常的な家事協力に負担を感じるのがデメリットとして挙げられる。

妻の母との同居の場合は母娘の関係性から意見を言いやすく、できることは自分でやってもらいやすいが、夫の母の場合はなかなか言い出しにくいこともあるため、夫の母との同居の場合のほうがストレスを感じやすい傾向にある。

そのため、二世帯住宅のプランニングは、メリットを活かしてデメリットを減らすよう、双方のライフスタイルに合わせた家づくりをすることが重要だ。

<二世帯住宅のデメリット>
○親世帯(母親)

・孫の世話を負担に感じる
・日常的な家事協力を負担に感じる

○子世帯

・親世代の世話を負担に感じることがある
・日常的な家事協力を負担に感じる

二世帯住宅に住む親世帯・子世帯別の同居生活の意識と同居満足度の説明グラフ
母親も子世帯も二世帯住宅の不満自体は20%程度と少ないが、双方の世話や家事の負担などを負担に感じることも。同居家族だけに頼り過ぎないことも重要だ(出典:旭化成ホームズ 二世帯住宅研究所)

ライフスタイルに合わせた二世帯住宅プランのつくり方

それぞれのプライベート空間を尊重する

ライフスタイルに合わせてどこまでをシェアするか、どこをセパレートしていくかということを考えながら二世帯住宅のプランニングをしていくが、どのようなプランにする場合でも、それぞれのプライベート空間を大切にすることで、居心地のいい暮らしが実現できる。
また、在宅ワーク、子どもが増える、介護サポートなど、ライフスタイルの変化に対応しやすいマルチな空間を設けておくと便利だ。

生活のリズムが合うかどうかで、シェアする空間を決める

同居生活に合わせたプランにするためには、まず夕食の取り方が一つのポイントになる。一緒に取るか別々に取るかでキッチンを共有するかどうかが決まるからだ。
一緒に夕食をつくる、もしくは曜日やメニューで分担する、分担はせず手が空いているほうがつくるなど両世帯が協力するケースや、子世帯が共働きなので母親がつくる、母親が家事を卒業して子世帯がつくるなどどちらかに集約するケースなど、生活リズムを一致させてみんなで顔を合わせて楽しくコミュニケーションしたいという場合は、キッチンは一つにしてLDKをシェアするプランにすると良い。シェアする空間が多くなるため、個室がくつろぎの場としての役割を担う。母親の寝室はゆったりとした広さを確保しよう。

玄関とキッチンをシェアする部分共用型の間取りプラン
1F黄色…共用スペース、オレンジ色…母親スペース 2F青色…子世帯スペース
家族全員で過ごすLDKは広々とした空間にしながら、母親の寝室と子世帯の主寝室にはプライベート時間を楽しめるスペースを確保(間取図提供/旭化成ホームズ(ヘーベルハウス))

一方、お互い生活リズムのズレが多いケースや、自分のペースで家事をしたい、プライバシーを重視する場合はキッチンを2つに分ける。同様の観点で、玄関、浴室、洗濯スペースなどもどこまで分けるかについても検討を。この場合も、お互いのプライベートスペースはしっかり確保しよう。

玄関を共有し、水まわりやリビングなど生活空間はほぼセパレートした部分共用型の間取りプラン
1F黄色…共用スペース、オレンジ色…母親スペース 2F青色…子世帯スペース
1Fには母親が趣味室として使ったり、子ども部屋として使うなどマルチな用途の共用の居室を設けると、ライフスタイルに合わせた使い方ができる。母専用のLDKがあるので、母は自分のスペースで過ごしたり、気軽に友人を呼んでお茶を楽しむことも。玄関もセパレートすれば、完全分離型にも(間取図提供/旭化成ホームズ(ヘーベルハウス))

このように、ライフスタイルによって適した二世帯住宅のプランは異なる。コミュニケーションを重視するか、プライバシーを重視するかによって、共有スペースの範囲を決めていくと、お互い快適に過ごせる間取りプランに。

<キッチンをシェアするケース>

・家族のコミュニケーションを重視したい
・家事量を減らしたい、分担したい
・食費をシェアして節約したい

<キッチンをセパレートするケース>

・双方の生活リズムにズレがある
・自分のペース・やり方で使いたい
・プライバシー重視

【ライフスタイル別 二世帯住宅プラン】
ライフスタイル 二世帯住宅プラン
コミュニケーション重視
家事協力・分担・集約(子世帯or母親)
完全同居型
キッチン1つ、プライベートの分離
コミュニケーションもプライバシーもいいとこ取り
バランスよくシェアする
部分共用型
キッチン2つ(ミニキッチン含む)、玄関1つ
プライバシー重視
家事分離
それぞれの生活リズムを尊重
完全分離型
キッチン2つ、玄関2つ

シェアスペースはゆったりとした広さを確保

キッチンを1つにして、家族のコミュニケーションを楽しみながら食卓を囲みたいという場合は、シェアスペースであるLDKは広々とした空間に。キッチンはアイランドキッチンなど2人以上が一緒にキッチンに立ち調理を分担する場合でも調理しやすいよう、二方向から回り込めるようなプランニングにすると使いやすい。母親と子世帯みんながストックされている食品が一目でわかるようにパントリーを設けるのもオススメだ。また、大きなダイニングテーブルが置けるスペースを確保し、家族全員が食卓を囲めるようにするのはマスト。

通路を広めに確保することで回遊しやすく、オープンで会話が弾むキッチンのイメージ
キッチンを二世帯でシェアする場合は、複数人で作業がしやすいよう回遊できるアイランドキッチンがオススメ(イラスト提供/旭化成ホームズ(ヘーベルハウス))

将来の介護に備えて、バリアフリー設計に

二世帯住宅を建てる時点では母親が健康であったとしても、将来的に介護が必要になった場合のことを考えたプランニングにしておくことも重要なポイント。できるだけ家の中を省スペースで車椅子で移動できるよう、介護用寝室を起点にした生活動線を確保しよう。また、玄関アプローチなどはデイサービスやお出かけ時に介助しやすいようにスロープ対応にするなど、外部空間の設計もバリアフリーにしよう。通常メインのアプローチにスロープを設けると、多くの場合駐車場1台分のスペースを要することから、緩やかな段差のステップにすると、コンパクトなアプローチになる。

車いすで移動しやすいように、踏面を広くし、緩やかな段差のステップにした玄関アプローチの説明図
車椅子での移動がしやすい玄関アプローチに。踏面が広く緩やかな段差のステップにすると、スロープよりも距離が短縮できてコンパクトなアプローチとなる。車椅子はもちろんベビーカーの通行もしやすい(イラスト/旭化成ホームズ 二世帯住宅研究所、間取図/旭化成ホームズ(ヘーベルハウス))

二世帯住宅を建てるときの注意点

お互いにとってストレスのないライフスタイルを尊重し合う

二世帯住宅を建てるにあたっては、頼り過ぎず、適度なシェアと交流を大切にしながら、お互いにとってストレスのないライフスタイルを実現できる家にすることが最も重要だ。

個人個人が集まって同居するという意識をもち、お互いの気持ちを尊重し合いながらライフスタイルをしっかり話し合い、それぞれの同居のメリットを活かせるようなプランニングをしよう。

特に、母親との同居の場合、子世帯のローン負担を減らすために本音を言わず遠慮がちになるため、膝を突き合わせて母親の希望する暮らしに耳を傾けるようにしよう。建築会社との打ち合わせの際は、母親と子世帯で別々に打ち合わせをする機会を設けるなど、それぞれの意見をアウトプットしやすくなるよう工夫をしよう。

母親の健康寿命を延ばし、不健康寿命に備える工夫も

二世帯住宅をプランニングするにあたり、トイレや廊下なども車椅子が通れる広さにするなど将来の介護に備えたバリアフリー設計にするだけでなく、母親の健康寿命を延ばし、介護期の前段階であるフレイル期に、健康に戻れるような配慮も大切だ。

家の中で活動量を維持できる設計にすることや、食事の交流などをきっかけに、食体験を積極的に楽しめるようなプランニングを心掛けよう。

また、親世帯が2人の場合と比べて母親ひとりの生活空間は小さくできるスペースと小さくしてはいけないスペースがあるので注意が必要。キッチンをそれぞれの世帯に設ける場合は、キッチンスペース自体は小さくすることが可能だが、電化製品の大きさは変わらないためしっかりと家電置き場のスペースの確保を。

親世帯と子世帯で一緒に調理をしているイメージ
孫と遊んだり一緒に調理をするなど交流の場をつくれるような間取りにすることで、母親の健康寿命を延ばすことができる(画像/PIXTA)

平屋の二世帯住宅は、世帯人数が少ない場合に適している

二世帯住宅は2階建てもしくは3階建てでそれぞれの階層ごとに世帯を分けることが多いが、平屋で二世帯住宅を建てたいという場合には、リビングにアクセスしやすい居室とそうでない居室ができるなどプライベート空間との動線が悪くなったり、開口部が減り通風・採光面が悪くなるため、廊下を確保したり中庭を挟んでそれぞれの空間を分けるなどのプランニングの工夫や、土地の広さが必要になる。

平屋の二世帯住宅は、夫婦+母親の3人など人数が少なく間数が少ない場合にオススメだ。

母と暮らす二世帯住宅実例

お互いの気配を感じながら、それぞれが快適に過ごせる家
【家族構成】母親+夫婦+子ども1人

共働きの子育てサポートと母親との同居を考えて二世帯住宅に。1階は母親のLDKと個室、2階は子世帯のLDKと主寝室、3階は子ども部屋と客室など、フロアで役割を分離している。家族が集う2階は、緩やかにつながりながら変化のあるプランにすることで、お互いの気配を感じながらそれぞれの居場所で快適に過ごせる。

玄関は共用で、水まわりをセパレートにした部分共用型のプラン
間取り図
2階のLDKはベランダにもつながり、開放的なアウトドアリビングで、充実した家族時間を過ごせる(画像提供/旭化成ホームズ(ヘーベルハウス))
まとめ

生活のリズムが合うかどうかやプライバシーをどの程度重視するかを大切にしながら、シェアする空間を決める

どのようなプランにする場合でも、それぞれのプライベート空間は必ず設けることで、居心地のいい暮らしが実現できる

将来的に母親の介護が必要になった場合のことを考えてバリアフリーにしておくことも重要なポイント

シェアスペースはゆったりとした広さを確保しよう。キッチンをシェアする場合は、アイランドキッチンなど複数人で調理しやすいようプランニングすると動線が重なりにくく体がぶつからない

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取材・文/金井さとこ
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