【実例付き】壁付けキッチンのレイアウトはどうする?後悔しないためのコツを紹介

最終更新日 2025年05月08日
【実例付き】壁付けキッチンのレイアウトはどうする?後悔しないためのコツを紹介

壁付けキッチンは日本で昔から採用されてきたキッチンのスタイルです。近年は対面キッチンを取り入れる家が多いですが、壁付けキッチン特有のメリットもたくさんあります。住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所の井上恵子さんにお話を伺い、壁付けキッチンの特徴やメリット・デメリット、キッチンのレイアウトや間取りのコツなどを解説します。

壁付けキッチンとは?

壁付けキッチンの特徴

「壁付けキッチンとは、キッチンの正面が壁を向いている配置のキッチンのことで『ウォール型キッチン』とも呼ばれています。シンクやコンロなどを使用する際は壁側を向いて作業するようになります」(井上さん、以下同)

壁付けキッチンをリビング・ダイニングの一角に設ける間取りが多く、日本の住まいでも昔から採用されているキッチンのスタイルになります。空間の面積を有効活用できることから、近年は人気も高まっています。

壁付けキッチン
日本家屋やアパートではポピュラーな壁付けキッチン(画像/PIXTA)

対面キッチンとの違い

壁付けキッチンが壁面に向いてぴったりと接しているのに対し、対面キッチンはリビングやダイニングに向いて配置されています。対面キッチンはリビングやダイニングで過ごす家族のほうに顔を向けて作業をするため、会話をしたり様子を見守ったりすることが可能です。また、対面キッチンは壁付けキッチンと比較してリビングやダイニングとの一体感を演出しやすいという特徴があります。

対面キッチン
対面キッチンは作業をしているときも家族と会話をしやすい(画像/PIXTA)

代表的なレイアウト

「壁付けキッチンの代表的なレイアウトは、1列型(I型)、2列型(II型)、L字型(L型)、U字型(U型)の4種類です。シンク、コンロ、作業スペースが一直線に並んでいるのが1列型で、2列に分かれたキッチンがどちらも壁に接しているのが2列型です。キッチンの形がアルファベットのL字にレイアウトされているのがL字型、U字にレイアウトされているのがU字型です。U字型はコの字型と呼ばれる場合もあります」

また、リビングやダイニングと空間が繋がっているオープンタイプと、キッチンが個室空間になっている独立タイプがあります。

壁付けキッチンの4種類のレイアウト
代表的な4つのレイアウト。それぞれ異なる特性があるため、使いやすい形をよく検討することが大切(イラスト/石山好宏)

平均価格

「壁付けキッチンの価格は、メーカーや商品の仕様によって幅があります。
家具メーカーのリーズナブルなものでは50万円代~、大手住宅設備系のシステムキッチン本体で200万円~が相場になります。

壁付けキッチンに限らずキッチンの価格は、仕上げ材やオーブンや食洗機など設備面のグレード、規格品かオーダーメイドかによっても変わります。注文住宅であれば選択の幅も広がるので、予算や希望に合わせて検討してみてください」

キッチンの営業をする人
商品ごとに金額幅があるため、必要な機能を整理しながら比較検討するのがポイント(画像/PIXTA)

壁付けキッチンのメリットは?

面積を有効に使える

「壁付けキッチンは壁に接している特性により、例えばリビング・ダイニング・キッチンが同一空間で、その一角にキッチンが配置された間取りの場合、キッチンの作業スペースとリビング・ダイニングスペースを兼用できるため、面積を節約しやすいです。キッチン本体と冷蔵庫、人が立つ最小限のスペースを考えた場合、最低2畳あれば設置可能です。キッチンの面積を節約した分、リビングやダイニングを広めにしたい方にも壁付けキッチンはおすすめです」

壁付けキッチンと対面キッチンに必要な面積の比較図
壁付けキッチンはコンパクトなスペースでも設置可能(イラスト/石山好宏)

作業に集中しやすい

「対面キッチンとは違い、目の前に壁があるので1人で作業に集中したい人には壁付けキッチンが向いているでしょう」

対面キッチンは視界に家族の姿が入ってしまったり、ついついリビングのテレビが気になってしまい作業に集中できない可能性も。壁付けキッチンは視線が壁を向いているため、料理をパパっと短時間で済ませたい人、1人で黙々と料理をしたい人には合っているでしょう。

壁付けキッチンで作業する女性
視線が壁を向いているため作業に集中することができる(画像/PIXTA)

においや音、煙が部屋に広がるのを防げる

「キッチンの正面が壁を向いており、換気扇も壁付けになります。料理のにおいや音、煙については、対面式よりも壁付け式の方がリビングやダイニングなどの生活スペースに広がりにくいでしょう。また、リビングやダイニングに面していないため、水や油がはねることがなく、対面式と比べて掃除も楽です」

油や水が生活空間にはねない壁付けキッチン
対面式よりもにおいや煙がリビング・ダイニングに向かって広がりにくく、手入れも楽な壁付けキッチン(イラスト/石山好宏)

換気扇や窓を配置しやすい

「対面キッチンの場合は背面の壁側に収納を置くレイアウトが多いため、壁に窓を設けにくいという傾向があります。一方、壁付けキッチンは目の前の壁に窓や換気扇を設置できるため、明るく風通しがよいキッチンになり、換気を効率よくできるメリットがあります」

換気扇と小窓を設けた壁付けキッチンのイメージ
換気扇が壁に接していることで、においや煙を外に排出しやすい。窓を設けると換気、採光に便利(イラスト/石山好宏)

壁付けキッチンのデメリットは?

コミュニケーションが取りにくいレイアウト

「視線が壁を向いているため作業に集中できることは壁付けキッチンのメリットです。しかし、そういった特性により調理中は家族の様子が分かりにくかったり、会話がしにくいといったデメリットも。家族とコミュニケーションを取りたいときはいったん手を止めて振り向かないといけないので、それがちょっと大変、と思う人にはおすすめできない配置かもしれません」

壁付けキッチンで寂しそうに作業をしている人
壁付けキッチンで1人で作業をしているときに、家族と距離感を感じてしまう場合も(イラスト/石山好宏)

小さい子どもやペットに目が行き届かず危険

背を向けて作業をするため、小さい子どもやペットに目が行き届かない可能性があります。また、ダイニングとリビングの一角に壁付けキッチンをつくる場合は、ベビーゲートの設置が難しく、子どもがキッチンの中に入りやすくなります。

壁付けキッチン内に入る子どもとペット
作業しながら子どもやペットの様子を見守りたい場合は対面キッチンのほうが適している(イラスト/石山好宏)

壁付けキッチンのレイアウト例とポイントを紹介

ここからは、壁付けキッチンにおすすめのレイアウト例と、各サイズの目安、家具・家電の置き方のポイントを紹介します。

アイランドキッチン風の1列型(I型)レイアウト

食器棚の配置が難しい1列型(I型)。カウンターを置くことでアイランドキッチン風のレイアウトになります。キャスター付きのものにすれば、使用しないときは移動して空間を広く使うこともできます。

1列型(I型)壁付けキッチン
家具のレイアウトによって自由度高く空間を使うことができる(イラスト/石山好宏)

ベビーゲートの設置に便利な2列型レイアウト

ダイニングやリビングと繋がっていない、2列型(II型)のレイアウト例です。出入口にベビーゲートを設けられるので、小さな子どもやペットがいる家庭でも安心です。通路幅を広くしすぎると作業動線が長くなり不便なので注意しましょう。1人で作業をする場合の通路幅の目安は90cm以上です。

2列型(II型)壁付けキッチン
シンクとコンロ間に距離がありすぎると、切った具材を移動するときに床に水が滴るなど不便な面も(イラスト/石山好宏)

便利な作業動線が魅力のL字型

L字型レイアウトの魅力は、L字の両翼にシンクとコンロを分けるとコンパクトな作業動線を確保しやすくなること。食器棚の置き方は3パターンほどあり、キッチンに目隠しをつくりたいか、作業空間を広く確保したいかなど優先順位を考慮して決めましょう。

L字型壁付けキッチン
2人以上でも作業しやすいのがL字型の魅力(イラスト/石山好宏)

広々とした作業スペースが確保できるU字型レイアウト

作業スペースおよび収納スペースをたっぷりと確保できるのが魅力のU字型(コの字型)レイアウト。L字型のレイアウトと同様、コンパクトな作業動線を確保しやすいのが魅力です。食器棚を置く場合は壁に沿わせて置くか、目隠しのように置くかになります。収納量が豊富なため、食器棚を置かないという選択肢もあります。

U字型壁付けキッチン
料理が好きな人に人気のU字型。広いスペースで作業できる(イラスト/石山好宏)

コンパクトな1列型壁付けキッチンのサイズ例

「1人で作業することを想定した、コンパクトな1列型壁付けキッチンのサイズの目安をご紹介します。シンクの間口(横幅)は70cm~80cm程度が一般的ですが、家族の人数が多い場合はゆとりを持って作業できる90cmのワイドサイズなどもおすすめです。コンロの間口は60cmや75cmが標準になります。包丁を使ったり料理の盛り付けなどをする作業スペースの間口は、最低60cmほどあれば4人分のお皿を並べることができます。1人で作業する場合、通路幅は90cm以上が適切です。また、冷蔵庫のサイズには要注意です。ドアを開けた際や扉を引き出した際に通路にスペースが必要になることを考慮し、通路幅を計画しましょう。食器棚の奥行きは40~45cmが一般的です」

なお、こちらのサイズの目安は3.8畳の個室タイプのキッチンを想定していますが、リビング・ダイニングと連続したオープン型の壁付けキッチンにも応用できます。

1列型壁付けキッチンのサイズ例
家族構成や住まいの広さに応じて適切なサイズは異なる(イラスト/石山好宏)

後悔しない壁付けキッチンにするためのアイデア

窓を設ける

「キッチンの正面に窓を設けられるのは壁付けキッチンのよいところ。小さくても窓があることで、空間が明るくなり風通しのよいキッチンになります」

窓のあるキッチンのイメージ
窓があると、換気がしやすく煙やにおいがこもりにくい(画像/PIXTA)

吊り戸棚やキッチン下の収納を有効活用する

「食器棚の配置が難しい壁付けキッチンですが、工夫次第で収納量をアップできます。収納不足は吊り戸棚やキッチン下のスペースを上手く活用して解決しましょう」

キッチンの吊り戸棚のイメージ
吊り戸棚やキッチン下のスペースを上手に活用すれば収納不足を回避可能(画像/PIXTA)

壁をおしゃれにレイアウトする

「リビングやダイニングと同じ空間にある場合は、キッチンが丸見えになり生活感が出てしまいます。生活感を抑えるためには、たとえば壁に好みのタイルを張ってデザイン性を高めたり、キッチン小物を壁に吊るして“見せる収納”のようにしてみるとよいでしょう。窓辺に植物を置くのもおすすめです」

生活感をなるべく抑え、キッチンをゴチャゴチャした印象にしないためには収納が充実していることもポイントです。調味料や食材、食器などが置きっ放しになると、せっかく空間のデザイン性を高めても雑然とした印象になってしまいます。キッチン用品や食材などを十分にしまうことができる収納を用意しましょう。

壁にキッチンツールを吊るしたキッチン
DIYでキッチンの壁をおしゃれにアレンジすることも可能(画像/PIXTA)

最後に、使いやすい壁付けキッチンにするためのコツを井上さんに伺いました。

「使いやすいキッチンのスタイルは人それぞれ異なります。サイズやレイアウト、間取りなど、日常的に誰がどのように使うのかをイメージした上で設計を決めていくことで使いやすいキッチンが実現します。キッチンを自分好みに自由に設計できるのは注文住宅の強みです。できれば設計に入る前に『こんなキッチンをつくりたい』という理想を建築会社の担当者に伝えてみてくださいね」

レイアウトの工夫次第で使いやすい壁付けキッチンに

壁付けキッチンとは正面が壁に接しているキッチンのこと

作業に集中したい人やコンパクトな住まいに適している

家具や家電の配置が使いやすさの決め手になる

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取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/石山好宏
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