上げ下げ窓とは、上下にスライドさせて開く構造の窓のこと。おしゃれな印象を与える上げ下げ窓は、外観を魅力的にしてくれるだけでなく、カーテン・窓装飾などと組み合わせれば、インテリアのポイントにもなります。上げ下げ窓を取り入れたときのメリット・デメリット、デザインに与える影響、ストッパーとなるバランサーなどの構造、網戸の選び方、防犯対策などについて、YKK APの前田さんと、一級建築士の佐川さんに教えていただきました。
上げ下げ窓とは窓を上下にスライドさせて開閉する窓のことで、さまざまな種類があり、一般的に代表的なものとして、両上げ下げ窓、片上げ下げ窓、スリット上げ下げ窓の3種類があります。
両上げ下げ窓は上下の窓が開閉し、片上げ下げ窓は下の窓のみが開閉、スリット上げ下げ窓は上下の窓が連動して開閉するのが特徴です。
両上げ下げ窓 | 片上げ下げ窓 | スリット上げ下げ窓 |
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上下の窓が開閉する。 | 上側の窓は固定で、下側の窓のみが開閉する。 | 片方の窓を開け閉めすると、連動してもう片方が上下する。 |
「操作方法により、レバー錠タイプ、バランサータイプ、ワイヤータイプの3タイプがありましたが、レバー錠は、最も古いタイプ。昔の電車の窓のように下框の左右のレバー錠部品をおさえると開閉することができ、レバー錠部品から手を離すと決まった位置で固定できますが、指を挟む危険性があり、現在YKK APでは販売していません。バランサータイプは、YKK APで現在販売している片上げ下げ窓に採用しています。バランサーとは、ガラス窓を好きな位置で止めるために窓枠に内蔵されている部品のことです。下框の把手を持って開閉すると、バランサーが作動し、任意の位置で固定できる仕組みです。ワイヤータイプは、下の窓を開閉した分だけ上の窓が連動して開閉する仕組みです。YKK APのスリット上げ下げ窓に採用していましたが、今は販売を終了しています」(YKK APの前田さん。以下、前田さん)
レバー錠タイプ | バランサータイプ | ワイヤータイプ |
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下框についたレバー錠部品を握って窓の開閉操作を行い、決まった位置で窓を固定する。 | 下框あるいは上框についた引手で窓の開閉操作を行う。窓が任意の位置で停止するタイプ。 | 下框についた引手で窓開閉操作を行う。窓を吊っているワイヤーによって、上下の窓が連動して同時に動く。 |
窓枠の上下は上枠、下枠、左右は縦枠、框に組み込まれたガラス部分を障子といい、左右の縦枠の中に仕込まれたバランサーは、ガラスの障子を支え、任意の場所で止められるようにバランスをとるための部品です。クレセントで鍵がかけられ、防犯性を増すために、サブロックが設けられています。
「YKK APで販売している窓の商品シリーズいずれにも片上げ下げ窓があります。壁の狭いスペースには単窓、広い壁面には、単窓をふたつ並べて使ったり、連窓が選ばれたりしています。サイズは、例えば、『APW 330』シリーズの単窓では、幅300・405・640・730・780mmの5サイズ。2連窓は、幅1235mmと1690mmの2サイズがあります」(前田さん)
日本の家の北側は、洗面所や浴室など、それぞれの部位でばらばらの高さの窓をつけて見栄えの悪いデザインになってしまうことが多いといいます。
「上げ下げ窓にすることで、外観上も内観上もデザインにリズムをつけることができます。デザインにはリズムが大事です。例えば、同じ高さに同じサイズの上げ下げ窓を並べてつけたり、上げ下げ窓に白や黒などのフレームをつけると窓がきりっとして、アクセントのあるデザインになります」(一級建築士の佐川旭さん。以下、佐川さん)
「上げ下げ窓の気密性は、ほかの窓の種類と同程度で、気密性を試験した結果からその性能をランク付けしたJIS等級では、YKK APが現在販売している片上げ下げ窓は、最も気密性が高いA-4等級と表記されています」(前田さん)
両上げ下げ窓は、上と下の窓を開けることができます。双方から風が入りますので、換気したい場所におすすめです。(佐川さん)
上の窓が固定されている片上げ下げ窓で、下の窓が内側についている場合、下の窓を上げた状態では、下の窓の外側の掃除ができません。両上げ下げ窓も、手を窓の開放部分から外に出して拭くので大変です。外から掃除するにしても、設置する高さに注意が必要です。
「例えば、浴室は、中が見えないように、高めの位置に窓をつけると思いますが、室内側からは手が届いても、外側の窓は拭けなくなってしまうことがあります。外壁の窓の地面からの高さは、浴室の床の高さに基礎の高さを加えるので、トータルで2m40cmほどになってしまうのです。どの高さにつけて、掃除はどうするかを考えて選びましょう」(佐川さん)
窓ガラスの掃除がしやすいよう工夫された製品もあります。
上げ下げ窓を選ぶ際に、網戸が外側についているのか、内側についているのか、折りたたむ形式になっているのかどうかをチェックする必要があります。外側についている網戸は、紫外線や雨が直接あたるので、劣化しやすく、外からしか掃除できません。内側であれば、汚れが目につくし、拭きやすくなります。
「外側に網戸がある窓に面格子をつけると、一切網戸の掃除ができなくなってしまいますから、面格子をつける場合は、網戸は内側になります。最近では、折り畳んで収納できる蛇腹状網戸や、掃除しやすく設計された上げ下げ窓もありますから、メーカーに問い合わせたり、ショールームで確認するといいと思います」(佐川さん)
上げ下げ窓が止まらなくなったら、バランサーの交換などの修理が必要です。枠の内部に仕込まれたバランサーを自分で直すのは難しいので、メーカーや施工会社に問い合わせましょう。
「防犯建物部品(泥棒による侵入のための攻撃に5分以上耐えられる建物部品)の基準では、侵入防止に有効な窓のサイズは250mm未満の有効開口のものとされ、YKK APの製品例でいうと、基準をクリアする片上げ下げ窓のサッシW寸法は、300mm以下のものになります」(前田さん)
「幅の広い上げ下げ窓を使った場合には、開口部の内側に木やアルミの丸パイプを設置すれば、人が入ることを防げます。さらに、面格子を設置すれば、ガラスを割って侵入する場合の障壁になります。後付けの面格子は、ビスを外されてしまうので、一体型の面格子の方が防犯上おすすめです」(佐川さん)
上げ下げ窓は、機能面だけでなく、デザイン性も優れています。外観のアクセントやカーテン・窓装飾との組み合わせで、おしゃれなインテリアを演出できます。
「上げ下げ窓は、デザインのポイントに使われることが多いですね。例えば、幅45cm×高さ60cmくらいの小窓的なものを使って外壁のデザインにリズムを生み出すことができます」(佐川さん)
「上げ下げ窓は、トイレ・洗面所・浴室など、どちらかというと、小部屋に選ばれることが多いです。一般的に引き違い窓には、横引きのカーテンを使う場合が多いですが、開けたときに窓の左右にカーテンがたまり、窓枠が隠れてすっきりしません。一方、上げ下げ窓の場合は、ブラインドやロールカーテンなど、上部に収納されるカーテンを選ぶと、窓枠のラインが、窓辺をすっきりした印象にさせてくれます」(佐川さん)
上げ下げ窓は、窓を上げるとき、ちょっとワクワクする遊び心のある窓。窓は、外側と内側をつなぐ役割を持っていますから、自分が何のためにその窓をつけるかを、はっきりさせておくと◎。外の緑を見せて開放感や抜け感を演出したいのか、風の通る流れをつくりたいのか、光を入れたいのか、意識してみてください。上げ下げ窓は、デザインだけでなく、網戸と面格子も含めてトータルに考えて選ぶとよいでしょう。
上げ下げ窓は、上下にスライドさせて開く構造の窓である
一般的に上げ下げ窓には、3種類ある
上げ下げ窓は、外観や内観のデザインにリズムをつけてくれる