インナーテラスという言葉を聞いたことがあるだろうか? インナーテラスは一般的なテラスとは異なり、室内に近い環境で屋外空間を身近に感じられるのが魅力。取り入れる人が増えている人気の間取りプランだ。そこで、インナーテラスのメリット・デメリットとプランニングのポイントについて建築家・井上玄さんが解説。おしゃれで快適なプランアイデアが詰まった事例も必見だ。
インナーテラスとは、家の中や半屋外にあるテラスのこと。エクステリア空間であるテラスとは異なり、室内に近い環境で、日差しや雨をしのぎながら、外空間の心地よさを楽しむことができる。
「インナーテラスは、『第二のリビングダイニング』と言ってもいいくらい、室内空間と並ぶ大切な場所になっています。だからこそ、長い時間過ごせる居心地の良い空間であることが大事。コロナ禍でなかなか外出できなくなってからは、インナーテラスの良さを実感したというお施主様の声をいただくことも増えました。家の中に気軽に外部空間を楽しめるところをつくるという意味で、インナーテラスは有効です」(GEN INOUEの井上さん、以下同)
インナーテラスは、家の中で気軽に外部空間を楽しむことができるのがメリットの一つ。屋根があることで雨を凌げ、直射日光を遮りながら風が抜けるので、快適に過ごすことができる。リビングダイニングと接続させてテーブルや椅子を出し、一体化して利用することも。
また、くつろぐための空間としてだけでなく、汚れを気にせず使えるので、日曜大工やアウトドア用品のメンテナンスなど趣味の作業スペースにも適している。
「インナーテラスを玄関先に設けることで、下足のまま気軽に入れる応接室として使うこともできます。趣味の道具をメンテナンスすることもあれば、応接室として使うこともある。インナーテラスは配置や仕上げを工夫することで、フレキシブルな使い方が可能で、地域とのつながりを生むきっかけになるのではないでしょうか」
・雨や直射日光を遮り、風が抜けるので快適に過ごせる
・室内外の境界を曖昧につくることで、広々とした空間に
・趣味の作業スペースやBBQなど、汚れを気にせず使える
・応接間的な使い方もでき、地域とのつながりを大切にできる
一方、インナーテラスは住宅の本体工事にあたり、テラスやデッキなど外構工事のように本体工事と切り離して行うことが難しいため、費用が高くなるケースが多い。ただ、室内空間ほどではなく、工事費の目安として室内の坪単価の半分くらいが目安。また、バルコニーと異なり、プランによっては建築面積に含まれる場合もある。
・テラスやデッキなどの外構工事に比べて費用が高くなる
・プランによっては建築面積に含まれる場合もある
建築面積や延べ床面積についてもっと詳しく
建築面積とは?バルコニーやひさしは含まれる?延べ面積・延床面積との違いは?
延床面積とは ―含まれない部分はどこ? 部屋を広くできる?―
「暮らし方によってどんなインナーテラスが必要かが変わってきます。どういう使い方をしたいのか、家族のライフスタイルや要望を確認せずに、なんとなくインナーテラスをつくっても結局使わなくなってしまうことも。
また、大きなインナーテラスを1カ所につくらず、使い方の異なるインナーテラスを点在させる方法もあります」
LDKと玄関の他にも、寝室や水まわりからつなげるパターンなど、ライフスタイルに合わせてインナーテラスをつくれば、快適な暮らしを実現することができる。
開放的な空間にしたいと思っても、インナーテラスが道路や隣家に面している場合は、周りからの視線を遮ってしっかりとプライバシーを確保する工夫をしよう。
「目隠しになる壁を設けるのも一つの手段ですが、建築でつくり込みすぎてしまうと閉塞的な空間になってしまうので、植栽など緑も上手に取り入れると良いでしょう」
日常的にインナーテラスを使うためには、LDKなどパブリックスペースと接続することでアクセスしやすい動線に。インナーテラスで食事を楽しみたいという場合は、なるべくダイニングと接続しているのが◎。キッチンからの動線もスムーズになる。
「テーブルや椅子を置いてくつろぐためには、インナーテラスの奥行きは最低2275mm以上、できれば2730mmあるといいですね」
インナーテラスは室内と大きな窓でつなげ、室内から見たときに外まで一体的に感じられるような工夫をすると、視覚的に広がりが生まれる。
「視覚的に連続する工夫として、床は室内外をフラットにつなぎ、建具など同じ素材や色に統一するのがポイント。壁や天井も素材を合わせると室内外の境目が曖昧になり、空間に広がりが生まれて一体感が演出できます」
ここでは、アイデアが詰まったインナーテラスのプランをご紹介。ライフスタイルに合わせた空間づくりのポイントを押さえよう。
隣地側(写真右)に耐力壁と防火上有効な塀の機能を兼ね備えた“解放壁”を設けてプライバシーを確保し、内部空間との間に計画されたインナーテラスはインテリアの一部に。大開口サッシを開閉することによって内部と外部が反転し、多彩な空間の楽しみ方を実現。
平屋の仕事場とスキップフロアの居住空間を離して配置し、大屋根で繋いだインナーテラス。パブリックスペースからアクセスしやすい。ダイニングと一体に使うアウターリビングであるのと同時に、適度にプライバシーを確保しながらも住まい手が街とゆるやかな繋がりを生み出している。
周囲を隣家に囲まれた「旗竿敷地」だが、家を3棟に分けて中央にインナーテラスを配置し、プライバシーを確保しながら光と風を取り入れた。LDKと連続させることで空間の広がりを生み出している。
敷地いっぱいにのばしたS字型プランの2つの凹部分に庭を配置し、緑豊かな借景を楽しみながら内部空間に光を取り込むことができるインナーテラス。ガラス戸の開閉によって内部と外部のつながりを自由自在に操ることが可能に。
玄関から始まる通り土間は2階のLDKと一体的に使うガラス屋根のテラスに連続している。風が抜けて光あふれるインナーテラスは、自転車置き場、ペレットストーブスペース、ランドリースペース、テラスと多用途に、かつ各部屋と関係しながら配置されている。
インナーテラスとは、家のなかや半屋外にあるテラスのこと。日差しや雨をしのぎながら風を取り込み、外空間の心地よさを楽しむことができる
インナーテラスは、日曜大工やアウトドア用品のメンテナンスなど趣味の作業スペースにも適している。外部空間と変わらず気兼ねなく使えるため、BBQを楽しむことも
インナーテラスは本体工事にあたるため、テラスやデッキなどの外構工事に比べて費用が高くなることが多い