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「平屋」と聞くと、昔ながらの日本の家というイメージを持つ人もいるかもしれません。「1階部分しかない平屋だと、具体的にどんな間取りにすればいいかわからない」と悩んでいる人も多いようです。
今回は、ダイワハウスの清水智代(しみず・ちよ)さんと、住友林業の中野邦彦(なかの・くにひこ)さん、石河麻美(いしかわ・あさみ)さんに平屋住宅の特徴やおしゃれにするポイント、坪数別のオススメの間取り実例についてお話をうかがいました。
平屋とは「1階建ての家」のことで、すべての空間がワンフロアに収まり、上下移動の必要がないのが特徴。2階建ての家と比べると柔軟なつくりにすることが可能で、コの字型やロの字型にして庭をつくるケースも多いようです。
それでは、平屋に人気が集まる理由にはどのような背景があるのでしょうか。また、どんな人に人気があるのでしょうか。
「マンションと戸建てのメリットを併せ持ち、階段がない点をはじめ、住む人のライフステージが変わっても無理なく暮らし続けることができるため、一生住みたい家として平屋を選ぶ20代~30代の若い層が増えています。
2階がないため、上方向の空間を活用して開放的な空間を演出することもできますし、自然光を天井から取り入れることも可能。1階部分しかないので間取りも制限されてしまうのでは? と思うかもしれませんが、階段のスペースなどがない分、無駄のない間取りになる利点もあります。平屋だからこそかなうことが意外と多いのです」(清水さん)
では、平屋にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
マンションと同様、すべての部屋がワンフロアに集約されているのが平屋の最大の特長。そのため上階への移動の必要がなく、小さなお子さんや高齢者にも優しいバリアフリーな設計となっています。
上下移動の必要がない平屋では、効率良く負担が少ない生活動線をつくることができます。買い物の荷物を上階に運ぶ必要も、洗濯を干すために上階のベランダへ行く必要もありません。
同じフロアで暮らしているため、自然と家族同士のコミュニケーションの機会が増えます。声をかければすぐに気づける距離感は、家族全員の安心感にもつながるはずです。
上階がないため部屋の天井を屋根の形状に合わせて高くつくることができ、家全体に開放感を持たせることができます。縦空間の広がりを利用してロフトを設置し、大きな照明器具を取りつけることも可能です。
2階がない分、設計の自由度が高く、家の形をコの字型やロの字型にして庭を囲むように生活することもできます。また、リビングから地続きのウッドデッキスペースを設けるなど、屋外と屋内につながりを持たせた間取りも人気です。
犬や猫などのペットを飼っている方にもワンフロアのメリットは大きく、段差の少ない平屋はペットにとっても暮らしやすい環境です。庭へとつながる小窓を設置し、ペットが自由に行き来できるようにしている家もあります。
家の2階部分を子ども部屋にしていたけれど、子どもが巣立った後は物置状態に……というのは、よく聞く話ですが、すべての部屋がワンフロアに集まっている平屋は、将来、足腰に不安が出てきても、上下階の移動がないので、空き部屋を有効的かつ安全に活用することができます。
1階部分しかない平屋は、2階建てや3階建てに比べて高所の修繕作業がないため、修繕費用を安く抑えることができます。修繕の度合いや使う材料、広さなどによって差はあるものの、30年という長期のスパンで見ると数十万円のコストカットを見込める場合もあります。
地震や台風によるダメージは高くなればなるほど揺れやすく、平屋は災害による影響を受けにくいといわれています。もともと自然災害が多発する日本に適した家のつくりとして古くからあったもの、といえるでしょう。
平屋の特長の1つである大きな屋根を利用して、太陽光発電システムを搭載する人も増えています。省エネにもなるし、つくった電気を売って収入も得ることも可能です。高さがないため、設置やメンテナンスがしやすいことも利点です。
一方、平屋のデメリットとはどのようなものかを見ていきましょう。2階建ての住宅に比べてマイナスとなる点はあるのでしょうか。
住宅を建てる際には、用途地域によって敷地に対する建ぺい率や容積率が定められており、その範囲内の大きさでしか建物を建てることができません。平屋は2階がない分、ほしい広さを確保するには十分な敷地が必要になります。
2階建ての一軒家と比べると基礎部分や屋根の面積が広い平屋は、坪あたりの工事費や材料費、いわゆる坪単価が高くなる傾向にあります。しかし、平屋では階段室や廊下のスペースが必要なく、延べ床面積を抑えることができるので、建築工事費で比較すると2階建てよりも安くなるケースが多くあります。
中央に配置されている部屋に日光を取り入れるのが難しく、光の取り入れ方は平屋の課題でもあります。また、周辺が2階建ての住宅に囲まれているエリアだと、1階建ての平屋は、どうしても採光を確保するのが難しくなります。
設計の自由度が高い平屋ならではの利点を活かして、おしゃれな住まいにするための秘訣についてもうかがいました。
縦の空間に限りのある平屋だからこそ、ウッドデッキを設けて横の空間を拡張。リビングから地続きのウッドデッキをつくれば、家族団欒のスペースに。天気の良い休日はアウトドアを楽しんだり、ペットと一緒に日光浴をしたり、使い方はさまざまです。
ウッドデッキは、室内の床と同じ高さにするのがオススメ。境界線が曖昧になることでウッドデッキと部屋が一続きのように感じられ、視覚的に広く見えます。
2階建てのように屋根を複数枚重ねるのではなく、1枚の大きな屋根がかぶさるのが平屋の特徴。シンプルな外観もいいですが、よりスタイリッシュに見せたいなら屋根や外壁に一工夫を。一方向に流れる片流れ屋根にしてみたり、外壁の一部に木材を使用してみたり、外観にモダンな要素を取り入れることでおしゃれな平屋に仕上げられます。
先ほどご紹介したように、採光の難しさは平屋の課題。こうしたデメリットは、家の中央に中庭を設けたり、高い天井に天窓をつくったりして解消しましょう。家全体に光が行き届き、明るい雰囲気になるとそれだけでおしゃれ度がアップします。風も取り込みやすくなるため、オールシーズン風通しの良い家をつくることができます。
2階がない分、天井の設計に自由が利くのも平屋の特徴です。勾配天井を採用して上の空間に広がりを持たせると、コンパクトな平屋でも圧迫感を覚えません。さらに勾配天井の上部の高い位置に窓を設置すれば、より開放的な空間になるでしょう。
設計に自由が利く平屋だからこそ、間取りをどのようにするかの検討は難易度が上がります。それでは、平屋を建てる際には、どのような間取りにすれば良いのでしょうか? 間取りを検討する際に参考になりそうなプランをいくつか紹介してもらいました。
■27.4坪(90.6m2)1LDK/参考価格:1991万円(72.67万円/坪、税別)
※プランに記載の参考価格は、本体工事価格のみの価格で、設計料、諸手続き料、付帯工事料は含みません。また、土地の状態や立地条件に応じて別途工事が必要になる場合があります。
1LDKの間取りですが、広々としたリビングとベッドルームも完備。木のぬくもりを感じるウッドスペースを設けることで視覚的な広さを演出しています。
「勾配天井と広いウッドデッキスペースを取り入れたことで開放感のある住まいになっています。構造の強さを活かし、開口部分が大きく仕上がっているので庭の景色も眺めやすくなっています」(清水さん)
■35.86坪(118.56m2)2LDK
寝室を中央に置くことで、外部からの視線を遮り、家族のプライバシーを確保した2LDK間取り。回遊動線の中心に寝室があることで、余裕を持った空間の中で生活することができます。
「庭を眺めることができるリビングと、引き戸を開けると寝室と一体になる読書コーナーがポイントです」(清水さん)
■30.8坪(101.84m2)2LDK +ロフト
リビング・寝室・和室のシンプルな2LDK間取りですが、ロフトを設けることで高い収納性を実現。天井までの空間を高く感じられ、庭との一体感を得られるリビングもポイントです。
「小屋裏空間を利用した大容量のメガロフトがあり、収納には困りません。ロースタイル空間が庭と寝室をつなぎ、家の中にいながら季節の移り変わりも楽しむことができます」(清水さん)
■27.05坪(89.43m2)3LDK
メインベッドルームに、2つのサブ寝室を設けた3LDK。リビングと寝室、どの部屋からでもアクセスしやすい位置に納戸を配置することで家事動線の整った間取りになっています。
「延べ床面積は27坪ですが、4人家族でもゆとりを持って暮らすことができる3LDKのスタンダードな長方形の間取りです。ウォークインクロゼットや納戸があり収納にも余裕があります」(石河さん)
■36.75坪(121.52m2)3LDK+N+フリースペース
和室と2つの洋室、フリースペースを設けた間取り。各部屋のプライバシーを確保しながらも、家族がリビングに集えるような動線になっています。
「薪ストーブをLDKの中心に置き、家族団欒の場所をつくりました。また、水まわりとクロゼットを1カ所に集めることで家事がしやすい動線になっています」(石河さん)
■32.81坪(108.48m2)4LDK
和室と3つの洋室を設けた、4LDK間取り。約2帖の納戸は、リビングからも玄関からもアクセスしやすい位置に配置されています。
「和室を家の中心に置き、廊下を極力減らしました。回遊動線を取り入れたことで家事がしやすい間取りになっています」(石河さん)
■43.71坪(144.5m2)4LDK
家の中心に中庭をつくることで、リビング・和室・洋室・寝室のどこからでも自然光を感じられる間取りに。寝室や洋室を玄関から遠い位置に置くことで、プライバシー性も確保されています。
「40坪以上の広々としたコートハウスです。中庭が中心にあり、家中どこにいても肌で自然を感じることができるつくりになっています。玄関のドアを開くと窓から中庭が見えるなど、随所に工夫を凝らしています」(中野さん)
住む人のライフスタイルに合わせて柔軟に間取りを決めることができるのも平屋の魅力です。メリットとデメリットの両方をよく考え、長く暮らし続けることのできる素敵な家を考えてみませんか。
最後に、平屋の間取りを考えるうえでの4つのポイントをご紹介します。
平屋の家をつくるとき、部屋数と間取りは非常に悩むポイント。必要な部屋数や間取りは家族によってさまざまですが、今回は国土交通省の決める「誘導居住面積水準(豊かな住生活の実現、多様なライフスタイルに対応するために必要と考えられる住宅の面積に関する水準)」をもとに考えてみましょう。
<誘導居住面積水準>
一般型誘導居住面積水準
都市居住型誘導居住面積水準
※3歳未満の者は0.25人、3歳以上6歳未満の者は0.5人、6歳以上10歳未満の者は0.75人として算定
例えば、夫婦+2人の子ども(6歳、3歳)がいる家庭の場合は、快適に過ごせる居住面積は106.25m2、もしくは80m2となります。
ただし、「面積が広いから3LDKに」「狭いから1LDKでないと」なんて決まりはありません。この水準を参考に我が家に望ましい面積を出したうえで、家族構成に合わせて部屋数や間取りを検討すると、ライフスタイルにマッチした家になるでしょう。
快適な住環境を整えるためには、家事動線を意識した家づくりが大切。ライフスタイルに合わせて動線を設計することで、無駄な動きがなくなり生活がしやすくなります。家事動線の中でもとくに意識したいのが、以下の3つです。
ワンフロア設計で一体感のある平屋だからこそ、プライベートスペースを確保することも大切。周辺道路や近隣の家からの視線を遮る工夫のほか、生活リズムの異なる家族にも配慮できるような工夫が求められます。外部や訪問者からの視線が気になる場合には、玄関から部屋への経路を2つ確保する、奥の部屋への目隠しになる中庭を採用するなどが有効です。
すべての出入り口や窓が1階にある平屋は、2階建て以上の家よりも防犯対策を意識して間取りを考える必要があります。例えば、家族構成を知る要素になる「洗濯物を干す場所」。洗濯物を見られないようにランドリールームや中庭を設けると、家族構成を知られる心配も少なくなるでしょう。
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