今や定番となったカウンターキッチン。LDKの雰囲気を大きく左右する場所なので、おしゃれな空間にしたいものですよね。
カウンターキッチンをおしゃれにつくるポイントをブルースタジオの石井さんにお聞きしました。
キッチンとダイニングの間にカウンターがある、オープンな対面タイプのキッチンのことをカウンターキッチンと呼び、今ではキッチンの定番となっています。リビングダイニングの様子を見ながら料理ができ、家族のコミュニケーションをとりやすいというメリットがあるカウンターキッチンですが、昔の日本の住宅では、キッチンはリビングダイニングとは離れた場所にあるのが一般的でした。
「台所やお勝手というものは、家の北東の角など、バックヤードのような場所にあるものでした。しかし、団地の登場などで日本の住宅が近代的な間取りになるにつれ、家の中におけるキッチンの位置づけが変わっていきました。キッチンは閉じこもって作業する場所でも、人に見せられない場所でもなくなり、最近では当たり前のようにキッチンは開放的でオープンなものがいいという要望を持つ方が多いですね」(ブルースタジオ 石井さん、以下同)
カウンターキッチンには、オープンなタイプのもの以外にも、つり戸棚や壁をカウンター側に設けたセミオープンタイプのものがあるほか、形状もさまざまです。定番の形のI型でも、側面のどちらかが壁についたペニンシュラ型と、どこも壁に接しないアイランド型もあります。
「リノベーションや注文住宅の場合、アイランド型を希望する人が多いですが、シンクと火元の場所を分けてレイアウトした二型(セパレート型)なども人気があります」
カウンターキッチンと一口に言っても、形状などさまざまです。自分に合った使い勝手のいいおしゃれなカウンターキッチンをつくるためには、どのようなポイントを押さえておけばいいのでしょうか。
キッチンをつくる際、何よりも最初にするべきことは、料理をどういう環境でしたいのかを考えることだと石井さんは話します。
「オープンな環境で料理をつくりたい人もいれば、1人でこもって料理をしたいという人もいます。休日には友人を招いて料理をしたい、平日は子どもの勉強を見ながらテキパキ作業をしたいなど、料理の仕方やシーンは千差万別です。人によって使いやすいキッチンというのは違うので、まず自分はどのような環境で料理をしたいのか、オンとオフのキッチンの使い方のシーンなどもイメージしておくことが重要です」
例えば、カウンターキッチンでも、少しこもった環境で作業をしたいなら、つり戸棚などがついたセミオープンタイプにしたり、友人たちをよく招いて、みんなで料理をしたいならアイランド型にしたり、夫妻共に料理が好きで毎日一緒に料理をつくるなどの場合は二型(セパレート型)にするなど、使う人や動き方などに合わせてキッチンの形やレイアウトを選ぶと、使いやすいキッチンになりそうです。
壁付きタイプキッチンよりも、リビング・ダイニングに対面するカウンターキッチンの方が、キッチンを設けるための面積が必要になります。
「一般的なシステムキッチンの奥行きは65cm程度。カウンターキッチンをつくる場合は背面に作業台や収納棚を設け、通路も確保する必要があるので、キッチンの面積は少なくとも幅・奥行き共に2m程度必要です。
また、最近ではキッチンを90cm~1m角の大きなものにして、ダイニングテーブルとしても活用できるようにしたり、ダイニングテーブルをキッチンの一部としても使えるよう、キッチンに横づけしてつくったりするケースも増えています。ダイニングテーブルを横づけする場合、幅は3~5mほどになります」
さらに、こだわりのある個性的な形のカウンターキッチンを造作したい場合は、動線や通路の幅なども考えると、より面積が必要になると考えておいた方がいいそうです。
また、キッチンのカウンターをきちんと活用するには、どの程度カウンターの奥行きが必要になるのでしょうか。
「キッチンであまり料理をしない人や食器をあまり使わないような人は省スペースを優先して狭いカウンターを選択する場合もありますが、一般的に、配膳や作業するスペースとして有効活用したい場合は、30~40cmの奥行きは必要です。その程度の奥行きがあれば、配膳だけでなく、食事をとるスペースとしても活用できます。さらに、キッチンカウンターを子どもが宿題などをするスペースとして活用したい場合は、もう少し奥行きがあるとさらに使いやすくなります」
せっかくのカウンターキッチンも、カウンターが狭すぎると、使い勝手が悪く雑然とした物置きスペースになってしまいかねません。使い方をイメージして、カウンターにはある程度奥行きを持たせておくといいでしょう。
キッチンをおしゃれで快適な空間にするために欠かせないのは収納です。オープンなタイプのカウンターキッチンであれば、なおさらきちんと計画的に収納スペースを設けておく必要があります。
「壁付きのキッチンでは背面に収納を設けることができませんが、カウンターキッチンの場合、奥行きが深ければ、前面と背面、両方に収納スペースを設けることができます。作業する面は調理器具、反対側には食器などというように、何をどこにしまうかを考えておくと使いやすい収納になりますね。注文住宅やリノベーションであれば、収納を自分の使いやすいように造作できるので、よりスッキリ収めることができます」
キッチンがオープンになるほど、見せる収納を取り入れるなど、収納に工夫が必要になったりもします。見せる収納が苦手という人はパントリーのような、大容量の収納スペースをつくるという人も少なくないようです。
天板や壁の素材や色をどうするかでキッチンの印象は大きく変わります。また、キッチンの天井なども利用すると空間の演出性を高めることができるそうです。
「キッチンの天板は、ステンレスや人工大理石といった素材を選択する人が多いですが、例えば、シンクまわりはステンレス、作業台やテーブルとして利用する部分は木、鍋などを置きたい部分にはタイルというように、素材を切り替えて好みの雰囲気を演出する場合もあります。
また、キッチン自体がシンプルな場合でも、ペンダントライトをつるしたり、キッチンカウンターの前面を黒板塗装にしたり、天井や壁を利用すれば、アイデア次第でおしゃれな空間に仕立てるということもできますね」
使い勝手のいい、おしゃれなカウンターキッチンをつくるためには、まず、自分の料理スタイルや、キッチンでの過ごし方、好みやこだわりなどをきちんと整理しておくことが大事ですね。
注文住宅やリノベーションで、実際にどんなカウンターキッチンをつくることができるのか、実例を見てみましょう。
理想は“食”を中心にした住まいということで、外国の食堂をイメージし、キッチンはコンロ、シンク、ダイニングテーブルを一体化。こだわったのは、壁一面のレンガで、ベルギー産のアンティークのレンガタイルを輸入して貼ったそう。異国の地で実際に使われていた素材が家の中にあるというわくわく感がたまりません。通常、キッチンの収納棚というのは床までありますが、取り出しやすいところだけに棚を設置し、床と収納棚の間の隙間にもこだわりのレンガが見えるようになっています。
個性的なキッチンの形は馬蹄(ばてい)型。直線と曲線を組み合わせたダイニング一体型キッチンからは部屋全体をぐるりと見渡すことができ、自然と家族が集まる場所になるよう、キッチンは部屋の中心に設置。スペイン人デザイナー、パトリシア・ウルキオラのフロアのタイルが、空間のアクセントになっています。
好きな黄色を取り入れたキッチンはフルオープンスタイル。棚の上が常にすっきりするよう、家電製品などの収納場所を棚の中に設けました。広さを感じる仕掛けとして、キッチンの高さを棚やテーブルなどと統一。高さをそろえたことで、横のフラットな空間が繋がり、部屋全体の開放的な雰囲気に一役買っています。
それぞれの住まい方に合わせて、カウンターキッチンのバリエーションは無限大です。まずは、どのような空間で料理をしたいか、自分の理想のキッチンを思い描いてみませんか。
カウンターキッチンとはリビングダイニングとの間にカウンターがある対面キッチン
使いやすいキッチンにするためには、料理をする環境やシーンをイメージすることが大事
希望のテイストに合わせて天板や壁、天井などに工夫を凝らすとおしゃれな空間に